無限の空を翔ける者と、夜闇を渡る魔法使い 作:Xi_GR648
今まで読み専でしたが、作成してみたIS二次小説をHDDで眠らせておくのも勿体無いと思い、冒頭部分を試験的に投稿しました。
なお、作品の公開・投稿自体が今回初めてとなります。
誤変換や脱字、改善を要する点がありましたらお手柔らかにお願いします。
※2016/1/15改訂
季節は12月初旬、関東近郊であれば本格的な冬の寒さが始まる頃。
この時期に生まれた者の中には、少しだけ損な者がいる。12月生まれ故に誕生日プレゼントがクリスマスプレゼントと一緒くたにされ、12月以外に生まれた者よりもプレゼントを貰える機会が少なくされた者の事だ。
もっとも、プレゼントを受け取る側である子供達はそんな些細な事まで頭を回さない。なぜなら貰えるプレゼントの事で頭が一杯だからだ。
ここ、日本の某S県の都市部から離れた郊外に住む少年もまた、7歳の誕生日祝いのことで頭がいっぱいだった。目の前にある誕生日ケーキとラッピングがされている箱に目を奪われている。
両親と祖父母がそれぞれ優しさをこめた口調で「誕生日おめでとう」と言い、少年がケーキの上の蝋燭の灯を吹き消した直後に、玄関のベルが鳴った。母親が確認に出ると宅配便の時間指定配送だという。宅配便の差出人欄には確かに祖父の名があった。本人曰く、孫へのサプライズとしてプレゼントを準備したのだという。
喜んだ少年はその中身が何かについて全く疑わなかった。ただ純粋に、自分が皆から祝福された存在であることを信じて疑わず、プレゼントの箱を開けた。家族全員が揃った居間の真ん中で。
その瞬間、閃光と轟音そして爆風が、幸せだった一家全員を吹き飛ばした。
「……次のニュースです。昨日の午後8時頃某S県S市でガス爆発を伴う火災が発生し、住宅一棟が全焼、一家5人が死亡する事故が発生しました」
女性アナウンサーが淡々とした口調で記事を読み上げる。
「事故があったのは市内**町に住む更識ケンジさん宅です。警察と消防の調べによりますと、更識さん宅の1階の台所付近でガス漏れが発生し何らかの原因でガスに引火した結果、事故が発生したのではないか、とのことです」
男性アナウンサーが引き続き淡々とした口調で記事を読む。
「焼け跡からは更識ケンジさんと妻のメグミさん、同居している長男夫婦のユウヤさんとユイさんと思われる遺体が発見されました。また、孫の恵治くんの行方がわからなくなっており、警察と消防では引き続き捜索を続けるとともに、爆発の原因を詳しく調べていくとのことです」
そう男性アナウンサーが締めくくった後、女性アナウンサーが再び記事を読み上げる。
「次は特集です。白騎士事件から早5年が経過、インフィニット・ストラトスと呼ばれる女性にしか扱えないパワードスーツの登場で、世界はどのように変化していったのかを追っていきます」
……世の中はいつだってこんなはずじゃなかった事ばかりだ、とは誰の台詞だったか。
事の始まりは、擦りきれてぼんやりとしか思い出せないほど昔の記憶。
どこかの世界の神様っぽいナニカがその力を悪用して当時アラフォーで独身だった俺を殺し、魂に祝福と呪いをかけた上でとある世界に転生させた事だ。舞台となる世界は平行世界の地球であり、俺の記憶が正しければ「魔砲少女リリカルなのは」という名前のアニメの舞台と同じ世界線で、強制的に与えられた特典は「規格外なほど膨大な魔力」「魔力の精密なコントロール技術」「【王の財宝】と呼ばれる宝具(中身入り)」で、呪いの方は「主要な人物の前では(所謂二次創作における)踏み台らしい行動を(内心に関わらず)必ず取る」というものだった。
