魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第4話 悲しみと憎しみ

―ホテルの任務から数日、俺はヴァイスを誘って食事を摂ることにした。

 

今日のメニューはロールパンとマッシュポテト、スクランブルエッグにコーヒーだ。

 

それと俺の好物はポテトだ。

 

その好物が材料のマッシュポテトを食べながらヴァイスの話を聞いていた。

 

話している内容は、最近のティアナの様子。

 

「……じゃあ何か、ティアナは訓練後も自主訓練をやっているのか?」

 

幸い、ティアナは今ここにいない。

 

「ああ、もう完全に焦りながら夜に自主訓練やってたな。俺も流石に止めてみたんだが、ダメだな。」

 

話し掛けたくても数日間、ヴィータに幻覚の対処法を散々叩き込まれたせいでティアナとあまり話せない。今日もまだ穴があるからとヴィータに付きっ切りで教えてもらうことになっている。

 

このままだとそのうち、疲れが訓練に出ちまう。そうなったらなのはのことだ、確実にスバル共々お仕置きをする。

 

お仕置きは仕方ないが、ただそれで今後なのはと二人がギクシャクしないか心配だ。

 

「分かった、俺からもティアナに無茶は止めるように言っておく。」

 

だから、今日はなんとしてもティアナに注意しよう。

 

「頼むぜ。俺から見て、もう今日ぐらいにしねえと、もし実戦になっちまったら取り返しがつかなくなっちまう。」

 

俺は話しているうちに温くなってしまったコーヒーを飲みほして頷いた。

 

 

.

 

 

 

朝食を食べ終わり、訓練場に着く。

 

今回は廃墟になった都市が形成されていて、一番高いビルの屋上にフェイト、エリオ、キャロ、ヴィータがいた。

 

一方、今からなのはと模擬戦をやるのか、スバルとティアナはバリアジャケット姿になっている。

 

なのはも同じで、既に空中に浮いている。

 

因みにシグナムは本局に用が有っていない。

 

「あっ、ニール。」

 

フェイトが気付き、こっちを振り向く。

 

フェイトもこの後に何かやるのか、フォワード陣と同じ訓練着を着ている。

 

「今からチーム別に模擬戦か?」

 

「うん、私もエリオとキャロと模擬戦なんだ。」

 

「俺はねえのか?」

 

「ニールさんだと私もすぐにやられちゃうから…。」

 

顔を赤らめて何故か胸を隠す。

 

「おい、何か誤解してないかフェイト。」

 

「ううん、ただなのはみたいに恥ずかしいことになっちゃうのかなと思って……。」

 

本当に何を言ってるんだ、この娘は……!

 

フェイトに誤解を解こうとしたが、ヴィータが俺の手を軽く叩いてきた。

 

身長差のせいで俺の手までしか届かないのだ。

 

「おい二人とも見ろ。ティアナの奴変じゃないか、なんかいつもより元気がないように見えるんだけど…。」

 

「僕から見ても何だかいつもより魔力弾の速度が遅い気がします。」

 

ヴィータとエリオが模擬戦の様子を教えてくれたので、ティアナのいる下に向き直す。

 

……早速ヴァイスの言った通りになっちまったか。

 

クロスファイヤーの威力が貧弱だ。

 

なのはも気付いたのか、苦い表情をしている。

 

スバルがなのはへと突っ込んでいく。

 

しかし、スバルの攻撃はなのはの防御に阻まれる。

 

「おいおい、そんな突撃思考が通用する相手じゃないだろ!」

 

そこに別のビルにいたティアナが姿を見せて、砲撃の準備をする。なのはがアクセルシューターを撃ち込むと、当たるでもなく消えた。

 

フェイクシルエットか。

 

「!?あそこに!」

 

エリオが上を指差す方を見ると、ウイングロードを駆け上がるティアナがいた。

 

そして、クロスミラージュの銃口から魔力刃を形成して跳んでなのはの背後に向かって突撃する。

 

「一撃必殺!」

 

急場しのぎで作ったのが分かる魔力刃、おそらくなのはの防御は貫けない。

 

それに、こんなの実戦で使ったら肉を切らせて骨を断つにもならない。なのはに接近戦をするならせめて、フェイトやアレルヤのキュリオスのようなスピードと速度制御か、シグナムやヴィータや刹那みたいに接近戦に自信を付けないと駄目だ。

 

「レイジングハート、モードリリース……。」

 

ティアナの突撃に気付いたなのはは落胆を帯びた表情で呟き……

 

 

 

行き場のない魔力が拡散し爆発する。

 

「くっ、三人ともどうなった?」

 

爆風が止むとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

「おかしいな、どうしちゃったのかな二人とも。」

 

 

 

 

 

 

 

なのはに右の拳を掴まれたまま固まるスバル

 

空中で魔力を帯びながら固まるティアナ

 

そして、スバルのリボルバーナックルを左手に、ティアナの魔力刃を右手で掴んでいるなのはがいた。

 

 

 

 

.

