その頃 早潮艦橋
「………なによ、あれ?」
グローバルホークからの映像で強風隊の攻撃を見ていたケイシー達は誰もが唖然としていた。
そして、漸くケイシーが絞り出したかの様に呟いた。
「最初にヲ級やヌ級に放ったのは超音速対艦ミサイルだろう……だが、ヲ級に止めを刺した魚雷は……いったい、何処からの物だったんだ?」
当然とも言うべき疑問に応えの灰田だった。
「対艦ミサイルは彼女達の世界で開発された72式超音速対艦ミサイルです。そして、皆さんが気になっている魚雷ですが、あれは航空魚雷です。皆さん、強風が発射したミサイルで4本ほど海へ墜落したものがありましたね?」
「あぁ、上手く飛翔していたが、海に………まさか、あれが航空魚雷なのか!?」
谷津艦長の言葉に灰田は頷いた。
「はい、あれが彼女達の世界で開発された航空魚雷、その名も『72式噴進弾発射型航空魚雷』です。これは対潜用のアスロック魚雷をヒントにしたもので、ミサイルの様に発射後に一定距離を飛来、着水し、弾頭の魚雷が標的に向かう…昔の様に投下型航空魚雷が使えないので、新たに開発された航空魚雷です」
「………本当に異世界の日本は何でもやるな」
後藤が感心していいのか、呆れていいのか、もうわからないと言わんばかりに言った。
「まあ、強風に超音速対艦ミサイルを搭載出来る内蔵ウェポンベイを作ったのは開発側ですがね。さて、残りの強風も巡洋艦や駆逐艦を爆撃して引き上げる様ですね」
灰田に言われて見てみると、残りの強風がリ級、ト級、ハ級に誘導爆弾を投下し、さっさと引き上げていく。
「で、どうする、ケイシー? 敵さんはやる気みたいだけど?」
「あら、こっちも敵を潰しに来たのよ? 全艦全速、目標敵艦隊!」
2時間後 連邦艦隊旗艦唐山艦橋
「敵艦隊捕捉、艦船4、艦娘6」
「対艦ミサイル用意。ミサイル投射量ならこちらが上だ。それと、化け物共も突入させろ」
馮城佐はそう命じた。
深海棲艦を先に突入させ、対艦ミサイルを消費させてから安全圏内にいる自分達が料理する……そんな打算だった。
しかし、そんな思考は既にTJS社艦隊にバレていた。
「敵艦隊から対艦ミサイル! 数は…10発!!」
既にグローバルホークによって適切な座標を入力していたTJS社艦隊と艦娘隊は連邦艦隊に向け対艦ミサイルを発射する。
「ちっ、こちらも対艦ミサイル発射! 並びにミサイル迎撃! 急げ!」
一歩遅れながらも連邦艦隊もミサイル戦に突入する。
そんな中、派遣艦娘隊は果敢にも深海棲艦と連邦に向けて突入していく。
「第七艦隊所属、駆逐艦神波、突撃します!」
36ノットの速力でほぼ巫女さん衣装の神波が突入する。
神波を狙い、深海棲艦やオーサー型・022型ミサイル艇が艦載機関砲を神波に向けて乱射する。
しかし……当たるどころか、擦りもしない。本当に砲弾から避けているかの様に当たらない。
「こんな下手な射撃をしたら、艦隊司令どころか艦長にも怒られますよ。射撃とはこうやるものです!」
そう言って12.7㎝75口径単装速射砲を正確に駆逐艦ハ級に命中させる神波。
そんな中、対艦ミサイルを発射しようとした022型高速ミサイル艇に76㎜弾がミサイル発射管へ命中し、022型は爆散する。
「この紅菊の正確無比な高速連続射撃からは逃げれませんよ!」
そう言って紅菊は38式歩兵銃を模した76㎜75口径速射砲の連続射撃をミサイル艇やハ級に浴びせていく。
しかも、フルオートに魔改造されている38式歩兵銃型76㎜速射砲は狙い違わずに命中させていく。
「第零艦隊第二機動部隊所属、防空艦鶴月。対空迎撃はお任せ下さい!」
鶴の羽の様な黒髪を靡かせ、秋月型駆逐艦に似た衣装と鉢巻を着け、鉢巻に『第零艦隊 鶴月』と書かれている鶴月は連邦艦隊が発射した対艦ミサイルを捕捉すると迎撃ミサイルと12.7㎝75口径速射砲を放ってこれを迎撃しつつ、対艦ミサイルを深海棲艦へと発射する。
「退きなさい! 退かないと痛い目に遭うわよ! アゴーイ!!」
