これからも随時更新していきますので、よろしくお願いします
突然だが、このクラスには問題児がいる
ある意味じゃカルマ以上の問題児が、だ
「おい皆んな来てくれ! プールが大変な事に!」
プールと言うのは殺せんせーが最近作ってくれたE組専用のプールの事だ
それが大変って、何かあったのだろうか?
取り敢えず皆んなでプールに行ってみれば酷い有様だった
そこに置かれていたものが壊されて、ゴミまで捨てられていてとても泳げるようなものではない
そんな中、ニヤついている人間が三人ほどいる
「んだよ渚、まさか俺たちが犯人だと疑ってんのかよ? くだらねえ」
寺坂竜馬
ここに来てから数日の観察の中、このクラスの中で一番浮いていた存在
よくいるガキ大将的ポジションのこの歳にしては体格がいい彼だが、暗殺に真面目に加わろうとしていない
訓練も適当、授業もそれなりにサボっていて、挙句このザマ
更に最近だとこのクラスに居づらいのか、毎日イライラしている
「全くです、犯人探しなんてくだらないからやらなくていいです」
いつの間にかいた巨大ダコが、一瞬にしてプールを元の姿に戻した
元に戻ったプールを見て安心したクラスメート達は教室に戻っていき、俺もそれについていく
寺坂から感じるものは、どこか絶望しているようだった
「まじかよ殺せんせー!」
「この前君が見ていた雑誌の奴です、ちょうどプールの廃材があったんで作ってみました」
「すげえ! まるで本物じゃねえか!」
殺せんせーがまたがるバイクはどこか高級感あふれるものだ
吉田は大のバイク好きらしい、前殺せんせーとバイクの会話で盛り上がって以降、時々また話しているそうで
「何してんだよ吉田」
またも、彼は不機嫌そうに吉田の名前を呼ぶ
「い、いやあ、この前こいつとバイクの話で盛り上がっちまって」
「ヌルフフフ先生は大人な上に漢の中の漢、この手の趣味も一通り齧ってます」
さっきまでのあれはどこに行ったのだろうか、普通にクラスの皆んな、そして殺せんせーと馴染んでいる吉田
それを見てイラついた寺坂は、殺せんせーが作ったバイクを容赦無く壊した
「なんてことすんだよ寺坂!」
「謝ってやんなよ! 大人な上に漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるよ!?」
殺せんせーが泣いているのを皆んなでカバーする
だがそれは逆効果で、彼の何かをつけてしまったようだ
机の中からスプレーのようなものを出し
「駆除してやるよ」
木刀を取り出して走り出す
勢いよく叩きつけられかけているスプレーを上に弾くが見事失敗
木刀で叩きつけられた箇所から謎の煙が放射された
「寺坂君!! ヤンチャするにも限度ってものが……」
「さわんじゃねえよモンスター」
自分の肩に置かれた触手を払う彼
「気持ち悪いんだよ、テメーも、モンスターに操られて仲良しこよししている
「君はなんでそんなにイラついているの?」
遂に口に出してしまった
彼がイラついている理由、大体検討はついている
彼自体が、居場所をなくしている
原因は恐らく殺せんせー、あの人が来てからクラスの環境が変化して、彼が居づらくなって、何時しか居場所がなくなっていた
「なんだ織村、喧嘩売ってんのか? 上等……」
刹那、彼の首筋に木刀の刃が当てがわれていた
「別に喧嘩したいのなら受けて立つけれど、その前に君の裏の事を教えて」
予想ではあるけれど、彼の裏には何か他のものがある
何か深い闇、それに操られているようでならない
「けっ、くだらねえ!」
首筋に当てがわれた木刀を払いのけて、彼は退出した
「なあカルマ」
「何? 織村君」
「聞きたいことがあるんだけど」
「どうぞ」
「なんで俺は君と一緒に学校をサボってるの」
そしてもう授業は終わりを告げている、完全にサボってしまった
今日教室に着いたらいきなり服を引っ張られて、何時の間にか彼のおさぼりスポットに連れられていて、二人延々と寝たり喋ったりを繰り返していた
今更ながらこれがさぼりと言うことを思い出したので彼に聞いたのだが
「別にいいじゃん、織村君成績いいから一回ぐらいサボっても問題ないよ」
「今日英語あったと思うんだけど、俺の苦手教科そのものなんだけど」
まあ英語いらない勢なんだけどね? 俺
「織村君さ、消えれるじゃん」
「消えれるって、ああ」
知覚拒否の事かと理解し、早速使ってみる
驚いた表情を見せるカルマ、なんか何時もやられっぱなしだから少し嬉しいかも
知覚拒否を解除、彼の前にまた姿を現わすと彼は俺の肩を掴んだ
「それのやり方教えてよ」
はあっはっは、カルマが使うと絶対嫌な事しかしないだろうからやめておこうと思う
ほら、これ目立った行動取らない限り絶対って言っていいほどばれないからさ、悪戯されそうで怖いもん
まあこの技習得するのに死にかける訓練一年くらいいるんだけどね、ちなみに俺は7ヶ月
「嫌です」
「勿体ぶらずにさあ、教えてよ」
「嫌で……」
いい切ろうとした瞬間、プールの方向から爆撃音が聞こえた
しかもそれなりに強力な物だ、そんな物がなんでプールなんかに……
「カルマ!」
「行こう」
木刀が二本入ったバックだけを担いで走り出した
カルマのスピードに合わせると時間が勿体無いので、自分の最速で、出来る限り早く
一体何が、爆撃が起こった理由はなんだ? 爆撃を行った人間の心理はなんだ? 一体何が理由でこんな事をしたんだ!?