 

 

 

魔力刃を掴んだなのはの右手から血が流れる。

 

「こんな無茶をするなんて…模擬戦は喧嘩じゃないんだよ?」

 

なのはの表情が恐いぐらいに無表情だ。

 

だが俺には悲しそうに見えた。

 

「あ…あの…。」

 

なのはの思わぬ行動にスバルは戸惑い、声が震える。

 

「強くなりたいという気持ちも焦る気持ちも分かるけど……」

 

ティアナの顔が少し青い。

 

「これじゃ模擬戦の意味、無いじゃない。」

 

このままじゃ、本当にギクシャクするようになっちまう。

 

…仕方ない、俺が何とかするしかないな。

 

「くっ!」

 

「ニール、何を!?」

 

フェイトが俺を止めようとするが気にしてられない。

 

[mode reliese.]

 

「私は、もう失いたくないから!」

 

なのはから離れたティアナはクロスミラージュの銃口をなのはに向ける。

 

俺は急いでバリアジャケット姿へと変わる。

 

「傷つけたくないから!」

 

ティアナの周りから魔力弾が現れる。

 

「強くなりたいんです!!」

 

ティアナの目から涙が溢れる。

 

「クロスファイヤー。」

 

「なのはさん!?」

 

なのはの右腕からもいくつもの魔力弾が形成される。

 

スバルが止めようとするも、止まらない。

 

「だから…うああああ、ファントムブレイ…!」

 

錯乱したティアナが涙を流しながら魔法を発射しようとするもなのはが許すはずがない。

 

「シュート。」

 

案の定、なのはの方が速く発射してしまった。

 

[protection.]

 

横に俺が割り込み、爆発が起こる。

 

「……何で邪魔するの、ニールさん。」

 

なのはが冷徹にこちらを睨み付ける。

 

俺はそれを意に介さずにティアナの傍に着地する。

 

「ニール、さん?」

 

ティアナが茫然として俺を見る。

 

そんなティアナに向き直り、俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一発彼女の頬を思いっきり叩いた。

 

頬を叩かれたティアナはその場でへたり込む。

 

「ニールさん!?」

 

スバルが悲鳴にも似た声で叫ぶ。

 

なのはも予想してなかったのか、驚愕の表情で俺を見る。

 

下で見ている四人もただ驚いた表情で俺を見る。

 

「ティアナ、何で俺に殴られたか……分かるか?」

 

「わ、分かりません。」

 

声を震わせながら俺の質問に答える。

 

多分、今の俺の表情が恐いのかもしれない。怒っているからな。

 

でも、そんなことは今どうでもいい。

 

「俺から見て、六課に来てからのお前は焦ってばかりだった。そして、焦るあまり必要以上に訓練をやっている。」

 

俺の言葉を聞いたティアナは俺を睨み付ける。

 

「っ!貴方も自分でどうにかすることを考えちゃいけないって言うんですか!?」

 

…分かっちゃいねえ!

 

「違う、お前がやったことは実戦での自殺行為と同じことだというんだ!なのははただ、実戦でお前たちにそんなことをして命を落とすようになって欲しくないから敢えて厳しくやっているだけだ!!」

 

「やってみなくちゃ分からないじゃない!」

 

それでもティアナは納得出来ずに食い付いてくる。

 

「分かるんだよ、俺が無茶な判断をして……ラーナは……。」

 

あの時、苦肉の策とはいえ一人で行かせてしまった。

 

他に方法がなかったとはいえ、無茶な判断だったことに変わりはない。なのはもフェイトも、そして一緒に最後を看取ったシグナムも気にするなと言ってくれたが、今でもあの時の判断が良かったと俺には思えなかった。

 

「あ……。」

 

「ニールさん、やっぱりまだ後悔して……。」

 

気付いたティアナは、さっきまでの剣幕とはうって変わり、落ち込む。

 

なのはもさっきの表情から悲哀の色へと変わっていく。

 

「それだけじゃない、俺も、無茶して一度死んだんだからな……。」

 

口から出た本音に気付いた時には既に遅かった。

 

「それって、どういう意味なの?」

 

呟きを聞いたなのはが怪訝な表情でこっちを見ている。

 

っ、ちょっと喋りすぎたな。

 

「……今は答えるつもりはない。」

 

 

空中を降り、後ろで呼び止める皆を無視して隊舎内へと戻っていく。

 

 

 

 

.