そう言って18㎝三連装砲3基を深海棲艦と連邦艦隊のど真ん中に水平射撃で撃ち込む銀河。
天河同様、ロシア防寒帽ウシャーンカを被り、両腕に船体艤装を装着、右腕に三連装砲塔2基、左腕に同1基を載せ射撃を続ける。
「あら、貴女は私と戦いたいみたいね。それは私が旗艦だから? それとも重巡だと侮ってるから?」
深海棲艦艦隊旗艦の戦艦タ級と対峙する畝傍。
タ級はなにも言わずに主砲を一斉射、しかし、畝傍は絶妙なタイミングで飛び跳ねて後方に後退する。
「どうやら、後者みたいね…くらいなさい!」
そう言うと両肩・両腰の三連装砲を斉射する畝傍。
余裕な顔で受けたタ級であったが…予想に反して一撃受けただけで艤装が破壊された。
「私は六甲型『超』重巡洋艦2番艦畝傍。私の25.4㎝75口径砲と66式徹甲弾は伊達ではないのよ!!」
金髪の髪をなびかせ、腰のサーベルを抜いた畝傍。
次の瞬間、一気に距離を詰めるとサーベルを振り上げる。
「1世紀生きた私を舐めるなんて、貴女は未熟者よ」
そう言って恐怖に慄くタ級に斬撃を叩き込んだ。
連邦艦隊旗艦唐山
「ば、馬鹿な…こんな馬鹿な事があるか!」
馮上佐は艦橋で怒鳴った。
有利だった筈が、いつの間にか追い詰められているからだ。
既に深海棲艦隊は壊滅し、艦隊もオーサー型ミサイル艇は全滅、022型ミサイル艇隊は壊滅状態であり、主力艦艇はコルベットが2隻撃破・炎上していた。
「艦娘接近!!」
「撃て! 撃ちまくれ!! 撃沈…いや、殺せ!!」
馮上佐の指示に唐山の火器が接近する艦娘…深海棲艦と連邦艦隊ミサイル艇隊のど真ん中を突っ切ってきた神波…に向けられた。
しかし、撃った弾丸はまるで避けていくかの様に当たらない。
「何をしてる! 早く…」
「み、ミサイル!!」
飛来するミサイルに気付いた時には遅かった。
迎撃する暇もなく、唐山に2発命中、残りは炎上する2隻のコルベットと今まで蚊帳の外に置かれていた万景峰号に命中し、沈んでいく。
そして、未だ浮いていた唐山も神波が放った61㎝酸素魚雷が命中した。
連邦艦隊コルベット 顎州(がくしゅう)艦橋
「艦長、既に艦隊は壊滅状態です。撤退、あるいは降伏を進言します」
唯一残った056(江島)型コルベット顎州(がくしゅう)の艦橋では副長の林正義(リンヂォンイー)大校(36 男性)が艦長に対して決断を迫っていた。
「う、うるさい! このままオメオメと帰れるか!」
「ですが、既に対艦ミサイルは全弾撃ちました。いまあるのは速射砲と短魚雷のみ。これで如何に戦えと言われますか?」
「黙れ! 黙って指示に従え!!」
拳銃を抜いて林に向ける艦長。既に現実的な判断は下せていない。
「私を撃っても現状は何も変わりませんよ」
「連邦が負ける訳にはいかんのだ! 東方鬼に負ける訳にはな!」
「インテリなフリをしたバカに何を言っても無駄ですな」
「き、貴様!」
次の瞬間、艦橋に銃声が響く。
但し、心臓を射抜かれたのは艦長であった。
「艦長は味方の敗北のあまり錯乱状態に陥り、銃を抜いた為、指揮不能とみた副長が仕方無く発砲。結果死亡した。皆、それでいいな?」
砲術長がそう言って艦橋内を見回すと、艦橋要員は全員頷いた。
「ありがとう、砲術長。通信長、いま残存している味方は?」
「022型高速ミサイル2隻が残存。それ以外は撃沈・もしくは大破・通信不能と思われます。なお、深海棲艦は全滅した模様」
「残存艦に旗艦が撃沈し、臨時に本艦が指揮を執っている事を通知してくれ。それと機関を停止し、敵に投降するように、とな。本艦も機関停止。降伏旗を掲げ、火器の仰角をあげて、戦闘の意志のない事を伝えるんだ」
「「了解」」
残存していた顎州と022型高速ミサイル艇2隻の降伏により、後に『鳥取沖海戦』と命名された海戦はTJS社艦隊の勝利に終わった。
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