あったほうがいいのなら書きますが、感想で言っていただけると有難いです
誰にだって何かが引き金に憂鬱になる事がある
例えばそれは嫌な事があったり、例えばそれは環境の変化だったり、理由は人それぞれだ
かく言う俺、織村快も今憂鬱な気分に浸かっている
何故か? このクラスに新しい
別に守る人数が一人増えようが二人増えようが問題ではない、肝心は転校してくる人間が一体どのような存在か、だ
律と同じと考えるならばまず間違いなく普通じゃない
機械以上にインパクトのある暗殺者というのはなかなかいないとは思うがそれでも警戒するに越した事はない
それでもやっぱり
「はあ」
溜息ぐらいは出る
律見たく授業中に暗殺でもされたら困ったじゃすまない
出来る限り常識を身に付けた一般人とは言わなくとも、責めて普通に会話できる仲間をどうか!
という願望を胸に、俺は席に着席する
外を見れば土砂降りの雨、なんか嫌な日だ
待て、マイナス思考は良くない、うん、全く良くない
心を入れ替えろ織村快、お前がやるべき事は新たな仲間の歓迎だ、そうだ、そうに違いない
「皆さん、おはようございます」
自分に言い聞かせている内に、我らが殺せんせーが教室に入ってくる
何時もより上機嫌そうに見える限り、新たな生徒が増える事が嬉しいのだろうか
「烏間先生から転校生の話は聞いてますね」
「あー、うん。まあぶっちゃけ殺し屋だろうね」
いいや、俺は信じません、普通の子だと信じてます
昨日のメールには確かにそれっぽい事書いてたけど俺は可能性を捨てない、絶対捨てないですよ
「律さんの時は少し甘く見て痛い目に遭いましたが、今回は油断しませんよ」
今回はどうやら少しはやる気のようだ
あのタコがダメージを負う大体の理由は余裕こいてるからだから、今回はほぼ無傷の可能性の方が高いな
「何れにせよ皆さんに
触手を合わせて嬉しそうな先生とは裏腹に、変な生徒が来ないことを願う俺に、爆弾を投下する人物が一人
「そーいや律、何か聞いてないの? 同じ転校生暗殺者として」
なるほど、ここで彼女が『普通』と言えば勝ち組、それ以外ならちょっと負け組となる訳だ
気になるところ、是非普通と言ってもらいたい
「はい、少しだけ」
少し悲しげな表情を見せる彼女に、俺は疑問を抱く
何故? 基本性能的には確実と言っていいほどに彼女に勝る人間はいない
このクラスでは有能な存在である彼女が、転校生に抱く何かは、彼女の顔を曇らせているというのだろうか、ならばそれは一体なんだ?
「最初は同時投入される予定でした。私が援護射撃、彼が肉迫攻撃、連携して追い詰める、と。ですがそれは二つの理由でキャンセルされました」
「それは?」
「ひとつは彼の調整に時間がかかったから」
調整? 人間ではないのか? 律みたいに機械?
