「それでは、午前の授業はこれまでです。先生ちょっと出掛けてくるので用がある人は携帯で呼んでくださいね」
それだけ言い残して何処かへ飛んで行った殺せんせー
今回は何食いに行ったんだろうな、フォーとかかな?
そんなことはともかく、今回俺は昼食を食べずに山の中に入って行く
前殺せんせーのあの現場を見つけるまで行っていた昼寝が出来、心地良さそうな場所の発見は既に終わっている
徒歩5分といったところだろうか、そこに偶然にも木の下にあるベンチを発見したのだ
素直に喜んでいいとは思うのだがそこから徒歩1分要らずであの現場なのが少し痛い、けれどこの際そのことは忘れようと思う
「よし、着いた」
シンプルな木のベンチ、二人用ということもあってそれなりに広い
ここなら転んでも何も問題ない、夏とかだと虫が来たり、蚊に刺されそうだ、俺は気にしないけど
とりあえず座ってみる
うん、普通のベンチだ、ここにあるからそれなりに放置されていることは予想できたから、座れるか少し心配だったのだが、普通に座れて少し安心する
「よし、寝転んで寝「織村君」……なんで居るの? 神崎さん」
おっかしいなあ、確か今は昼食中なはずなんだけどな
「織村君がご飯食べずに教室でるから、気になっちゃって」
「気になっちゃってって」
何をにこやかスマイルで言ってるの君は
というか横座らない、俺が寝転べない
困ったなあ、これじゃ昼寝出来ないな
「何をするの?」
なんて顔を傾げて言うものだから普通に答える
「昼寝」
「お昼寝?」
「そう。ここ山だから風も気持ちいいだろうし、ちょうどいい寝床もあるしね」
ベンチを撫でながら俺は自慢げに言う
俺が設置したわけではないけれど、俺が見つけたことに変わりは無く、見つからない限りここは俺が占領できる
俺だけの昼寝スポット、なんて言うと独占欲満々だが、事実なのはしょうがない
まあ既に一名にはばれたけれどね? 気にしない気にしない
「じゃあ私も寝ようかな、隣いい?」
「……わっつ?」
「織村君英語苦手なんだね」
そりゃもう外国には絶対生きたくない勢ですから、と言いつつも仕事で行っているのだけれど、その時は無言貫き通してるから大丈夫
仮に結婚しても新婚旅行は国内ですればいいし、万が一妻が行きたいとか言い出したら行くには行くが仕事同様に無言を貫き通してやる
よって俺に英語なんて要らない、うん、絶対要らない
……じゃなくて
「なんで一緒に寝るの? お昼食べてないんじゃ」
「今はそこまで食欲ないから」
そう言われると断りづらい、だがここで負ければ後々後悔するのは目に見えている
特に殺せんせーとカルマ、次に杉野とかその辺り
考えても見ろ、あのクラスのマドンナ、神崎さんと一緒に昼寝? そんなことしたら俺の何かが失われ兼ねない
ここはどうしても回避、最悪昼寝を中断して……
「一緒に寝よ?」
何だろう、周りは暑いはずなのに背中に寒気を感じるよ
俺知ってる、この笑顔はエンジェルスマイルじゃなくてデススマイル、つまり逆らえば俺が死ぬ
「は、はい」
俺の精神は危険と判断し、彼女に逆らう事をやめ、素直に返事をした
「そっか」
俺の隣に座る彼女はさっきの笑顔とは違う綺麗な笑顔を見せている
よかったあ、これで命の保証は確保できた
「織村君は何が好き?」
「何が好き……昼寝とか」
「なら好きな場所は?」
「景色の綺麗な場所」
「好きな料理は?」
「に、肉じゃが?」
「そっか、ならまた作ってくるね」
あれれ、睡眠するはずが質問責めにあってる、しかもなんか約束を取り付けられてる
「なんでそんな事を聞くの?」
俺たちの関係は守護者と守られる側、それとクラスメート、ただそれだけのはずだ
たった一年の関係なのに、なんて疑問が産んだ質問に対し、彼女は解を返す
「君のいろいろな事が知りたいの。君が嫌いな物、君の好きな物、それを知って行きたい」
なんだかこれじゃ辺な方に勘違いしそう
俺の事が知りたいだなんて、少し変な人だな、そう思ってしまうけれど、それとは裏腹に少し嬉しくて
「そっか」
照れ臭くて、彼女を見ずに頬を掻いている自分がいる
まるで自分じゃないみたいだ、少し浮かれてる自分が次に可笑しく見えてしまいそう
まあでも、悪くはないかな
「寝よう。時間が減っていくよ」
「そうだね」
二人してそっと目を閉じる
目を閉じれば当然のごとく視界は黒一色
何もないその世界に、少し他の色が入っていく気がする
自分達の頬を撫でる心地よい風、日光を遮ってくれている木の葉の影、そしてその他の何か
ああ、なんて気持ちいいのだろうか、こんなにいい昼寝は久しぶりかも
意識が朦朧としていく
その中に恐怖はない、安心して俺は意識を手放した
「ヌルフフフ」
夜、一人暮らしには広すぎる我が家の一角に置いてあった机の上のケータイが鳴り響く
先生かな? 近況報告とかはしてるけれど、何かあったのだろうか? 手に取り画面を見れば其処には今日一緒に昼寝をした少女の名前
ロックを解除、メールを見れば
『また一緒にお昼寝しようね』
たった一文、それだけが書かれていた
『勿論』
少しの期待を込めて、俺は返事を返した
神崎さんってこんな感じですよね?