守護者のいる暗殺教室   作:美宇宙

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風邪の時間

ある日の事

 

「暇だなあ」

 

午後3時、俺は部屋のベッドの上イヤホンをつけて曲を聴きながら暇をしていた

何故か、簡単な理由である、風邪を引いた

昨日までは普通だったんだけどな、今日起きたら頭がクラクラしたので熱を測ってみれば38.7℃、思いっきり高熱である

 

一応連絡など入れておいたが、1日休みができるってこんなに暇だったかな

もう熱は冷めてきていて、明日には登校できそうなのだが、明日までの数時間がどうにも辛く感じる

俺は仕事の都合上仕事がない限りは何時も家でダラダラしていたが特に暇と感じる事がなかった

これも学校に通い始めてからか、あの教室で暇になる事なんてほとんどないようなものだから今という時間はとても暇だ

 

「そんな織村さんの為に馳せ参じました!」

 

「……可笑しい、俺のケータイの中に律がいる気がする」

 

「はい! 皆さんとコミュニケーションをとる為にケータイに勝手にプログラムさせて貰い、こうして潜り込む事に成功したモバイル律! 織村さんの相手になりましょう!」

 

前から思ってはいたが彼女も電子ならなんでもありだな

俺のケータイは今完全に痛い少年のケータイその物だ、竹林とか嬉しそうな感じだが、彼のケータイはこんな感じなのだろうか

 

「いや相手になるって、学校は?」

 

「今日はビッチ先生の師匠様がいらっしゃいまして、いろいろありました」

 

「いや全然全くわからないんだけど……ビッチ先生の師匠? 名前は?」

 

「ロヴロという方です」

 

「ロヴロさんかあ……」

 

俺はその人を知っている

暗殺業界に置いて俺達守護者は敵みたいな物で、同様に俺達にとっても彼等ほどの敵はいない

そんな中、俺は彼の送りつけてくる殺し屋から幾度と無く守護対象を守ってきている、そのせいか俺はあの人と面識があったりする訳だ

来るなら来るで言ってくれれば少し無茶してでも言ったのになあ、挨拶がてら少し話したい事もあるし

 

「織村さんの聴いている曲は誰の曲なのですか?」

 

「これ? miraって人が歌ってる心のDaiamondoって曲」

 

俺はこれでも音楽という物が結構好きでケータイの中だけでも今ざっと500曲ぐらいは存在する

ゲームのBGMとかも好きだし、アニソンも、それ以外も、後は運命などの交響曲なども、いろいろな面で好きな曲を片っ端から入れている

ただ好きと言うだけで、この曲はどういう物か、までは知らない、音符やらなんやら聞かれても全く分からない

 

さてそんな事はともかく、その中で最近好きな歌手さんが今聴いているmiraという人だ

つい最近人気になってきている人で、初シングル発売当初からずっとCDやらいろいろ買っている、俗に言うファンという奴である

 

「なるほど、近日ライブがありますね、行かれるのですか?」

 

「行こうとは思うんだけどね、何せその日期末前の土曜日だからさ」

 

毎回毎回行こうとは思うのだが、いい具合に仕事やら何やらが重なってファンながらライブに行った事は唯の一度もない

生で聴いてみたいという気持ちは凄いあるのだが、仕事が入ったり用事があったりの場合はしょうがないのでスルーしているのだが、それが今回で5回目だ

 

「ではチケットなどは確保しなくていいのですか?」

 

「うん。俺がとって誰か一名が行けなくなるくらいならその人に行ってもらいたいしね」

 

あの人の曲はどれもこれもいい曲ばっかりだし、歌声もいいから、一人でも多くの人に聞いてもらいたい

また今度クラスメート達に教えよっかな、既に知っている人が居たら嬉しい、miraさんを話題にいい時間が過ごせそうだ

 

「さて、飲み物でも飲みに……」

 

そう言ってベッドから立ち上がろうとした時、俺のケータイにメールが届いた

律が画面の中で手紙みたいな物を両手持ちしているのが、多分それなのだろう

 

「メールを開きますか?」

 

「開いて」

 

「了解です」

 

頷いた律は手紙を開き中の紙を取った

二つ折りにされていた紙を開いて文章を読み上げていく

 

「今日お見舞いに行きます、by殺せんせー」

 

「……は?」

 

刹那、俺の家のチャイムが音を鳴らした

……嫌な予感しかしない

取り敢えず出ないのは迷惑なので早急に入り口まで移動する

深呼吸を一つ、ドアを開けば

 

「こんにちわ」

 

神崎さん含む、クラスメート達がそこに居た

 

「こんにちわ、殺せんせーは?」

 

「失礼します」

 

今入ったな、まあ国家機密だからしょうがないけど

 

「皆んなも入って、お茶とお菓子ぐらいなら出すよ」

 