でもそれでは肉迫攻撃という点は無理だ、いくら機械が正確とはいえ、機械の身体で殺せんせーの体に攻撃を当てる事は無理に等しい
なら、人でも機械でもない、殺せんせーのような何かという事か? でもそれはさすがにない筈だ、あんな生物がまだいるのだとすれば今頃地球は滅んでいるから
俺が思考錯誤している間も、彼女の話は続き、次の言葉でクラス全体が緊迫した
「彼より私が圧倒的に暗殺者として劣っていたから。私の性能では彼のサポートを務めるのには力不足だと」
律で力不足、この言葉がいかに意味のある言葉かはクラス全員が理解している
学習し、殺せんせーの指を飛ばした彼女が力不足、つまり彼女以上の暗殺者
ガラガラ、と音を立てクラスのドアが開かれ自然と視線を皆んなはドアの先に向ける
正体不明の同胞が、現れる瞬間を彼らは逃す事はない
ゆっくりと教室に入ってきたのは白装束の人物
……あれ、あれ身長からして大人だよね、まさかあの人がクラスメートなんて言うんじゃないだろうね
俺はある程度相手の力を見抜く力は持っていると自負していたんだけど、あの人じゃ遠く及ばない
その代わりと言ってはなんだが、なんと言うか、恨みを感じる、何かに対する憎しみや恨みが、あの人から少し出ている気がする
しかもなんか手品してるし
出した鳩を躊躇なく掴んで袖の中に隠したよ、あの鳩可哀想だ
「脅かせてすまないね、私は転校生じゃないよ。私は保護者、まあ白いし、シロとでも呼んでくれ」
大人びた声が教室に流れる
よかった、あの人が転校生とか少しいやだと反射的に思ってしまった
んでもって殺せんせー、なんで液化使ってんの、少し警戒しすぎだよ、ビビりすぎだよ
「初めましてシロさん、それで肝心の生徒は?」
「初めまして殺せんせー、ちょっと性格とかが色々特殊な子でね。私が直に紹介させておうと思いまして」
挨拶代わりの羊羹を渡しながら説明をするシロは、クラスを見渡す
途中渚辺りで一度視線を動かすのをやめた
何故に渚を?……いや違う、見てるのは茅野さんか?
なんで茅野さんを見てるんだ? まさか知り合いなのか?
「何か?」
「いや、皆いい子そうですなあ、これならあの子も馴染みやすそうだ。席はあそこでいいのですよね?」
「ええ、そうですが」
律の横の空席、其処が新しいクラスメートの席だと確認を得てから、シロは俺達の新しい仲間の名を呼んだ
「では紹介します、おーいイトナ! 入っておいで!」
クラス全員の視線が再び扉に向かう中、俺は違和感を感じた
クラスの後ろの壁から何かを感じた、これは……敵意!?
何か鞭のような物で壁を壊す気か!?
「皆んな、後ろから離れて! 早く!」
俺が言った時には既に遅く、教室の後ろの壁は見事粉砕され、白髪の少年が自分の席に着いた
確実に普通じゃない、鞭のような物で壁を一瞬であれだけ派手に壊すことは無理があるしまず
それにあの目、まるで何かに駆り立てられたかのような目は常人の目ではない
俺の願いは儚く崩れていく中、彼は呟く
この教室の壁に勝った、と
何故壁を破壊したか、この言葉で容易に想像がつく
なら彼は、力を欲している? 今の状態も力を追い求めたが故の物か?
「堀部イトナだ、名前で呼んであげて下さい。ああそれと、私も少々過保護でね、しばらくの間彼の事を見守らせていただきます」
皆んなが唖然とする中、何事もなかったかのように彼の紹介をするシロ
どうやらあの人も常人ではないようだ
律の話からするにシロが彼になんらかの調整をして、壁を壊すほどの力を得たと推測していいと思う
だからこそ平常運転で普通に話せている、此れだけであの人がどんな人かはわかる
俺、あの人の事は好きになれそうもないな
「ねえイトナ君、ちょっと気になったんだけど」
どうやらカルマが彼になにかしらの疑問を抱いたようだ
「外土砂降りの雨なのに、なんで一滴たりとも濡れてないの?」
