魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第5話 赤き傭兵

 

―今日は機動六課フォワード陣の休暇。

 

ただし、俺は以前の命令違反で休暇は無しにされてしまった。

 

これは仕方ないな。

 

あれからティアナは無茶をしなくなり、確実に実力を付けてきている。

 

その変わりなのか、あの戦闘からというもの…なのはとフェイトは俺を見ると心配そうな顔することが多くなった。

 

フォワード陣の皆も話し掛けづらそうにしている。

 

俺が悪いんだから仕方ないがな。

 

あいつらに迷惑かけちまったし。

 

それより、スローネのデータをスカリエッティに渡したのは本当に誰なのか?

 

俺が考えられる奴はサーシェスかトリニティかそれとも…奴らの行動を手引きした誰かか。

だが、何となくサーシェスの野郎な気がする。

 

野郎は戦争中毒、刹那を少年兵にした張本人だから、スローネのデータを渡せば楽しい戦争が出来るとかの理由で造らせてもおかしくない。

 

けれど、いつまでも仮定を考えても仕方ない。

 

今は書類をどうにかしねえとな。

 

「ちょっといいか、ディランディ。」

 

書類に手を出そうとしたらさっきまで机を挟んだ反対側で書類を見ていたシグナムが声を掛けてきた。

 

「どうしたんだ、シグナム。」

 

普段通りに接するが、シグナムは俺を睨む。

 

「どうしたと言いたいのはこっちの方だ。……あの戦闘から、お前の様子がおかしかったからな。高町とテスタロッサ、ヴィータに聞いても分からないと言っていた。

 

一体、何があったんだ?」

 

ここのところ、フォワード陣やヴィータから同じことを聞かれている。

 

だが答えは全て保留だ。

 

ヴィータには睨まれたが。

 

「今は…まだ話せない。」

 

俺の答えに目を閉じて黙り込むシグナム。

 

「…そうか。だが、皆がお前が話してくれるのを待っている。」

 

そう言って追求するでもなくシグナムが事務室から立ち去る。

 

「…すまない。」

 

気を使わせ過ぎてるな。良くないんだが、どうにもタイミングが掴めない。ここのところ、皆が集まるような状況が少なく、聞いて欲しい人物が必ず誰か欠けることが多い。特に、執務官のフェイトはスカリエッティの捜査で隊舎にいないことが多く、なかなか時間が取れない。

 

だが、一回話せるタイミングがあった。なのに、俺は躊躇してしまった。真面目な奴ばかりだから、拒絶されるのが恐いのかもしれない。

 

それでも、やはり事件に関わるかもしれないし、逃げてはいけない。だから、明日に話そう。

 

まるでこれが始末書だと言わんばかりの大量の書類を整理していたら、横からフォレストグリーンのコーヒーカップが置かれた。

 

「少し休もう。ずっと事務仕事ばかりやってるよね?」

 

そこにはなのはが自分の分のピンクのマグカップを持って立っていた。

 

「おう、悪いな。」

 

俺は手を止めて机の上に乗ったコーヒーの入ったマグカップに手を掛ける。

 

ドリップなのか、風味があってなかなか良い。

 

これはある程度、コーヒーのことを知ってないと出せない風味だ。

 

「なのは、どっかで喫茶店のアルバイトとかやっていたのか?」

 

「ううん、私の実家が喫茶店でお母さんにコーヒーのこととかを教えてもらったんだ。」

 

笑顔で話すなのは。

 

いつもは可愛いなとかそう思ったりするのだが、サーシェスがこっちに来ているかもしれないと思っている今の俺にはなのはが羨ましくなってしまっている。

 

「ニールさん、ずっと気になっていたんだけど……3年前に話してくれたソレスタルビーイング、そこに入った理由って何?」

 

そこになのはが疑問を投げ掛けてきた。

 

3年前の話したことを覚えていたのか。

 

なら、なのはには先に言ってもいいか。

 

「俺がソレスタルビーイングに入った理由は、10歳の頃に起こったアイルランドの自爆テロなんだ。そのテロで両親と妹…エイミーって言うんだが、巻き込まれて殺された。」

 

俺の戦うきっかけを聞いたなのはの表情が悲しみに沈む。

 

「……ごめんなさい、無神経に言ってしまって……。」

 

さっきの親のことか。

 

「気にするなよ。それは言っていいことなんだ。」

 

俺にはもういない。

 

だからこそ、大事にしてほしい。

 

 

 

.

 

 

 

「うん、ありがとうニールさん。」

 

「やっぱりお前の笑顔は可愛いよな。」

 

「えっ!?」

 

やべっ、口が滑っちまった。

 

「っと、いけねえ。話の腰を折っちまったな。」

 

コホンと咳払いして間を置き、気持ちを切り換える。

 

なのはも真剣な表情に変わる。

 

「その後は、スナイパーをやってお金を稼いで、俺の射撃というか狙撃能力が買われてソレスタルビーイングに入った。紛争根絶とかの話は明日、皆に俺のことを話す時にする。それでいいか?」

 

「うん、そうだね。ちょっとそういう話をエリオやキャロに聞かせるのはまだ早い気もするけど、私たちも考えなければならないことも出てくると思うから。」

 

なのはなりに、どんな話になるのか予想しているのだろう。

 

残ったコーヒーを口にする。あまり口にしていなかったからか、少し冷めてしまった。

 

「少し温くなってるな。」

 

「じゃあ、片付けるね。」

 

「いや、せっかく淹れてくれたんだ、最後まで飲ませてもらう。」

 

「え、あ、うん…。」

 

温くなったコーヒーを一気に飲み干す。

 

頬を朱に染めて笑顔になるなのは。

 

俺も思わず笑顔になる。

 

だがその後に部隊長室へ来るようにアナウンスが流れ、俺もなのはも真剣な表情になる。

 

「……片付けは後だな。」

 

「うん、行こうニールさん!」

 

 

 

.

