艦娘、PMCと共に水平線にて戦えり   作:休日ぐーたら暇人

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と言う事で2作目です。


2 シンガポール

翌日 シンガポール港

 

 

 

「タンカー4隻、入港良し」

 

 

「巻風、速風、接岸しました」

 

 

「荒雪、警戒にあたります」

 

それぞれの報告に頷き、乗艦の早潮の接岸を確認するとケイシーの方を向く。

 

 

「さて、給油手続きに参りますか」

 

 

「そうね。あっ、潮さんは?」

 

 

「キンバリー先生が診とくって。まあ、ちょっと空気を吸わせる為に甲板に出るかもしれないって」

 

 

「まあ、それくらいならいいわ。それより、厳重警戒よ」

 

「そうですね、なにも無いのがいいんだけど」

 

 

「そうならないのが、現実ってものよ。わかってるでしょうけど。もちろん、備えてるわね?」

 

 

「あぁ、とりあえずね」

 

そう言って後藤は懐のホルスターに差さるベレッタM98FSと予備弾倉2つを見せる。

 

 

「それもあるけど、艦内武器庫から出してあるんでしょう? まあ、私がとやかく言う事でも無いけど」

 

 

「備えあれば、憂い無し。ですよ、社長」

 

 

 

その頃……港内倉庫群のある倉庫

 

 

 

「おい、あれが日本に向かうタンカーと護衛のPMCの艦艇だ。情報通りだな」

 

倉庫の窓からタンカー船団を見る男達。

彼らはシンガポールに潜伏している連邦の工作員達だ。

連邦は深海棲艦や自分達だけの海上封鎖だけでは日本のシーレーンを封鎖出来ても破壊する事は不可能(更に日本は『過去の罪』により苦しんだ方がいい、とか言う連邦上層部の意見)と考え、石油等のシーレーン重要地の1つであるシンガポールに工作員を潜入させ、輸送状況などの情報を流させていた。

 

 

「日帝に向かうタンカーなど無くていい。あいつらは過去の贖罪を込めて苦しむべきだ。さらに米帝の手先だからな、存在すら死に値する」

 

 

「それに見てみろ、護衛のPMCの旗を。日帝の赤丸と米帝の白星だ。奴等の傀儡である事を誇るかの様だ。平和の敵だ」

 

 

「死をもって償ってもらうしかないな。恨むなら、雇い主を恨め」

 

3人の男達がそんな会話を交わす後ろで1人の少女が口を塞がれ後手に縛られ、転ばされながらも縄を解こうと奮闘していた事など知るよしもなかった。

 

 

 

その頃……

 

 

「では、その手順で」

 

 

「えぇ、お願いします」

 

シンガポール海軍の担当者士官と給油に関する打ち合わせを終えたケイシー。

 

 

「やれやれ、打ち合わせ中には何もなかったね」

 

 

「あら、これからが気を抜けないわよ。なにせ、給油中なんだから」

 

 

「確かにそうだね」

 

そう言いながら2人は倉庫群に視線を向ける。

すると、こちらに向かって少女が走って来ていた…後ろから厄介そうな男達を連れて。

 

 

「そう言えば、ここは軍管理区画じゃあなかったわね」

 

 

「呑気に言ってる場合かな?」

 

そう言いながら後藤は肩に掛けていた64式小銃の安全装置を確認し、『ア』から『タ』に切り替えると初弾を装填し、もう一度『ア』に切り替え直す。

その時、甲板にキンバリー先生と一緒に居た潮が声を上げた。

 

 

「ゆ、由良さん!?」

 

 

「由良!? じゃあ、艦娘か!」

 

 

「なら、保護者対象よ!」

 

そう言うと後藤とケイシーは走り出し、由良と呼ばれた少女に走り寄る。

 

 

「ケイシー、キンバリー先生と潮が来てるから、彼女を頼む!」

 

 

「オッケー、前は任せたわ」

 

 

「アイ・サー。お前達、それ以上近付くと撃つぞ!」

 