 

 

 

隊舎へ戻り、通路を歩くとザフィーラが人型で歩いていた。

 

ていうかザフィーラが人の姿になっているのは初めて見たな。

 

ザフィーラの容姿は、銀にも見える白い髪に肌が黒く、背も俺より少し高い。

 

筋肉が有り、来ている制服から胸筋がワイシャツ越しに見えている。

 

「私が誰なのか、分かっているのか?」

 

そりゃ頭と後ろの尻尾見れば分かるだろ。

 

「ザフィーラだろ?」

 

口調も同じだしな。

 

「そうだ、よく気付いたな。」

 

もしかして、初対面だと気付かれないとかか?

 

「いつもは狼の方を見掛けるから、一瞬誰かと思ったぞ。」

 

「だが、お前は気付いてくれた。やはり見所があるな。」

 

いや、そこでそう言われても嬉しくは……

 

って、そんなことを言ってる場合じゃないな。

 

「…突然ですまないが、ザフィーラは戦場がどういうもんなのかは分かるか?」

 

それは、さっきティアナに言ったことにも繋がることだ。

 

この部隊で戦争を知っているのがどのくらいいるのか、実は俺は知らない。

 

俺以外のフォワード陣は少なくとも知らない。

 

はやて含め隊長陣はおそらく知っている。でなければ隊長なんて出来ないだろう。

 

なら、シャマルやザフィーラ、リインやロングアーチの皆、ヴァイスたちヘリ部隊などの人達はどうなのだろう。

 

「シグナムやヴィータのことは知っているだろうが、私やシャマルもまたそういった厳しい状況は嫌という程味わってきた。我らヴォルケンリッターは長く戦い続けてきた。」

 

遠くを見つめながらザフィーラは語る。

 

ヴォルケンリッターが何なのかは置いといて、今の俺にはザフィーラが何を言っているのかが解る。

 

俺より沢山戦いを…争いを見てきたのだろう。

 

ザフィーラの目から悲哀と闘志と決意と、様々な感情が複雑に絡み合っているのが見えた。

 

「そうか…。」

 

こうして俺よりも長く苦しんだ男がここにいる。

 

分かっていたことだが、やるせない。

 

「そういうお前こそ、随分と大変な戦いをしてきたのではないか?」

 

次の瞬間にそう言われるとは思わず、俺は驚いてザフィーラの顔を見てしまう。

 

「お前の目を見ていれば分かる。そういう目は、戦いを知ってなければ出来ない。」

 

 

知ってる奴にはやっぱり分かっちまうか。

 

 

「ディランディ、前にいた世界でも戦っていたと聞いている。しかし、誰からもどんな戦いをしたのかを聞いていない。…せっかくだ、答えてもらえるか?」

 

 

どうする?

 

言えば、下手すれば犯罪者として捕らえられることになるかもしれない。

 

だが、こうして誰にも言わないというのも正直疲れる。

 

それに、さっき口が滑ってしまったこともあり、誰かに追求されるのも目に見えている。

 

それでも、知らない仲ではないとはいえザフィーラに今言うのは流石に気が引ける。

 

「すまない、今は語ることは出来ない。どう言うかまだ整理も着いていない。だが、いずれにせよ話すなら皆に纏めて話す。その時でもいいか?」

 

「ふむ、分かった。そういう話はこんなところですることでもない。その時に聞かせてもらおう。」

 

分かってくれたようだな。

 

俺はそれを確認すると、部屋へと歩き出していった。

 

 

 

 

.