 

 

 

部隊長室まで来た俺となのは。

 

「失礼します。」

 

ちゃんと忘れずに敬礼する。

 

「二人ともすまないなあ、突然呼び出してもうて。夫婦の会話の邪魔やったやろ?」

 

意地悪にこっちを見るはやて。

 

全くこいつは…。

 

「もうはやてちゃん、からかわないで…。」

 

「はやてちゃん、急ぎの用ですよぉ?」

 

なのはとリインに注意されるはやて。

 

「本当だぜ、まだ夫婦じゃねえだろうが。」

 

一斉にこっちを見る三人。

 

何か言い方間違えたか?

 

特になのはの顔が真っ赤だ。

 

「わ、私とニールさんが……はうぅ。」

 

何か恥ずかしくなったのか、俯くなのは。

 

これは、まさか……いや、気のせいかもしれない。

 

「あ〜、こっちから話の腰を折って難やけど話してもええか?」

 

苦笑いしながら話を戻すよう促すはやて。

 

「すまない、頼む。」

 

真剣な表情に変わる俺とはやて、リイン。

 

なのははまだ顔が赤い。

 

「実は、ニールさん以外は休暇やったんやけど、エリオとキャロが小さな女の子が何か箱みたいなものを鎖に繋げながら倒れていたのを見つけたらしいんや。」

 

小さな女の子が?

 

「それで、その女の子はどうなったんだ?」

 

「今はまだ現場におる。その女の子に関係あるのかもしれへんのやけど、うちの師匠にあたる人がおる地上108部隊からトラックの横転事故がその近くにあってトラックの積み荷の中に生体ポットらしきものが発見されたんや。でその生体ポットは割れていておそらくその小さな女の子はそこから地下へと移動した。その証拠に何か箱を引きずったような痕がある。」

 

なるほど、それなら辻褄が合う。

 

「でここからが特に重要なんやけど、まずその女の子が持っていた箱にはレリックが入っていたんや。鎖は一つの箱が付いているんやけど、形状を見た限りではもう一つあるようなんよ。」

 

「で今回の任務はその地下に残されたレリックとおぼしきロストロギアを回収、ということだろ?」

 

「せや。今回はおそらく出てくるのはガジェットだけやない。戦闘機人も出てくるかもしれへん。気を引き締めて事に当たってな。」

 

「任務了解。行こう、ニールさん。」

 

なのはの言葉に頷き、現場へ急いで向かうことにした。

 

 

 

 

.

 

 

 

出撃ということでヘリポートに着いた俺たちは急いでヘリに乗り、飛び立つ。

 

任務を詳しく言うと、下水道にレリックが一つあるということでその回収任務をやることになったのだが、既に近辺にいたフォワードの四人が先に行って回収に行っている。

 

隊長陣はおそらく出るだろうガジェット等の妨害に備える。

 

そして俺はいざという時の為、ヴィータと共に外で待機だ。

 

今回は敵も本気を出してくるだろうということで隊長陣も少し本気を出すとのことだ。

 

おそらく、はやてが言った通り戦闘機人が出てくるだろう。

 

戦闘機人は魔導士とは別の特殊能力[IS(インヒューレントスキル)]を持っていて強いと言われている。

 

最高でSランク相当、最低でもAランクぐらい。

 

ランクで強さが決まる訳ではないが、要注意なのは間違いない。

 

だが何故かそれだけでは留まらない気がする。

 

胸騒ぎがする。

 

「…さん、ニールさん!」

 

いけね、ボーッとしちまったか?

 

「どうしたの、もう着いたよ?」

 

なのはが心配そうに俺を見る。

 

「悪い、すぐに配置に着く。ヴィータは、もう行ったのか。」

 

多分、ヴィータは怒ってるだろうな。

 

「なのは、私たちも早く出ないと…!」

 

「ごめん、フェイトちゃん。ニールさんも急いで。」

 

俺は言いながら外に出たなのはとフェイトに続こうとする。

 

「おい、ニール!」

 

そこで操縦席にいるヴァイスが声を掛けてくる。

 

「大体何考えてるか分かるが、今は任務中だ。ちゃんと切り換えろよ。」

 

まさかそんなことを今更言われちまうとはな。

 

「へっ、了解だ。」

 

そう言って俺はヘリから外へ飛び出し、セットアップしてミッドチルダ北部の廃棄都市区画へと飛んでいった。

 

 

 

 

.

 

 

 

サーシェスside

 

朝に自分の部屋で寝ていたところで突然、大将に呼び出された。

 

「やあ、おはようサーシェス。」

 

「何だ大将、もしかして戦争でもおっ始めんのか?」

 

こちとら、いい加減骨のある奴とやり合いてえんだ。

 

特にあの緑のガンダムとな!

 

「それはまだだが、君にちょっとナンバーズのレリック回収で管理局側の妨害をして貰いたいんだよ。」

 

ちっ、この分じゃまた大したことない奴らの相手か?

 

「因みに、今回君に妨害して欲しいのは機動六課でエースと呼ばれている人たちと例の君が狙っている彼だよ。」

 

それを聞いた瞬間、体に巡る血がたぎるように熱くなった。

 

待ってたぜ、この時をな…!

 

「へっ、気が利くねえ大将!遂に俺様の出番って奴だなあ!!」

 

「ああ、その通りだよ。ただし、今回は挨拶がわりだから殺すのは無しだ。」

 

おいおい、殺しは無しかよ。

 

まあ、いいや。これで楽しい楽しい戦争が始まるんだからな!

