「昨日も散々だったなあ」
あの機械暗殺者が来てから早3日目
1日目が散々だったこともあり、2日目は寺坂がガッチリとガムテープで拘束、彼女の動きを止めるも、彼女自身が殺せんせーを殺すことしか頭になく、ずっと苦情を言うのだ
拘束を解け、これでは暗殺出来ないなど、その数は豊富だったが、授業中発砲されては意味がない
彼女もクラスメートなんだし、守る必要性があるにはあるが、流石にあれはなあ
「ふう、おは……あれ?」
おかしい
ちょっと覚悟を決めて入ったのだが、ディスプレイが全体になって体積が増えてらっしゃりますが、一体なにがあったんだろうか
まさか昨日の苦情を親に言いつけてパワーアップしましたか? ガムテープで拘束しても無意味になるような改造でもしましたか?
「おはよう、織村。なああの機械まだいるのかな……体積増えてないか?」
2日前と同じ展開なきがするがまあいいだろう
言うや否や、全面ディスプレイは画像を映し出した
学校の背景の前に立つ、可愛らしい少女は、笑顔満開で
「ああ! おはようございます、皆さん!」
俺達に挨拶した
ちょっと、なにがありました固定砲台さん
君昨日まで死んだ目をしていたじゃないですか、昨日よりもはや別次元といっても過言じゃないくらい生き生きとしてますよ
カルマ並みのデススマイルどころかエンジェルスマイルをかましてきた年相応の少女は、次々と会話を進める
いやいい天気ですねえ、じゃないよ、本当にどうしたの
「親近感を出す為の全身表示液晶と、体、制服のモデリングソフト、全て自作で、60万6千円」
後ろから殺せんせーが来て説明をし始めた
つまりこのタコが改造したんですね、しかも無駄に高額払ってるよ
「豊かな表情と明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ、同じく、110万3千円」
今で合計170万9千円、高い、俺の給料約6回分だ
「先生の財布の残高、僅か5円!」
じゃあやりゃなきゃよかったのに、そう思えた瞬間だった
どうやって残り数日生活すんの殺せんせー
「庭の草木も、緑が深くなってきましたね。春も終わり、近づく夏の香りが心地よいです」
笑顔満開、指に小鳥を乗せて今までなら絶対に言わなかっただろう言葉を口にする固定砲台さん
変な方向に来てないですか君、俺君の将来が心配だよ
「たった一晩でえらくキュートになっちゃって」
鼻の下伸ばしてジロジロ見ない
「あれ一応、固定砲台だよな」
それ以外どう見える三村
「なに騙されてんだよお前ら、全部あのタコが作ったプログラムだろうが。愛想良くても機械は機械、どーせまた空気読まずに射撃すんだろ、あのポンコツ」
寺坂、正論だけどボコスカ言い過ぎじゃない? 言葉に棘を感じますよ俺
しょうがないとは思う、2日前の出来ほとが出来事だし
でもそこまで言わなくても……
「おっしゃる気持ちはわかります、寺坂さん。昨日までの私はそうでした。ポンコツ、そう言われても、返す言葉がありません」
うわあざとい、背景変えながら涙を流すあたり超あざといよこの子
「あーあ、泣かせた」
「寺坂君が二次元の女の子を泣かせちゃった」
「なんか誤解される言い方やめろ!」
挙句女子を仲間に入れて反撃してる、それが彼女の考えかはわからないけど
「素敵じゃないか、二次元。Dを一つ失うことから、女は始まる」
俺に枕を当てた時みたくメガネをくいっと上げて言わない竹林、まず何Dを一つなくすって、3Dから2Dって意味?
もしかしてオタクなの? 俺ちょっと心配だよ
「でも皆さん、ご安心を。私の事が好きになっていただけるよう、皆さんの合意を得られるまで、私単独での暗殺は控えることにしました」
おお、一歩前進だ
けどね固定砲台さん、まず私の事が好きになっていただけるよう、という事は後々するんだね? だって控えるだもんね
「そういう訳で仲良くしてあげてください」
こうして、新・自律思考固定砲台さんとの最初の学校生活がスタートした
「凄い凄い!」
「へえ、こんなのまで体の中で作れんだ」
「はい、特殊なプラスチックを体内で自在に成形出来ます。データさえあれば銃以外も可能です」
彼女は、絶賛大人気だ
体内で言われたものを成形したり、クラスの遊び相手にもなっている
あ、千葉が3局目で将棋負けた、初めて3回目のはずなんだけどな、なんて学習能力
不破さんが名前がわからないので内容だけ言えばそれを言い当てたり、なんと凄い事か
「しまった!」
その時、先生が何かに慌て始めた
固定砲台さんを見て慌てるあたり彼女に何かを感じたのだろう、自分で改造したのにな
「先生とキャラが被る」
いや全然被ってないよ、あえて被っているといえば頭がいい事ぐらいだ
んでもって渚、一ミリもはダメだ、せめて全くにしよう
「自分で改良しておいてなんですが、これでは私の人気が食われかねない! 皆さん皆さん!」
「いや食われるも何も、そもそも固定砲台さんと殺せんせーじゃ人気のジャンルが……」
いきなり手を広げみんなの目線を集めた殺せんせーは
「先生だって顔ぐらい表示できますよ!」
そう言って自分の皮膚の色を変えて人の顔を作って見せた
しかも割と下手な感じの、小学生が図工の時間に書いてそうな絵をだ
「キモイよ!」
三村の毒舌攻撃が先生にクリーンヒット!先生がダウンした!
