「ふ~~~~ん・・・何だか面白い事になっている様だね」
彼女は何故この様な暗い場所に独りで居るのだろう?
「まあ・・・あの2人を痛め付けてくれた事には感謝するけど・・・私的にはもっと痛め付けてほしかったんだけど・・・、
それこそ二度と立てなくなるか、ISを使いたくなくなる位に・・・あっ!そんな面倒な事するより殺しちゃった方が楽か」
彼女は何故人が傷付いても何も感じないのだろう?
「でも・・・彼って一体何なんだろう?男にISは扱えない筈、だけど彼は・・・まあ特別と言えば特別なんだけど、
この男の子・・・私にもよく分からないISを使って・・・」
彼女は何に対し思考し、何が不満なのだろう?
「ハッキリ言って・・・邪魔なんだよね・・・特別なのは・・・彼だけで十分なのに」
彼女は何故“彼”にこだわるのか?
「だから・・・私は彼の為に私から取っておきのサプライズをご用意したのだよ♪これはきっと彼も喜んでくれるよ♪」
彼女は何に対し楽しそうに語るのか?
「それに・・・プレゼントの最終チェックも兼ねているから、一石二鳥♪私って相変わらず天才だね♪」
彼女は人の天才の“裏”の意味を知っているのだろうか?
個人の天才とは・・・時に世に災いをもたらす“天災”でもある事を・・・。
「楽しみだな・・・これで私達の幸せな世界へとまた一歩近づけるんだから♪」
彼女は笑う・・・何故に笑う?
「だ・か・ら♪」
笑顔は時として人を癒し、他人をも笑顔にする事の出来る、人間の出来る唯一の魔法・・・。
なのに・・・。
「君には噛ませ犬になってももらうよ・・・謎の男性操縦者君♪」
ギュルルルルルルルルルル・・・・・・
彼女の笑顔は歪みと邪悪を帯びているのだろう?
そして彼女は知らない・・・人の天才である彼女故知らぬ事。
彼女が牙を向けようとする相手が、希望を受け継いだ騎士であり、邪悪を滅する黄金の牙である事を・・・。
――――『乱入』――――
Side・一夏
如何しよう・・・ISの実習が終って放課後・・・俺はセシリアと鈴と共にビット内で、鋼牙と如何戦うか作戦を練ろうとするが。
「でさ・・・?鋼牙を相手に何か策はあるの?」
「・・・・・・如何します?」
「・・・・・・如何する?」
「って!何も考えてなかったのかよ!?」
鋼牙はISを纏わないでラウラを圧倒する相手だぞ。
それを・・・3対1とは言え、ISを纏った鋼牙と戦うとなれば、頭の悪い俺でも無謀だって事位わかる。
セシリアに鈴も何か打開策か何か作戦を立てているかと思ったら、何も考えていなかったなんて。
「如何するんだよ!!相手はあの鋼牙だぞ、只でさえ無謀な対戦だと言うのに!!」
「情けないぞ一夏!!男なら相手が誰であろうと勝つぐらいの意気込みを見せなくてどうする!!」
「箒・・・そうは言うけどいくら何でも鋼牙を相手とするなら作戦位は必要だと思うぞ」
「確かにそうですけど・・・」
「私達だって何も考えていなかったわけじゃないのよ」
「と言うと?」
「何も思い浮かばなかったのよ」
「鋼牙さん自身とそのIS太牙のデータが少ないですから・・・」
「確かに・・・」
だけど・・・さっきの箒に言われたからじゃないけど、やるからには確かに勝ちたい。
でも相手がそんな気持ちだけじゃ勝てない相手だと言う事も分かるから・・・弱気になってしまう。
「こうなったら其々の持ち味を活かして戦うしかありませんわね」
「そうね・・・作戦なんて戦っている最中でも見つけられるしね」
「じゃあ・・・一応役割分担だけ決めておくか?」
「そうね・・・私と一夏が一緒に攻撃するからセシリアは私達の援護をお願い」
「なっ!?いいえ!それでは穴が有り過ぎますわ!!私と一夏さんで仕掛けますので、鈴さんはその援護をお願いいたしますわ」
「ちょっと待った!!アンタのブルー・ティアーズの方が完全に援護向きでしょ!!私の甲龍は接近戦でも高い性能を見せているのよ!
接近戦主体の一夏の白式とは相性ばっちりなんだから!!」
「いいえ!!鈴さんの衝撃砲で鋼牙さんの気を鈴さんに向け、そこを私と一夏さんで撃つ!それが一番ベストな組み合わせですわ!!」
「アンタ馬鹿!?一番接近戦が苦手なあなたじゃ一夏の足を引っ張るだけじゃない!!」
「鈴さんこそ!!ツッコむだけが取り柄の様な人達を組ませる事がどれだけ危険か分かっていらっしゃるのかしら!?」
「何ですって!!」
「何ですの!!」
「ふっ・・・2人とも落ち着けって、俺達が争って「「うるさい(ですわ)!!」」はい!!」
こんなんで大丈夫なのか?
Side・シャル
今僕はラウラに連れられて鋼牙の居る方のビットに来ている。
其処では鋼牙は何もしないで、只静かに座り込んでいるだけだった。
そんな鋼牙にラウラが不安げに声を掛ける。
「兄さま・・・あの、もうすぐ始まりますが、準備等しなくて大丈夫なのですか?それに・・腕の方も・・・」
「大丈夫だ、腕の方も問題は無い」
「・・・そう・・ですか、なら一つ聞かせてもらえないでしょうか?」
「何だ?」
「何故・・・あの2人の決闘を受けたのですか?それに一夏も加えて」
確かに・・・鋼牙は必要性があるって言っていたけど、僕にはその必要性が何なのか分からない。
『鋼牙、話してやってもいいんじゃないのか?』
「・・・この先、この学園は必ず襲われる事となる・・・織斑一夏絡みで」
「「えっ?」」
鋼牙の言った言葉に僕達は驚愕する。
「それって・・・如何言う事なの?」
「ラウラ・・・軍に居たお前なら分かると思うが?」
「・・・確かに、まだドイツに居た時に、軍内でそれに似たな噂が一時流れていました」
「どんな内容なの?」
「・・・織斑一夏の誘拐と、彼の動かしたISの強奪が起こると言う噂だ」
「えっ?」
ラウラの言葉は以外でもあり・・・当然だった。
世界最強の欠陥兵器・・・IS。
ISが欠陥である原因は2つ、1つは量産が出来ない事。
ISを開発するのに欠かせないISコアは、世界各国の研究者が独自で開発を試みるも、その全てが失敗しており、
開発者である篠ノ之束博士にしかISコアを創り出す事が出来ないとまで言われる程で、その篠ノ之博士が行方を眩ませている以上、
世界中に存在する467個・・・いや、先日鋼牙によって壊されたシュヴァルツェア・レーゲンのコアの分を差し引けば、
今世界に存在するコアの数は466個、つまりISは466体しか作る事が出来ないのだ。
そしてもう1つは男性には扱えない事。
女性にしか扱えなかったISを男性である一夏が動かした。
まず女性にしか動かせなかった事だけでも原因不明だったのに、男性である一夏が動かせられる原因も不明、
人体実験レベルで調べれば何か分かるかもしれないけど。
この2つの原因の1つでも何処かの国や企業が解決したなら、その国と企業は一気に世界の頂点に君臨できる。
その為、一夏を誘拐し、そのISも詳しく調べようと考えるのは極当然だ。
「まあ・・・そんな事考えていたのは一部のマッド・サイエンティスト、私のシュヴァルツェア・レーゲンに、
VTシステムを君込んだ奴等位のな・・・だが他国とは言え市民を守る軍人がそんな事する筈も無いと思い、
そんな噂話すぐに忘れたが・・・今思うと有り得なくはないですね」
「今アイツはIS学園の生徒である事によって、国に守られているとは言え、手を出さないと言う保証は無い、
現にお前達が転校してくる前に、謎のISによる強襲があったと聞く」
僕もそれは聞いた・・・でもそのISは無人機で、全てが謎に包まれていると聞いた。
そんなISを所持する国や企業が、仮に一夏の誘拐目的に送り込んだとしても、その必要性が全く見つからない。
考えられるのは・・・他の国や企業が一夏を使って、男性ではISを動かせられない原因の解明を阻止する位・・・。
そう言えば・・・鋼牙もISを扱えるけど、鋼牙は自分がISを動かせられる原因を知っているのかな?