 

「もう今回のレリック回収をするメンバーは向かわせたから、今すぐ行ってくれ。…それと、もし余裕があれば君のデバイスに組み込んだターゲットも捕獲しておいてくれ。捕獲出来た場合はボーナスを弾むとしよう。」

 

「ヒュー、太っ腹だなあ大将!」

 

えっと……赤い髪のガキ、金髪の姉ちゃん、青い髪の嬢ちゃん二人……姉妹だな。へっ、全員捕まえりゃ大儲けだぜ!

 

待ってろよ、機動何たらにいるガンダムパイロットさんよお!!!!

 

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

皆がヘリを降りて、各々の任務に入った。

 

私とフェイトちゃんも空でガジェットの迎撃にあたったのだけど……変だ。

 

「なのは、気付いているよね?」

 

フェイトちゃんが私に確認を取ってくる。

 

「勿論だよフェイトちゃん。……あまりにも静かすぎる。」

 

そう…ガジェットの反応も姿も何もない。

 

レリックをあっちだって欲しがっているはずだから、ガジェットを送ってくると踏んでいたのに何も来ない空には雲が少しあるだけ。

 

そう疑問に思っていた時、向こうから何か赤い何かがこっちに迫ってきていた。それも赤い粒子を撒き散らして。

 

[マスター、あれはスローネと似ていませんか?]

 

赤い何かを見ると、姿は確かにスローネ…それもツヴァイに似ている。

 

何故知っているかというと、はやてちゃんからスローネのデータをもらったから。もとい、データはフォワードとロングアーチ全員持っている。

 

「確かに似ているけど、手足が異様に長いね。」

 

明らかに全身が真っ赤で手足の長さと相まって異様さを物語っている。

 

「いずれにしても敵に違いないよ、なのは。」

 

フェイトちゃんは既に臨戦態勢に入った。

 

私もレイジングハートを謎の赤い機体に向ける。

 

そして、赤い機体は私たちの前に止まる。

 

「時空管理局の者です。ここは今危険ですので、速やかに退去して下さい。」

 

念のため、一般人と同じ対応をする。

 

見る限りは機械だから喋るとは思っていない。

 

けれど、予想外なことになってしまう。

 

「おーおー、嬢ちゃんたちが時空何たらのエースかあ。……本当に強えのか?」

 

まさか喋るとは思わず、驚いて固まってしまった私とフェイトちゃん。

 

いけない、固まっちゃ!この機体、いや、この人から殺気を感じる。

 

「貴方は誰ですか?何の目的でここに来たんですか?」

 

「俺か?俺はな……

 

教えてやらねえよ!」

 

いきなり右腕の武器らしきものから真っ赤な魔力弾を撃ってきた。

 

その魔力弾が私に迫ってくる。

 

「なのは!」

 

フェイトちゃんが声を掛けてくる。

 

「大丈夫!」

 

[protection powerd.]

 

プロテクションパワードで防ぎきり、前方の敵を睨む。

 

以前は破られちゃったけど、ニールさんがくれたデータのおかげで対応が効くようになった。

 

「ははは、あれを防ぐなんてなあ…こりゃ楽しい楽しい戦争が出来そうだ!」

 

戦争が楽しいだなんて…私たちにとっては信じられない言葉…ちょっと待って。

 

昨日、はやてちゃんがサーシェスっていう人のことをこう言ってた。

 

ニールさんが言ってた、サーシェスっていう人は戦いを楽しむような人で絶対に私らとは分かり合えないって――――

 

<なのは、もしかしてこの人が…>

 

フェイトちゃんも同じことを思っていたようだ。

 

なら…

 

「…もう一度聞きます。貴方の名前は何ですか?」

 

「俺の名前をそんなに聞きたいのか?変わってんなあ。そんなに知りたきゃ教えてやるよ!

 

 

 

俺の名前は、

 

 

 

アリー・アル・サーシェスだ!」

 

この人が、ニールさんをずっと苦しめ続けた人。

 

この人が、ニールさんの人生を狂わせた人!!

 

 

 

.

 

 

 

フェイトside

 

「貴方が…アリー・アル・サーシェス!」

 

この人が、ニールの家族の仇!

 

私はバルディッシュのカートリッジを一つ消費して、ザンバーフォームにする。

 

なのはも既にエクシードモードになり、本気になる。

 

いや、本気にならなければならない。

 

サーシェスは構えてなくても、明らかに強いと……危険だと直感が告げている。

 

「ああ、俺のことを野郎から聞いたのか。野郎に用があるんだが、そっちの黒い金髪の嬢ちゃんにも用があるんだよ。」

 

私に用?

 

「一体何?」

 

私は不快感を隠さずに冷たく聞き返す。

 

「いや何、嬢ちゃんと赤い髪のガキと青い髪の嬢ちゃん二人を大将が欲しがっててよ、捕まえてくれたら報酬をくれるっつうんだよ。……こんなおいしい話ねえだろ?」

 

表情は分からないけど、多分笑っているだろう。

 

私に飽き足らず、エリオやスバルにギンガまで…!

 

スカリエッティ、そしてサーシェス、どっちも絶対に許せない!!

 

「けど、まずはそこの白い嬢ちゃんが邪魔だなあ。だったら、さっさとやられてくれよな!!」

 

サーシェスが右手にマウントされていた武器、大剣をスライドさせて柄を持つ。

 

手に取ったところでなのはに振りかぶって来た!

 

「くっ!」

 

[protection powerd.]

 

なのはは防御で凌ぐ。

 

「そんなんで防げる訳ねえだろうが!!」

 

サーシェスの大剣から薬莢が一つ飛び出し、更に大剣が二つに割れてそこから朱い光の粒子が漏れだして大剣を包む。

 

あれはまさか……!