それに対する解答はなく、カルマを少し見た後、キョロキョロと教室を見渡して、俺の元に来た
「……お前は、この教室で多分一番強い、殺せんせーの次に、だ」
それだけ言って彼は殺せんせーの方まで歩いていく
「俺が殺したいと思うのは俺より強いかもしれない奴だけ、この教室では殺せんせー、アンタとあいつだけだ」
なんか俺まで
こんな事になるんだったら知覚拒否使っておけば良かったかも知れない
「強い弱いとは喧嘩の事ですかイトナ君、力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」
羊羹を食べながらもそう告げる殺せんせーに対し
「立てるさ」
同じ羊羹を出して言い切るイトナ
そして彼は、そのたった一言でクラス全員を驚かす
「だって俺達、血を分けた兄弟なんだから」
「「「兄弟!?」」」
その後放課後に暗殺すると言って去って行ったイトナは昼休みに帰ってきて殺せんせーと殆ど同じ行動を取り、皆んなはそれで兄弟という事を少し信じ始める
時は放課後、俺の時と同じように教室中の机で作ったリングの中央に2人が立っている
上着を脱ぎ捨てたイトナは怖い目をずっと殺せんせーに向けている
「ただの暗殺は飽きたでしょ? 殺せんせー。 ここはひとつルールを決めないかい? リングの外に足が着いたらその場で死刑、どうかな?」
「いいでしょう、ただし観客に危害を与えた場合も負けですよ」
イトナは静かにコクりと頷いた
ルールは決まった、後は闘うのみだ
俺は自分の机の側にある木刀用バックからそっと木刀を引き抜く
この状況、一体なにが起きるかわからない、教室の壁を破壊した鞭のような何かも依然として出てきてはいない
仮にも危害を加える事があったとするならば、守護者として守る必要性がある
なら引き抜いておいて損はない、木刀でも戦えるものは戦える
「では合図で始めよう」
手を上げるシロは、どこか余裕そうだ
皆んなが見守っている中、暗殺が
「開始」
直後、先生の腕は切断され、ある場所の全員の目が奪われた
腕ではない、イトナの
「……そういう事かっ」
俺が鞭と思っていたのは触手だったという事か
律よりも強いというのも、調整というのも、壁を壊したのも、あのタコを殺せるといったのも、余裕そうなのも、それが触手によるものだとすれば辻褄が合う
「どこで手に入れた、その触手を!!!」
「答える義理はないね。けれどこれで理解できただろ? 君とあの子は兄弟だという事を」
たった一つ、触手というものが産んだ兄弟という存在
実在した、この世を破壊し兼ねない第二の存在、有ってはならないはずの存在が、今目の前にいる
「どうやら貴方にも色々と聞かねばならないようですね」
完全警戒態勢、このクラスではほぼ拝める事のない状態の殺せんせー
それが目の前だと言うのにまだ平然としているシロは袖の中から何かを光らせる
「聞けないよ、死ぬからね」
袖の中からなにかしらの機械で光を放った
すると殺せんせーの体が固まって、一瞬の隙が出来上がった
「この圧力光線を至近距離で照射すると君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直、隙が生まれる。全部知ってるんだよ、君の弱点はね」
一瞬の隙は、自らの死を招く
どんな戦闘であれ、これはどんな相手でも存在する弱点、つまり殺せんせーにも今それが発生している
その一瞬を、彼は逃さなかった
「死ね、兄さん」
触手が殺せんせーを襲う
連続で突き動く触手のラッシュ、それを先生の隠し技である脱皮によって回避する
「脱皮か、そういえばそんな手もあったか。でもね、それにも弱点がある事を知っているよ、私は」
イトナの上で暴れ狂っている触手は再度殺せんせーを襲った
可笑しい、あれならば軽々しく避けれるはずなのに、なんでギリギリで避けた?