「くそっ!」
そろそろプールだ、さらに速度を上げて、木々を抜ければ
空になったプールと水着姿数名の姿、唖然としている寺坂の姿があった
「一体何が」
まさかさっきの爆撃音はプールを堰き止めていた堰を爆撃した音だったのか?
クラス全員が入ったプールだとすれば間違いなく皆んな流されている、あの先は確か険しい岩場の筈だ、無事で済む筈がない
「寺坂! 君は一体何をした!?」
彼の首元を掴んで叫んだ
右手に握っているピストルのような何かは多分銃器じゃない、何かの信号機……まさか
「プールが、消えてる」
カルマがようやく到着すると同時に唖然としている
何人かは既に上げられている、きっと殺せんせーが救出したのだろう
あれ、肝心の殺せんせーはどこだ? 普通なら全員救出した後寺坂を説教している筈で……待てよ
仮に昨日のスプレーも、今の爆撃も、彼が誰かに操られてやったという事ならば、俺が感じた裏の何かが、すべての糸を引いているとするならば
これは、殺せんせーを狙う誰かの仕業かっ!!
「カルマ、彼を頼む!」
バックから木刀を二本引き抜き、躊躇なく崖を飛んだ
案の定、下には最近弱点として発覚した水を吸収してふやけている殺せんせーと、触手を振り回すイトナ、そしてシロの姿がある
「殺せんせー!!!」
殺せんせーの前に着地し、木刀を構える
全てを操っていたのはシロ、だとするならばこれは全て殺せんせーを殺す為の作戦だったという事
だが、このタコを殺す為にクラス全員を巻き込むなんて、それを見過ごすなんて守護者としてなんて失態だ
「援護します!」
「ダメです織村君! 彼の触手は前とは力もスピードも上がっています! とても人間で受け止められるような物ではありません!」
「それでも、守護者としてまだ安全圏にいない人を見捨てるわけにはいきません!」
何人か、触手の範囲内にいる人間がいる
特に原さんがとても危険だ、今にも折れそうな木にぶら下がっている彼女が、いつ落ちるかわからない
俺じゃ助ける事は無理だ、なら殺せんせーに頼るしかない
けれどそれを見計らって攻撃してくるに違いない、ならその攻撃を俺が引き受けるまで
「来い、イトナ!」
触手の数は三本、俺の木刀の数は二本、受け止めれる数は二本、行けそうなら三本目も受け止める
出来るなら3本目も受け止めたい、そうする事で殺せんせーは原さんを救出できる
「殺れ、イトナ」
イトナと俺、そして殺せんせーの戦闘が始まった
勢いよく叩きつけようと上から来る触手の側面を叩いて弾き、また再び来る触手の側面を叩いた
どんな物にも勢いがない面が存在する
それは正面に力がある為に側面に全く力が入っていなく、そこを叩けば容易に弾く事が可能なのだ
当然触手にもそれは存在し、俺はうまくをそこを叩く事によって防御しているのだ
「刀があればいけるのに!!!」
「刀!? そんな危険なものを持っているんですか!? 先生が没収します!」
「今そういう事いう場面じゃないでしょ!? それにあれに触れたら先生でもどうなるかわかりませんよ!」
ああもうこのままじゃ埒があかない!