 

「GN粒子!?いけない、なのは!!」

 

防御ではいけないと思い、叫ぶ。

 

案の定、なのはの防御魔法にヒビが入っていく。

 

「くっ、レイジングハート!!」

 

[protection burst.]

 

防御魔法そのものを爆発させて、後ろに下がるなのは。

 

爆風が立ち込めるが、そこから奴がなのはに向かってくる。

 

「あの爆発を受けて無傷!?」

 

なのはは相手が無傷であることに驚愕する。

 

「そんなもんでえ、この俺は止まらねえよおお!!」

 

サーシェスが赤い光を纏った大剣を突き出す。

 

「なのは!」

 

[flash move.]

 

私は急接近して敵の大剣を変わりにザンバーで弾く。

 

くっ、なんてパワーなの!?

 

弾いたはずなのに、私のザンバーも弾き返されてる感じがする!!

 

「来ると思ったよ!」

 

サーシェスの足から魔力刃が出る。

 

「なっ!?」

 

その足で私のお腹を貫こうと蹴り上げてくる!

 

「フェイトちゃん!」

 

迫る魔力刃をザンバーで防ぐ。

 

「ぐっ、くううう!!」

 

ザンバーと朱い魔力刃との間に火花が散る。

 

私の腕に相当な負荷が掛かる。

 

こんな、パワーでここまで負けてるなんて!

 

「ディバイン、バスター!」

 

いつの間にか射程距離から離れたなのはが砲撃をサーシェスにぶつけて来る。

 

「へっ、見えてんだよ!」

 

何と、大剣でなのはの砲撃を受けた!

 

光の奔流が大剣にぶつかり、二つに分かれる。

 

「なら、エクセリオン……!!」

 

だが、後ろから白いビットが二つ、なのはに攻撃しようとしていた。

 

「なのは、後ろ!」

 

「はっ、くうっ!?」

 

気付いたなのははギリギリ上に避けてやり過ごした。白いビットは赤い刃をはやして靴のすぐ下を通過、本当に間一髪だった。

 

「余所見してんなよ、嬢ちゃん!」

 

だが、私がなのはの方を向いている隙を突くようにサーシェスが右足から魔力刃を出して追撃してくる。

 

「しまった、うあっ!」

 

避けはしたものの、右手の甲を浅く斬られてしまった。

 

痛みが走り、焼け焦げた傷口から血が流れる。

 

「おいおい、その程度か?期待を裏切んなよ。」

 

「言わせておけば!」

 

ザンバーを両手に持ち直し、袈裟懸けに斬り上げる。

 

しかし、右手の切り傷のせいで斬るスピードが落ちている。

 

「遅いんだよお!」

 

サーシェスに後ろに下がって避けられてしまう。

 

「ちょいさあ!」

 

更に振りきったところで大剣を振り上げて私のバルディッシュを弾こうとする。

 

[flash move.]

 

そこを高速移動でギリギリ避けきる。

 

「エクセリオンバスター!!」

 

そこになのはが砲撃、それもバリア破壊効果のあるエクセリオンバスターを撃つ。

 

「ちっ!」

 

サーシェスは舌打ちしてその場から退避する。

 

「やるじゃねえか、やっぱ戦争はこうでなくっちゃな。行けよ、ファング!!」

 

八つの白いビット―ファングがサーシェスの腰のサイドアーマーから出てきて、私たちに迫ってくる。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

ファングから朱い魔力弾が放たれる。

 

「アクセルシューター、シュート!」

 

私の周囲にピンクの魔力弾を形成、ファングに向けて放つ。

 

2つは破壊したけれど、残りは逆に撃ち落とされてしまった。

 

でもそれより、あの人は楽しそうに戦っていて、笑っているように思える。

 

シグナムさんも戦う時、楽しそうにしていることがあるけれどあの人とは違う。

 

あの人は……純粋に戦いを楽しむとか正々堂々とかそういったことではなくて、きっと殺し合うことを楽しんでいる。

 

だから、私はこの人に聞かなければならない。

 

「サーシェスさん、貴方は戦うのが…戦争をするのがそんなに楽しいのですか?」

 

ディバインバスターを放ちながら聞く。

 

サーシェスは右に避けて、更に右から迫るフェイトちゃんのトライデントスマッシャーを前進して避け、そのまま私に向けて突っ込んでくる。

 

私はレイジングハートでサーシェスの大剣を受け止める。

 

「ああ、楽しいな。俺の本能が、戦争を求めてんだよ!てめえらみてえな薄っぺらい正義感なんか要らねえ。それにな…俺は傭兵だからよ、戦争がねえと食っていけねえんだよ!!」

 

これじゃフェイトちゃんが押されるのも頷ける。

 

私も力に押されて後退りする形になっている。腕も痛い。

 

でも……

 

「人を殺しても、何とも思わないの!?」

 

後ろからフェイトちゃんがバルディッシュザンバーを振りかぶる。

 

すぐに気付いたサーシェスはまた足に魔力刃を形成して対応する。

 

私とフェイトちゃんの二人がかりなのに、ここまで防がれるなんて…。

 

「思わねえさ。戦争ってのは命あっての物種だろうが、他人の命なんざ知らねえよ!!それとも何だ、てめえら時空なんたらの作ったルールってのに従えってのかよ!!」

 

私とフェイトちゃんと鍔迫り合いをしている間にファングが目の前で魔力弾を放とうとしていた。

 

「なっ!?」

 

[protection powerd.]

 

すぐに防御魔法を張り、魔力弾を防ぐ。

 

魔力弾のエネルギーが行き場を失い、爆発する。

 

爆発の勢いで外に投げ出され、体勢を立て直す。

 

「それは、管理局がどうこうじゃなくて……人としてやってはいけないことだ!」

 

爆発の煙が未だに立ち込める中、金属音とフェイトちゃんの声が中から聞こえてくる。

 

「そんなもん、知るかよ!」

 

「ううっ!」

 

多分、互いの武器を打ち合っているのだろう。

 

これじゃ援護射撃をしようものならフェイトちゃんに当たってしまうかもしれない。

 

……まさか、これを狙って!?