「脱皮直後はエネルギーを消費している為自慢の速度も低下、触手同士での戦闘では影響は大きい、更にさっき腕を再生したね、それも結構使うんだ。今の状態ではほぼ互角。触手の扱いは精神状態に大きく左右される。今どちらが優勢か、生徒諸君も一目瞭然だろうねー」
確かに今の状態では圧倒的に殺せんせーが不利だ
あの2人の戦いに入る事はできないし、まず俺の仕事はあくまで彼らの守護、先生の守護は入ってない
だから守る必要性がない、手を出す意味もない
ーーーけれど
先ほどの光線を当てられ硬直、イトナによって足が切断された
これによって更に先生のスタミナは減り、尚危険性が増した
ーーー仕事が増えちゃったなあ
シロの両腕に機械がある事ぐらいはわかった
一つはさっきの光を照射するもの、もう一つは分からないけどまあやるなら徹底的に、かな
知覚拒否を使っての接近、そして両腕にある機械を叩き壊した
白装束の中でもわかる、自分に何が起こったかわからないような顔だ
「何が献身的な保護者のサポートですか、全く」
木刀を手の中で回転させつつ周りの状況を見ている
皆んなまでして驚いたような顔をしない、何人かは嬉しそうにしない
けれど少しは皆んなの心に答られたようだ
「どうやら貴方達には殺って欲しくないようでして、あの状態だとああは言ったものの此方にも被害が出そうなので。殺せんせー、勝てますよね?」
「はい、一見愚直な試合形式の暗殺ですが、実に周到に計算されている、一つを除いて」
「ないねえ、私の計算は多少の誤算はあっても完璧だから、殺れ、イトナ」
シロに言われ、イトナは高く飛んで、真上から触手を叩きつけた
だがそこで、計算のはずれが大きく出た
そう、あれが先生と同じ触手というのであれば、対先生物質が効くのは当たり前、それが大量にあるこの教室はイトナにとっては正しく地獄そのものだ
ルール上に外部のものを使ってはいけない、なんてルールはない、よって殺せんせーは生徒達のナイフを拝借し、自分の下にそれを置いて回避、まんまとイトナにぶつけさせたという訳だ
後は、全く同じことをである
「同じ触手なら弱点も同じですねえ、触手を失った時の動揺も。でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」
自身の抜け殻にイトナを包んで、そのまま教室の外に投げた
外を抜け殻に包まれながら何回も転ぶイトナ、この瞬間、もう勝負は決まった
「先生の抜け殻で包んだのでダメージはないと思いますが君の足はリングについてない、君の負け、ルールに照らせば死刑、もう先生をやれませんねえ」
いつも通りの余裕の顔、逆にイトナは数分前と同じ大激怒と言ったところか
俺は木刀を構える
右足を前に、イトナがいる方向に剣先を向け、顔の横に持ってきて少し引いてみせる
先生が色々言ってみたものの、予想通り、自分を制御しきれずに黒く染まった触手を振り回しながら再びクラスに入ろうとしてきた
予想通りだ
走り、机を蹴り飛ばし、イトナと一騎打ちのような状態になる
この場合どちらかが速いかで勝負が決まる
人間と触手、どちらが早いなんて言われれば触手だろう
だが、俺は速さだけには自信がある
「ーーー第一刀、信濃!」
相手の肩あたりに刀をぶつけ、難なく着地しイトナを見やる
目を白眼にして教室に床に落ちたイトナの姿が目に映った
「この技元々は相手の精神に直接攻撃して数分ほど動けなくするものなんだけどな、よほど精神状態がダメだったみたい、気絶してる」
触手を使うことによる精神の不安定が起こした気絶、信濃って以外と怖い技だったのか、使うのよそうかな
「すいませんね殺せんせー、どうもまだ登校できる状態では無かったようだ。転校初日で何ですが、しばらく休学させてもらいます」
彼を背負いながら壊された壁から出ようとするシロを殺せんせーは呼び止めた
「待ちなさい! 担任としてその生徒を放って置くわけにはいきません、
「嫌だね、帰るよ。力ずくで止めてみるかい?」
挑発するように言ってきたシロの思惑通り、殺せんせーの触手は動き、彼の服に触れた
だが、触手は握る寸前に溶けた
あれも対先生物質か、殺せんせーはあの人に手を出せないという事か
「心配せずとも、またすぐに復学させるよ、3月まで時間がない。責任を持って私が、家庭教師を務めた上で、ね」
なにが家庭教師だ、調整するだけだろ、じゃなくて
俺はシロの前に立ちはだかる
彼もこのクラスの生徒、ならば俺には彼を守る意味がある
触手なんてものの調整、絶対に苦痛だ、それがわかっていて持って行かせるわけにはいかない
「彼を下ろしてください」
「無理だね、それに」
俺の横を通っていく間際、シロは俺の耳元で呟く
「私が調整しなければ、この子は死ぬ」
「!?」
振り向けば、彼らの姿は遠い場所に映っていて
俺は、ただそれを見送る事しかできなかった
問題
快の技「信濃」これの元ネタはなんでしょう
ヒント この技は第3刀まで存在します