魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第3話 ホテル・アグスタ

 

 

―初任務から翌日、スバルとティアナの様子が変だ。

 

無理もない、あんな状況に追い込まれているとは思わなかっただろうからな。

 

報告書と共に書類を纏めながら二人を見てみる。

 

案の定、二人とも表情が暗い。

 

ヴィータもそれに気付いたのか、困ったような表情をしている。

 

多分、どう声をかけるべきか悩んでいるのだろう。

 

後でフォローしねえと…。

 

<ニール・ディランディ空曹長、部隊長室へ来てください。>

 

「…多分、昨日のことだろうな。」

 

[私もそう思います。]

 

昨日のこと……つまりはガジェットを倒した後に出てきたスローネのことだろう。

 

任務後に正確にはスローネアインという呼び名であることをデュナメスから教えられた。

 

ついでに朱色に近い赤がツヴァイ、血の色のような赤がドライと呼ばれていることもその時に分かった。

 

通路を歩きながらそう思っていたら、いつの間にか部隊長室の目の前に来ていた。

 

はやての性格はある程度分かっているが、誰かと話していないかを確認するために自動ドアにあるボタンを押す。

 

<はい。>

 

<ニール・ディランディ空曹長です、入っても宜しいでしょうか?>

 

<どうぞ。>

 

自動ドアを開けて中に入る。

 

部屋にははやてとリインがケーキを食べながら座っていた。

 

リインの口の周りにクリームが付いているのはお約束だ。

 

「失礼します。」

 

「ああ、楽にしてええよ。ニールさん、堅苦しいの嫌やろ?」

 

「なら、遠慮なくそうさせてもらう。それで、俺に聞きたいことがあるんだろ?」

 

俺がそう言ったらはやての表情が真剣なものへと変わる。

 

「ニールさん、なのは隊長とフェイト隊長からの報告で知ったんやけど、あの黒い人型の兵器について知っているみたいやな。」

 

呼び出しの理由はやはり俺が思っていた通りのものだった。

 

「ああ、知っている。俺もいつ説明しようかと思っていたところだ。」

 

隣にいるリインもケーキを食べるのを止めてこっちを見る。

 

「それについて説明してくれる?映像が歪んだ状態で映ったせいで正確な姿は映し出されなかったんよ…。」

 

それはGN粒子の通信などから発する電波を妨害する特徴のせいだ。

 

「…あの機体は、俺がいた世界にあったMS(モビルスーツ)という本来、人が乗れるぐらいの大きさはある兵器なんだ。」

 

「そうなんか。じゃあ、通信が妨害されたのも映像が映りにくくなったのもあの黒い機体のせいということになるん?」

 

魔法は魔法でも科学が混じっているから通用したのかもしれない。

 

「そうだな。あの機体からオレンジ色の光の粒子が出ているが、それが電波障害を起こしている。」

 

それを聞いたはやては困ったように考え込む。

 

「…厄介やな。そんなものがもし敵に量産されたら、指揮系統がズタズタになってしまう。」

 

その通りだ。実際、最初は俺たちが相手していた敵も連携が緩慢なるのもしばしば見られた。

 

だが、それよりまずははやてに確認したいことがあった。

 

「はやて、あの機体…スローネをスカリエッティが造ったとする。だが、いくらなんでも奴が一から考えたというのはあり得ない。」

 

「つまりは、ニールさんの世界から誰かがやって来てスカリエッティに教えたってことやな?」

 

「そうだな。或いはスカリエッティたち以外にレリックを狙う勢力がいて、送り込んできたか、だな。」

 

「でもおかしくないですか?それなら、私たちの戦闘中に乱入した方がいいはずですよぉ?」

 

今まで黙って聞いていたリインが意見を言ってきた。

 

「そうやな。となると、スカリエッティが造った機体である可能性の方が高いな。…はぁ〜、困ったなぁ〜。」

 

突然項を垂れるはやて。リインが横で励ますが、内容が内容なのでどうしようもない。

 

だが、ここで一つ思い付く。

 

<デュナメス、せめて通信はどうにか出来ないか?GUNDAMフォームが有るということは、GN粒子の通信妨害を防ぐことも出来るだろう?>

 

サイズ以外が再現出来ているはずだからそれも出来るはずだ。

 