 

だとしたらまずい!!

 

「レイジングハート!」

 

[All right.]

 

魔力スフィアを飛ばして内部を確かめる。

 

中では予想通り、フェイトちゃんとサーシェスが斬りあったり鍔迫り合いをしたりしている。

 

でも、さっきと同じでフェイトちゃんが押し負けている。しかも動きが鈍い。バリアジャケットも所々が切れている。

 

なら…

 

事前にバインドを周囲にいくつも形成。

 

数に合わせてカートリッジも消費。

 

全部使っちゃったから、マガジンを変える。

 

「フェイトちゃんを連れて行かせない!」

 

[divine buster.]

 

スフィアで確認したサーシェスの位置に照準を合わせて砲撃を敢行する。

 

煙を割ってピンク色の砲撃が敵へ向かっていく。

 

幸い、サーシェスがバインドを仕掛けた方へ避ける。

 

「!?ちっ、あの女!」

 

バインドに捕まったサーシェスがこっちを見る。

 

「これで墜ちて!…エクセリオン、バスター!!

 

念のため、エクセリオンバスターで確実に倒すことにした。

 

「ああ、俺はここでやられちまう……なんて言う訳ねえだろ!」

 

サーシェスはあろうことか、バインドをいつの間にか出したファングの魔力刃で斬り、砲撃を避けてしまう。

 

なんて悪知恵の働く人なの!?

 

「今のは肝が冷えたぜ…。どうやら、嬢ちゃんから先に殺した方がいいようだな。」

 

サーシェスから私に殺気が向けられる。

 

そして、サーシェスのファングが魔力刃を形成して私に突っ込んでくる。

 

「クロスファイヤー、シュート!!」

 

クロスファイヤーで迎撃を謀るも、当たったのはたった一機だけだ。

 

「なのは!」

 

フェイトちゃんがこっちに来ようとする。

 

「そっちの嬢ちゃんは大人しくしてな!」

 

だが、サーシェスが二機のファングからバインドを形成してフェイトちゃんの動きを封じた。

 

「くっ、この!」

 

バインドを解こうとするも身動きが取れないフェイトちゃん。

 

「さあ、これで一対一だ。楽しくやろうぜ!」

 

そう言ってサーシェスが突っ込んでくる。

 

バインドが時間稼ぎにも使えない時点でチャージに時間が掛かるスターライトブレイカーは使えない。

 

だけど、接近戦は相手の方が上手。

 

今はある程度の限定解除をした状態だから本気ではない。

 

それでもサーシェスにはブラスターモード3かエクセリオンバスターACSドライブなど無茶をしないと勝てそうにない。

 

…リスクを覚悟するしかない!

 

そう思って険しい顔になったところで突然、横から深緑の砲撃が飛んできた。

 

「何!?」

 

サーシェスはすぐに避ける。

 

更に同じ色の光の柱がフェイトちゃんのバインドを破壊する。

 

今のはまさか……

 

「はっ、ははははは……やっとだ、やっと殺せるぜ、ええ、ガンダムのパイロットさんよお!!」

 

 

砲撃を撃ったのは

 

ニールさんだった。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

〜なのはとフェイトがサーシェスと戦っている頃〜

 

誰もいない、マンホールの蓋の開いた場所で待機する俺。

 

現在、地下で任務中のスバル達と空にいる敵を迎撃しているなのはとフェイトに何かあった時の為にここにいる。

 

すると待機していたところでティアナから念話が入る。

 

[ニールさん、レリックの入った黒い箱を発見。しかし、発見と同時に戦闘機人と思われる敵と接触。現在交戦中です!]

 

ティアナは余裕がないのか、大声で連絡してくる。

 

耳が痛いがそんなことは言ってられない。

 

[援護は要るか?]

 

[大丈夫です。それより、あっちにも仲間がいるかもしれませんので索敵をお願いします!]

 

確かに敵側がそれだけとは考えづらい。回収をこれ以上邪魔されてはまずい。

 

[了解だ、すぐに始める。]

 

既に戦う準備は出来ている。

 

俺は空に飛び上がり、敵を探す為に索敵の機能も付いているゴーグルをかける。

 

[マスター、砲撃が後ろから来ます!]

 

デュナメスの警告に従って上に飛んで避ける。

 

あっちから来るとはな。

 

砲撃が飛んできた方向には大型のキャノン砲を持った茶髪の女の子がいた。

 

その女の子の胸元に11とローマ数字で掘られたプレートが付いている。格好も青いピチピチのボディスーツになっている。

 

あれが戦闘機人か。

 

「いきなり後ろから砲撃とはご挨拶だな。」

 

ライフルをその少女に構える。

 

狙いは、あのキャノン砲だ!

 

「あら、そんな悠長なことをしてていいのかしら?」

 

照準を合わせたところで、左側から別の戦闘機人が俺に声をかけた。

 

その戦闘機人は2つの三つ編みに分けた亜麻色の髪に丸い眼鏡をかけ、黒いゴワゴワの毛の付いた白いマントを羽織っていた。

 

胸元のプレートは4のローマ数字だ。

 

「そりゃどういう意味だ?」

 

睨み付けながら聞き返す。

 

砲撃の戦闘機人への警戒は怠らない。

 

こういう喰えない女は大抵、人を弄んで楽しむタイプだ。

 

さっきから何か企んでいるようで、嫌な笑みをニヤニヤと浮かべている。

 

サーシェスに似ていて、あまり付き合いたくないタイプだ。

 

「だって今、サーシェスが貴方達の隊長と戦っているのに貴方がここにいるなんておかしいんですもの。」

 

…何だって!

