艦娘、PMCと共に水平線にて戦えり   作:休日ぐーたら暇人

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一話に纏めるつもりでしたが、書いてたら長くなりましたので、二話に分ける事になりました。
多分、題名通りです。


11 仮装巡洋艦を補足せよ 前編

2日後 小笠原諸島沖合い海上

 

 

「……上手く小笠原諸島まで来たが、これから先、日本軍に見つからずに行くなんて、無茶な話だな」

 

仮装巡洋艦『膺懲(ようちょう)』のブリッジ近くの甲板で連邦軍総司令部情報課の羅剛(ラ・ガン)上佐は空を見上げながら呟いた。

情報課の情報将校である羅からすれば、日本と連邦の差など嫌と言う程、承知している。

なぜなら、海上・海中戦闘ならば第二次大戦で敗北したとは言え、世界に比類無き経験を積み、現代においても、世界最強のアメリカ第七艦隊と相討ちに出来る実力を備え持つのが自衛隊である。

また、最近の深海棲艦との戦闘により、日本国内における結束力が強まり、戦闘・戦争忌避は無くなりつつあった。

つまり、連邦創立以前から行われていた特亜(アメリカ・ロシアなどもやっていたが)の日本に対する『反政府・反戦運動』は『自らの生存が懸かった事態』の前には役に立たず、それどころか、日本人の覚醒を促す結果になってしまった。

そこにただ『日本と艦娘が邪魔なだけ』で深海棲艦と手を組んだ連邦が本当に結束した日本を相手にするなど、豆腐をコンクリートの壁にぶつけるような話だった。

また、最初こそ攻撃兵器が多いとされていた連邦が突如現れた重爆によってその手段を次々に失い、更に戦力の各個投入と言う愚を犯す連邦に羅は先が長くはない事を結論付けていた。これは一時期、遠少将の下に居た事もあって更に強くさせていた。

そもそも、羅がこの地位にいるのも父や義兄達が連邦の上級幹部や上級役職を務めているからであって、妾の子である剛自身は捨てても惜しくは無い地位だった。

そんな事を考えていた時、突然、緊急を報せるサイレンが鳴り響いた。

 

 

「羅上校! 哨戒機が来ます!!」

 

伝令役の少年志願兵が羅上校に報告してきた。

なお、羅がこの少年兵を伝令役として手元に置いていたのはこの少年兵の志願理由が『貧しい家族の為』だった。

他の同年代の志願兵は『東洋鬼を懲らしめる為』だったが、この少年兵だけは純粋な理由だった為、それ以上染まらない為に羅は置いていた。

 

 

「わかった。ブリッジに行く」

 

まあ、見付かった以上、これ以上は無理だな…と内心で呟きながらブリッジに向かった。

 

 

同時刻 上空 アトランティクⅡ哨戒機機内

 

 

 

「不審船舶に接近中」

 

TJS社の対潜哨戒機アトランティクⅡの1機で無線符丁『マニラ』の若手レーダー員が報告した。

それを聞いた機長の山田次郎中尉(60)とフィリピン海軍から出向しているメンドーサ・ミゲロ准尉(25)は頷いた。

中尉と准尉が親子ほどの年の差なのはこの『マニラ』の無線符丁からもわかるとおり、フィリピン海軍人員の育成隊でもあったからだ。

乗員の半数を占める日本人は山田中尉同様に60〜50代であり、冷戦中に対潜哨戒機に乗ってソ連潜水艦と対峙し、退役した古強者ばかりだ。

対し半数はフィリピン海軍からの出向している学生達であり、未来のフィリピン海軍を担う新人達ばかりだ。

海軍再建中のフィリピン海軍をはじめとしたASEAN諸国を支援する為、日米もこうしたASEAN諸国の海軍人員育成に関わっていたのだが、深海棲艦の出現により対応を迫られ、TJS社にお鉢が回ってきた。無論、TJS社の創立目的と合致していた事もあり、こうした育成活動にも関わっていた。

そして、連邦の設立はTJS社で研修を受けていたASEAN諸国将兵も巻き込む事になったが、彼らの士気は高かった。

それは副機長のミゲロ准尉も同じだった。ミゲロ准尉は漁民出身で家族は漁師であった。

しかし、支那共産党が南沙諸島問題に首を突っ込み、支那漁船団の違法漁業とそれを支援する支那公船に憤慨を感じ海軍を目指した。

そして、出向研修中に深海棲艦により支那共産党が壊滅し、新たに連邦が設立された事に彼を含めたASEAN諸国将兵は『ここで日本が敗北し、連邦の台頭を許したら再びあの現状を繰り返す事になる。それは未来の為にも絶対に避けなければならない』と考えていた。

 

 

「教官はあれが偽装した連邦の仮装巡洋艦、と思うのはなんでですか?」

 

 

「冷戦時代の哨戒中にソ連の偽装情報収集船舶を何度も見ていましたからな。本人達は上手く隠しているつもりでも、独特な雰囲気や行動は隠せないものなのですよ」

 

父親の様な機長の答えにミゲロ准尉は納得した。

ソ連相手に体を張っていた日本に比べて、こういったところでの経験の無さはフィリピン海軍の弱さと言って良かった。

操縦席の窓から不審船舶を観察する。

このご時世に単独航行は死にに行く様なもので、最近は護衛をつけた船団で航行するのが普通だ。

しかし、不審船舶は単独で航行している。しかも、甲板には人影がいない。正に怪しさを絵で描いた様な不自然さだった。

 

 

「一度フライパスしてみましょう。それと、直ぐに対応出来る様にな」

 

ツーカの仲であるペアのベテラン操縦士に指示を出すと、日本人操縦士は慣れた手つきで操縦し、不審船舶の上空をフライパスした。

 

 

「以前、艦娘達が沈めた仮装巡洋艦の写真を見た事がありますが、それに似ていますな。おい、急いで電文を…」

 

山田少尉の言葉を遮ったのはレーダー等によってロックオンされた事を報せる警報だった。

 

 

「チャフ、フレアをばら撒け!! このタイミングなら携帯SAMだ! 落ち着いて対処しろ!!」

 

素早くチャフとフレアがばら撒かれ、それに惑わされた対空ミサイルはアトランティクを補足出来ず、出鱈目に飛んで自爆した。

 

 

「付近に友軍艦艇は…いないですね」

 

出撃前のブリーフィングでこの近辺に在日米軍を含めた艦艇は別の場所で哨戒中である事を思い出し、ミゲロは悔しがる。

もし、エグゾセ対艦ミサイルを携帯していたら撃ち込んでいただろうが、残念ながら今回アトランティクが搭載しているのは対潜用短魚雷である。

 

 

「どちらにしろ、撃たれて帰ると言うのは気にくわん。本部に打電して、近海の艦艇を急いで派遣してもらうしかないな」

 

憮然とした表情で言った山田少尉の顔が変わったのはフィリピン軍通信士が報らせ一本の無線連絡からだった。

 

 

 

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