理由もわからず転生させられたその世界で、俺は主人公の恋人役である少年の引き立て役兼踏み台という役割を演じさせられた。そこに俺の意思は存在せず、身体が勝手にそう動くようにされてしまったお陰で主人公周辺の邪魔となりヘイトを稼いでいた。正直な話、心が荒んだ。
ただ、荒んでいたとはいえ流石に人として何が間違っているのかなどの判断を違えることはなく、また主人公およぼその周辺さえ絡まなければ己の本来持っている内心に沿って至って真っ当な行動をする事ができたので、主人公達が総合管理局とかいうその世界の治安維持組織に加入して任務に勤しむようになり接点が減って以降は、割と精神的には安定していた……と思う。
しかしながらこの呪いは中々強固だったようで、自分の「主人公達とは関わりたくない」という意思など関係ないかのように俺も管理局に入隊する羽目になり……最終的には任務で敵対組織の拠点に襲撃をかけた際、相手の砲撃魔法を真正面から喰らって爆裂四散という何とも形容し難い結末で成人前にその短い人生を終えた。死の間際に「貴様はもう用済みだ」という声が聞こえたのはきっと気のせいではないだろう。
そして、これが事の始まりだったのは間違いない。それからはずっと、平行世界を含む幾つもの世界へ転生を繰り返していたのだ。無論、前世の記憶はある程度は保持したままだ。
ある時は平行世界の地球にある、災厄と歓喜の都で日本刀を振るう特殊警察の職員としてある事件を追っている最中に殉職した。まさか事件を追っている途中で生ける伝説と言われているような殺し屋達と相対するハメになるとは思わなかった。
ある時は特殊なウイルスに感染した結果、人外の能力に覚醒した者だけで構成される組織のエージェントとして、敵対組織と暗闘を繰り広げていた。最終的に能力の使いすぎで理性を失いかつての仲間の手で粛清されてしまった。
ある時は剣と魔法のファンタジー世界で冒険者として前衛で刀を振るっていたが、浮遊都市にあるダンジョン探索中に明らかに勝てない格上と遭遇し、交渉して撤退しようと皆に意見したのにバトルジャンキーな仲間が無謀にも挑んだ結果、巻き添えで他の仲間もろとも纏めて斬り殺された。
またある時は別のファンタジー世界で、刀を振るう冒険者として仲間達とともに都市国家で不幸なエンディングを破壊して回り、最終的に次元移動存在と呼ばれる代物にまで進化した。世界の命運を左右する程の事はなかったが、能力も人格も良い仲間に恵まれた人生だった。
さらにある時は並行世界の地球で、日本に拠点を置く学園の仲間達と共に地球以外の世界から来た連中相手に戦争し勝利を積み重ね、最終的には『次の宇宙』に向かって旅立った。
そしてある時は地球から星々の海を隔てたはるか遠くの惑星に移植した人類社会で特殊部隊の一員として、ある日突然攻め込んできた謎の生命体と巨大人形兵器に乗って戦いに臨んだ。
いままでの人生では大体刀を使っていたが、その時は刀ではなく銃をメインで使っていた。ただ、小隊で哨戒任務中に圧倒的多数の敵に遭遇、こちらを包囲してくる敵に対し数に劣っているにも関わらず奮闘せざるを得ない状況になり、結局敵の物量に押し潰される形で戦死した。
またまたある時は偉大なるコンピューター様が支配するアルコロジーでトラブルシューターとしてレーザーガン片手にコミーとミュータントをZAPし続けた結果、遂には最高権力を持つ支配者階級にまで上り詰める事に成功した。が、その次の日には同じ階級の奴に反逆者に仕立てあげられて逆にZAPされてしまった。