 

なのはとフェイトが、サーシェスと?

 

だが、今はこいつらをどうにかしねえと!

 

いくら野郎が許せなくても、こいつらを野放しにしたら地下のあいつらが危ない。

 

それに、なのはとフェイトは魔導士としては実力は俺より上だ。

 

簡単にやられたりはしない。

 

「確かに心配だが、あいつらはそう簡単にやられない。それに、てめえらをこのまま野放しには出来ない!」

 

ライフルを構え直し、眼鏡を掛けてる戦闘機人の嬢ちゃんに銃口を向ける。

 

それでも不適に微笑む。

 

「あら、そう。なら、今ピンチなのは何でかしら?」

 

俺にとっては信じられない話だ。

 

なのはとフェイトがピンチ?

 

思わずロングアーチに通信を繋げる。

 

キャノン砲を持った戦闘機人が引き金を引こうとするが、眼鏡の方が何故か制した。

 

どういうつもりかは分からないが、やらせてもらう。

 

<どうしました、ディランディ空曹長。>

 

出たのはルキノだ。

 

「今なのは隊長とフェイト隊長はどうなっている?」

 

<なのは隊長とフェイト隊長でしたら…>

 

<ちょっとごめん、変わってくれる?>

 

<八神部隊長…分かりました。>

 

突然、相手がはやてに変わる。

 

「それで、二人は今どうなっているんだ?」

 

<………。>

 

数秒の沈黙。

 

「どうした、八神部隊長?」

 

<二人とも、ある程度限定解除したんやけど、想像以上に敵が強いんよ。>

 

かなり苦戦しているのか…。

 

<せやから、今からうちもそっちに行くことにする!ニールさんは、そこにいる戦闘機人を捕まえといて!!>

 

そうか、はやてが行くのか。

 

なら……

 

「苦戦?違うわ、やられそうなのよ。その証拠にほら。」

 

突然、割り込んできて映像を出す眼鏡の戦闘機人。

 

そこにはバリアジャケットが所々切れ、息を切らせながらも赤いスローネの手足を伸ばしたような奴を睨み付けるなのはとフェイトだった。

 

信じられねえ…なのはとフェイトが相手なのに傷一つ付けられてねえなんて!

 

「ふふふ、どうする?もしかしたら今から行かないとやられちゃうかもよ?」

 

眼鏡の戦闘機人は不適どころか邪悪な笑みを浮かべてあっちへ行けと言ってくる。

 

俺をあっちへ行かせて地下にいるフォワードの皆の妨害をしに行くといったところか。

 

無論、ここを離れれば相手の策略に乗り、レリックが奪われてしまうかもしれない。

 

だが、だからと言ってここで行かねえとなのはとフェイトが危ない!

 

フォワード陣か、なのはとフェイトか…。

 

畜生、どっち選んでもリスクがでかい!

 

レリックをあいつらに奪われたら兵器に使われるのは目に見えている。

 

どうする、どうするどうする!?

 

<行ってこい、ニール。こっちはあたしらが何とかする!>

 

<ヴィータ、何言ってるんや!?>

 

ヴィータから行けという念話が入り、なのはとフェイトのいる方向を向く。

 

「すまないヴィータ、八神部隊長。俺は二人を助けに行く!こっちの方は頼む。」

 

<えっ、ちょっ…!>

 

強引に通信を切る。

 

また始末書を書くか、或いは別の罰かは覚悟する。

 

[マスター、ならばすぐに行かないと間に合いませんよ。]

 

「そうだな。…そこの眼鏡の嬢ちゃん。」

 

「…クアットロよ。」

 

こっちが適当な呼び名で呼んだら、不機嫌に顔を歪める。

 

「今は敢えてそっちの策略に乗ってやる。だがな…俺の仲間をあまり嘗めないでもらおうか!」

 

そう一言残して俺はなのはたちに向けて飛んでいく。

 

聞いていたクアットロは顔を歪めたまま、俺を睨みつづけていた。

 

「どっちも共倒れになってしまえばいいわ。」

 

クアットロがそんなことを言っていたのが不思議と聞こえていた。

 

飛ぶこと数分、なのはとフェイト、そして…スローネに似た奴が見えた。

 

フェイトはファングと思われる兵器のバインドによって拘束され、なのはは相手に接近されて苦い表情をしている。

 

俺は迷わず、ゴーグルをかけ、ライフルを持ってフェイトを拘束しているバインドと敵が突っ込んで来るルートの先をスティンガーレイで狙い撃つ。

 

思惑通り、フェイトの拘束は解け、敵はすぐに避ける。

 

ここまでは冷静だった。

 

だが、次の敵の言葉を聞いてからは冷静ではいられなくなった。

 

「はっ、ははははは……やっとだ、やっと殺せるぜ、ええ、ガンダムのパイロットさんよお!!」

 

こんなことが言えるのは、もう奴しかいない。

 

俺がスカリエッティ以上に許せない男。

 

「アリー・アル・サーシェス!!」

 

 

 

 

.

 

 

 

「ニールさん、何で!?」

 

「駄目、ニール!」

 

なのはのフェイトの制止も聞かず、俺はもう一度野郎にスティンガーレイを撃つ。

 

今度は直撃コースだったが野郎は手に持った大剣で弾く。

 

「何でてめえがここにいるんだよ!!」

 

俺はデュナメスをライフルからサーベルに変えてサーシェスに斬りつける。

 

サーシェスは大剣で俺のサーベルを受ける。

 

鍔迫り合いになり、行き場の失った赤と深緑のエネルギーが火花となって散る。

 

「知らねえよ!けど逆に良かったぜ、こんなに面白いもんがあってしかも自分で使えちまうんだからなあ!!」

 

サーシェスが力ずくで押しきってくる。

 

「どわっ!」

 

力が強く、思わず怯まされ体勢が崩れる。

 

「貰ったあ!」

 

すかさず大剣を振り落としてくる。

 

「やられるか!」

 

そこをどうにか出せた左手のサーベルで受ける。

 

それでも相殺出来ずに後方に吹き飛ばされる。

 

「へっ、そうでなくっちゃ殺し甲斐がねえ!」

 

この戦争中毒が…!

