ふと、俺は目が覚めた。
暗い部屋に差し掛かる綺麗な月光から察するに今は夜中ということでいいのだろうか。時計を見れば1時と表示されている。
よく見れば日にちも変わっている、一日丸ごと寝てしまったのか、情けないな。
「よっと」
ベッドのから立ち上がって、財布と刀を持って俺はゆっくりと歩き始めた。勿論神在月には知覚拒絶使用済。
部屋を出て廊下を静かに、物音を立てないように歩く、もうみんな寝てるだろうし。
購買はまだやってて、店員さんに秘密にしといてくださいね? と言いつつみたらし団子を二つほどとジュースと紙コップを買って、今度は浜辺に向かって歩く。
かく言う浜辺はとても幻想的に眼に映る。
月夜の海というのは飽きやしないな、とても綺麗だから。
月光は海を綺麗に照らし、海は鏡のように月を映し出す。
二つの月は自らを主張するかのようにずっと輝いている。うん、絶好の月見日和だ。
海水に当たるか当たらないかぐらいのところで腰を下ろして、準備をする。
と言っても買ったみたらし団子を買ったときに貰った袋の上に置いて、ジュースと紙コップをその横に置いただけなのだが。
紙コップにジュースを注ぎ込み、口に少し含んだ。
1日ぶりの飲み物、少しだけでも俺の喉は潤って、続いて団子を一つ、喉が乾いたところでジュースを又一口飲んで、次は月を見上げる。
季節的にはまだ早いけれど、早めの月見も悪くはないと思える。
けれど1人っていうのがなあ、何時もならみんなとやるから少し寂しいかも。
「どうしよっか」
どうせこのまま三時くらいまでここにいそうだし、部屋から何か持ってこようかな。
でも先生にばれたら一巻の終わりだし、特に殺せんせー辺りにはバレること間違いなしだ。
今からでも遅くないし、知覚拒否掛けて一人で月見したほうがよさそうかも。
「何しているの? 織村君」
「おはよう、でいいのかな? 神崎さん。今は月見している所」
ほらばれた、遅かったか。まあ別にいいのだけれど。
「神崎さんも一緒にしない? 一人だと月見も寂しいから」
「いいの?」
「勿論」
俺の横をとんとんと叩くと彼女はそこに座った。
みたらし団子を彼女と俺の間に置いて、コップにジュースを注いで彼女に手渡した。
それを両手で受け取って、彼女もまた少し口に含んだ。
それからというもの、二人の間に会話なんて無かった。
ただ月を見て、団子を食べて、ジュースを飲んでをただ繰り返していた。
「……なんで、あんな危ない事をしたの?」
「危ない事って?」
「織村君の家族が言ってたらしいの、『勝つために自分から突っ込んできた』って」
郁也の奴、いらないこと言いやがって。
けれど少し感謝もしないとならないな、俺がここに残れているのも郁也のお陰だろうし。
「正直に言うと、怖かったんだ。君が死ぬかも知れない事実が」
「私が?」
「そう、神崎有希子という存在が目の前で死ぬかもしれないと。だからこそ焦って、でも勝つために、刀を握っていた。勝つために手段を選ばずに、この身を投げ出した」
それが君を、みんなを救い出す最良の手だと信じていているからこそ、そうだと思い込めたからこその芸当。
例え、彼女らに盛られていたウィルスが死に至らぬもので俺の行動が無意味であったとしても、あの場にいた全員が死なぬ道を進むために。
例え、自らを犠牲に、自らが死んでもみんなが生きる道を作るのが俺たちであると、そう思えるだけでも。
ーーーとても、幸福なのだから。
「ねえ、神崎さん?」
「何?」
「今宵の月は」
とても綺麗だね。
刀が刀身を少し露わにする。
刹那、一瞬の極光と共に、月は姿を変えた。
欠けた月は満ち、その身を丸くし、その輝きを一層増して。
満月は姿を現した。
「俺はあの行為を無駄だったなんて思っていない、俺の在り方その物を否定したくない。自己犠牲をしてでも、君達を救う意味はある。いや、意味しかないんだ。だからこれからも俺は刀を振るう。君のために、みんなの為に、己自身のために」
たった一つの答えを、守る為に。
君という、護りたい人がいる限り。
君という支えがいる限り。
誰にも負けはしない、と。
「ねえ、
「なに?
二人とも、初めて苗字ではなく、名前で相手の名を呼ぶ。
心が幸福で満ちていく、暖かな温もりがそっと包んでくれる。
とても、幸せだ。
「私、死んでもいいよ」
「ふふふ、だめだよ。ここで死んじゃ」
この幸福を守れるのであれば、どんな事だってしてやろう。
どんな困難にだって立ち向かおう、どんな強敵であろうと刀を向けよう、どんな悲劇であろうと目を離さないでおこう、どんな結末であろうと受け止めてやろう。
その先に、彼女の輝かしい未来があると信じて。
と言うことで無自覚告白ターイム
いやあ無事一歩進展、この先もどうか見守ってくださいな