「ねえ・・・鋼牙」
「何だ?」
「話はずれるけど・・・鋼牙はさ・・・自分が如何してISを動かせられるのか・・・知っているの?」
「・・・俺がISを動かせる理由か・・・」
「うん・・・」
「私もそれは気になっていた・・・如何してなのか分かりますか兄さま?」
「・・・それは俺にも分からない」
「「えっ?」」
「たとえ知っていても、それを軽々しく口にはできない」
「私にもですか兄さま?」
「あぁ・・・それだけ男がISを動かせる事は、世界的にも大事だと言う事だ・・・下手をしたら・・・」
鋼牙はそれだけ言うと、神妙な表情で黙り込んだ。
鋼牙が何を考え、想像しているのかは分からないけど、鋼牙が神妙になる程だから、余程の事なのだろう。
「分かった、僕も一応は1つの会社の・・・子供だから、その事も分かっているから、それ以上聞かない」
「私も・・・」
「・・・すまないな・・・取り敢えず今回は、一夏だけでなくセシリアと鈴音の実力を見る意味がある、
一夏に関してはそうなった時、最低限自身を守らなければならんし、セシリアと鈴音は代表候補生で専用機持ちだ、
この学園が襲撃された時、防衛手段として投入される可能性はあるからな」
へえ・・・鋼牙って何所か上から目線で無愛想な感じだから、人と関わりを持とうとするのを極端に避けようとしている様に見えてたけど、
意外と他人の事を心配できるし、色々考えているんだ。
そう言えば・・・箒が力を持ちたいと言っていた時、その考えは間違えているって説法していたけど・・・ひょっとして・・・。
「鋼牙って・・・ひょっとして“ツンデレ”?」
「「・・・・・・・」」
「えっ?如何したの2人とも?」
『・・・なんとまあ凄い爆弾を放り込むな・・・この嬢ちゃんは・・・』
「えっ?えっ?」
「シャルロット・・・ツンデレとは何だ?」
「えっ!?」
しっ・・・しまった!!
鋼牙の性格やキャラからして「ツンデレ」なんて言葉の意味を知っている訳なかった!!
別に悪い意味でも・・・でも男の人が言われたら・・・あぁ・・・女の人もそうかもしれないかぁ・・・。
鋼牙も何気なく侮辱・・・とまでは行かないけど、何かを感じたのか僕にツンデレとは何かと詰め寄って来た。
「兄さま・・・少しシャルロットをお借りします」
ラウラが鋼牙にそう言うと、僕を引っ張ってビットの端っこの方に連れて行った。
「シャルロット・・・私も部下だったクラリッサからツンデレの事を聞かされて、意味は知ってはいるが、
確かに兄さまはそれっぽい感じを出してはいるが・・・兄さまは絶対自覚は無い、それにもし兄さまがその意味を知ったら・・・」
「知ったら・・・」
僕とラウラは想像した・・・ツンデレの意味を知った後の鋼牙を・・・。
激しく否定した後、その場に居る者全員の心臓を締め付けてしまうかの様な不機嫌オーラを発しながら、
静かに居る鋼牙の姿が脳裏に浮かんだ。
「教えない方が・・・いいよね?」
「それが賢明だ・・・」
「おい、何をしている?」
「「いえ!何もありません」」
「?そうか、それよりザルバがシャルロット、お前に何か言いたいそうだ」
「僕に?」
『あぁ・・・鋼牙、すまないが俺をシャルロットの嬢ちゃんに渡してくれないか?』
「なるべく手短にしろよ」
『分かってるって』
鋼牙はザルバを指からはずし、僕に手渡した。
そして僕は鋼牙に聞こえない様にしてザルバの
「何?」
『いや・・・一応忠告しておこうと思ってな』
「忠告?」
『鋼牙は根に持たないタイプだが、その分一度不機嫌になったら・・・』
「ちょっと・・・如何なるの?一度不機嫌になると一体如何なるの?」
『確かめてみるか?』
「いえ・・・遠慮しておきます」
『そう・・・それでいい、無理に狼を怒らせない方が身と心ためだ』
「うん・・・分かった」
と言うか・・・鋼牙を不機嫌にしたら身も心もダメージを負うんだ。
「もういいか?」
『おう、もういいぞ』
「そうか・・・ところでシャルロット、話がずれたがツンデレとは如何言う意味だ?」
「えっ!?」
まずい!!まだ僕の死亡フラグは回避してなかった!!
「えっ・・・えと、ツンデレっていうのは・・・その・・・」
「何だ?さっさと説明しろ」
「うっ・・・うぅ・・・(助けてラウラ!!)」
僕はラウラに助けを求めようと視線を移すと。
(すまんシャルロット・・・無力な私を許してくれ!)
(ちょっと!!)
ラウラは申し訳なさそうに僕から視線を逸らした。
天は・・・僕を見放し・・・。
『鋼牙、もう時間だ、太牙を纏ってアリーナに行った方が良いぞ』
「もうそんな時間か・・・まあいい、どうせ大した事ではなさそうだしな」
てなかった!!
ありがとうザルバ!!今度高頻度エネルギー(IS用)をプレゼントするよ!!
