艦娘、PMCと共に水平線にて戦えり   作:休日ぐーたら暇人

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重火器投入には少し無理をしていますが、あながち間違ってないかと…。


15 鳥取の乱 地上戦 前編

3日後 日本海側 TJS社旗艦早潮艦橋

 

 

 

「にしても、連邦はここまで馬鹿だったのかしら?」

 

司令官席に座るケイシーは問い掛けるかの様に呟いた。

 

 

「まぁ、最初に聞けば確かに馬鹿らしく思えるよ。でも、多視点で考えてみれば間違ってはないよ?」

 

 

「それはわかってるわよ。でも、こう言った作戦は本来、相当の戦力と後方支援能力を割いて行われるのに、なんでこんな…小規模動員か、って事よ」

 

ケイシーの問いに答えたのはコンサルタントの名目で乗艦した羅『中佐』だった。

 

 

「仕方ありませんよ。今回の作戦はとある個人が自らの出世の為にやった『私的作戦』ですからね」

 

 

「と、言いますと?」

 

 

「端から見れば充分重役なとある連邦中堅者が忠誠心と名誉心、出世心から今回の作戦を立案、中岡の忠臣者に話を通し、周りを出し抜こうと立てた作戦、と言う事です」

 

それを聞いたケイシー達全員が納得した様に頷いた。

 

 

「しかし、連邦と深海棲艦で微妙な意識違いがあるのに、更に連邦側にも内部統制が出来て無い……やれやれ、泡沫国家と言うのは今の連邦を言う、としか言いようが無いですね」

 

 

「まったくです。まぁ、結局は儚い夢で集まった国なんですよ、連邦なんて」

 

後藤と羅の会話は連邦の現状とも言えた。

 

 

 

その頃 鳥取県 鳥取市郊外

 

 

それは異様な光景だった。

港の倉庫や郊外の倉庫、あるいは廃車置場の様な場所からまるで生えてきたかの様に戦車や軍用車両が現れてきたからだ。

殆どが旧東側諸国…俗に言う旧ソ連製兵器である。

戦車の大半はT55だが、港から現れた一部はT72や旧人民解放軍の99式戦車だった。

これに装甲装輪偵察車や装輪輸送車、迫撃砲を牽引した小型車両まであった。

何故か……これが上記した連邦幹部が立案した『作戦』だった。

鳥取県と言う日本海側にあるこの県は鳥取港や鳥取砂丘と言った海上輸送や揚陸に適した場所が多い。

しかし、この県には不思議なほど『陸上自衛隊』に関する施設は県北西部にある米子駐屯地を除きまったく無く、鳥取港・鳥取空港を含む鳥取市周辺から以東は無防備であった。

この重要地域にも関わらず陸上戦力の空白地帯たる鳥取県に目を付けた連邦幹部はある作戦を立てた。

この陸上戦力空白地帯を『独立』させ『衛星国』を建国、これを足場に中岡大統領が望む『日本への懲罰』を行おう、と。

幸いと言うべきか、朝鮮半島に近く、上手くすれば直ぐに増援を送り込める、と見定めた幹部は自らの権力や伝を駆使し、工作員や特殊部隊、日本国内の活動家や旧在日朝鮮・中国人等を密かに鳥取に集めさせた。

また、戦車や軍用車両はブラック提督達が所有していた物や、部品毎に分解し、鳥取へと送った物だった。

これが巧みに隠蔽されたのは『工事車両』や『廃棄両』、更に部品ごとに細かくされていたからである。

こうして、兵力・装備を集めた連邦幹部であったが少し齟齬があった。

最大の理由は連邦が日本に負け続けた事、更に摘発の手が急速的になった事だった。

しかし、この急速な摘発は皮肉にも逃れた者達が鳥取へと逃げ、兵力の増強になった。

そして、これ以上待てないと判断した連邦幹部は『クーデター』を行う様に命じた。

電撃的、且つ突然の独立に日本側は慌てふためくだろう……と予想していた連邦幹部だったが、それは甘かった。

連邦から離反・亡命した者達から情報を精査し、先回りできたTJS社の存在があったからだ。

 

 

 

鳥取港倉庫から出て来た96式戦車、T72、T55と装輪車両の一団は鳥取市を目指していた。

鳥取市で市内にいる工作員や特殊部隊、活動家や旧在日朝鮮・中国人と合流、鳥取県を『独立』する手筈だからだ。

しかし、そんな野望も先頭にいたT55が吹っ飛ぶまでだった。

 

