後藤執務室
「強襲部隊と輸送車両隊、満月以下艦艇の移動命令はいいな。後は航空部隊の移動命令を書けば終わり、と」
そう呟きながら伸びをする後藤。
PMCであるTJS社は陸海戦力があるなら、自前の航空戦力を保有しているのは当たり前である。
TJS社は比較的に新型機や現役機を揃えており、世界主要国に匹敵する航空戦力が揃っていた。
数的主力として少し旧型ながらマルチロール機のF/A-18レガシーホーネット40機、ヨーロッパ諸国で主力機であるユーロファイター・タイフーン20機、ロシアの最新主力機Su-35スーパーフランカー20機、ステルス機のF35ライトニングIIA型12機。
これにC-130ハーキュリーズ輸送機4機、E-2Dホークアイ4機、KC-135ストライクタンカー2機、無人偵察機プレデター・RQ-4グローバルホークが4機づつTJS社に所属している。
この航空戦力を効率的に運用し、自衛隊や在日米軍と共に深海棲艦、最近は連邦との戦いを繰り広げてきていた。
「ホーネット隊は2つに分けて、タイフーン隊は対馬方面、フランカーとライトニングは沖縄だな…重要なのは沖縄だ。対馬方面は韓国・北朝鮮が主戦力になるから、対応は可能だ。対し、沖縄は支那共産党、対応を間違えれば取り返しのつかない事になる」
事務用の椅子を回転させながら呟く後藤。
そう言いつつも、今の日本の現状から沖縄方面で何かあっても大丈夫だと思っている。
それよりも……
「問題は敵機動部隊と人造兵器か…切り札のこの2つを連邦がバラバラに動かすとは思えない。多分、合同部隊にして動くだろう…問題は何処を襲うか、だな。チッ、やっぱり専守防衛は割に合わん。せめて、先制攻撃ぐらい認めてもらわないと、再び死体の山を築きかねん…アホらしい話だ」
深海棲艦出現後も変わらず、今や連邦と言う国家間戦争中にも関わらず『専守防衛』と言う非現実的な戦術・戦略思想でいようとした日本。
だが、灰田氏の出現でそれも有名無実化したのだが…。
「……さて、とっとと仕事を終わらせて、ゆっくりしようっと」
暫くして……後藤の居室
「では、再会を祝して」
「再会って…まあ、間違ってはないが」
居室にはバラミール艦長がやって来て、再会を祝して、と評して持ち込んだ酒を杯に注ぐ。
実は後藤が海上自衛隊に在隊していた時、バラミールは一時期臨時武官として日本に来日していた。
その時、バラミールの世話をしていたのが後藤である。
同い年で気があった2人は親友となっていた。
「いやいや、君が海自を去ったと聞いた時は驚いたよ。俺の世話が最後の任務だったかな?」
「おいおい…まあ、厳格には辞める原因となった『警衛勤務』が最後の任務だよ」
「そうか……なんでああなったのかな? 普通なら君の行動は問題無いだろうに」
「仕方ないさ。自衛隊は『軍隊では無い』からな。各国軍なら許される事も、日本では非現実的な手順を踏まなければならないんだよ。なにせ、日本じゃあ警官がピストルで威嚇射撃するだけでも核ミサイルを撃たれたかの様なさわぎだからな」
「それで実際に弾道弾を撃ち込まれたら?」
「『日本ガ悪イニダアルー!!』と言って矮小化」
「笑えないな」
そう言ってバラミールが苦笑を浮かべながら杯を傾ける。
「戦後数十年の膿が出てるのさ。敗戦は全て日本が悪い事をした結果だ、それを教え込んできたから、こと軍事の事に関しては二の足、三の足を踏む……その結果がイラン・イラク戦争の一件、そして、近年の連邦出現だ」
「深海棲艦の出現は違うのか?」
「深海棲艦はどちらかと言うとゴジラ出現みたいな物だ。他国の生物兵器の攻撃なら話は別だっただろうが…まあ、仕方ないさ…馬鹿らしいけどな」
苦々しそうに言いながら後藤は杯の中味を一気に飲み干す。
「そもそも、テヘランの一件だって結局は先人の功績の結果だ。あれがなければ200余名が異国の地で死ぬ事になるかもしれなかったんだ。この時点で我々は先人に感謝し、それと同時に各種対応策を立てておくべきだったんだ。それを忘れた結果が今だ……ちくしょう、戦後から日本の対応は何時も後手後手だ、くそ」
そう言って近くに置いていた一升瓶を取ると蓋を開けラッパ飲みで飲む後藤。
「おい、飲めないのに無理して飲むなよ」
「うるせい、自棄酒ぐらい飲まないとやってらんねえよ。このままいったら、連邦やアメリカとの戦いが終わっても、また元通りにしかならんよ、けっ」
「やれやれ…そう言えば対馬への海上戦力の増援は私の指揮下でいいのか?」
「ん、あぁ、あの話な。いいぞ、なにせ、主力は敵主力艦隊の動向が掴めんから、この横須賀に待機だ」
「やはり、敵機動部隊がネックか」
「あぁ、動く航空基地だからな。独自の監視偵察衛星を持たないウチとしては厄介な話しだよ。まあ、アメリカの機動部隊よりはマシだが…厄介なのは変わり無い…だが、それは気にするな。それより、対馬を頼む」
「わかった。じゃあ、そっちも気を付けろよ」
「わかってるよ」
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