なにそれ? 美味しいの?
連邦艦隊のヲ級空母から発進したのは計240機の攻撃隊だった。
この数では幾ら防空を意識しているTJS艦隊の4隻もイージス艦が無い中では苦戦したであろう。
しかし……それは畝傍以下『異世界日本からの艦娘達』が破砕した。
突如、攻撃に白煙を吐きながら『ロケット弾』が襲いかかった。しかも、この『ロケット弾』は正確無比に機体に命中した。
この攻撃にたちまち混乱がおきる。そこへ、今度は上空から先程の『ロケット弾』と銃撃が襲い掛かり、複数機が攻撃をモロに浴びて爆散・撃墜された。
見上げると見た事も無い機体が10機ほど猛スピードで降下し、攻撃隊の下方へと離脱していく。
これを『たこ焼き型』と称される艦載機をはじめとした戦闘機型が追尾する……が、これも罠だった。
見計らったかの様に同型10機が追尾しようとする戦闘機隊の背後を取り、またもや正確無比な『ロケット弾』と銃撃で戦闘機を撃墜していく。
一連の攻撃は天河から飛び立った強風による攻撃である。
最初に全機での空対空ミサイル攻撃、更に4機一個小隊の三個小隊12機が攻撃し、戦闘機隊を釣り上げると、後続の二個小隊8機が背後を取る、と言う編隊空戦術である。
こうして敵戦闘機隊を叩き潰し、邪魔者を消してから攻撃隊を潰しにかかった。
そして、強風隊が引き上げる頃には攻撃隊は半数の120機になっていた。
早潮艦橋
「………圧倒的ってこう言うのを見て言うのよね?」
「あぁ、今回は間違いなく圧倒的だよ」
ケイシーの物言いに後藤が答え、他の面々も思わず頷く。
自分達と同等の装備を持つ艦娘…しかも、あの大戦を勝ち抜いた世界の日本の艦娘とあって、誰もが唖然としていた。
「おやおや、皆さん、これで驚いてはいけませんよ。それより、ケイシー司令。敵攻撃隊への対処が未だですよ?」
「え、あっ、ぜ、全艦対空ミサイル発射用意!!」
灰田に言われて気付いたケイシーは慌てて対空戦闘命令を下す。
既に安全装置は解除され、天河のイージスシステムとデータリンクによって多数目標へのロックは完了していた。
「各ロック目標に対し、攻撃始め!」
「てぇー!!」
ケイシーの指示に谷津艦長が発射指示を出し、早潮のVLSからSMー2が発射される。
そして、これに続くかの様に改オリバー・ハザード・ペリー型フリゲートの巻風、速風、改バレアレス型フリゲートの荒雪からも続けてSMー2が発射される。
また、神波、紅菊を除く派遣艦娘隊からもSMー2クラスのミサイルが発射された。
「第1波、インターセプト!」
迎撃ミサイルの第1波が敵編隊と接触し、撃墜を報せるかの如く、レーダー画面上から幾つかの反応が消えた。
「敵編隊、更に接近中!」
「第2波用意! 巻風と速風には発展型シースパロー発射準備! 神波、紅菊にも対空ミサイル発射準備を指示! それと全艦近接対空戦闘用意!!」
「全艦第2波用意よし! 発展型シースパロー並びに神波・紅菊も発射準備よし!」
「艦隊全艦第2波撃て!」
「第2波てぇー!!」
巻風、速風は艦上構造物上部のオリジナル型で76㎜速射砲が配置されていた場所に設置されたSMー2VLSと艦首部の発展型シースパローVLSからミサイルが発射される。
更に神波と紅菊からも発展型シースパロークラスの対空ミサイルが発射される。
「第2波インターセプト! 未だ敵編隊接近!!」
「近接対空戦闘! 各艦射程に入り次第、撃ち方始め!!」
未だに近付く深海棲艦の航空攻撃編隊へケイシーは遂に砲熕火器による迎撃戦を許可した。
「敵編隊本艦並びに荒雪の射程に入りました! なお、畝傍、銀河、天河、神波、鶴月、近接対空戦闘開始!」
「主砲撃ち方始め!!」
オペレーターの報告に谷津艦長は砲撃指示を出す。
改くらま型である早潮はくらま型の主砲配置を踏襲しているので、2門の127㎜単装速射砲が別々の標的を狙い砲撃を開始した。
「巻風、速風、紅菊も近接対空戦闘開始!」
「……ねえ、いま思ったけどさ…彼女達の弾幕、こっちより濃くないか?」
今まで双眼鏡で畝傍達を観察していた後藤が呟いた。
「当然です、なぜなら、彼女達の日本では独自の対空装備基準がありますからね」
後藤の疑問に答えるかの様に灰田が言った。
「対空装備基準ですか?」
「えぇ、フリゲートや駆逐艦クラスの艦艇は最低でも6基のCIWS…向こうでは『六銃身自動稼動機銃』と言いますが…を設置する事が決められています。しかも、船体前後部には40㎜、船体両側面4基は25㎜、と厳格に規定されています」
「………いやいや、ちょっと待って下さい! フリゲートクラスでもCIWSが6基!? しかも、40ミリ!! 向こうの日本は何を考えているんですか!?」
「この世界の艦艇設計と一緒ですよ。命中する前に堕とす、ただそれだけです。ただ、確実性とカバー性の向上、そして、素材が違う為にフリゲートクラスでも1発や2発のミサイル被弾は致命傷になりませんが…なお、畝傍さんや銀河さんクラスの艦艇になると、船体側面に40㎜2基に対し25㎜は4基を対空用1区画に配置する様に規定されていますので」
「「「「「「「「……………」」」」」」」」
灰田の話を聞いて後藤以下、全員が唖然としていた。
なんと言って続けていいのかわからないが、誰もがこう言いたかった。
『何となく筋は通るけど、どんな無茶苦茶でキチガイナな基準を設定したんだよ、向こうの日本は!!?』と。
「……ようやく、30ミリゴールキーパーにしただけのウチって何なの?」
「比べたらダメだよ、ケイシー。あっちの日本が無茶苦茶なだけなんだ…多分」
しばらくして……….