「では俺は行って来る」
「はい!兄さま、頑張ってください!」
「別に勝つのが目的じゃない、アイツ等の実力を見るのが目的だからな・・・だが、負けるつもりはない、
好きにするといい」
「はい!」
うん・・・やっぱり鋼牙ってツンデレ属性な気がする。
僕とラウラはビットを出て、管制室へと向かった。
Side・千冬
「織斑先生、織斑君達と冴島君がアリーナ内に入りました」
「よし・・・では後5分で試合を開始してください」
しかしこうも早く冴島の戦闘が見られる機会が訪れるとはな。
奴がボーデヴィッヒ(今は冴島の妹だが)の暴走を止める時にも、ISを纏って戦う様子は見れたには見られたが、記録もできておらず、
奴の実力の断片も判断する事が難しい程度だしな。
ハッキリ言って冴島は各国の代表候に匹敵かそれ以上の実力を持っている。
そんな奴が如何してIS学園に・・・そして何処で、如何やってそれ程の実力を身に着けたか・・・この試合で少しは分かればいいのだが・・・。
「織斑先生はこの試合、どちらが勝つと思いますか?」
「高い確率で冴島だろうな」
「即答ですか・・・確かに冴島君はかなりの実力者だとは思いますが、織斑君は兎も角、代表候補生である、
オルコットさんと凰さんを加えた3対1ですと・・・」
「いや・・・むしろ敗因はその2人になりそうだがな」
「えっ?」
実力や才能は十分、これからも努力次第では伸びるだろう・・・しかし、今最もあいつ等に必要な物はそれではない。
パシュ・・・
「「「失礼します」」」
デュノアに冴島妹、そして篠ノ之がやって来たか。
篠ノ之は一夏が試合等をする時は大抵此処(管制室)に来るが、後の2人は初めてだな。
「何だ?旦那の活躍でも見に来たのかデュノア?」
「織斑先生!!もうそう言うのはいいですから!!」
「冗談だ、大方冴島妹の付添だろう・・・で?活躍を見に来たのはお前達の方か?」
「わっ・・・私は別に一夏の活躍を見に来たわけでは・・・」
「はい、兄さまの戦闘の様子を見つつ、きょ・・・織斑先生の意見も聞きたく此方に来ました」
「ふむ、成程な・・・それと篠ノ之、私は別に“織斑の活躍”とは言っていないぞ」
「いっ・・いや・・・その、私は・・・その・・・」
まったく・・・ドの付く鈍感で唐変木な我が弟にも問題はあるが、アピールだけでなく、もう少しでも素直になれないこいつにも問題があるな。
「まあ見るだけなら大人しくしていろ、冴島妹、質問は試合終了後に受け付けるからそのつもりで」
「わかりました」
『俺も見学に加わっても構わないか?』
「!?誰だ!?」
突然管制室全体に響く男の声に、私達は警戒した。
『おっと・・・驚かせてしまってすまないな、こっちだこっち』
先程管制室全体から聞こえた声が、1つの端末のから聞こえてきた。
『よし、これでいいだろう』
「ザルバ!?」
何と端末の画面に、冴島のISのAIであるザルバが映り出した。
「お前・・・えっ?では今兄さまの所に居るのは?」
『いや、鋼牙が今回は1人でやると言いだしてな、何もしないってのも暇だからこっちで見学させてもらおうと思って、
こっちに通信と言う形で意識を飛ばしたんだ』
「大丈夫なのか?」
『まあ、鋼牙なら大丈夫だろう』
「いや・・・それもそうだが「おい、冴島妹」・・・きょ・・・教官?」
「織斑先生だ・・・代われ」
「はっ・・・はい・・・」
「ザルバと言ったな・・・お前の主は何を考えている?」
冴島はハッキリ言って私達とは何かが違う。
歳の割に冷静で落ち着いた大人びた雰囲気と考えに、ISをあそこまで扱える能力の高さ、学問やIS関しての知識なら教師よりはあるようにも思える。
だがそれは奴が天才と言う訳ではない気がする。
あの技術と知能の高さは、一応私の友人である天災と言う天才とは違い、その全ては努力によって身につけたものに感じる。
もし本当に奴が努力によってあれ程の力を身につけたのなら、目的が・・・目標ややり遂げなければならない何かがある筈だ。
だが・・・それが何なのかは分からない、それに奴は・・・まだまだその力をつけようとしている様にも思える。
だからこそ、奴がオルコットと凰の決闘を受け、それに一夏を加えさせた理由が分からない・・・奴が何を考えているのかも。
冴島・・・お前は一体、何処を目指し、何を成し遂げようとしている?
『さあね・・・因みに織斑先生はそれを聞いて、どんな答えが欲しんだ?あとアイツは俺の相棒で、俺もアイツの相棒だ、
世間一般なISと操縦者の様な主従の関係じゃないのでそこのところはよろしく』
「ふん・・・分かった、では質問を変えよう、何故冴島はあいつ等の決闘を受けた?そして何故織斑を巻き込んだ?」
『それか・・・まあラウラにシャルロットの嬢ちゃんには話してあるからいいか』
そして私達はザルバから今回冴島が決闘を受けた理由を聞いた。
「成程・・・だがそれは我々教師陣のする事だ、織斑を狙って襲撃して来たのならそれを守るのも、
実力を見極め伸ばすのもな」
「えぇ・・・別にそれが悪いって事ではありませんが・・・」
『確かにそれはアンタ達がやるべき事だ・・・だが鋼牙の場合は少し違う』
「何?」
『鋼牙は自分で確かめないと気が済まないと言うのもあるが、言ってはいないがもう一つ自身で何かを確かめたいんだろう』
「その確かめたい事とは何だ?」
『さあな・・・それは本人に聞いてくれ、まったく・・・生真面目すぎるのも考えものだな』
「・・・お前も色々と苦労しているみたいだな」
『いや・・・むしろその方がアイツらしくて安心する、もっとも・・・“心配”はするがな』
ふむ・・・こいつと冴島の関係は良い相棒同士と言ったところか。
先程の心配の言葉、あれには一欠片の心配も含まれていない、つまり今に至っては冴島に対して何も心配ないと言う事か。
アイツなら何かを成し遂げると言った確固たる信頼がある・・・。
「分かった・・・因みに聞くが、お前から見て織斑達と冴島の対決・・・どっちが勝つと思う?」
『そりゃあもちろん鋼牙だな、言っちゃ悪いがあの坊主に嬢ちゃん達じゃ鋼牙を相手にするのは可哀想ってもんだ』
「お前!!一夏を愚弄する気か!!一夏はあのような上から人を見下す様な輩に負ける筈がない!!」
篠ノ之・・・一夏を思って言ってくれるのは、私の“姉”の部分としては嬉しい・・・しかし、私の“教師”として、
そして嘗て日本の代表としていた私からしたら・・・。
「落ち着け篠ノ之、そいつの言っている事は正しい・・・私もほぼ確実に冴島が勝つと予想している」
「千冬さん!?何故です!?弟の一夏が勝てると信じられないのですか!?」
「静かにしろ馬鹿者、それと織斑先生だ」
「箒・・・申し訳ないんだけど僕も一夏達が勝つのは難しいと思う」
「私もだ、残念ながら一夏達では兄さまを相手にするには実力が違い過ぎる」
「お前達まで!!」
「真実だ・・・お前も分かっている筈だろう?」
「くっ・・・」
こいつも本当は分かっている。
冴島と一夏達とでは実力が違い過ぎる事を・・・。
『嬢ちゃん、1つだけ言っておこう』
「・・・何だ?」
『なに・・・大した事じゃないさ、戦いにおいて本当に大切なのは、勝つ事だけじゃない』
「・・・如何言う意味だ?」
『それは自分で見つける事だな、それが青春ってもんだろ?』
「ザルバ・・・何だかおじさんくさいよ」
『何!?おいシャルロット!俺の何所がおじさんなんだ!?』
「あはは・・・ごめんごめん」
お前等も静かにしろ・・・しかし大切なのは「勝つ事だけじゃない」か・・・確かにそうかもしれないな。
私が思った事と、こいつが言いたい事が同じかは分からないが、何も勝つ事だけが全てではない・・・負けて気付く事もある。
一夏・・・お前は冴島との戦いで、何を感じ・・・何を手にする?