この他にも超巨大規模の宇宙船団で惑星調査員になり敵対勢力による宇宙船襲撃への対処中に殺られてしまったり、ファンタジー世界に外骨格生物由来の生体部品使った人型兵器のパイロットとして何度も転生したり、月面勢力と地球防衛機構が人型兵器で泥沼の戦争を繰り広げる世界にて、自軍と敵軍の機体から分捕ったスクラップと試作パーツの余剰生産品を組み合わせた何個イチかもわからぬ機体で神経をすり減らされつつ防衛戦に臨んだり、平行世界の太陽系のどこかの地下都市で黒鴉と呼ばれる人形兵器に乗って戦う傭兵になりイレギュラー認定され、5重太陽星系で人工生命体の女性をお供にした騎士と呼ばれるモノとなりそこそこ高い身分となったものの新しい任官先に行く途中宇宙船の事故で爆発四散したり、城壁都市の騎士団の一員として立体機動を駆使して巨人と戦って生きたまま喰われたり……と、殆どが平穏とは程遠い人生を送り天寿を全うすることなく非業の死を遂げていた。割と真っ当だったのが、ラグランジュポイントにコロニーが配備された時代に巨大人型兵器のパイロットとしてほぼ同じ年代に何度も重複転生した挙句、最終的には偶然助けた強化人間なロリ姉妹達と爛れた性活を送って人生を全うした時しかないのがなんともはや。
いい加減転生特典とか特殊能力とかハーレムとかいらないから、ドンパチと無縁でごく普通に学校を卒業してごく普通に公務員に就職してごく普通に気立ての良い家事万能な可愛い嫁さん貰ってごく普通に子供を一姫二太郎くらい授かってごく平穏無事かつ五体満足健康にその子供達が育って、最後は平穏無事に孫やひ孫達に看取られながら夫婦揃って眠るように大往生を遂げたいだけの人生だったが、どうやらその願いも今生ではわずか7歳にしてかなわぬ夢に終わったらしい。畜生め。
警察も消防も野次馬も立ち去り静寂に包まれた冬の夜。元は自分の住む家だった瓦礫に埋もれながら、爆発の影響で蘇った前世の記憶からそんな事を考えていた所、いずれかの前世で愛用していた携帯電話の着信音が聞こえた気がした。死の間際に見る走馬灯だろうか、と思ったがどうやら違うらしい。
身を捩ってどうにか左手だけは動くようにした所、何も持っていなかったはずの手の中にスマートフォンが具現化した。おそらく爆発の衝撃から前世の記憶が蘇った影響でこれまでに獲得した色々な(一般人からしたらチート極まりない)能力のうちのどれかが発現したのだろうか。ただ、今まで前世で所持していたアイテムの持ち越しはなかったのに、今回に限って前世で所持していた物品が出現したことが腑に落ちない。
取り出したスマホの外観は最初の人生で愛用していた某林檎社のものに酷似しているものだが、一般名称は0-Phoneと言いウィザードと呼ばれる特殊な力を持つ者だけが使える携帯電話だ。そしてウィザードの中には転生者と呼ばれる前世の力を用いて戦う者が自分以外にも確かにいた。
なお同じような真似ができる他の能力の場合、能力の封印やアイテムを格納しているカードがあるはずなのだが、それらしいものがどこにも見当たらないのでこれは多分ウィザードの能力の方だろう。
スマホを操作して通話に出る。
「****さんですね? 私です」
画面に出ていた発信者の名前を見た時点で相手が若くて綺麗な女性だと分かってはいたが、オレオレ詐欺みたいな名乗りだな、と内心ツッコミを入れる。
「すみません、僕の名前は更識恵治ですけれども」
前世の名前で呼ばれてもそれはあくまで前世であって「今の」自分とは別の人間の話だ、と通話相手の女性に対し暗に断りを入れる。
「それは失礼しました。では今後は更識さんと呼ばせていただきます。更識さん、今からの私の問に「はい」か「Yes」でお応え下さい」
「だが断る。…………という冗談はさておき一体どういった依頼ですかね、アンゼロット様?」
そうして、直前の前世でのお得意さん(実際報酬は良かったし「騙して悪いが」系の依頼もそんなに数多くはなかった)にして、世界の守護者である“真昼の月”アンゼロットと俺は再びコンタクトを持ったのである。