 

 

 

部屋へ戻り、勝手に休んでいた俺に念話が入った。

 

<ニールさん、今からそっち行ってもいい?>

 

声の主はなのはだ。さっきのこともあり、元気がないのがすぐに分かった。

 

<いいぞ、わざわざ念話使わなくたって入ってくりゃいいんだ。>

 

「……お邪魔します。」

 

 

声のトーンが低かったが、表情も雰囲気も明らかに暗い。

 

相当、スバルとティアナのことで参っている様子だ。

 

「それで、何だ?…そういや、なのはは甘い方がいいんだったな。」

 

俺は客用に置いてある紙コップにコーヒーを注いでいく。

 

「うん、甘い方が好きだよ。」

 

俺はブラックでもいけるからそのまま。

 

「どうぞ。」

 

なのはにはミルクと角砂糖の入った瓶を用意する。

 

「ありがとう。」

 

なのはは貰ったコーヒーに早速ミルクと角砂糖を1個入れる。その表情はまだ暗さがあるのか、無理やり明るくしている感じがする。

 

「で、どうした?」

 

俺が促すと、コーヒーを一口飲んだなのはがカップを置いて悲しそうに俺を見る。

 

「私の教え方、間違っていたのかな?ティアナがまさかあそこまで無茶をするとは思わなくて……。」

 

俺は以前からその兆候があるのを知っていた。

 

……完全に俺のミスも入ってるじゃねえか。

 

「いや、それについては俺も失敗したところがある。今日、フォローするはずだったんだが遅かった。」

 

だからティアナを殴って(実際はビンタ)まで間違いを正そうとした。

 

我ながら俺らしくない強引なやり方だ。

 

「私の教導って地味だけど、無茶をしない程度に訓練を組んだつもりだった。でも、教えたかったことがあの子たちに伝わってなかった。そのせいであの子たちは無茶なことをしてしまった。」

 

なのはの中では今、上手く出来なかったことへの負い目が渦巻いているだろう。

 

「だが、なのははそれで分かったことがあるだろう。なら、それを自分で今から言葉にして伝えりゃいいじゃねえか。それが、お前がフォワードの皆に伝えたかったことだろ?」

 

「でも、ちゃんと分かってくれるかな?」

 

まだ迷ってんのかよ。

 

そんななのはの額にデコピンをお見舞います。

 

小気味よくバシッという音がした。

 

「あうっ!」

 

「四の五の言わずにやりゃあいいんだ。なのはは時空管理局の美人の教導官だろ?」

 

右手でなのはを狙い撃つように指を指す。

 

「ふふふ…高町教導官、でしょ?」

 

漸く笑ってくれたか。

 

「これは失礼しました、高町教導官殿。」

 

わざとらしく敬礼をしてみる。

 

「でもありがとう、ニールさん。私、ティアナと話し…!?」

 

機動六課内でアラートが鳴り響く。

 

「どうやら、それは後にするしかないようだな。…行こう。」

 

 

全く、タイミングが悪いぜ!!

 

 

 

 

.

 

 

 

屋上へ行き、ヘリポートへ向かう。

 

そこには隊長陣、フォワード陣どちらも全員がいた。

 

「今回は空中戦になるから私とフェイト隊長とヴィータ副隊長が出るよ。ニールさん以外のフォワードの皆は待機。シグナム副隊長も念のため待機。ニールさんはスローネが出てきた場合を考えてヘリコプター内で待機してて。」

 

スローネは途中で出てくることもあるから、俺がいた方がいいということだな。

 

「了解だ。」

 

指示を聞いた俺はヘリコプターの中へと乗り込もうとする。

 

そこにヘリに先に乗っていたヴィータがなのはに近付く。

 

「なのは、ティアナは待機から外した方がいいんじゃねえのか?万全じゃねえだろ。」

 

「うん……そうだね。ティアナは、待機から外そうか。」

 

 

なのははやんわりとティアナに指示を出す。

 

仕方ないよな、心身ともに戦える状態じゃない。

 

が、その指示を聞いていたティアナの顔が強張っていく。

 

「…使えないから、そこで待ってろってことですか?」

 

 

全然違うぞ、ティアナ。

 

そこにシグナムが近付き、ティアナを思いっきり殴る。

 

「戦場を侮っているから出さんということだ!」

 

まずい、これはティアナが認められてないと誤解する!

 

「シグナム、ティアナは別に戦場を侮っている訳じゃない。そこを間違えたらダメだ。」

 

「ディランディ、実際に戦うことを考えてない時点であんなカウンターを考えてない作戦を考える。そんなことをされては背中などいつまでも預けられん。」

 

シグナムなりに考えての叱責だが、気の強いティアナが疑心暗鬼の状態で言ったら伝わらない。シグナムに申し訳ないが、反論させてもらう。

 

「やりすぎとはいえ、全部を認めないような言い方をすれば反感を覚えるのは当然だ!…すまないが先に行ってくれ、少し話したらすぐに行く。」

 

こんなんで出撃したらどうなるか分かったもんじゃねえ。

 