Side・三人称
アリーナの観客席は活気たっていた。
先日の学年別トーナメントの中止で、生徒達の気持ちが盛り下がっていた現状に、IS学園創立・・・いや、
ISが誕生してから今まで行われたことの無い、初めての男性操縦者同士の対決が、今自分達の居る場所で行われるのだから仕方がない。
そんな皆が注目する中、アリーナ内の注目の的である鋼牙と一夏達はと言えば。
一夏達はアリーナの今まで感じた事も無い、活気と熱気に当てられてか、若干緊張している様子であった。
一夏にとって、クラス代表決定戦にクラス対抗戦と学年別トーナメントと、初の男性IS操縦者としての、
それなりの場馴れはしていたが、それすらも忘れてしまうほどに今のアリーナの活気や熱気は凄まじいのだった。
代表候補生であり、それなりの場での戦闘経験のあるセシリアや鈴にいたっても同じである。
対して鋼牙は静かに瞑想しているかの様に、目を閉じ静かに立っているのだった。
「鋼牙の奴・・・こんな状況でもどこ吹く風って感じでいるなんて・・・」
「全然気になってないって感じですわね」
「心臓に毛でも生えてるんじゃないの?」
「それより・・・本当に何も思い浮かばなかった」
「「うっ・・・」」
そう・・・結局鋼牙に対して如何戦えばいいか、良い案が何も浮かばずにいた。
一夏達の緊張はどちらかと言えばその所為でもあった。
「取り敢えず、誰かが危なくなったら即座に援護に入る・・・これしかありませんわね」
「そうね・・・いくら鋼牙が強くたって、専用機持ち3人もいっぺんに相手なんて出来ないでしょうし・・・」
「よし・・・じゃあ取り敢えずそれで行こう」
『試合開始まで1分前、両者用意はよろしいでしょうか?』
アナウンスで試合開始時間が迫っている事を知ると、一夏達は其々の武装を展開させた。
だが・・・鋼牙は・・・。
「・・・・・・」
「おい鋼牙!武装を展開させなくていいのか?」
鋼牙は武器を展開せず、先程と変わらず目を静かに閉じたままだった。
「構わない・・・必要なら展開する」
「「むっ!」」
セシリアと鈴は鋼牙の言葉にカチンときた。
自分達を相手にするのに武装を展開する必要も無いと感じたのだ。
「私達をなめた事を後悔させてやる!!」
「えぇ・・・絶対に勝ちますわよ!!」
(こっ・・・怖えぇ・・・・)
セシリアと鈴の怒気に思わず一歩後退する一夏であった。
『それではカウントを開始します・・・3・・・2・・・1・・・試合開始!!』
「行くぞ!!」
気を取り直し、試合開始の合図と共に鋼牙に斬りかかろうとした一夏、それに合わせてセシリアと鈴も左右に分かれて動こうとした。
しかし・・・。
「・・・・・・」
ビクッ!!
「「「!?」」」
鋼牙が静かに閉じていた目を開けた途端、一夏達の動きが止まった。
(なっ・・・何だ?今のは?)
(いっ・・・今確かに首が・・・)
(うっ・・・動けない・・こっ・・・・こ・・え・・・もだ・せな・・・い)
鋼牙が目を開いた瞬間、悪寒が一夏達を襲ったと同時に、脳裏に一瞬自分の首が飛ぶ光景が映し出された。
それが現実に起きた事でないと気付くも、特に暑いわけでも無いのに汗が止まらず、寒くもないのに体の震えが止まらないでいた。
「如何した?来ないのならこっちから行くぞ」
ガシャ・・・
「「「ひっ!」」」
鋼牙の一歩・・・たった一歩前進しただけで、一夏達は裏返った声を上げ、数歩下がってしまった。
一夏達は気付いていない、今自分達が恐怖によって怯えた表情になっている事に。
今の一夏達には鋼牙がとてつもなく巨大で恐ろしい・・・自分達を殺しに来る存在に見えているのだ。
Side・ラウラ
「一夏!!如何したのだ一夏!!何故戦おうとしないでそんな所で棒立ちしている!!」
「織斑君如何したんでしょう?オルコットさんに凰さんも動こうとしません」
「まさか・・・AIC?鋼牙のISにもAICが?」
管制室で兄さまと一夏達の対決を見ているが・・・試合が開始したにもかかわらず一夏達は動こうとしない。
シャルロットが、兄さまがAICを使ったのではと口にしたが、AICを使っていた私にはよく分かる、
あれはAICによる停止ではない。
『違うぜシャルロットの嬢ちゃん、あれは慣性停止結界なんかじゃない』
「えっ?」
『確かにあの3人は鋼牙によって動けないでいる・・・だが慣性停止結界の様な相手の動きを封じる能力は太牙には無い』
「じゃあ・・・如何して一夏達は動かないの?」
「あいつは今一夏達に何をしている!!」
ん~~~一体兄さまは何を・・・ん?一夏達の様子がおかしい・・・あれは・・・怯えている?
「成程・・・そう言う事か」
きょ・・・おっと、織斑先生と言わなければ怒られる・・・織斑先生は一夏達が動かない原因が分かったのか、
ザルバの映っている端末の方に近付いた。
「ザルバ・・・冴島は織斑達に殺気を放っているな?」
「「「殺気?」」」
『さすがブリュンヒルデ・・・そうさ、鋼牙はあの3人にのみ向けて殺気を放っている』
「腕のたつ剣客や武道家は、その殺気のみで相手の戦意を失わせ、戦わずに勝つ事が出来たと言う・・・織斑達は冴島の放つ殺気に恐怖し、
本能的に体が動けないでいるんだろう・・・例えるなら蛇に睨まれた蛙と言ったところだ」
「そんな事が?」
『体感してみるか?』
「何?」
『シャルロットの嬢ちゃん、左手を出してくれるか?』
「えっ?うん・・・」
シャルロットの左手・・・確かその中指には兄さまがあげた指輪が填めてられていた筈。
『いや~~~黙っておこうと思っていたんだが、お前の填めているその指輪は俺の片割れ、お前の居場所は何時でも把握できる』
「えっ?」
今ザルバは何と言った?
シャルロットの填めている指輪がザルバの片割れ?