[はい。デバイスの場合はプログラムによって為されています。ですので、ロングアーチの管制の皆さんに対GN粒子アンチプログラムを予め構築して教えれば大丈夫です。]

 

<よし、分かった!>

 

念話を止めて、はやてを見る。

 

「八神部隊長、俺から提案がある。」

 

「何や?」

 

デュナメスの機能を一部バラすことになるが、気にしない。

 

「俺が昨日、別の姿になったのは隊長たちから聞いたよな?」

 

「せや。本当はそれも聞きたかったんやけど、今は未確認の敵をどうするかが先やったから聞くのを止めたんよ。」

 

「その別の姿になった時のみ、通信妨害とそれを防ぐ機能が付くんだ。デュナメス曰くプログラムによって成されているから、そのシステムを利用して通信妨害を防ぐ機能を機動六課全部隊に付けるんだ。」

 

それを聞いたはやては、さっきまで沈んでた表情から笑顔に早変わりする。

 

「ほんまか!?なら、早速シャーリィに教えたって!後はシャーリィがロングアーチに教えるから。」

 

これで指揮系統はどうにかなるな。

 

「これで一つ問題が解決したけど、今度はニールさん自身のことも聞いてええ?」

 

「ああ、いいぜ。疑問に思うのは目に見えていたからな。…昨日のあの姿のことだろ?」

 

はやては顔を縦に動かして頷く。

 

「あれの名前はGUNDAMフォーム、謂わばデュナメスのフルドライブだな。」

 

「それは分かる。あれになったニールさんの魔力がワンランク上がってB+みたいやからな。これは正確な情報じゃないかもしれないから、通信妨害を防ぐ機能が付いてからもう一度測定やね。」

 

「GUNDAMフォームになると、全てのデバイスの形態の武器が色んなところに付く。更に、一部のアーマーには魔力の篭ったミサイルが隠されている。」

 

ミサイルはご丁寧に腰部のフロントアーマーと膝部アーマーに内蔵されていた。

 

もう何から何までデュナメスそのものだ。

 

「これまた凄いフルドライブやな。」

 

「だが、どうやら欠点があるようだな。」

 

フォームを解いた後にフラフラになっちまったから、多分魔力の消費が激しいのだろう。

 

[それは、一度GUNDAMフォームを使ってしまうと魔力消費が2倍になり、解除すると戦闘不能になってしまうことなんです。]

 

…俺が思っていた以上に、不味い欠点だな。

 

「う〜ん、最後の切り札ってことやな。…ならニールさん、スローネ…で良いんやな。それかスカリエッティの戦闘機人など強敵と戦う時以外はGUNDAMフォームは禁止や。」

 

「俺も丁度そう思っていたところだ。」

 

使用後に戦闘不能はリスクが高すぎるから、それぐらいしないとこの後の戦いがきつくなる。

 

「じゃあ、そろそろ仕事に戻って良いか?書類整理やっとかねえといけないんだ。」

 

「うん、戻ってええよ。」

 

それを聞いた俺は敬礼して退出した。

 

 

 

.

 

 

 

部隊長室を出た後、仕事に戻るために通路を歩いているとフェイトが歩いていた。

 

「フェイト隊長、おはようございます!」

 

念のため、部下としての挨拶をする。

 

「………。」

 

だがフェイトは黙ったままだ。

 

「おいフェイト。聞いてるのか?」

 

「え、ああ、ごめんね。…で、何?」

 

「挨拶したのに反応がなかったが…どうしたんだ一体。」

 

「あ、う、うん、ごめんね、反応出来なくて…。」

 

どうも様子が挙動不審だな…。

 

体調が悪いのか?

 

「どれ…ちょっと額に手を当てるから動くなよ?」

 

「え、ええ!?」

 

驚くフェイトだが、そんなことは気にしてられない。

 

フェイトの前髪を押し上げて額に手で覆う。

 

……少し熱っぽいな。

 

「ちょっとミス・シャマルの所へ行ってみた方がいいな。念の為に行ってみたらどうだ?」

 

「あ、えっと、別に体調が悪い訳じゃ…ないの。」

 

「じゃあ何で顔が赤いんだ?」

 

「あ、えっと…あう…。」

 

段々顔が真っ赤になってきてるな。

 

…まさかと思うが…。

 

いや、考え過ぎか?