「分かった、ちゃんと追い付いて来てねニール。行こう、なのは。」

 

「……うん。」

 

フェイトに促されてヘリコプターへ乗り込むなのは。

 

俺はそれを見送り、シグナムとフォワードの皆に視線を向ける。

 

「ティアナ、なのはは一度もお前のことを悪く思ったことはない。」

 

「じゃあ、何でティアを待機から外したんですか!?」

 

さっきまで黙っていたスバルが俺に疑問をぶつけてくる。

 

「スバル、今のティアナは心身共に疲れている状態だ。その状態で出たら危険なんだよ。」

 

「私なら大丈夫で…。」

 

瞼を重たそうにしながら言ったって説得力はない。

 

「明らかに大丈夫じゃないから言っているんだ!!」

 

分かってほしいから敢えて厳しく言う。

 

「確かにお前が強くなりたい、お前の兄貴を周りに認めさせたいという気持ちは分かる。俺も魔導師として半人前で、なのはたちに認められるようになりたい気持ちがある。」

 

俺はデータ上でしか見たことないからそれほどは分からないが、そこだけでもティーダ・ランスターは強い奴だったことが分かる。

 

「だがな、ここで無茶して敵にやられたってなったら本末転倒だ!」

 

皆、黙って俺の言うことに耳を傾ける。

 

そこにデュナメスが何か反応をキャッチした。

 

[マスター、スローネツヴァイが現れたとフェイトから報告が入りました。]

 

「分かった、フェイトに今すぐ行くと伝えてくれ。」

 

デュナメスの報告を聞いた俺は、ヘリが飛んでいった方向へ走る。

 

「ニールさん!」

 

「ティアナ、とにかく周りを見ろ。それと、なのはのことは直接本人と話してくれ。…行くぜ、デュナメス!」

 

バリアジャケット姿になり、空中へ飛び立つ。

 

隊舎を人目見てから、戦闘区域へ向かった。

 

 

 

.

 

 

 

フェイトside

 

出撃してガジェットを全て撃墜した私となのは。

 

だけど、妙にガジェットの動きが緩慢だったように感じる。

 

「フェイトちゃん、ちょっとおかしいよね。」

 

「うん、私もそう思っていたところ。」

 

機動力も大したことがない。

 

まさか、ただの様子見?

 

[サー、スローネの反応を感知しました。]

 

「スローネ?…また違う武装!?」

 

今度は…近接型だ!

 

右肩に大剣が装備されている。

 

「なのは、私が近接戦を仕掛けるから援護を!」

 

私のバルディッシュをザンバーフォームに変える。

 

「うん、分かったよフェイトちゃん。」

 

なのはは魔力砲のチャージに入る。

 

「はあああ!」

 

スローネに接近し、鍔迫り合いへと持ち込む。

 

しかし、このスローネは以前の黒いスローネよりパワーがある。

 

少しでも気を抜けば押し込まれる!!

 

「くっ!…バルディッシュ!!」

 

[sonic move.]

 

鍔迫り合いを止め、後ろに回り込む。

 

「もらった!」

 

気付いてない、いける!

 

「フェイトちゃん、避けて!!」

 

…後ろを見ると、爪のような形のビットのようなものが私の四方を囲っていた。

 

そこから既に射撃の準備が出来ていた。

 

「なっ、バル…!!」

 

四方からオレンジ色の魔力弾が発射されて爆発する。

 

「フェイトちゃん!!」

 

どうにか爆風から出て、自分の状況を確認する。

 

バリアジャケットはボロボロだが、どうにかディフェンサーが間に合いほとんどダメージはない。

 

だが、そこで油断してしまったのがいけなかった。

 

「えっ!?」

 

スローネが私に斬りかかって来る。

 

私はザンバーで受けきれずに弾かれてしまう。

 

「…しまった!」

 

スローネが斬りかかろうとする。

 

けどそこにピンクの魔力弾がスローネに襲い掛かる。

 

なのはが助けてくれた。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

どうにかフェイトちゃんのピンチは救えた。

 

でも、あのビットみたいなもののせいでやりづらい。

 

ブラスターモードもあるけど、流石に限定解除しなければならないし、今使うと後に響く。

 

敵が様子見目的なら尚更だ。

 

ディバインバスターも効くかどうかは分からない。

 

でも、ここでこのスローネを倒しておかないといけない。

 

じゃないと、ニールさんに無理させちゃう。

 

「なのは、来たよ!」

 

ビットみたいなものから魔力弾が発射される。

 

「レイジングハート!」

 

[protection powerd.]