「ザルバ・・・片割れとは如何言う事だ?」
『言った通りの意味だが・・・こんな風に・・・』
そう言うとザルバが映っていた画面が切り替わり、そこにはザルバが指輪を作った時の光景の様で、私を含め全員、
シャルロットは勿論、教官までもが喰いる様に見ていた。
『うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・』
『きぃ・・きぃ・・・・』
ガブッ!
『きき・・・きぃ・・・・ぃ・・・』
『はぁ・・・・ふぅ・・・』
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
ありのまま説明しよう・・・ザルバの口から銀色の液体なのか個体なのか、その中間の様な物体が吐き出され、
それは一瞬蟲の様な形になり、暫くもがく様に動き、尻尾らしき部分を噛みつき一体化し、指輪へと形を変えていった・・・。
予想以上にグロテスクな光景に私も若干引き気味だ・・・あの教官でさえ表情が引き攣っているぞ、
箒は手を口に当て椅子に寄りかかっているし、山田先生なんか涙流して気絶しかけている。
そして・・・その・・・ザルバのとしゃ・・・もとい!片割れである指輪を填めているシャルロットはと言うと・・・。
『そして俺は“あるもの”を探知できる、よってお前が何処にいようと・・・「いいやあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」うおっ!?』
「外してええええええええええ!!今直ぐ!!お願いだから!!は!ず!し!てえええええええええええええええええええええええええ!!」
『おおおおおい!!落ち着けシャルロット!!落ち着けって!!』
「外してえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「おっ!落ち着けシャルロット!!」
「ぬぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!ふぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
完全に取り乱している・・・。
まあ・・・気持ちは分からないでもないけど・・・。
あぁ・・・シャルロット、他の先生達も何事かと思ってこっちを見ているぞ。
指輪を外してと、ザルバの映っている画面を左手で何度も叩きながら叫んでいる。
あぁ・・・無理に外そうとするな、中指が抜けかねないぞ。
ビシッ!
あっ・・・今画面に罅が入った。
「落ち着けデュノア!!」
バッチッコーーーーーーーーーンッ!!
「ひゃうっ!!」
おぉ・・・織斑先生の伝家の宝刀がシャルロットの頭部に炸裂!
流石織斑先生・・・強烈な一撃にもかかわらず、相手を気絶させないように撃ち込むとは。
「気持ちは分かるが落ち着け馬鹿者!」
「はっ・・・はいぃぃ・・・」
「でっ?如何したらいいんだ?」
『おっとそうだったな、シャルロットが填めている俺の片割れに触れてみな・・・今一夏達が感じているのと誓い体感が出来るぜ。
もっとも・・・体感する勇気があるならだがな』
「「「「・・・・・・・」」」」
兄さまが放っている殺気を体感か・・・それなりに戦い慣れているあの3人がああなるのだからよほど凄まじいのだろうな・・・。
正直怖い・・・だが、兄さまの力の一端を体感・・・見られるなら・・・。
「私は受けよう」
「織斑先生?」
第一に織斑先生が名乗り出た。
「生徒の力量を見るのも教師の仕事だ、方法が少し非現実的だがな」
「では私も・・・」
「山田先生は止めておいた方が良い、さっきの映像であれだ・・・少し休んだ方が良い」
「はぁ・・・分かりました」
『他にいるか?』
「私も受けよう」
「ラウラも?」
「少し怖いが・・・兄さまの力がどれ程のものなのか、私も知りたい」
「そう・・・なら僕も、鋼牙がどれ位強いかは、僕も気になるし」
「私も触れよう、あの男の実力がどれ程のものか見てやる」
と言う訳で私、シャルロット、織斑先生、箒の4人が、兄さまの放つ殺気を体感する事となった。
『決まったな、じゃあシャルロットの嬢ちゃんの左手に触れてくれ』
私達はシャルロットの左手に触れた。
『じゃあ・・・いくぞ、静かに目を閉じな・・・だが、気はしっかり強くもてよ・・・でないと・・・』
「でないと・・・何だ?」
『いや・・・体感すればわかる』
ザルバの言葉が気になるが、私達は静かに目を閉じ、忠告通り気は強くもった。
『では・・・いくぞ』
ザルバの言葉の後、私達の視界は完全に真っ暗となった。
そして次の瞬間・・・。
ザシュッ!!
「「「「!!」」」」
バッ!
私は最初圧倒的な何かの視線を感じ、そのすぐ後に首を切断されたような感覚に襲われ、思わず閉じていた目を開け、
触れていた手を離してその場に膝を付いた。
「だっ・・・大丈夫ですか皆さん!?織斑先生も!!」
「あっ・・・あぁ・・・」
「いっ・・・今のは?」
「くっ・・首は・・・繋がっている?」
周りを見ると、シャルロットと箒も膝を付いて息を荒らげていた。
そして今になって気付いたが、シャルロットと箒と同じで、私も全身冷や汗を掻いていた。
かろうじて織斑先生は膝を付かずにはいたが、呼吸が荒く、冷や汗を流し、震える足を抑え何とか立っていると言った状態だった。
「いっ・・・今のが・・・冴島の殺気なのか?」
『あぁ・・・今はお前達とこうして喋っているが、俺のば・・・いやいや本体は太牙にある』
今ザルバが何かを言おうとして止めたのが気になったが、今の私・・・いや私以外の全員にもそれを聞き出す余裕など無かった。
『その本体もある程度は鋼牙の殺気を感知している、それを片割れを通してお前達に送ったんだが、
これでもまだ弱い方だ』
「!?冴島の本気の殺気はこんなものではないと言うのか!?」
「嘘・・・今のだって十分凄いのに・・・」
「兄さまの本気の殺気とはどれ程の・・・」
『まあ本気の殺気なら、今頃あの3人は気を失っているだろうな』
「だが・・・いくら殺気が強くても、腕と関係は「違うぞ篠ノ之」っ千冬さん?」
「織斑先生だ、殺気とは確かに感情によっての強弱はある・・・しかし、冴島の場合は実力に伴ったものだろう」
「そんな・・・」
「問題は・・・如何やってそれ程の実力をつけたのか・・・それと・・・何故17の小僧がそれ程の力を身に付けなければならなかったか・・・」
「「あっ・・・」」
織斑先生の疑問は最もだ、箒に山田先生もその言葉に、兄さまに疑問を持ち出した。
シャルロットは何となく察している様だが・・・。
兄さまが力をつけたのはホラーを狩る為だ。
私に憑こうとしたホラー・・・ウェガル、そいつと目を合わせた時、私の全てを出し尽くしても勝てないと本能で察した。
奴等は並みの訓練で鍛えられた軍人でも歯が立たない・・・そして普通の兵器等では殺す事はできない。
おそらくISを纏っても、殺す事はできないにしても、まともに渡り合えるとしたら織斑先生位かそれ以上の実力を持つ者・・・。
そんな怪物と戦い続けてきた兄さまだ・・・強い筈だし、魔戒騎士になる為に厳しい訓練を熟してきたに違いない。
あれ程の力は才能云々より、努力で培って得た力と言うのはあの時に感じたから。
しかし・・・自分達で申し込んだとはいえ、そんな兄さまと戦う事になるとは・・・。
「ん?ラウラ如何したの?目を閉じて手なんか合わせて」
「いや・・・クラリッサから聞いたんだが、日本ではあまりにも気の毒そうな相手にはこう手を合わせ、同情の念を籠めて、
「な~~む~~~」と言うのがマナーだと・・・」
「そうなの?じゃあ・・・僕も・・・」
「「「そんなマナーは無い(です)!」」」
な・・・ん・・だと・・・?