 

「ご、ごめんなさ〜い!!」

 

「あ、おい!」

 

顔を真っ赤にしながら全力疾走で立ち去ってしまったフェイト。

 

「デュナメス、まさかと思うが…。」

 

[…おそらくマスターの思っていることと一緒です。ですが、本人はその気持ちに戸惑ってるようですね。]

 

フェイトが気付くまで待つか。

 

だが、俺はフェイトのことをほとんど知ってる訳じゃないし受け入れるのは今のところはないな…。

 

 

 

 

それに俺はまだ……。

 

 

 

.

 

 

 

数日が経ち、俺たちはホテル・アグスタでの警備の任務で現地にヴァイスのヘリに乗って向かっていた。

 

その中でスバルとティアナがさっきから俺をじっと見ていた。

 

「どうしたんだ、二人とも。」

 

「えっと、あの……。」

 

歯切れ悪くどもるスバル。

 

明らかにスバルに元気がない。

 

「あの…前の任務で守ってくれたのはニールさんなんですよね?」

 

「ん?ああ、そうだ。」

 

「あの…ありがとうございます!それと、ごめんなさい!!」

 

スバルが頭を下げる横でティアナも頭を下げる。

 

「気にするな。あれは咄嗟だったし、それにお前らはまだ始まったばかりだ。あそこで死んだらあんまりだろ?」

 

それに俺は一度死んでいる。こいつらの盾になら、いくらでもなってやるさ!

 

「スバルも、な?」

 

「…はい!」

 

よし、これで大丈夫。

 

かと思いきや、ティアナが今度は難しい顔をし始めた。

 

これは思い詰めているかもしれないな。

 

何もなきゃいいが…。

 

「ニールさん。」

 

ティアナを見ていたら、突然ミス・シャマルが覗くように顔を近付けてきた。

 

「うおわっ!…ビックリさせないでくれ、ミス・シャマル。」

 

「だって話を聞いてないんだもん!それに、私のことはシャマルさんかシャマルで呼んでね。」

 

ミス・シャマル…いや、シャマルから顔を離す。

 

本当に心臓が止まるかと思ったぞ!

 

「分かった分かった。それで、何だって?」

 

「ニールさんには、ホテル内の警備を頼みたいのよ。それで、中では制服だとダメだから私が用意した服に着替えてほしいの。」

 

半ば頷きながらシャマルを話を呑み込んでいく。

 

……気のせいかもしれないが、なのはやフェイトに睨まれながら。

 

 

 

 

.

 

ホテル内部

 

ホテルに着き、中に入るとパーティーが始まるかのような光景が広がる。

 

「こういうのは久々だな…。」

 

久々というのは、武力介入開始前の潜入ミッションのことだ。ミッション内容は人革連の軌道エレベーター『天柱』でのパーティー会場で情報収集。今回はオークション会場の警護だから目的は違うが、こういう盛り上げようという雰囲気が同じなのだ。

 

因みにデュナメスはポケットに閉まってある。

 

「お待たせ、ニールさん。」

 

俺が後ろを振り返ると、そこにはドレス姿に綺麗に化粧の為されたなのは、フェイト、はやてがいた。

 

「おお、三人とも似合ってるぞ!」

 

改めて見ると三人とも美人なんだよなあ……。

 

「にゃはは、ありがとう。」

 

「ふふ、ありがとなニールさん。」

 

「あ、ありがとう、ニール。」

 

ピキッ

 

ん?なのはの雰囲気が変わった。

 

というより黒い何かが見え隠れし始めているぞ!

 

「私たちのことは分かったけど、ニールさんもようスーツ似合っとるよ。正に大人の男って感じやな。」

 

そう、今の俺の格好は制服ではなくパーティー用のスーツになっている。

 

「お、おう、ありがとうな。」

 

なのはの目付きが、段々険しくなってきている。

 

「ニールさん、どうし……ってあれ、もしかしてユーノ君?」

 

「あれ、もしかして…なのはかい?」

 

横から黄土色の長い髪を後ろに一つで縛ってメガネをかけ、抹茶のような渋い緑色のスーツで学者のような雰囲気の青年がなのはに声を掛けられてこっちに来た。

 

「やっぱりユーノ君だ!」

 

もしかして無限書庫の司書をやっていて、考古学者でもあるユーノ・スクライアのことか?