「……敵攻撃編隊、全滅しました」
「だよね、うん、艦娘に集中攻撃しようとしたら、速射砲とCIWSの弾幕くらって堕ちたんだからね」
いつの間にやら静かになった空を見上げながら後藤が呟いた。
「さて、こうなると、やはり空母は邪魔よね。幾ら装備が優秀でも周りを飛んで邪魔されるのは面倒だしね」
ケイシーの言葉に誰もが頷いた。
それにもしかしたら、鳥取への空爆を仕掛けるかもしれない…いや、仕掛けるであろう、と思っていた方が正解である。
「では、天河の強風に航空攻撃を実施させては如何ですか?」
灰田氏の意見に誰もが顔を合わせる。
確かに名称は『多目的垂直離着陸戦闘機』、俗に言うマルチロール機であるなら不可能ではない。
「……天河に連絡、対艦兵装による深海棲艦空母への攻撃を実施せよ」
ケイシーの指示が天河に通知され、天河の航空甲板艤装上では兵装転換が行われる。
「天河から、対艦ミサイル搭載機1個小隊、対艦航空魚雷搭載機1個小隊で良いか、と問い合わせてきましたが?」
「それはそちらに任せるわ。にしても、対艦航空魚雷…まさか、ジェット機で映画のパールハーバーみたいな雷撃でもする訳?」
「さあね……でも、彼らの日本だったら、何をしてくるかわからないよ」
周りも航空魚雷の件でざわついている間に準備の整った攻撃隊20機が次々にカタパルト発進で飛び立っていった。
その頃 連邦艦隊旗艦唐山艦橋
「全滅だと!? 240機がたった4隻の地方隊艦隊に全滅しただと!?」
航空攻撃の結果を聞いて思わず叫ぶ馮上佐。
「いえ、どうやら、向こうには6人の艦娘がいたそうです。また、1人は航空巡洋艦らしく、その搭載機と思われる20機の迎撃を受け、半数が撃墜。更に敵からの迎撃ミサイルと近接対空攻撃により、攻撃隊は全滅したとの事です」
「なに? 艦娘が居た? ふん、いったいどんなトリックを使ったか知らんが……それで、確認は取れたのか?」
「いえ、実は…何度照合しても、一致する艦娘は居ませんでした」
「未知の艦娘だと言うのか!? くっ、仕方ない、こうなれば報復だ。ヌ級と残存機を全て鳥取に向けろ。無差別空爆で報復だ。それと、艦隊は敵艦隊殲滅に向かう。幾ら未知の艦娘が居るとは言え、この数をもってすれば…」
その時、艦橋内に緊急を報せる警報が鳴り響いた。
「どうした!?」
「そ、それが……飛行物体と思われる反応を探知したのですが……」
「なんだ、そのあやふやな答えは!? 見せてみろ!!」
そう言って担当員を退けてレーダー画面を見る馮上佐。
最初はなにも写っておらず「ふざけるな!」と怒鳴ろうとした時……漸く、反応しているかどうか微妙な薄い小さな光点が写っては消えてを繰り返しているのを見つけた。
「………なんだ、これは? 故障ではないのか??」
「レーダーは正常です! 俗に言うゴースト…気象等の関係での虚像反応かもしれませんが…」
「早く確認させろ! 急げ!」
この時点でなにもかもが遅かった。
精鋭妖精パイロット達が操る強風はF22を超えると言われるステルス性能を活かして侵入、なにもしてこない連邦艦隊を横目にヲ級並びにヌ級への攻撃態勢に入った。
8機は一斉に抱えていた兵装を発射、4発は超高速でヲ級とヌ級に向かい、残りの4発は故障でもしたのか、途中で海に墜落した。
そして、この4発のミサイルに気付いた深海棲艦は大慌てで対空砲火を展開したが……擦りもせず、1発づつヲ級とヌ級に命中した。
軽装甲のヌ級は鳥取攻撃用の準備もしていた為か、燃料・弾薬に引火し轟沈、ヲ級は大破した。
しかし、そのヲ級達も逃れられなかった。彼女達が気付いた時にはいつの間にか魚雷が足元に迫っており、到底避けることなど不可能だった。
「……………悪夢でも……見ているのか?」
轟沈するヲ級とヌ級を見て馮上佐は思わず呟いた。
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。