艦娘、PMCと共に水平線にて戦えり   作:休日ぐーたら暇人

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お疲れ様です。
本来なら、日曜日に更新しようと思っておりましたが私用の為に遅れました。
此方は二話、更に大逆転を更新いたします。

熊本の震災は長期化しそうです。
みなさんも義援金等、出来る支援をしていきましょう。


12 仮装巡洋艦を補足せよ 後編

少し前…現場近くの海域

 

 

マストにTJS社の社旗を掲げた3隻の艦艇が航行していた。

内2隻は海自が使っているあさぎり型護衛艦であるが、先頭を航行する旗艦はアメリカのタイコンデロガ型イージス巡洋艦である。

3隻はパラオ経由で日本を目指していた。陣容は改あさぎり型の夕潮・巻潮にTJS社の独自判断で駆逐艦に艦種変換されたタイコンデロガ型イージス艦は防空艦である事から満月と命名されている。

そして、この3隻を率いるのは満月の艦長であるマフムト・バラミール

中佐(25 男性)。本来はトルコ海軍所属であるが恩人である日本が深海棲艦による危機にある事からトルコ海軍に退職願を出した程の親日家である。

ただ、この退職願は海軍上層部と政府によって『預かり』となり、それどころ海軍から『出向辞令』と艦艇1隻を率いるのに充分な人員と共にTJS社に出向していた。

そして、こうしてタイコンデロガ型イージス艦を任されいた。

そんなバラミール艦長は朝からご機嫌だった。

実は昨日、3隻は航行中に満月の志願新兵がボロボロの艦娘2人を発見、慌てて艦娘2人を収容したところ、逃亡したブラック提督の下にいた艦娘だと判明した。

2人は衰弱しており、更に1人は高熱を出していた。もう1人は全てを報告した後、安心した故か緊張を解いた為にぶっ倒れた。

急いで医療班が診たが、倒れた方はいいとして、問題は高熱を出している方で処置法が人間流でやっていいのか解らず、バラミールは親友の居るTJS社の横須賀本部に指示を仰いだ。

すると、親友からは『緊急事態の為、其方に工作艦娘と護衛の艦娘2名空輸させる』との返答を受けたところ、C-130輸送機が飛来し、艦娘3人をパラシュート降下で降下させると言う荒技をやってのけた。

そして、医療班と派遣された工作艦娘の処置により状態は安定したとの報告を受けたバラミール艦長は素直に喜んだ。

これがバラミール艦長が機嫌の良い理由だった。

例え小さな事でも、日本の役に立った事に喜びを感じていたからだ。

 

 

「艦長、付近の海域を哨戒中のアトランティクより入電です。『こちら、哨戒中の『マニラ』。連邦の仮装巡洋艦を発見、攻撃を受けるも無事回避。我追跡中、付近艦艇は応答を願う』以上です」

 

同じトルコ海軍から出向している副長が報告してきた。

 

 

「仮装巡洋艦か…南シナ海戦後に撃沈されて以降、姿を見せなかった仮装巡洋艦が何故ここに居るか……連邦なら可能性の多い事項があり過ぎて特定しようにも無理だな」

 

 

「はい。しかし、どちらを向いてもロクな事では無さそうですがね」

 

 

「そうだな。夕潮のベトナム教育隊、巻潮のインドネシア教育隊双方に通達。全艦戦闘用意、これより、敵仮装巡洋艦を追尾・鹵獲、又は撃沈する。マニラには直ぐに駆け付けるから追跡する様に伝えてくれ。所要時間は?」

 

 

「このまま接触を絶たれなければ約2時間で捕捉出来ます」

 

 

「うむ、それと下のゲスト達にこの事を伝えてくれ。イザとなったら、彼女達だけでも脱出してもらう必要もあるからな」

 

 

「その心配は杞憂だと思いますが…わかりました」

 

副長が答えるとバラミールは気合いを入れる為に制帽を被り直した。

 

 

2時間後 現場海域

 

 

 

「くそ、無駄な議論で時間を潰したか」

 

羅は苦々しく呟いた。

艦長とは既に敵哨戒機と接触した為、進路を変えて一時離脱する様に提案したが、同じ上佐である上に、質が悪い事に艦長を含めた艦艇首脳陣が亡命してきた元ブラック提督やその取り巻き、左翼、似非反戦・平等主義者であった事だった。

彼らは『南シナ海での仲間の仇を取る』とか『自衛隊や艦娘などの戦争主義者に負ける筈が無い』と言って頑なに拒否した。

挙句の果ては艦長が『我々の任務を忘れた訳ではあるまい、羅上佐? これを成功させねば貴方は裏切り者として報告し、一族を処刑する様に上層部に進言するが?』とも言ってきた。

羅からすれば、実の母親も死に父親や義兄に何の親しみも感じてはいないが、余りの現実見の無さと当事者意識の無い発言、更に今回の任務の内容に何も言わなかった。

羅が今回乗艦している理由は上司…父親の元部下…から日本に居る工作員・亡命者・同志を『献上品』と共に回収・掌握する為だった。

この『献上品』の中には金品・貴金属も入っていたが、1番気になったのは『被験体』の名称だった。

この名称にもしやと思いつつ上司に確認すると、ニヤリと笑いながら『拉致した女やブラック提督のところに居た艦娘達だ。人造兵器の実験体だ』と答えた。

羅は情報将校ゆえに連邦が密かに深海棲艦や艦娘を元にした人造兵器を作っている、と噂には聞いていた。

更に上司が笑うのはこの『被験体』の中から気にいった者を引き抜いて『慰め物』にする気だと気付いたからだ。

羅は唾棄するのを必死に堪えて平常を装った。

故に内心「知った事か」と思っていた。

 