 

「くそ、完全にパワー負けしているな…。デュナメス、GUNDAMフォームだ!!」

 

俺の周囲が光に覆われ、姿をガンダムデュナメスへと変えていく。

 

光が晴れたら野郎が目の前に迫っていた。

 

「ちょいさあ!」

 

サーシェスが右足から魔力刃を出して俺のライフルを斬る。

 

「ぬぐおっ、ちいっ!」

 

左足で更に俺を斬ろうとするが、すかさず腰のサーベルを引き抜き、眼前で防御する。

 

「どうしたどうした、そんなもんか?」

 

赤と緑の火花が散る。

 

「何処までも嘗めてんじゃねえ!」

 

[photone machinegun.]

 

右足にマウントされているラックからピストルを取り出し、サーシェスの顔を撃つ。

 

「うおあっ!」

 

サーシェスは堪らず左足を離す。

 

そこに更に腹部に蹴りを入れて距離を開ける。

 

サーシェスの頭部左側が銃に撃たれた痕がいくつも付いている。

 

「痛てえなあ…久々だぜ、俺のアルケーに傷を付けられたのは。あの盾を使った嬢ちゃんの時以来だぜ。」

 

盾を使った…?

 

「いやあ防御ばっかで歯応えがなかったが、こっちに来てから初めて俺のアルケーに傷を付けてくれたからよお…

 

思わず左手ごと盾を斬って殺しちまったよ。」

 

まさか…ラーナを殺したのは、こいつ?

 

そこからはもう理性を保つことは出来なかった……。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

今、あの人は何て言ったの?

 

盾を使った嬢ちゃんって…。

 

それじゃ、ラーナちゃんを殺したのは、サーシェス?

 

「そんな……酷い。」

 

あの人が愉快そうにラーナちゃんを殺したことを話す。

 

聞きたくない、聞きたくない聞きたくない聞きたくない、聞きたくない!!

 

残酷な事実に耐えられずに涙が溢れ、怒りと悲しみを込めた一撃をぶつけようとレイジングハートをサーシェスに向ける。

 

「もう、聞きたく…!?」

 

その時、ニールさんがいきなりサーシェスに殴りかかった。

 

でも、今まで見た中で激しく…これ以上ないぐらいにサーシェスに怒りをぶつけていた。

 

「てめえが、てめえがラーナを…どこまで奪えば気がすむんだああああああああ!!!!」

 

「へっ、自分の女を殺されて怒り爆発ってか!?」

 

それでもサーシェスは減らず口を止めない。

 

ってそれよりもニールさんを止めないと!

 

あれだと相手の反撃に対応出来ない。

 

「ニールさん!」

 

「だああああああ!!」

 

サーベルと大剣での斬り合いが続く。

 

ガキン、ガキンと金属音が辺りに響く。

 

完全にニールさんから冷静さが無くなっている。

 

けどニールさんが突然、ピストルの銃口をサーシェスの左肩に当てる。

 

[burst shotgun.]

 

「吹き飛べ!」

 

爆発が起き、サーシェスの左腕が破壊される。

 

しかし、その変わりにピストルの銃身が壊れて使い物にならなくなってしまった。

 

「てめえ…やりやがったな!!」

 

サーシェスが初めて怒り出すが、ニールさんはお構い無しにサーベルを投げつける。

 

「この俺に通用すると思うな!!」

 

しかし大剣に叩き落とされて、破壊される。

 

更にファングを出しての反撃に出る。

 

「それがどうしたぁ!」

 

ニールさんは急接近して右手にいつの間にか引き抜いたサーベルでファングを切り捨てていく。

 

ファングは私がいくつか堕としたのであまり無いはずだ。

 

「まだあるんだよ!」

 

だが私の予測を嘲笑うかのようにサーシェスの腰アーマーからファングを出してニールさんへ魔力刃を形成しながら突っ込んでいく。

 

 

「ニールさん、駄目えええええええ!!!!」

 

 

 

.

 

 

 

許せねえ……許せねえ。

 

俺の家族、刹那の人生、沢山の人の命や人生を奪ってきたにも飽き足らず、ラーナの命までこいつに奪われた。

 

こいつはいちゃいけない、こいつを野放しにしてはいけない!

 

こいつは、殺さなきゃいけねえ!!

 

そう怒りを…憎しみを野郎にぶつけていたら、突然誰かの叫び声が聞こえた。

 

「ニールさん、駄目えええええええ!!」

 

なのは?

 

俺の方に突っ込んで来る!?

 

おい馬鹿、こっちに来るんじゃねえ!!

 

だが一機のファングが既になのはの背中を狙っている。

 

このまま俺が庇っても二人とも死んぢまう。

 

どうする?

 

どうする、どうする!?

 

<トランザムシステム…イオリアのじいさんも良い置き土産をくれたもんだぜ。>

 

あっちにいた時に自分で言った言葉を思い出す。

 

そうだ…こいつがガンダムだってんなら、必ずあるはずだ!

 

頼む、発動してくれ!

 

今発動しねえで何の為のガンダムだ!!

 

もうなのはがファングの直撃コースまで来ている。

 

もう避けられない!

 

 

 

 

 

 

 

発動しろおおおおおおおおおお!!!!