 

まさか、俺より年下だとは思わなかったな。

 

「ユーノ、どうしてここに?」

 

「僕はオーディションに参加しにきたんだ。なのはたちは?」

 

「私らは警備の仕事や。せや、私の隣にいるのが以前に話したニールさんなんよ。」

 

はやてが紹介をしてきたので、ユーノの方を向く。

 

「ユーノ・スクライアです。貴方のことはなのはたちから聞いてます。」

 

「俺の名前はニール・ディランディ、宜しくな。俺はユーノと呼ばせてもらうが、そっちもニールと呼んでくれて構わない。」

 

俺はユーノに手を差し出す。

 

「じゃあ、遠慮なく。宜しく、ニール。」

 

ユーノは俺の手を握る。

 

その時、デュナメスから念話が入ってきた。

 

[マスター、たった今フォワード陣からガジェットとアンノウンを確認したと報告が入りました。…アンノウンは人型の濃い赤色の機体とのことです。]

 

おそらくドライだな。

 

(分かった、今行くと伝えてくれ。)

 

「すまない、ちょっと外へ行ってくる。」

 

「…来たんやな?」

 

「よく分からないけど、行ってらっしゃい。」

 

俺は手を振りながら外へと歩いていく。

 

 

 

 

.

 

 

 

外に出ると、既にガジェットが所々で飛び交っていた。

 

辺りを見渡してスバルたちを探す。

 

「見つけた!……ちっ、急がねえと!!」

 

スバルたちはガジェットを堕としながら、スローネドライを相手にしているという厳しい状況で戦っている。

 

ヴィータがスローネの相手をしているものの、やはりあの装甲のせいで吹き飛ばす程度にしかならない。

 

幸い、スローネドライはGN粒子の貯蔵量が三機の中で一番多いものの武器自体は一番弱い。

 

とはいえ、このままでは突破されてしまう。

 

「デュナメス、セットアップだ!」

 

すぐにバリアジャケット姿になり、空中へと飛んでいく。

 

数が多いため、まずはガジェットを減らすことを優先する。

 

ピストルフォームにして、10体ものガジェットを一気にフォトンマシンガンで堕とす。

 

「ニールさん!」

 

キャロが駆け寄ってくる。

 

「今すぐスローネを…。」

 

「ニールさん、さっきスバルさんとティアさんが二人であの赤い機体を相手するって…。」

 

「何!?」

 

おいおい、無茶だろうが!

 

それに、怪我したら簡単に治らねえかもしれないんだぞ!

 

擬似太陽炉による攻撃は細胞破壊がオリジナルより酷い。

 

「エリオとヴィータは?」

 

「エリオ君はガジェットの相手をしてます。ただ、数が多い上にさっきから動きが良くなり始めてます。ヴィータ副隊長は赤い機体に吹き飛ばされてしまって…。」

 

なおのこと不利じゃねえか!

 

「とにかくキャロ、ガジェットは頼む。あのスローネは俺が倒す!」

 

「は、はい!」

 

間に合ってくれよ!

 

 

 

.

 

 

 

敵影が見えたところで、スバルとティアナの姿が見えた。

 

二人ともまだ無事だが、疲れているのか息を荒くしながらスローネを睨んでいる。

 

ヴィータは気絶はしてないものの、地面に膝を着いている。ダメージがあるのだろう。

 

一方のスローネは無傷で空中でオレンジ色の粒子を撒き散らしながら浮いていた。

 

「デュナメス!」

 

[stinger ray.]

 

しかし、容易く避けられてしまう。

 

俺の射撃をひょいひょい避けやがって…!

 

「くそっ!」

 

「ニールさん、こいつの相手は私とスバルでやります。」

 

どう見たって今は無理だろうが!

 

<ティアちゃん、あまり無茶は駄目よ!ニールさんからも止めて!!>

 

シャマルから念話が入ってくる。

 

「そうだ、そいつの相手は俺が…。」

 

「私とティアでやります!大丈夫です、必ず倒しますから!!」

 

そういう問題じゃねえってのに!