 

「……あれは自衛隊のアサギリ型か…先頭は…タイコンデロガ級! ちっ、いよいよ勝てないな」

 

艦種を確認した羅は笑った。数・性能共に勝てる訳が無い格上が相手だからだ。

そんな羅の思いも知らず、複数の対艦ミサイルが放たれたのはその直後だった。

 

 

満月艦橋

 

 

「仮装巡洋艦より対艦ミサイル3…いえ、9!」

満月より仮装巡洋艦に対し、所属と艦名を告げ、更に「直ちに停船せよ。さもなくば攻撃を開始する」と警告した時、オペレーターが報告してきた。

 

 

「先手必勝かな。まあ、何も考えていない事がまるわかりだがね。対空迎撃戦、始め!」

 

バラミールの指示に満月のVLS、夕潮・巻潮のボックスランチャーから迎撃の対空ミサイルが発射される。

 

 

「7発迎撃成功! 2発が夕潮・巻潮にそれぞれ向かいます!」

 

 

「夕潮・巻潮に接近警報発令。大丈夫だ、2隻の幹部の半数は場慣れした海自の教導メンバーだ。迎撃出来る」

 

その言葉通り、2隻のオート・メラーラ製スーパーラビット76ミリ速射砲が射撃を開始し、それぞれ接近していたミサイルを撃墜した。

 

 

「さて、それなりのお返しをしないといけないな。各艦ミサイル1発づつ。1分後に同数発射。第1波、ファイヤー!」

 

満月からハープーンが発射され、夕潮・巻潮からも対艦ミサイルが発射される。

発射されたミサイルは的確に仮装巡洋艦へ向かっていく。対し、仮装巡洋艦からは対空ミサイルや各種火器で応戦しているが、いまいち効果が出ていない。

 

 

「レーダーは軍用に変えているだろうが、迎撃システムをただ繋いだだけらしいな。ミサイルやCIWSの連動が悪い。こういったのは幾度か模擬弾を撃ち込んで調整する物だが、向こうは襲う事について考えていても、襲われる事は想定していなかった様だね。まあ、慈悲を掛ける奴らではないしな。念の為に第三波用意、第二波ファイヤー!」

 

 

バラミールの指示で第二波が発射された。

 

 

 

暫くして仮装巡洋艦周辺

 

 

「機関科は全員いるか!?」

 

波間で浮輪代わりの角材にあの伝令役の少年兵と共に掴まりながら、羅は付近に居る機関科員達に向かって叫んだ。

実は羅はアトランティクに発見されてから、余り艦首脳陣の影響を受けていない掌握済みの機関科員達に機関に細工をさせ、対艦ミサイルが命中したと同時に機関科員と共に海へ飛び込んでいた。

もともと、訓練を受けた純粋な兵士である機関科員は仮装巡洋艦内で多数を占める元ブラック提督派では無く、更に彼らは遠一派である事を理由に無理矢理乗せられていた人員であった。

更にロクな訓練を受けていない元ブラック提督派に機関・動力関係は扱えない為、細工しても対処出来ず、対立関係であった事から機関科員は素直に羅の指揮下に入り、一連の細工を終わらすと躊躇わず飛び込んだ。

そして、第二波のミサイルが命中し、仮装巡洋艦は急速に沈んでいく。

 

 

「ふん、あんな奴らと運命を共にするなど願い下げだ。今からは俺は俺の意志に従うからな」

 

沈みゆく仮装巡洋艦を睨みつけながら羅は呟いた。

その時、少年兵がある事に気付いた。

 

 

「上佐殿、あれはいったい?」

 

 

「ん? なんだ……しまった!!」

 

少年兵の指差す方を見て羅はある事を思い出した。

何故なら、仮装巡洋艦には今回の回収用に北朝鮮のサンオ型潜水艦があり、いま、少年兵が指差す先に浮上しているからだ。

 

 

「くそ! あの艦長達め! あれで上手く脱出する気か!? ちくしょう! 細工なんかしてなかったぞ!!」

 

自分の配慮不足を後悔する羅の視線の先にあるサンオ型潜水艦の周囲に連続して水柱が立ち上がった。

 

 

 

満月艦橋

 

 

 

『こちら、神波。敵の小型潜水艦発見。こちらの威嚇発砲を受け潜航しました』

 

要救助者の発見・回収と警戒の為に鶴月と共に出てくれていた神波から潜水艦発見の報告が入った。

 

 

「目的の詮索は後にして、取り逃がすと後々厄介だな」

 

そうバラミールが呟いた時、上空で待機していたアトランティクの『マニラ』が通信に入ってきた。

 

 

『こちら、マニラ。潜水艦はこちらで対処する。データリンクを要請する』

 

これを聞いたバラミールは副長に通信を繋ぐ様に指示せ、繋がった瞬間に言った。

 

 

「こちら、満月のバラミール艦長。本艦が中継してデータリンクを行う。少し待ってくれ」

 

 

『こちら、マニラ、了解。ただいま、データリンク接続が完了した。先ほどの借りを返す』

 

それは言葉通りだった。

慌てて大急ぎで逃げる素人潜水艦が冷戦経験者のベテラン相手に逃げる事など不可能だった。

ソノブイを投下し、素早く位置を掴んだアトランティクのマニラはお返しとばかりに短魚雷を叩き込んだ。

そして、サンオ型は盛大な爆発をおこして海の藻屑となった。

 

 

 

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