 

防御したら、見事に弾いた。

 

これなら大丈夫。

 

だけど、まずはあのビットを破壊しないと!

 

「フェイトちゃん、私が相手するからバルディッシュを拾ってきて!」

 

フェイトちゃんは頷いて海中へと潜り込んだ。

 

「レイジングハート、カートリッジロード!」

 

レイジングハートの杖身から薬莢が飛び出す。

 

魔力が一気に溢れてくるのを感じる。

 

[accel shooter.]

 

「シュ―――――ト!!」

 

アクセルシューターでビットを二つ堕とす。

 

しかし、残りは避けられてしまう。

 

それどころか、魔力刃を形成して私に向かって突っ込んでくる。

 

「アクセル…」

 

[shooter.]

 

もう一度、アクセルシューターで迎撃をはかる。

 

今度はカウンター気味に合わせたので、ビットは軌道を変えれず全て堕ちる。

 

「次は本体!」

 

[divine…]

 

「バスター!」

 

しかしスローネにあっさり避けられる。

 

だけどそれだけのはずがない。

 

避けた後に、私が予め仕掛けたバインドに縛られる。

 

「今度こそ…ディバイン…」

 

[マスター、スローネからまだビットが!]

 

すると、腰アーマーからビットが出てきて私に突っ込んでくる。

 

「だったら…!?」

 

横からモスグリーンの光が走り、ビットを破壊する。

 

放たれた方向には、ライフルを構えながらこっちに来るGUNDAMフォームのニールさんがいた。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

急いで行くということで、はやてにGUNDAMフォームの使用許可を頼んだ。

 

だが…

 

<許可出来ません。いくら急ぐからってそんな簡単に使えるものやあらへんのはディランディ空曹長が一番分かってるはずやろ!>

 

却下された。

 

仕方ないと言ったら仕方ないが…

 

今回はそう言ってもいられない。

 

「頼む、あの機体は自分で倒したいんだ。」

 

完全にこれは俺の私事だ。

 

だがあの機体を見たら多分、冷静でいられない。

 

<駄目なもんは駄目や!今ならなのは隊長やフェイト隊長がおる。三人でなら使う必要はないやろ!>

 

明らかに正論、本当なら従うところだ。

 

「悪いが、今は聞けない。デュナメス、GUNDAMフォームだ!」

 

[GUNDAM form drive ignition.]

 

瞬時に俺は姿をガンダムデュナメスへと変える。

 

<あ、ちょっと何を勝手に!…プツン>

 

勝手に通信を切る。

 

…始末書は後で書かされるが、まあそこは仕方ない。

 

今は…あの機体を堕とす、それだけだ!

 

 

[マスター、スローネツヴァイを発見しました。なのはさんのバインドに拘束されていますが、どうやら二つファングを残していたようです。]

 

間違いない、あの機体だ。

 

元々はミハエル・トリニティが乗っていたが、何をしたかは知らないが野郎が奪って俺と対決した機体。

 

奴のことだから、パイロットのミハエル・トリ二ティを殺したんだろうが…。

 

いや、今から戦闘に入るんだ、集中しねえと!

 

なのはに迫っているファングに銃口を向けて照準を合わせ……

 

[stinger ray.]

 

狙撃は見事に二機のファングに命中し、爆発する。

 

「ニールさん!?」

 

なのはが気付き、俺に向かって叫ぶ。

 

 

 

.

 

 

 

「なのは、悪いがここは一人でやらせてくれねえか?」

 

感情が抑えられねえ…。

 

あれを見てると、あの時の悲劇、死ぬ間際に戦った時のことを思い出しちまう…。

 

「何を言ってるの、ここは一緒に…」

 

「こいつは…俺が倒す。だから、そこを退いてくれ……!」

 

ビックリしたなのはは肩を震わせる。

 

ごめんな、恐がらせちまって。

 

後で色々言ってくれて構わねえ。

 

だから…

 

「今は、コイツを俺に倒させてくれ!!こいつだけは…絶対に許せねえんだ!!」

 

ライフルで攻撃するも、避けられる。

 

ここからは邪魔になるので、ライフルを投げ捨てて右手でピストルのラックを開けて中身を取り出す。

 

さらに左手に腰のブースターに付いたビームサーベルを引き抜く。

 

「だあああああ!」

 

ピストルの乱射でスローネを釘付けにし、サーベルでバスターソードを柄の部分から切り捨てる。

 

しかし、ピストルだけではスローネを破壊するに至らない。

 

「だったら…」

 

俺はピストルをGNドライヴに当てて…

 

[burst shotgun.]