 

「どう見たって二人とも疲弊してるだろうが!!…俺も一緒に!」

 

「スバル、クロスシフトBよ!!」

 

「了解!」

 

ティアナは俺の忠告を無視してスバルに指示を出す。スバルは魔力で道を作るウイングロードを形成して、スローネへと突っ込んでいく。

 

「クロスファイヤー…」

 

その間にティアナが二丁になっているクロスミラージュから薬莢を排出し、幾つもの魔力弾を周囲に形成する。

 

[マスター、あれではスバルに当たってしまいます。頭に当たる可能性が高いです。]

 

ゴーグルを付けて見ると、予測される一つの魔力弾の射線上にスバルが入ってしまっている。

 

「待て、ティアナ!」

 

だが、言うのが遅かった。

 

既に発射態勢が完了していた。

 

「…シュート!」

 

放たれた魔力弾の数々はスローネへと向かっていく。

 

だが、一つだけは逸れてスバルの頭へと向かっていた。

 

 

 

.

 

 

 

「スバル、避けろおおおおお!!」

 

目を見開いて声の限りにスバルへと叫ぶ。

 

「えっ!?」

 

スバルが振り向くも、もう防御も回避も不可能だ。

 

ティアナも驚愕の表情でスバルを見る。

 

くっ、駄目だ、間に合わねえ!!

 

しかし、その魔力弾はヴィータがグラーフアイゼンで弾き飛ばす。

 

「おい、味方を巻き込むことが作戦なのか、答えろティアナ!!」

 

ティアナは茫然としてて答えない。

 

「ちっ、もういい、スバルと一緒に下がっていろ…って、スバル後ろだ!」

 

だが、隙を突くようにスローネがスバルに向けてビームサーベルで斬りかかってくる。

 

「えっ、うわっ!」

 

スバルはなんとか避けるが、不安定な姿勢になってしまいウイングロードから落ちてしまった。

 

地面に叩きつけられたら大怪我じゃすまない。

 

「スバル!」

 

「わあああああああああああああああああ!!」

 

そこに俺が急いで割り込み、スバルをギリギリでキャッチする。

 

「どうにか間に合ったな。…それより、さっきのは無茶が過ぎるな。」

 

反省しているのか、落ち込んでる。

 

「ごめんなさい…。」

 

「とにかく、ティアナの所へ行って下がっていろ。あとは俺とヴィータがやる。」

 

「…はい。」

 

落ち込みながらもまだ戦闘中のため、急いでティアナの元へ走るスバル。

 

それを見た俺は上空で戦っているヴィータの元へと飛んでいった。

 

上空に着くと、ヴィータは自分の攻撃が効かないことに苛立っていた。

 

「駄目だ、アイツの装甲が固くて効いている感じがしねえ!しかも、ギガントシュラークでも傷一つつけられないし…ちっ!」

 

スローネから放たれるビームガンを横に避ける。

 

「ヴィータ、俺にもやらせてくれ。」

 

さっきのティアナとスバルの件もあってか、ヴィータは俺を睨み付けてくる。

 

「おい、お前も無茶をするんじゃないだろうな!」

 

「俺のデュナメスなら、奴を撃ち抜ける。それと今回はヴィータもいるからGUNDAMフォームは使わない。」

 

ガジェットも気になるから、ここでフルドライブを使うのは得策じゃない。

 

「…分かった。なら、あたしが奴の注意を引き付けるからきつい一発お見舞いしてやれ!」

 

なら、ここはディバインバスターだな。

 

一撃で仕留めてやる!

 

 

 

 

.

 

 

 

「へっ、了解だ!」

 

そこに俺とヴィータに向けてビームガンと右肩のミサイルを乱射してくる。

 

速さが無いため、俺とヴィータは簡単に避ける。

 

だが、ここでスローネが突然離れた。

 

「何だ、何をやるつもりだ?」

 

スローネドライには特殊な装備がある。

 

GN粒子を戦場に撒き散らし、通信遮断や相手の追跡を防ぐ効果のあるGNステルスフィールドだ。

 

だが、奴がここで逃げる意味があるとは思えない。

 

…嫌な予感がする!

