正直言うと少し行き詰まったといいますかなんといいますか
まあそろそろ夏休み編ですし、頑張っていきたいところです
この話の快は13歳、守護者として既に3年働いている時の話です
お散歩しましょ、またあの場所に
「お元気ですか?」
俺は電話越しに向こう側の人に話しかけた。
相手は約一週間前に守護した年老いたお婆さん、確か昔は有名人だったか。
『ええ、とても元気よ。最近は調子が良くってね、お散歩もしているの』
「散歩ですか、いいですね。最近は天気もいいから楽しいでしょう」
『ええ、とても楽しいわ……』
言葉とは裏腹に、少し悲しげな声をしているあの人。
何故だろうか、俺にはわからない。
「どうかしましたか?」
だからこれしか聞けなかった。
相手の気持ちを知ることなんて、相手自身から聞くことしかできない。
俺が予測してもそれはあくまで予測であって、正解には程遠い。
相手の心情は、その相手自身しかわからないのだから。
『いえ、何もないの。次のお仕事も頑張ってね』
「はい、ありがとうございました」
電話が切れた後、俺はケータイを放り出して、そのまま眠りについた。
次の日、俺は先生の前に座っていた。
その先生は分厚い紙の束をペラペラとめくっている最中だ。
俺は毎回の様に先生に仕事を選んで貰って、その仕事に赴いている。
特に行きたいと思うものがないといつもこう、というか自分で行きたいと思った仕事なんて一度もない。
「これとかは?」
そう言われて差し出された紙を俺は受け取って目を通し
内容は普通の守護、期間は1日間
だが、宛先と守護対象について何も書かれていない
「別にいいんですけど、何でこれ何ですか?」
俺たち守護者への依頼書類は基本全て記入しないといけない。
連絡先は勿論、守護対象や依頼主の名前など、その他諸々を記入しないと、俺たちはそれを受ける可能性が極端に低いからだ。
何故俺たちがそれを受けないかというと、結局は汚れ仕事である守護者であるからだ。
汚れ仕事となると勿論恨まれる様な事も少なからずしているわけで、恨みを解消するために罠として依頼する人達もいるからだ。
よって身元不明となると俺たちにとってはそれを受け辛い依頼となり、受けることが極端に少なくなる訳だが。
「きっと、いいものが見れる筈だ」
翌日、俺はたった1日の依頼に出発していた。
何時もなら『秘密』の手段でそこに赴くのだが、今回は少し近めの場所に彼方から来てくれているそうで合流次第、俺はその人の守護を始める訳だ。
「着いた……あれ?」
集合場所、だだっ広い野原にきてみれば、そこにあったのは綺麗な青で塗装された外車だった。
車のことなんてよく知らないがとても高そうな車が、この場所にポツンと存在している。
あれが迎え、と考えていいのだろうか。でも人が乗っている気配はない。
取り敢えず近づいてみるとやはり人は中にいなかった。
運転手さんは何処かに行ってしまったのだろうか、少し待ってればくるかな? 取り敢えず待っておこうと座れる場所を探そうとしたら、車の運転席の扉が、開いた。
……え
「乗れってこと?」
直感的にそう感じてしまい、つい口に出てしまった問いに答える様に車にエンジンが掛かった。
この車、少し不気味だなあ。
まあ取り敢えず乗ろうということで車に勝手に乗り込んだ。
中は特別変わった様子はなく、普通の内装だ。
車に入ったし、座ろうと思いついた俺は運転席とはいえ後で説明すればいいだろうと座った。
その瞬間、車のドアは閉まり、車は音を上げた。
いろんなところが動き、クラシック音楽が車内を満たす。
そして、満を持して車は動き出した。
「へ? えええええええええええ!?」
車が動き始めて早2時間、この車は只々山道を進む。
この車に乗っていて分かったことは、
車は勝手に動いているので、中をゴソゴソと探していると、紙があった。
内容はただ一つ、『守って、目的地に着くまで』と。
「目的地ってどこ?」
尋ねれば、カーナビが、ある場所を示した。
ここは、どこだろうか? 海の前にある丘か?
「なんで守れって?」
車を狙う様な人間がいるのか? 車程度なら量産されている筈だ。
それはこの車も例外ではない筈なのに、何故狙う必要性があるんだ?
まさか世界に一つだけ、なんて事も無いだろうし……ん?
なんかサイドミラーに車が見えたんだけど、こんな山奥に? なんで?
窓開けてますけど、誰か顔出しましたけど、銃構えてるんですけど!? トリガー引いて銃弾放ち始めたんですけど!?
「くそっ!」
ええっと、ハンドルを握るのか!? それともブレーキ!? 一体何をすれば!?
いやいやいや、俺は守護者だろ!? ならすることはただ一つだ!