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間…一瞬にしてなのはを抱えてフェイトの側に移動していた。

 

「何!?」

 

サーシェスのファングが目標を捉えきれず明後日の方向へ突っ込んでいく。

 

GUNDAMフォームとなった俺の身体が赤く発光している。

 

感じる力も今までの比じゃない。

 

これが……

 

TRANS-AM(トランザム)システムか。

 

「ニールさん、それ……。」

 

「赤く光ってる…?」

 

なのはもフェイトも俺の今の姿を凝視する。

 

「おいおい、冗談だろ?てめえもそれ使えたのかよ!」

 

サーシェスは苛立ちを隠さずに叫ぶ。

 

そういや、こいつが刹那のトランザム発動させたエクシアにやられてんだったな。

 

「見りゃ分かるだろ。……あまり時間取れねえから、さっさと終わらすぞ!」

 

抱えていたなのはをフェイトに預けてピストルとサーベルを手に取る。

 

「ちっ、行けよファング!!」

 

サーシェスが残り3つのファングを俺に向かって仕掛ける。

 

「無駄だ!」

 

速く見えたファングの動きが今は手に取るように分かる。

 

どうやら俺のトランザムは機動力だけじゃなくてセンサー系統の精度を底上げするようだ。

 

ファングが止まって見える!

 

自分でも何で思考が追い付いているのか不思議なぐらいの速さでファングを撃ち抜いていく。

 

「くそっ、この俺がまた…!」

 

サーシェスが大剣を持って突っ込んで来る。

 

「そんなことしても無駄だと言ったぞ!!」

 

デュナメスの腰アーマーに内蔵されたミサイルを発射する。

 

いくつかがサーシェスの大剣、右腕、左足、右の腰アーマーに被弾し爆発する。

 

「ぐああっ、この野郎!!」

 

サーシェスの体……いや、機体はもう右足以外残っていない。

 

今がチャンスだ!!

 

「くたばれ!!」

 

だが、戦いというのはそう都合良くいくものじゃなかった。

 

「ニール、避けて!」

 

フェイトの呼びかけに気付くも突然、誰かに顔面に蹴りを入れられて体勢を崩される。

 

サーシェスを倒すのに集中してたせいで反応が遅れた。

 

「どわっ!」

 

乱入した奴の蹴りの勢いが良かったせいで、サーシェスとの距離を離されてしまう。

 

「ニールさん!」

 

なのはが俺の名前を叫ぶ。

 

ボロボロのサーシェスの隣に青いショートヘアで手足に羽みたいなのを付けている女性…戦闘機人が並ぶ。胸元の金属のプレートに3とローマ数字で彫られている。

 

「ドクターが撤退を指示した。すぐに撤退を。」

 

更に体勢を戻したところでトランザムが解除され、GUNDAMフォームも解除、一気に倦怠感が俺の全身を襲った。

 

「畜生…トランザムの…解除…早すぎだろ…。」

 

トランザムって、もうちょっと保たなかったか!?

 

それより最悪な状況だ。

 

俺のまともに戦えない状態を敵が見逃すはずがない。

 

「その前に野郎に仕返しさせてくれよ。」

 

それを聞いたなのはとフェイトが武器を構え直す。

 

だが、俺は海に落ちないようにするのがやっとで手に持ったライフルが上がらない。

 

くそ、気絶しなかったのが奇跡というぐらいにやばい。体が全然動かねえし、何より段々頭が痛くなってきた。

 

「なら、その男に一太刀入れて撤退だ。あまりドクターの指示に背きたくないのでな。」

 

「しょうがねえなあ。ま、こっちもボロボロだしな。だから…さっさと死んでくれや、紛争根絶を掲げるテロリストさんよ!!」

 

サーシェスが赤い光を纏って姿を変えていく。

 

サーシェスの姿はボサボサの赤茶けた髪に顎髭を生やしている。バリアジャケットは中東で一般に着ているような服になっている。

 

上はマフラーのような白いターバンに赤い長袖のシャツの上に紺色のチョッキを着込んで、腕に黒いガントレットを付けている。

 

下は茶色のズボンに赤い脛(すね)当てが付いていて、更に腰に何本もの短剣を入れてあるホルスターがある。

 

手にはデバイスと思われる赤い魔力刃を形成している剣…ビームサーベルを持っている。

 

「さっさと死んでくれやあああああああ!!!!」

 

サーシェスがビームサーベルで俺を切り捨てにかかる。

 

くそっ、動けねえ!

 

「やらせ…くっ!」

 

フェイトが近づこうとするが、乱入してきた戦闘機人に蹴られて妨害される。

 

「ここは通行止めだ。」

 

「退いて!」

 

なのはが叫ぶ声が聞こえる。

 

もう間に合わねえ。

 

こんな形で終わりたくねえ……。

 

俺がここでやられちまったら、誰がサーシェスを倒す?

 

そう思っていたら、今度は白い光の柱が俺の目の前を通り過ぎる。

 

サーシェスの右手が巻き込まれ、バリアジャケットがボロボロになる。

 

「…っ!痛てえな、誰だ邪魔しやがったのは!!」

 

激昂して砲撃が飛んできた先に向かって叫ぶサーシェス。

 

その先には……

 

「そこまでや!大人しく投降しい!!」

 

騎士甲冑を着た機動六課の部隊長、八神 はやてだった。

 

「ちっ、これ以上は面倒だな。撤退しようぜ!」

 

サーシェスの言葉に黙って従い、戦闘機人も逃げようとする。

 

「逃がしは…!」

 

「待て、ぐっ、うっ……。」

 

やばい、意識が保てねえ……。

 

「今は追わん方がええ!それより、フォワードの皆と合流しよう。ニールさんも一緒にってニールさん!?」

 

それを最後に俺の意識は遠のいていき、気絶した。

 

 

 

.

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