 

「ヴィータ、奴を止めてくれ!」

 

だが、スローネの背中のバックパックから既に大量のオレンジ色の光の粒子が漏れ出ていた。

 

そして、大量の粒子はホテル・アグスタを含め、辺り一帯を夕焼けとは違うオレンジ色の空へと塗り替えていった。

 

スローネのステルスフィールドにより、辺り一帯がオレンジ色の空へと染まると、他の所から何故かガジェットが何十体もスローネに集まってくる。

 

ガジェットを見ると点滅しているかのように見えたり隠れたりしている。

 

「一体何が…!?」

 

後ろから突然現れたガジェットにすぐに気付き、咄嗟に避ける。

 

咄嗟だったため、コートに穴が開いてしまう。

 

「まさか、相手に姿を見えづらくさせる効果があるのか!?」

 

ヴィータも奇襲を受けながらも、無傷で避けたり捌いたりする。

 

「ちっ、とにかくスローネを堕とさねえと…!」

 

スティンガーレイでスローネを攻撃する。

 

避ける気配がない。

 

だが、撃ち抜く瞬間にガジェットへと姿を変え、爆散する。

 

「いつの間に!?」

 

「ニール、無闇に攻撃するな!」

 

続いて攻撃しようとしたところで、ヴィータによって止められる。

 

「……そうだな。だが、どうする?これじゃ数で押されちまうぜ。」

 

実際、2対不特定多数の状況。

 

俺はこういう幻覚とかへの対処には疎い。

 

訓練ならともかく、今は実戦だ。

 

口振りからして対処法を知っているだろうヴィータからの指示を聞いた方がいいだろう。

 

「あっちが数で来るなら…アイゼン!」

 

[gigant form.]

 

カートリッジを装填し、グラーフアイゼンが大型の角柱のような形のハンマーへと姿を変える。

 

「あたしのアイゼンで、ガジェットを一掃するから赤い奴が出たら今度こそ破壊しろ!」

 

何ともヴィータは豪快だな。

 

それでいて利に叶っているから侮れない。

 

「いいぜ、いつでも!」

 

「巻き込まれないように上にいろよ。豪天爆砕、ギガント…」

 

右横へと振る構えを取る。

 

ハンマーの角柱部分が巨大化する。

 

「シュラーク!!」

 

巨大化したハンマーを野球でバットを振るかの如く、風をも叩く勢いでフルスイングした!

 

 

 

.

 

 

 

ヴィータの巨大化したグラーフアイゼンが次々とガジェットを幻覚も何も関係なくぶつけては破壊していく。

 

最早数も何も関係なかった。

 

「あんだけ手こずったのが嘘みてえだ。そろそろ捕まるか?」

 

スローネが姿を現すのに備えて、ライフルフォームへとデバイスを変えてゴーグルをかける。構えて、魔力を銃口に集中させる。

 

[ディバインバスター、準備完了。いつでも行けます!]

 

「そこだ、叩け――――――――――!!」

 

ヴィータは横に一回転させたところでハンマーを地面に叩き付けた。

 

ヴィータがハンマーを離すと、そこにはスローネドライが仰向けに地面にめり込んでいた。

 

「今だ、狙い撃つ!」

 

[divine buster.]

 

発見次第、すかさずディバインバスターを発射する。

 

俺が放った光の大砲はスローネの胸部のGNドライブへと見事命中、爆散した。

 

その爆風から朱い光の粒子が火山の噴火のように空中へと舞い、雪のように漂いながら地面へと降り注ぎ消えていく。

 

「ふう……今回はヴィータがいなかったら、危なかったな。」

 

「そう思うなら、今度は幻覚魔法の対処の訓練をビシバシやるからな、覚悟しろ!」

 

「うわっ、帰りたくねえな。」

 

「駄目だ、お前が前にあたしのことを小さいつったお返しだ!」

 

そっちが本音かよ!

 

本気で帰りたくなくなってきた。

 

それにしても……

 

「ティアナの奴、何であんな無茶をしたんだろうな。」

 

俺の呟きを聞いたヴィータが神妙な表情で俺を見る。

 

「……ティアナには、兄が一人いた。そいつも管理局だったんだが、殉職しちまったんだ。その時にどっかのバカが死んだあいつの兄を屑呼ばわりしたんだよ。」

 

なるほど、大体読めた。

 

「つまりは、自分の兄を周りに認めてもらいたくて躍起になってるってことだな。」

 

だがどんな理由でも、焦りは死に繋がる。

 

…今のうちにそのことを言っとかねえとまずいな。

 

 

 

.