「殺せんせー、触手三本俺が引く受けます! その内に原さんを!」
「生徒を危険な目に会わせるわけにはいきません!」
「それならなおさらでしょ!? 早く安全圏に!」
少しよそ見した内に、上から風を切る音が聞こえた
やばい、とっさの反応で木刀を頭上で交差させれば、見事三本の触手が二本の間に直撃した
「おっも!?」
重すぎて跪く俺に容赦なく第二撃を加える為触手一本を戻し、俺の腹めがけ振った
「くっ!」
木刀を離すと同時にバックステップして回避した
木刀という支えを無くした触手は勢い余って俺の腹を狙った触手と直撃したが、大したダメージにはなってない
「くそっ」
刀がない事が惜しい、あれさえあれば多分触手も切断でき、もっと確実に守れたはずなのに
「シロ、イトナ!」
寺坂が、彼らの前に立っていた
なんで
「寺坂! 危ない!」
「そうですよ寺坂君!」
「うるさいふくれタコと病み上がり! 黙ってろ!」
「病み上がり!?」
言葉の使い道間違えてるんじゃないの!?
「こいイトナ!」
自分のシャツを盾に、イトナの前に出る
一体何をするつもりだ? こんな無謀な事に意味なんて……まさか
俺はすぐにカルマを見た、うん、親指立ててる
「黙らせろイトナ」
一瞬だった
見事寺坂の腹に直撃し、彼が気絶しかけるが、持ちこたえる
対するイトナは、くしゃみをし始めた
昨日のスプレー、あれがどういう成分だったかは知らないが殺せんせー、強いては触手には害があるものなのだろう、それを直で受けたシャツを盾に使った結果、彼にも変化が起き始めた
攻撃が止んだのを見逃すはずがない殺せんせーは、原さんを救出する
そして弱点が一緒という事は水が効くのも同じということだ
崖の上にいたクラスメートが、思いっきりダイブした
飛び散る水飛沫が、イトナの触手に当たって、どんどんふやけていく
「まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
今で最早ハンデは両者にない、前とほとんど同じ状況だ
ならこの次も同じ状況になる可能性がある、殺せんせーが勝つという未来、それが確率的に高くなった
「……ここはひこう、帰るよイトナ」
だがイトナはまだやる気のようで
しかも殺気を俺に向けている、俺とやりたいという事だろうか
木刀を一つ拾って構え、刃に手を添える
「イトナ!!」
戻らないイトナに怒鳴るシロ
「そろそろちゃんとクラスに来ませんか」
さっきまで戦っていたのが嘘のように勧誘している殺せんせー
真逆だなこの二人、生徒の事を考える殺せんせーと、自分の事しか考えないシロ
やっぱり俺はあの人が嫌いだ
殺せんせーの勧誘を断るかのようにシロの元に帰っていったイトナを見送った後、体は全く疲れていないのに全身の力が抜けていく感じがした
木刀を杖代わりにするも、俺の意識は朦朧としていて
とうとう前が真っ暗になって、俺は意識を手放した
『ねえ快、貴方は死ぬ事が怖い?』
『どうだろ、わからないかな』
『そう。私は怖くないわ、だって死は人間が逆らえない物の一つだから。全ての命に終わりがあるのに、怯える意味はないわ。だから私はこう思うの』
『?』
『失うとわかっているから、其処までの一秒一瞬を美しく愛おしく思って生きていくの。そうすれば、死ぬときに悔いはないでしょ?』
『そういう物?』
『そういう物よ』
「はっ!」
意識が覚醒した途端、上半身を勢いよく起こし、周りを見渡す
ここは、保健室か?
「おやおや、起きましたか」
俺の横たわっていたベッドの横にある椅子に居座る巨体、殺せんせーが触手を合わせている
そうか、俺はあれから気を失っていたのか
「もう遅いでの私が君の家まで送りましょう」
「ありがとうございます」
「はい、これからは無茶はしないでくださいね」
別に無茶をしたわけじゃないんだけどな
多分、
彼女の夢を見たという事は、俺があれを必要になる日が近づいてきている為、それを予告する為の物だ
「バックなどはここにありますので、帰りましょう」
「はい」
今宵の月は、とても美しく、けれど儚く輝いた