Side・鋼牙
殺気は抑えて放っているが・・・こんなものか。
一夏は兎も角、代表候補生のセシリアと鈴音も、スポーツとしての戦闘しか経験してこなかったから当然と言えば当然か。
「如何した?俺を倒すんじゃなかったのか?」
「「くっうぅ・・・・」」
「なっ・・何で・・・動けな・・・いんだ?」
それが殺気によるものとは分からないのか?
それもそうか、俺と違って今まで普通の生活を送って来たんだからな。
だが・・・今の一夏は普通には過ごす事はできない。
今は無自覚だろうが、何れは多くの者を巻き込む陰我の中心になりかねん存在だ。
だからこそ、自分に降りかかる火の粉を払える力を、こいつは付けなくてはならないんだ。
「それではこちらから行かせてもらうぞ」
「「「ひっ!!」」」
ゆっくり一夏達に近付いて行き、あと数歩となった時・・・。
「うっ・・うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「「一夏(さん)!!」」
殺気に慣れたか?それとも恐怖からか?はたまたそれ以外か・・・一夏は発狂しながら斬りかかってくる・・・。
戦士としては不合格だな・・・しかし・・・“合格点”はあるな・・・。
サッ・・・
「くう!!」
「そんな大振りではかすりもしないぞ」
「「一夏(さん)!!」」
一夏が動いたのを切っ掛けに、セシリアと鈴音も動きだす。
「てりゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ブウンッ!!
すぅ・・・
「えっ!?」
「遅いぞ」
ガスッ!!
「ぐふっ!?」
ざしゃあああああ・・・・・
鈴音が二刀ある大型の青龍刀型の武器、「双天牙月」で斬りかかるが・・・。
鈴音はパワーに任せた特攻思考が強そうだな、軌道が読みやすく簡単に避けられる。
避け際に鈴音の鳩尾に拳を入れた。
シールドバリアーによって守られていし、手加減はしているから、鈴音自身にダメージは無いが、衝撃で転がった。
「此方にもいますわよ!!」
ビシュン!ビシュン!
俺から右斜め上の位置から叫ぶセシリア・・・だが背後からビームの発射音がした。
「甘いぞ」
サッ・・サッ・・・
「なっ!?背後からのビームを見向きもしないで」
「音のした位置と大きさで、大体の着弾地点は予想できる」
セシリアのBT兵器、「ブルー・ティアーズ」の放ったビームを全て避け、そのままセシリアの居る地点まで跳び上がった。
その間、セシリアはブルー・ティアーズを使って何度も攻撃してはいたが、手持ちのレーザーライフル、
「スターライトmkⅢ」を使ってこなかったし、その場から動こうとしなかった・・・。
「せめてBT兵器を使用している間も動ける様にしておけ」
ガスンッ!!
「きゃあああああああああああああ!!」
ドシャアアアアアアアアアアアンッ!!
セシリアに軽く助言を言った後、きつめの手刀を当て、セシリアは落下し、そのまま地面に激突した。
俺はそのまま空中に止まらず、地面に下りた。
「このおおおおおおおおお!!」
地面に下りた俺に向かって一夏が攻撃を仕掛けてきた。
先程の攻撃が避けられたからか、先程よりはマシな攻撃だが、それでもまだ無駄が多く雑だ。
一夏の攻撃を避けながら、俺は一夏の死角に何度も拳を当てて行った。
大したダメージではないにしろ、IS(俺のはSSだが)を纏った者の拳は、かるく岩をも砕く。
一夏のシールドエネルギーは少しずつではあるが、確実に減っていっている。
「くそっ!何で当たらないんだ?」
「体全体に無駄な力が入っている、俺の動きをおえていない」
「くっ!」
「ふんっ!」
がすっ!!
「がはっ!!」
「後油断しすぎだ・・・何時どんな時も気を緩めるな」
剣の持ち方や動きを見る限り、剣道の経験者である事は分かったが・・・それでも素人の域から少し出た程度か。
ラウラとの対決の時は、ラウラに対しての訓練と、シャルのサポートが大きかったようだな、だがそれはそれなりの訓練を熟せば確実に伸びると言う事だ。
ィ・・・・・・・・・・・・
「・・・・・!」
サッ・・・
ズドオオオオオオオオオオオオンッ!!
「かはっ!?」
「一夏!!」
微かに風を切る音が聞こえ、即座に動いたが・・・案の定鈴音の「龍砲」・・・衝撃砲だったか。
俺が避けた事によって、放たれた衝撃波は一夏に当たって、一夏はその場に膝を付いた。
「撃つなら撃つで、もう少し考えてから撃つんだな」
「くうっ!」
「鈴さん何をやっていますの!?よりもよって一夏さんに当てるなんて!!」
「私だって一夏に当てたくて撃ったんじゃないわよ!!鋼牙が避けるからいけないんじゃない!!」
「お前等もそんな事している余裕があるのか?」
「「はっ!!」」
「あと・・・敵に攻撃を避けるなとは・・・無理な注文だ」
ドガッ!ガシッ!!