扉を開けて皆んなを入れてからそっと閉じる

今回のメンバーは渚、茅野さん、杉野に神崎さん、そして殺せんせーだ

 

「わあ、広いね」

 

「一人で住むには広すぎるぐらい」

 

本当にだだっ広い我が家は、先生自らが選んだ場所だ

今回俺がこの仕事を選んだ時偉く喜んで、この近辺にある一番高いマンションの一室に住むことになったのだが、一人で住むには本当に広すぎる

せめてもう一人くらい居てくれたら、こんな風に感じずに済むにだが、生憎とそんな仲がいい人は仲間以外にはいない

仲間達も俺の仕事に関わる事は出来ないので、結局ぼっちでここに住む事になった

 

「さて、お茶と、プリンとかでもいい?」

 

「プリン!?」

 

「茅野、反応が早いよ」

 

確かに早かった、おやつはプリンでいいと

冷蔵庫から先生が送りつけてきプリン6つ出して、お茶も入れて、と

 

「手伝うよ」

 

申し出てくれたのは神崎さんだ

 

「いやいいよ、お客さんだし」

 

「織村君は患者でしょ?」

 

「そこまで重くはないけど、じゃあ頼めるかな」

 

「うん」

 

お盆を二つ用意してそれぞれにお茶とプリンを置く

お茶は俺が、プリンは彼女が持ち、皆んなが待つ机の所まで行って、皆んなの前に一つづつ置いて行く

 

「これは、安藤屋のプリンじゃないですか!」

 

「本当だ! 滅多に食べれないという幻の!」

 

そんなに凄い店なのだろうか

先生の知り合いが営む店で、良く買ってもらっていたから良くは知らないが、どうやらとても有名らしい

 

「喜んでもらえて何より、杉野、はい」

 

「ああ、ありがとう」

 

苦笑いで受け取って自分の前に置く彼は何処か悲しげだ

何かあったのだろうか、律から聞く限り今日はあの人が来た以外特に何もないはずなのだが

 

「美味い! 甘さといいこのまろやかさといい、満点です!」

 

「うっまーい!」

 

既にプリンを頬張っている2名は幸せそうな顔だ

なんと言うか、滑稽だな、全長3mあるかないか位の巨大生物と小さい女の子がプリンを一緒に食べてる姿

 

「体の調子はどう?」

 

「明日には登校できそうかな」

 

「それは良かった、教師として生徒の体調不良というのは心配でなりません」

 

プリンもお代わりを食いながら言わないでほしいな

先生に頼んで少し多めに買ってもらおっかな、それかまた今度お礼の気持ちにクラスメートに配るって手もある

 

「ロヴロさんが来たらしいですね……」

 

その日は、とても有意義だった

 

 

皆んなが帰ってまた一人になったのでご飯を食べた後安静にベットの上でまた曲を聴いている

時折律に話し相手になってもらったりして、暇になる事はなくいざ寝ようとしたらケータイが鳴った

電話? 誰からだろう、手に取り画面を見ればそこには杉野の名前があった

 

杉野? 何かあったのかな

着信ボタンを押して耳元に当てれば、ケータイから彼の声が聞こえた

 

『夜遅くにごめんな』

 

「それは大丈夫なんだけど、何かあったの?」

 

『……実は神崎さんの事で』

 

ああ、なるほど

彼は神崎さんに恋している、それはクラス中のほとんどが知っている事だ

知らないのなんて本人くらいではないだろうか、割と鈍感な彼女にそれなりにアプローチはしているがスルーされているので、それの相談だろうか

 

『織村はさ、神崎さんの事どう思ってる?』

 

「どうも何も、クラスメートで友達だけど?」

 

『……そっか』

 

声のトーンが低い、まるで何かを理由に落ち込んでいるみたいだ

 

『もし、仮にだ。好きな人が他の奴の事を好きになってたら、どうする?』

 

いきなり飛び出た質問は、俺にすればとても簡単なものだった

 

「振り向かせばいい、好きと言うだけでまだその人の全てじゃない。諦めちゃダメだ。失う前に取り戻す。取り戻してからも離しちゃならない、その手を握って、どこにも行かせないように、2度と逃がさないように」

 

これが、()()()()()俺の解答だ

恋愛系の話ではないけれど、それでも失った俺からの精一杯の返答、杉野は

 

『……そっか、そうだよな』

 

どうやら上手くいったようだ

 

「負けちゃダメだ。アプローチを止めないでアタックし続ければ、いつかきっと振り向いてくれるよ。ん? そう言えば例えの話だったっけ?」

 

例え話なのに真面目に返答しちゃった、ちょっと恥ずかしい

でもまあ、いつも通りの元気な彼に戻ってくれたことだし、良しとしよう

 

『心配かけてごめんな、おやすみ。明日会おうぜ!』

 

「また明日」

 

電話が終わる頃には、元通り元気な彼の声が、静かな部屋に響き渡った

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