 

「吹っ飛べ、この野郎!」

 

バーストショットガンを乱射した。

 

バンバンバンバンバンバンとけたたましい音が鳴り響き続ける。銃身に罅が入ろうとも続く。

 

 

 

その音が正に俺の怒りを表す音として

 

 

俺の悲しみを表す音として

 

 

辺り一帯を支配する。

 

 

 

 

 

そしてスローネは耐えきれなくなり、朱色の光の粒子を撒き散らしながら爆散した。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

爆散したスローネを見る私。

 

横ではバルディッシュを取りに行っていたフェイトちゃんがいた。

 

フェイトちゃんも驚いている。

 

当然だよね、あのスローネを見たニールさんの豹変ぶりを見れば…。

 

あのスローネにだけは何故か、とてつもなく憎んでいた。

 

私が手伝うのを拒んだ時の表情は、顔も覆われているから表情は分からないけどきっと怒っていた。

 

そしてニールさんは鬼気迫るというぐらいの猛攻をスローネに浴びせていた。

 

「フェイトちゃん…。」

 

「何、なのは。」

 

フェイトちゃんは困惑した表情が抜けていない。

 

多分、その今のフェイトちゃんと同じ表情を私もしているんだろう。

 

「ニールさんに、何があったんだろうね?」

 

「分からない。ただ、少なくとも凄く辛い目にあったのは間違いないと思う。」

 

表情を曇らせるフェイトちゃん。

 

私は心配になってもう一度ニールさんを見る。

 

バリアジャケット姿に戻っているものの、表情は全く分からない。

 

でも背中を見て、悲しそうにしているように見えた。

 

その背中が揺れて、落ちていく。

 

「ニールさん!」

 

どうにかフェイトちゃんと一緒にニールさんの体を支える。

 

[なのはさん、フェイトさん、マスターを隊舎へ運んで下さい。]

 

「分かった、とにかく隊舎へ戻ろう。もう敵はいないし。」

 

「そうだね、なのは。」

 

フェイトちゃんと一緒に離れた距離で待機しているヘリへゆっくり飛んで戻る。

 

ニールさんも気になるけど、まずはティアナから解決しよう。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

 

 

許せなかった

 

 

 

 

野郎が

 

 

 

 

テロを平然と起こす奴が

 

 

 

 

 

戦争を食い物にして楽しそうにしている奴が

 

 

 

 

 

俺の家族を殺しておいてヘラヘラ他の誰かを殺しに回っている野郎が

 

 

 

 

だが、今奴は既にいない

 

 

 

 

 

この手で倒したのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っても何故か野郎が生きているような気がする

 

 

 

 

 

 

 

奴もまた死んだはずなのに何故なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやもし、俺と同じように体ごと飛ばされたのだとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野郎が生きて、あのスカリエッティにスローネのデータをあげていたとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

それに、あのスローネツヴァイの動きは何となく奴と似ていた気がする

 

 

 

 

 

 

 

信じたくないが、奴は生きているかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

だったらもっと強くなんねえと、勝てねえ

 

 

 

.

 

 

 

そこで、いきなり光のあまりの眩しさに目を瞑り……開けたらそこは、六課隊舎の医務室だった。

 

「思ったより早く気が付いたわね、はやてちゃん。」

 

「そやね。……さてニールさん、早速話を聞かせてもらいましょうか!」

 

そう言ってはやては不機嫌な表情で腕を組んで話を聞こうとする。

 

「まずは、約束を破ってすまない。」

 

「謝るぐらいなら、最初からやってほしくなかったわ。」

 

そっぽを向いて怒っていることをアピールするはやて。

 

「でも、何でなの?あそこまで攻撃する必要なんてなかったのに…。」

 

シャマルが疑問を投げ掛ける。

 

はやてが拒否は許さんと言わんばかりに睨み付ける。

 

「…あれは、仇だった奴に関係した機体だった。」

 

だから、俺は今言える一部のことを話すことにした。

 

「まず話すなら、俺が地球のアイルランド出身ってところからか。」

 

「アイルランドやったんか…。あそこって結構イギリスに近いとこなんやろ?」

 

アイルランドはイギリスの西側に位置している。

 

勿論、気温は寒くなることが多い。

 