「行くぞ」
刀を握ってドアを開き、車の上に立った。
柄を握り、刀を抜き出せば、綺麗な紅い刀身が姿を現した。
距離を考えてもすぐ埋めれる、肝心は中にいる人の数。
前の方に二人いて、後ろには予測二人、十分いける。
「人を斬らないで」
一足、そして飛躍する。
眼前にすぐ飛び込んできた車を真っ二つに切断した。
綺麗に切断された車は別れ、どんどんと逸れていく。
ふう、これで追っ手は倒したな、さて、車は今何処に……って真後ろ!?
「早く行って!」
車に乗り込むと、車は全速力で走り出した。
「なるほどね」
この車は、勝手に動く存在、珍しい存在。
捕まえて売る、又はすでに買い手がいて、売るために捕獲する段階、この何方かだ。
俺的には後者、だと思う。まだ子供だからそういうのは分からない。
けれどこれでこの車を守る意味が出来た。
「絶対守るから」
そこからは、特に追っ手が来るというわけでも無く、車との旅の時を過ごした。
時々コンビニに寄って、ごはんを車の中で食べて、綺麗な自然の中を、ただ走るこの車からその自然を見て、時折独り言みたいにくるまに問いかける、ただそれだけだ。
「君の乗り主は、どんな人だった?」
答えは帰ってこないけれど、その代わりに曲が変わった。
賑やかな曲だ、聞いてるこっちまではしゃぎたくなる様な、そんな曲。
「そっか」
この曲だけで、乗り主がどれほど賑やかだったか想像が付く。
全く、疲れたもんだ。そんな乗り主が乗ってるからこんな存在になったのだろうか。
本当、苦労するもんだ。
「そろそろかな」
外は既に夕陽が昇り、外は茜色に染まっていた。
予定ではそろそろだとカーナビには映っている、どんな場所か少し楽しみになって来たかも。
こんなジャジャ馬が自らの意思で行きたい場所なんて、一体どんな場所なんだろうって気持ちがある。
「さあ、行こう」
俺の声に続いて車は更にスピードを上げていく。
さあ、ラストスパートだーーー
「おお、綺麗だ」
目的地は、壮大な海と茜色の空がすごく綺麗な花が咲き誇る丘上だった。
なるほど、ジャジャ馬な車も、その乗り主も、この光景に見惚れて騒ぐことも忘れる訳だ。
車を降りると、車はゆっくりと動くことをやめた。
「おめでとう、ありがとう」
感で分かってはいたのだ、この車はもう止まると。
だから最後に、乗り主とともに見た風景を見て、その中で朽ちたいと願ったのでは無いだろうかと、俺はそう感じた。
「ねえ、貴方達はまだ彼の事を狙うの?」
もう一つ気づいていた事、途中からかなり遠くからの敵意。
それが俺への敵意であり、人間の欲望まみれの敵意であるという事も。
丘を占領するぐらいの大人数、一人じゃ潰せないと思えるほどの人数が俺に銃を向ける。
だから俺は、刀を抜き取った。
茜色に照らされた深紅の刀を構えて、俺は右足を一歩後ろに下げた。
放たれた銃弾を、俺は全てを斬り落とした。
「この車には、傷一つ付けさせやしない」
俺は守護者、どんなものであろうと守り抜く存在。
どれだけ異質であろうが、どれだけ愚かなものであろうが、どれだけ哀れなものであろうが守りぬく存在。
それが、
「行こう、
君の持ち主に誓ったんだ、必ず守るって。
だから、俺と共に、彼を守るためその力を振るってくれ。
「第三刀ーーー」
自分自身に知覚拒否を使い、地を蹴った。
深紅の刀が、茜色に照らされてより綺麗に、より残酷にその色を煌めかせ。
「大和!!!」
相手全員を、薙ぎ倒した
「あ、おかえりかー君」
「ただいま」
帰った時には既に次の日、家に入ればいつも通りの声が返ってきて、俺もいつも通りの答えを返す。
「どうだった? いいもの見れた?」
「うん、とても良いものを見れた。あと経験も出来た」
「どんな感じだったの?」
「それは秘密」
「ええ、なんでよ〜」って彼女の声が背中越しに聞こえてくるけれど、俺はそれを無視して部屋に入って電話をかける。
数秒後繋がった先の人に、俺は声を掛けるのだ。
「昨日、散歩したんです」
『まあ、どのような場所を?』
「はい、綺麗な山道を、ジャジャ馬車と一緒に」
あの後、車の座席の奥に隠れた写真を一枚発見した。
そこに写っていたのは、何処か見覚えのある女の人が、あの絶景を背景にして車と共に写っている姿だった。
「ねえ織村、あんたの仕事の話してよ」
唐突にクラスメートが言い出した。
仕事って言ってもなあ、なんか面白そうな話なんて……あ。
「いいよ」
ジャジャ馬車と旅した話を、君達に