 

「馬鹿め! 貴様らをそう易々と鳥取市内に入れるか! ドイツ軍流の教育をしてやる! 授業料は割高だぞ!!」

 

そう言ってM1エイブラムスの車長ハッチから戦車隊隊長エアハルトが叫んだ。

彼の下にはM1エイブラムス4両、T62が4両配置されていた。

これは亡命者からの情報により、予め主力戦車隊が鳥取港倉庫から引き出されてから来ると知ったからこそ、主力を置いていた。

 

「前はA分隊が引き受ける! B分隊と第2小隊は側面を突いて暴れろ! 今までの鬱憤を晴らせ! 全車、パンツァー・フォー!」

 

 

『『『『パンツァー・フォー!』』』』

 

無線から響き渡る返事にエアハルトの気分は高揚していた。

何故なら、創立以来、まったく出番の無かったTJS社戦車隊が漸く暴れれる場を与えられたからだ。

そして、戦車運用の本家を自負するドイツ国防軍出身のエアハルトからすれば漸くドイツ流戦車運用術を自ら指揮する場を得られた形だった。

 

 

「連邦のゲリラ部隊は前衛と後衛にT55の一個小隊、真ん中にT72と96式戦車の一個小隊、それに兵員輸送車か…先ずは戦車だ。奴らの精神的支柱の戦車を撃破すれば崩れる! ファイエル!」

 

エアハルトの指示で放たれた砲撃は前衛の残りである2輌のT55をスクラップに変える。

更に横合いを突いたT64小隊とB分隊のエイブラムスが装輪車両を撃破していく。

 

 

「時間を掛けるな! 鳥取市内にいる3・4・5小隊も援護する必要があるからな。先手必勝! 速攻で片付けろ!」

 

なお、TJS社はT64、M1を合わせて5個小隊20輌しか保有していない。

しかし、連邦のクーデター部隊は数的主力のT55を約30輌を隠し持っているとの事だった。

では、残りの戦車は…? 放置する訳がない。

いや、実はこの作戦にはTJS社以外にも参加する部隊がいたからだ。

 

 

 

同時刻 鳥取砂丘

 

 

その頃、鳥取砂丘には朝鮮半島から漁船に化けた複数の工作船が集まり、ゲリラ部隊を下ろしていた。

彼らの任務は鳥取市内の確保であり、現地部隊と合流する手筈だった。

しかし、そんな彼らの上空に照明弾が煌めく。

ゲリラ部隊も工作船の乗組員もそれに気を取られていた時点で計画は失敗だった。

彼らの頭上から155㎜榴弾が降り注ぎ、肉体と工作船を引き裂き、または燃やしていく。

砂丘を越えた平地には今まで擬装を被り照準を合わせて待機していた陸自の第13特科隊のFH70が次々に砲撃を浴びせていく。

そして、暫くすると全ての工作船が炎上し、ゲリラ部隊員は誰も動かなくなっていた。

 

 

 

同時刻 鳥取市郊外

 

 

意気揚々と主力隊とは別方向から複数のT55を率いて鳥取市に向かっていた連邦の別動隊の一部は途中で先頭の装輪装甲偵察車が撃破されて止まった。

しかも、それを皮切りに次々に砲撃を受けて車両が破壊されていく。

 

 

「何故だ!? 何故、俺達が攻撃を受けるんだ!?」

 

近隣県の自衛隊駐屯地へデモ活動に行く活動家の1人が叫ぶ。

そして、漸く放たれた味方の照明弾に照らされた敵を見て、この活動家は驚愕した。

 

 

「な、なんで…なんで、ここに13戦車隊が…日本原の部隊がいるんだよ!!」

 

駐屯地へのデモ常連者だった為にわかった敵部隊に思わず叫んだ活動家。

次の瞬間、彼の近くにあった装輪輸送車が被弾・爆発し、この活動家も巻き込まれた。

 

 

 

後にケイシーや後藤らTJS社幹部はこう述べた。

『私達の部隊だけでは数的に防げなかった。故に米子の第8普通科部隊、そして、趨勢を決めたのは日本原駐屯地とその部隊が岡山にあった事だった』と。

 

 

 

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