切り替え軸を『ア』から『タ』を通りこし『レ』に切り替える。

しかし、警告を向こうは聞かず、懐の深さから拳銃を取り出してきた。

 

 

「拳銃を確認。応戦!」

 

躊躇いなく引き金を引き、7.62㎜NATO減装弾が銃口から飛び出し、狙い違わず男達の1人を撃ち飛ばす。

 

 

「脅しではないぞ。そもそも、その拳銃は旧東側の工作員が持つ物だな。すると、お前達は…」

 

 

「撃て! 消せ!!」

 

 

「答えがわかりやすくて助かるよ」

 

相手が連邦の工作員となれば容赦は要らぬ。射撃反動による跳ね上がりに気を付けつつ、工作員に向けて撃ちまくる。

さすがにアサルトライフルに対して拳銃は部が悪いと見たのか逃げて行った。

 

 

「ムサシ、大丈夫!?」

 

 

「あぁ。それより、シンガポール軍に連絡先して、工作員が逃亡した事と周囲の捜索を要請して」

 

 

「さっきの騒動でシンガポール軍も動くわよ。それより、本当に工作員か?」

 

 

「間違い無いさ。それに…」

 

そう言って最初に撃ち倒された男を足で蹴ってひっくり返し、命中箇所を指差す。

 

 

「ご丁寧に、下に防弾チョッキを着てる。まあ、5.56㎜弾は防げる物かもしれないけど、至近距離で7.62㎜弾を防ぐ事は出来なかったみたいだね」

 

 

「そうね。それで、貴方はこれだけだと思う?」

 

 

「もし、これが連邦の工作で情報が向こうに渡っているなら、海中を心配するね」

 

そう言って後藤は視線を海へと向けた。

 

 

 

その頃……シンガポール港手前の海中

 

 

 

「魚雷発射用意。標的は敵の護衛艦艇だ」

 

連邦のキロ級潜水艦艦長のチョ中校は潜望鏡を覗きながら指示を出した。

彼が潜望鏡から向ける視線の先にはシンガポール港の入り口でこちらに横腹を見せるアメリカのノックス級フリゲートが見えていた。

チョ中校のキロ級潜水艦の任務は通商破壊に加え、今回は工作員の回収も含まれていた。

そして、潮の流れに微速前進で調整しつつ、こうして獲物を待っていた。

 

 

「標的は素人同然だな。あんなところに船を置き、しかも、横腹を見せるなど、撃って下さい、と言ってる様なものだ」

 

そう呟いてニヤリとチョ中校が笑った瞬間、潜水艦乗りには嫌な音が鳴り響いた。

 

 

「投下式ソナーです! 対潜ヘリに捕まりました!」

 

 

「狼狽えるな! 魚雷はっ……!?」

 

 

潜望鏡を覗いていたチョ中校はノックス級フリゲートのアスロック・ボックスランチャーがいつの間にか此方に向き、更に発射ボックスの1つが開いている事に気付いた。

 

 

「前方より着水音! 更に正面より魚雷!!」

 

 

「きゅ、急速潜行!!」

 

 

「ま、間に合いません!!」

 

ソナー手の絶叫に合わせるかのようにノックス級から発射されたアスロックが直撃した。

 

 

 

荒雪艦橋

 

 

「敵キロ級潜水艦にアスロックの命中を確認」

 

 

「シンガポール海軍に連絡して。航路の邪魔になったら本末転倒でしょう」

 

キロ級潜水艦を撃沈した改バレアレス級(スペイン海軍のノックス級派生型改造仕様)フリゲートの遠雪蘭(エン・シュェラン)艦長はそう言ってキャプテン・シートに身を預けた。

 

 

「お疲れ様です」

 

そう言って副長がコーヒーを差し出す。

 

 

「囮にする紙一重な手段だけどね。社長達の方は」

 

 

「シンガポール軍が動いているそうです。まあ、大丈夫ですよ」

 

 

「そうね。あの2人なら大丈夫過ぎるくらいね」

 

 

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