「そうだ。俺はそのアイルランドの普通の家族の双子の兄として産まれた。」

 

楽しかった子供だったあの日々。

 

あの時は本当に幸せだった。

 

「……だが、俺が10歳の時に両親と妹が自爆テロに巻き込まれた。」

 

今でも覚えている、俺が外にいる中でデパートにいた両親と妹のエイミー。

 

そのデパートが爆発し、瓦礫の山へと成り果てた。

 

その後は茫然としながら瓦礫を見つめていた。

 

「犯人はテロリストだった。家族は、そのテロに巻き込まれただけなんだ!」

 

あの時の悔しさを思い出し、拳を握り締める。

 

「そんな……自爆テロだなんて……。」

 

はやてもシャマルも悲しそうな表情をする。

 

「つまりは、そのテロリストに関係した人があのスローネツヴァイに乗っていたということなんか?」

 

「そうだ。…正確には、アイルランドのテロを指示した男…

 

 

テロ組織KPSAの元リーダー、アリー・アル・サーシェスだな。」

 

「その人はどんな性格やったん?」

 

「野郎の性格は、快楽主義者だ。戦争を食い物にして、楽しんでやがった。それに、アイツには女子供を殺すなと言っても通用しない。奴が自爆テロを指示した組織を創り、子供を洗脳して少年兵に仕立て上げたからだ。」

 

ああいう奴は他人に何を言われても何も変えるつもりなどない。

 

奴とは、絶対に分かり合えない。

 

それは俺だけに留まらず、この機動六課にいる皆も同じだろう。

 

「何でニールさんがあのスローネに怒り……いや、憎しみを抱いていたか分かったわ。子供を洗脳して兵士にだなんて……。」

 

「六課にはエリオとキャロもいるけど、二人とも自分で決めたから入れている。けど、少年兵に仕立てられた子供たちは選択肢もなく兵士として戦わされんやな。……サーシェスという男は性根が腐ってる。」

 

はやても流石に不快感を隠さない。

 

そこでシャマルが手を挙げる。

 

「あれ、でもそれならどうやってニールさんはそのサーシェスさんという人と戦ったの?」

 

ここからはソレスタルビーイングの情報になる。

 

もう話すべきかもしれないが、この話をするならこの機動六課内で信頼出来る人たちに纏めて話す。

 

今は、その話は避けたい。

 

「悪いが、今はまだ話せない。だが、近いうちに皆と一緒に必ず話す。」

 

はやては黙って俺をじっと見る。

 

数秒して俺から離れる。

 

「ふぅ、分かった。今回は聞かんでおこうか。でも、必ず話してもらう。ニールさんが何をしていたか……。」

 

「分かった。」

 

これは逃れてはいけない、避けては通れない道だ。

 

どう思われても、いずれは俺がしてきたことを必ず話す時は来ていた。

 

それがそう遠くないことになっただけ。

 

医務室でベッドに寝ながらそう思っていた。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

私たちが隊舎に戻った後、シャーリーから私の小さい頃の映像を見せたと聞かされた。

 

もう、シャーリーったら……。

 

その後に、ティアナと外で二人で話した。

 

私はティアナに私が無茶なことをしてほしくないこと、周りを見てもっと頼ってほしいことを伝えた。

 

後はティアナが執務官になることを考慮して、クロスミラージュの近接戦闘用のダガーモードも教えてあげたりもした。

 

そしたらティアナが泣き出しちゃって……。

 

でも、これで分かってくれたなら大丈夫かな?

 

ただ、私には他にも一人だけ心配な人がいる。

 

それはニールさん。

 

今日の戦闘でGUNDAMフォームを使っていたけど、はやてちゃんは許可してないって言っていた。

 

慌て止めようとしたら、表情は分からなかったけど多分睨み付けられていたと思う。

 

怒ったニールさんがあんなに恐いなんて思わなかった。普段は皆のお兄さんみたいで飄々としているだけに余計恐さが伝わってきた。

 

しかも、あのスローネにだけ必要以上に攻撃していた。

 

一体、何があったの、ニールさん。

 

 

 

話してほしい。

 

 

 

頼ってほしい。

 

 

 

抱く憎しみから解放したい

 

 

 

救いたい

 

 

 

私、ニールさんにだったら何だってするから!

 

 

 

 

 

 

だって私は……

 

 

 

 

 

 

ニールさんが好きだから……。

 

 

 

 

 

 

だからお願い

 

 

 

 

 

 

一人で抱え込まないで!!

 

 

 

.

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