「「きゃああああああああああああああああ!!」」
命をかけた戦いでは無いとは言え、気を抜き過ぎだ・・・これもISをスポーツの種目と言う認識が強まった影響か・・・。
例えスポーツとしての認知が強まったとしても、兵器には変わりないと言うのにな・・・。
Side・三人称
アリーナの観客席は、先程とは打って変わって静まり返っていた。
今彼女達の目の前で繰り広げられているIS戦・・・しかしそのIS戦は彼女達のよく知るIS戦とは大きく違っていた。
3対1と言う組み合わせに加え、男性操縦者同士の対決だけでも異例なのだが、その戦いのもようも異例だった。
確かに接近戦主体で繰り広げられる戦いもよくテレビなどのメディアで見る事はある・・・しかし、
そのどれもが空を飛びまわりながら、激しくぶつかり合い、見る者全てを熱狂し興奮させるものなのだが、
今目の前で行われている戦いは例えるなら、IS戦らしからぬ静かな一方的な戦い。
ISの機能をフルに使い奮闘しようとする一夏達に対し、ISを纏ってはいるが、ISの機能を一つも使わず、
一夏達の攻撃を全て静かにかわし、手刀や拳による突きに蹴り等、己の肉体と体術のみで戦い圧倒する鋼牙。
最強の兵器としてISが発表されてから、そしてスポーツとしてメディアに取り上げられてからも、これほど静かな戦いは誰も見た事が無かった。
故に観客席には混乱に似たような空気も漂い始めていた。
そして・・・この戦いの全てを記録、そしてこの戦いを取り締っている管制室では。
「・・・まったく相手になってないな」
「・・・ですね・・・」
「一夏!何をしているんだ!!遣られっぱなしだぞ!!」
「予想通りと言うか・・・何と言うか・・・」
「兄さま・・・少し一夏達が可哀想に思えてくるのでもうそれ位で・・・」
それぞれ哀れみにも似た感想(1人違うが)を述べていた。
「とっ・・・言いますか、こんな試合風景私初めて見ましたよ」
「私もだ・・・ISなんか必要ないだろうあいつ?」
「織斑先生!兄さまは生身の剣1つで、暴走していた私に圧倒していますので、その疑問は必要ないかと思われます」
「・・・そうだったな・・・」
まぁ・・・ISを纏わずに打鉄のブレードを生身で振り回せる千冬が言っても説得力が無い様な気もするが・・・。
「何か言ったか?」
いえ・・・ありません。
「織斑先生如何しました?」
「いや・・・何か失礼な事を言われた気がしてな」
素の文を読まないでください。
「ねえザルバ、鋼牙は鈴の衝撃砲を何度も避けているけど、如何やって避けているの?」
「確かに・・・あれは砲身が無く砲弾が不可視な為、発射の角度にタイミングが分からないから、避けるのは難しい」
『そうだな・・・鋼牙の場合は音を聞いて避けていると言った方が良いか』
「「音?」」
『見えないと言っても、衝撃と言う砲弾がある以上、それが飛んでくる音はある』
「それで最初の背後からの攻撃を避けたの?」
『そうだ、セシリアの嬢ちゃんのBT兵器も同じ要領で避けている』
「へぇ~~~あっ!セシリアがミサイルを発射した」
「って兄さま!それを掴んだ!?」
「そしてそれを投げ返した!?」
シャル達が見ている画面では、鋼牙によって投げ返されたミサイルの直撃を受け落下していくセシリアの姿が映し出されていた。
『あれはセシリアの嬢ちゃんのミスだな、多分あのBT兵器を使っている間は動けないんだろうが、あまりにも無防備すぎる、
隙をついて接近して来たところで何かを狙っているのが丸分かりだ』
「でもミサイルを掴んで投げ返すのは、人間離れしすぎじゃない?」
『まぁ・・・それはそうかもな』
流石のザルバも、鋼牙のミサイル投げ返しには多少驚いているようであった。
「でもミサイルの投げ返しはおいといて、冴島君はどうやってそんな技術を身に付けたんですか?」
『鋼牙は暗闇の中での戦闘訓練を日常的に熟してきたからな、他にも空気の流れ等を読む等、五感を鍛える訓練を積んでいる、
だからこそあれ程までに的確に相手の位置を把握する事が出来る』
「・・・本当にIS要らずだな・・・ザルバ、今度兄さまの訓練内容を教えてくれ」
「うむ・・・興味深いな、良ければ今後実習の1つに加えてみるか」
「そうですね、それに冴島君も他の生徒達にやり方を教えられて、早く打ち解けられるかも知れませんしね」
『話すのは別に構わないが・・・実習に取り入れるのはやめといた方がいいと思うぞ』
「何故だ?」
『おそらく死人が出るか・・・この学園から人がいなくなるかのどちらかになる』
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
ザルバの静かな、それでいて重みのある言葉に、誰もが口を開こうとする者はいなかった。
(((((一体どんな訓練なんだ?)))))
全員が心の中で同じ事を呟く中、アリーナ内の一夏達は追い詰められていた。
そんな一夏に鋼牙が何かを語っていた。
「アイツ等・・・何を話しているんだ?」
「音声拾います」
「頼む・・・なるべく私達にしか聞こえないようにな・・・」
「・・・分かりました」
鋼牙の話の内容に若干の不安を感じ、鋼牙達の会話を自分達のみに聞こえるように指示する千冬であった。
Side・一夏
強い・・・分かっていたけど実際戦うと、より鋼牙の強さが身にしみてわかる。
只の一発・・・3人で挑んでいるのに只の一発も鋼牙にはきまらない。
しかも零落白夜はおろかイグニッション・ブーストを使うエネルギーも残ってない。
「一夏・・・お前は弱いな」
「っ!」
鋼牙の奴・・・はっきりと言ってくれるな・・・十分分かっているよ、俺が弱いって事は。
放課後の訓練でセシリアに鈴と模擬戦をやってはいるけど、一度も勝ったことは無い。
それでも何とかしようと努力はしているつもりだ・・・それでも俺は・・・。
「お前はそれでいいのか?」
「何?」
「お前は自分が何なのか理解しているのか?」
俺が何なのか・・・俺は・・・。
「俺は・・・IS学園の生徒で・・・世界で初のIS男性操縦者・・・」
「そうだな・・・お前自身から見れば、お前はそれで合っている・・・しかし、世界から、そして時代から見ればそれは間違いだ」
世界?
時代?
間違い?
「お前は・・・争いを生みかねない存在だ」
「!?」
俺が・・・争いを生む存在?
「ISの出現により、今や世界中が女尊男卑の思考になってしまい、ある意味で貴族時代の様に、能力ではなく、
女であるから偉く、男だから駄目だと言う時代となってしまった」
そうだ・・・ISの誕生によって、今はどんな優れた才能を持っても男と言うだけで認めてもらえず、
どんなに非が無くても罪に男だからと問われる時代だ。
「ISが女にしか扱えないと言う理由だけで陥った女尊男卑の時代、今や技術は向上を辿ってはいるが、
逆に人間として思考は、それでこそ貴族時代や人種差別の時代の様に衰退していると言っていい」
「それが・・・俺が争いを生むかもしれない事と如何関係が?」
「まだ気付かないか?お前はその女尊男卑を壊すかもしれないと言う事を?」
「なっ!?」
俺が・・・女尊男卑を壊す?
如何して俺が?
俺にそんな力はない・・・只ISが動かせるだけ・・・。
「お前も俺も、如何してISを動かせるかは不明だ」
「あぁ・・・如何して俺はISを動かせるんだ?」
「それが解明された時、それが女尊男卑の思考が崩れる時」
「・・・そう・・だよな、俺達がISを起動できる原因が解明できれば女尊男卑は確かに崩れる」
「だがそれを世の女達が認めるか?」
「えっ?」
「そして今世界中で最も研究されている、ISの2つの欠陥の内1つ、男にISが扱えない原因を解明するカギが俺達にある」
「俺達に?」
「あぁ・・・俺達の体を遺伝子レベルで調べ、俺達が使ったISを調べればな」
「それは・・・知ってる、それを防ぐ為に俺はIS学園に・・・」
「そう・・・お前はこの学園に居る間は、国によって守られる・・・だが、それを破ってでもお前を得ようとする者はいる」
「何だって?」
「今お前は、どんな事をしてでも、お前を得ようとする者と、女尊男卑の世界を保つ為にお前を消そうとする者、
この両方に世界規模で狙われている・・・それがお前の本当の現状だ」
俺が・・・世界規模で狙われている?