 

 

 

ティアナside

 

結局あの後、スローネという人型の機械はヴィータ副隊長とニールさんが倒し、私とスバルは敵があまり来てない裏庭で警備をする事になった。

 

でも、

 

失敗してしまった……。

 

危うくスバルに当てて大怪我を負わせてしまうところだった。

 

でも、それ以上にあのスローネに傷一つ付けられなかったのが、一つも当てられなかったのが何より悔しかった。

 

結局、私は凡人……。

 

だからこそもっと、自分を鍛えていかないと!

 

でも、まずはスバルに謝ろう。

 

流石にあれは不味かったしね。

 

「ごめん、スバル。大丈夫だった?」

 

「あ、うん、あたしは大丈夫。」

 

見ても外傷は大したことないから大丈夫だろう。

 

「次にあの敵が来た時は、今度こそ私たちで倒しましょう。」

 

「…あの…さ、ティア。ここのところ、何だか無茶しているように見えるんだけど大丈夫?」

 

「大丈夫よ。」

 

でも、これじゃまだ足りない!

 

もっと強くなるために自主訓練しないと!!

 

そうしないと、

 

ランスターの銃はどんなものも撃ち抜くということを証明出来ない……。

 

 

 

 

.

 

 

 

???side

 

一体、どうしてこうなってしまったのだろう。

 

当時、時空管理局で部隊の隊長を務めていた私は部下と共に犯罪者であるジェイル・スカリエッティの研究所へと潜入した。

 

しかし、結果は全滅。

 

クイントは殺され、メガーヌは奴の研究所で眠っている。本来なら私もクイントと同じように戦闘機人に負けて死ぬはずだった。

 

しかし、私はスカリエッティに一時的に蘇生された。

 

「ゼスト。」

 

今はメガーヌの一人娘であるルーテシアと旅の途中で救った古代ベルカのユニゾンデバイスのアギトと一緒にいる。

 

「おい、オッサン。」

 

正確には、ルーテシアの目的のメガーヌを復活させるために必要な11番目のレリックを探し出すことと、スカリエッティから聞かされたレジアスについて本人に直接会って考えを聞くという私自身の目的を元に行動している。

 

勿論、部下の一人娘の護衛という意味合いもある。

 

「ゼスト、どうしたの?」

 

だが、スカリエッティの手のひらの上に乗っているような気がしてならない。

 

このままでいたら、ルーテシアが何をさせられるか分からない。

 

本来なら真っ先に斬り捨てたいところだが、ルーテシアとアギトを巻き込む訳にはいかない。

 

それに、去年に会ったあの男……アリー・アル・サーシェスは危険だ。下手すればスカリエッティ以上に危険だ。

 

あの男は私を見つけるなり、いきなり赤い機械のような格好になって斬りつけてきた。

 

それも楽しそうに。

 

まるで赤い悪魔のようだった。

 

奴を自由にしたら、どれだけの惨劇が起きることか……!!

 

「お〜い、ゼストのおっさん!聞いてんのか!?」

 

む、いかんな。考え込みすぎたようだ。

 

「…ゼスト、何か考えていた?」

 

「すまん、二人とも。…あまりここにいても仕方ないな、行こう。」

 

私に残された時間はない。

 

早くどうにかせねば…!

 

 

 

.

 

 

 

スカリエッティside

 

「ドクター、スローネドライは破壊されてしまったようです。」

 

ウーノの報告を水を飲みながら聞く。

 

今回送ったスローネドライはどちらかというと実験機のようなものだからね。

 

でも、思っていたよりあっさりやられてしまった。

 

「いいよ、あれはアイン以上に実験機の意味合いが強かったし。…君としてはどうだい、クアットロ。」

 

ステルスフィールドという結界魔法のようなものを使ってくれたのはいいけど、あれだけやられてしまってはクアットロのISシルバーカーテンの方が余程使いやすい。

 

「私としては、私のISの方が幻覚魔法という意味で上手く相手を騙せますわ。」

 

「そうだね、あれは元々主に撤退したりする時に使うものらしい。幻覚は私が後付けにしたに過ぎない。」

 

「それにしてもドクター、あの緑色の男についてなのですが……もしや、サーシェスと同じ世界から来たものではないでしょうか?」

 

トーレは紅茶を飲みながら聞いてくる。

 

「そう見て間違いないね。彼も要注意だが、サーシェスが彼の相手をしたがっていたから大丈夫だろう。」

 

これで何も支障はないはずだ。

 

 

 

.

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