ほらなんか言い始めたじゃないか、何処ぞのお笑い芸人の言い方そっくりだし
「あとさ、この子の呼び方決めない? 自律思考固定砲台って幾ら何でも……」
「固定砲台さん」
「自律思考が抜けただけで長いじゃない」
却下されちゃった
割としっくりこない? 固定砲台さんって
「そうねえ、何か一文字とって……」
「自……律、そうだ! じゃあ律は?」
「安直だな」
「ええ、可愛いじゃない!」
確かに女の子らしい名前だ
けどやっぱり固定砲台さんの方が……その目をやめていただきたい俺死んじゃう
「お前はそれでいい?」
おおっと、クラスのモテ男、前原が固定砲台さんにアタックだ!
「はい、嬉しいです!」
その時見た彼女の笑顔は、プログラムである事さえ忘れてしまいそうだった
「それでは皆さん、さようなら」
授業も終わり、次々と生徒たちが帰って行って、残っているのは俺だけとなった
それを気に、俺は彼女に話しかけた
「律、でいいのかな」
「はい、なんでしょう織村さん」
全く笑顔を崩さないあたり、先生のプログラムは正常に機能しているようだ
……いや、やめよう、彼女を機械扱いするのは
「俺は君とクラスメートの守護者だ。だからこれから何かあったら俺は君を守るよ」
「大丈夫です! 私はそこまでやわではありませんので!」
銃を展開し、それを証明して見せるが、それでも彼女にだって敵わない事はある
けれど、彼女がやわではないといった、ならばせめて
「君がこのクラスの生徒たちと仲良くしたいって言うなら、データを隠しといた方がいい。それじゃ、俺は帰るね。また明日」
それだけ言って、俺は帰って行った
さて、君は逆らえるか、
次の日、教室に赴けばそこには数日前と変わらない目の死んだ律がいた
「おはようございます、皆さん」
気持ちの篭ってない冷たい声は、みんなの心に何かしらを植え込んでいく
やっぱり、か
「生徒に危害を加えない契約だが、今後は改良行為を危害と見なすといってきた。君らも、彼女を縛って壊れでもしたら、賠償金を請求すると言われている」
くそ、持ち主には何も出来ないって言うのか
昨日の彼女がこんな事望んでいるとでも言いたいのか
少なくとも昨日の彼女は、クラスの人たちと仲良くなりたいと心から思っていたはずなのに、こうなったら彼女の親に直接口論して……
授業が始まった
クラス中は引き締まった空気、なんせ元の彼女に戻ったという事は、あの射撃が再び始まるという事を意味する
起動した
データを読み込んで、両サイドを展開、銃口を先生に向ける、と思ったが
ーーー教室中に、花びらが舞っていた
「花を作る約束をしていました」
そしてそこには、沢山の花を見せる機械の姿
なんだ、君はちゃんと生きていたのか
「殺せんせーは私のボディに計985点の改良を施しました。しかし、
が、と彼女は付け加える
「私は協調能力が暗殺に不可欠な要素と判断、織村さんに言われた後、メモリーの隅に関連ソフトを隠しました」
「素晴らしい! つまり、律さん貴女は」
「はい! 私の意思で、
昨日と変わらない笑顔を見せる彼女が、ディスプレイに映される
おめでとう律、親に逆らった君は立派な中学生、人間だ
「織村さん、ありがとうございます」
「何が?」
「貴方が助言してくれたおかげで、データを隠す時間が出来、こうして今の私がいます。貴方が居なければ今頃私は……」
「言っただろ?」
クラス中が、俺に変な目線を送ってくる
でもそれが嫌とは思えなくて、俺は平気で笑顔を見せて、彼女に再び、昨日と同じ事を言った
「俺は君とクラスメートの守護者だ」
それに君の意思を尊重するのは、守護者以前に、クラスメートとして当たり前だろ?