鋼牙の話を聞けば、確かにそうかもしれない・・・女尊男卑を保とうとする奴等は兎も角、確かに世界中では、
男でもISを扱える様に研究している企業のニュースをよく目にしていた。
「お前はIS学園によって守られているが、同時にお前がIS学園にいる事によって此処が狙われる原因となっている」
俺が居る所為でIS学園が狙われる?
だとしたら俺は・・・。
「お前が居る事でここに居る者全員が巻き込まれるとしたらお前は如何する?」
「・・・・・・」
「ちょっとアンタ!何て事言うのよ!!」
「そうですわ!」
「鈴・・・セシリア、鋼牙の言うとおりだ」
「「一夏(さん)!?」」
「俺・・・多分、分かっていた筈なのに気付いてない様にしていたんだ・・・あの時の様な目に合いたくなかったから、
あの恐怖を思い出したくなかったから」
第2回モンド・グロッソ・・・千冬姉の大会二連覇を賭けた決勝戦当日、俺な謎の組織に誘拐された。
詳しい目的は不明だけど、誘拐した奴等の1人がこう言った、「お前がブリュンヒルデの身内ならこうならなかったのにな」と。
俺が千冬姉の弟だから・・・俺は誘拐目的が千冬姉のモンド・グロッソ二連覇を阻止する為だと思った。
世界的に注目される者や物は、それに関わる全てが狙われる・・・この時俺はそう思い、同時に注目される事に恐怖してしまった。
最初は俺もブリュンヒルデである千冬姉の弟として注目され、ちやほやされる事を嬉しく思ってはいた。
だけどあの誘拐事件以来、注目される事に若干のトラウマを抱えてしまった事に、鋼牙の言葉を聞いて今気付かされた。
本当なら最初に有った時のセシリアに言われた様に、もう少し自覚を持ってないといけなかったんだと思うけど、
それをしなかったのは・・・自分が世界から注目され、狙われる恐怖から逃れる為に、無意識に自覚しない様にしていたんだ。
そして今も・・・初のIS男性操縦者として狙われるなら・・・俺は・・・。
「俺は本当に弱い・・・あの時の恐怖から今も逃げ続けている・・・あの時千冬姉が助けに来てくれなかったと思うと想像するだけで・・・」
「・・・一夏・・・」
「一夏さん・・・」
「俺は・・・俺は如何したら・・・」
俺は・・・此処に居るべき・・・いや、生きているべきじゃないのかもしれない・・・。
「お前は確かに弱い」
「・・・・・・」
「だが武器を持つ者の資格はある」
「えっ?」
「お前は誰かを守る為に立ち上がれる強さを持ち、そして自分の本当の弱さを認める事が出来た・・・そんなお前だからこそ、
武器を持つ者として相応しい資格はある」
「俺は・・・そんな資格は・・・」
「お前は俺の殺気に、恐怖しながらもその2人よりも先に向かって来た・・・それはお前が、自分が行かなければ遣られると無意識に出た行動だ」
確かに・・・殺さる様な感じに襲われたけど・・・でも、動かなければ自分が殺されると思い、
次に鈴とセシリアがやられると思ったら我武者羅ながらにも体が動いた。
「あの時のお前の眼から、俺は恐怖に怯えながらも誰かを守ろうとする強い意志を感じた」
「鋼牙・・・」
「そんな眼をしたお前だからこそ、誰か守る為に武器を持つ者としての資格があると俺は判断した」
「・・・こんな俺でも・・・誰かを守れるのかな?千冬姉みたいに・・・俺を助けてくれた千冬姉みたいに、
誰かを助けられるのかな?」
「それはお前自身が決めろ・・・お前が選んで歩むお前だけの定めと言う道を」
でかい・・・鋼牙が誰よりも大きく、偉大に感じる。
「そしてお前は、お前自身が原因で此処が狙われ、此処に居る者達が危険に巻き込まれるとしたら如何する?」
その言葉に、その風格に、その強さに・・・俺は・・・。
「俺は・・・強くなりたい、俺が原因で此処が狙われるなら・・・此処にいる皆が危険な目に合うなら・・・俺が守る!!」
「・・・ならば言う事は1つだけだ」
千冬姉は俺にとって誇りで、見本で、掛け替えのない家族だ。
だけど鋼牙は男として・・・俺の・・・俺の・・・。
「強くなれ」
「ああ!!」
師の様で、憧れの象徴だ。
Side・千冬
「まったく・・・あの愚弟は・・・」
「千冬さん!!そんな言いか・・た・・・千冬さん?」
まあ・・・そんな愚弟の抱えていた恐怖に気付けず、1人にしていた私は愚姉だがな。
冴島には感謝しないといけないな。
「鋼牙は・・・知っていたのかな?一夏のトラウマを」
『いや・・・多分知らないと思うぜ』
「じゃあ如何して?」
「それを曝け出させ、尚且つそれを強みに変えさせる・・・それが冴島の言葉にあった・・・それだけだ」
「・・・そうですね」
「さて・・・アリーナを使える時間も限られている、そろそろ決着をつける様にでも・・・」
ビーーーーーーッ!ビーーーーーーーッ!
だが突如として異常を知らせるアラームがアリーナ内全体に響き始めた。
「何事だ!?」
「アリーナに接近する謎の物体有り!!その数・・・2!!」
「これは・・・まさか!?」
バキイイイイイイイイインッ!!
それはアリーナのシールドバリアーを突き破り、アリーナ内に侵入して行った。
アイツは・・・一体アイツは何を考えている?
まだ確証は得てないが・・・この事態を引き起こしたかもしれない“友人”に疑念を持つのだった。
Side・鋼牙
「なら先ずは俺に剣を抜かせるか、構えさせてみろ、お前達もだ」
「当然ですわ!!」
「一夏だけじゃないのよ、守りたいって思うのは!!」
「行くぞ!!」
「来い!!」
一夏達が気持ちを切り替え、戦士としてはまだまだだがそれらしい顔付きで挑もうとした時。
バキイイイイイイイイインッ!!
ズシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
「「「「!?」」」」
突如アリーナのシールドバリアーを突き破り、何かが俺達の間に割り込む様に落ちてきた。
「何だ!?」
ギュルルルルルルルルルル・・・・・・
「!?あれは・・・」
何かの機械が起動する様な音がした後、巻き上がる粉塵の中に動く二つの影が見えた。
「「・・・・・・・・・・・・・」」
「あれは・・・まさか!?」
それは命を感じぬ人型の機械であり、以前資料で見たIS学園を襲撃した「無人IS」に似た機械人形だった。
牙狼~INFINITE SENKI~
次回予告
嘗て魔術師はその魔力を持って土かゴーレムを作り使役していた。
そして今科学と言う魔法で作られた現代のゴーレムが動きだす。
次回『機人』
鋼牙・・・こんな奴等に遅れを取るなよ。