魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

16 / 32
第6話 ヴィヴィオと予言

 

―なのはside

 

翌日になり、未だにニールさんは意識が戻らずここ…聖王病院で眠っている。

 

ニールさんがサーシェスとの戦いであの赤く光る強化魔法みたいなものを使ってこうなってしまった。

 

今の私の頭の中は昨日の戦闘のことがあまりにも色々なことがありすぎて整理するのに手間取っている。

 

サーシェスという人との対決

 

保護した小さな女の子

 

ニールさんが謎のシステムを使って意識不明

 

そして

 

ラーナちゃんを殺した犯人がサーシェスだったという事実

 

「ラーナちゃん……。」

 

哀しみのあまり目が潤んでくる。

 

あんな人がラーナちゃんを殺したことを楽しく話していたのが、フェイトちゃんと一緒に戦いながら負けそうになっていたことが悔しくて堪らない。

 

でも、それよりもニールさんに無茶をさせてしまったことが何よりも悔しかった。

 

[マスターが……使った……のシステムの、事が……気になりますか?]

 

そこに後ろからノイズの掛かった声がしたので振り返ると、シャーリーがいた。更にそのシャーリーの手には所々がひび割れて半壊状態のデュナメスが乗せられていた。

 

さっきのノイズが掛かった声はデュナメスのものだ。

 

「大丈夫なの、シャーリー?」

 

私の問いにシャーリーは首を振って答える。

 

「いいえ、デバイスの機能はほとんど壊れていて…応急処置程度の修理しか出来ずにこうして喋るだけなんです。どうしてもニールさんの元へ連れて行って欲しいと言うのを修理出来てないからダメだって言ったのですが、聞いてくれずにこうして持ってきました。」

 

シャーリーの困った表情を見るに余程損傷が酷いようで、おそらくはバリアジャケットも展開出来ないぐらいだろう。

 

しかし、今そこが問題じゃない。

 

「うん、分かったよ。それでデュナメス、ニールさんが使ったアレって何なのか教えてくれる?」

 

[はい。マスターが……使ったのは、TRANS-AM(トランザム)と、いう、私の根幹と…るMGドライヴにあるブラックボックス内、に、封じられていた…ステムです。魔法の威力、機動力、そしてセンサー類の性能強化に、よる、使用者の、ま、魔法命中精度を、3倍に強化する、シス、テムです。こちらで、言うなら、強力な強化型魔法、と言っても、いいでしょう。]

 

強力ともなれば、何かリスクがあって当然だけど……センサー類の強化ということは、情報量も3倍ということになる。つまり、ニールさんの激しい頭痛での意識不明に陥った原因は、情報量の多さに追い付けなくなったから……!

 

[しかし、本来ならこのシステムは、まだ不完、全、で、今の性能で使うのは、危険なのです。]

 

不完全ということは、デュナメス自体も…!

 

[気付いたようですね。私自身も、不完全、ということです。そして、このままトランザム、を、もう一度、使えば、意識を失うだけ……では、済まなく…るかもしれ、ま、せん。]

 

まさか、そんなにまずい状況だなんて思ってもみなかった。

 

「それでなのですが、ニールさんにデュナメスを一から作り直していいかどうかを聞きたいのですが…その様子ではまだ無理そうですね。」

 

デュナメスが自分が不完全であることを告げたところでシャーリーが補足をする。

 

ん?

 

「作り直すの?」

 

「はい、正確には改造か作り直すかですが、本人が目覚めないことにはどうしようもありません。」

 

話を聞く限りではどう考えても作り直した方がいいのだけどニールさんがまた無茶をしようとするのを思うと改造を選びかねない。

 

「とにかく、その話はニールさんが起きてからにしよう。」

 

話を私から切ってから立ち上がる。

 

昨日の事件で保護された女の子を預かりに行くためだ。

 

「いってらっしゃい、なのはさん。」

 

シャーリーは既に誰かから聞いたからか、すぐに横に退いてくれた。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

 

 

 

<ニール…>

 

 

 

 

俺は確か…サーシェスとやり合って…

 

 

 

 

<駄目だよ、復讐に取り憑かれちゃったら…あの時と一緒になっちゃう…。>

 

 

 

 

…ラーナ?

 

 

 

 

<幸せを…その為に周りをもっとよく見て、自分を…えて…!>

 

 

 

 

ラーナは何を言おうとしているんだ?

 

 

 

 

<…ックオ…、…たちは…れた。だからお前も…われ、俺たちに出来たのだからお前にも出来るはずだ。>

 

 

 

 

刹那、俺に何をしてほしいというんだ?

 

 

 

 

 

<ロックオン、今の君には他にも出来ることがあるはずだよ。>

 

<ロックオン、今の貴方は独り善がりになっている。>

 

 

 

アレルヤ、ティエリア…お前らきついこと言うな。

 

 

 

 

分かっているんだ、本当は……。

 

だが、この感情にケリを着けねえと次に進めねえ…。

 

何も変えられねえ…。

 

「……ニールさん、ニールさん。」

 

瞼を開けるとそこにはなのはの顔が…。

 

「ん……なのは?」

 

と思ったらシャーリーだった。

 

「高町教導官は保護した女の子を引き取りに行きましたよ。」

 

[大丈夫ですか、マスター。]

 

横からノイズの掛かっているが聞き慣れた声が聞こえて見ると、シャーリーの掌にボロボロに欠けたりヒビ割れているデュナメスが乗せられていた。

 

「そっか。あとデュナメス、随分無茶させちまったな。」

 

[無茶なのは、マスターの、方です。無理矢理封印、されて、いた、トランザ、ムシステムを発動させて、しまうんですから。今回は1日、意識不明で済みました、が、下手すれば、脳死して、植物人間にもなっていました。センサー類から来る、情報を、ダイレクトに脳に、受ける仕組みで、ただでさえ、多い情報量、を、いつもの調子で、受けていたから頭痛と、意識不明に陥ったのですよ。]

 

ノイズ交じりなものの相変わらず抑揚なく話すが、明らかに怒っている。

 

しかしまさかそんなに危険だったとは。

 

「見ての通り、デュナメスは今、デバイスとしての機能を果たさない状態です。そこでディランディ空曹長に二つのプランを提示します。」

 

 

 

1.改造という名の応急処置(すぐに復帰出来るものの、トランザムの封印強化、負担もステータスも変わらない)

 

2.一から作り直す(復帰に一週間以上掛かるが新兵器追加、負担軽減、トランザムの改良などの大幅な強化が図れる)

 

 

 

「因みに二つ目のプランを選んだ場合は、しばらく銃型のデバイスを渡しておきます。」

 

俺としては、いつまた奴らが出てくるか分からないから出来るだけ早く復帰したい。

 

だが、そのまま復帰してもサーシェスに通用するとは限らない。

 

いや、それ以前に戦闘機人の相手も考えると、このままでいるのは不味い。

 

[マスター、答えは?]

 

答えは、決まった。

 

「……一から作り直してくれ、シャーリー。打てる手は打っておきたい。」

 

「分かりました、デバイスをお預かりして……。」

 

と、大事なことを忘れるところだった。

 

「ちょっと待ってくれ。デュナメスに協力してもらいたいことがあるから預かるのは後にしてもらえないか?」

 

[マスター、皆様に話すのですね?]

 

デュナメスの言葉に何も言わず頷く。

 

シャーリーは何かを察したのか、表情が曇る。

 

「…分かりました。でも、出来るだけ今日中にお願いします。」

 

シャーリーの返事を聞いたところで立ち上がろうとする。

 

思いの外、どこも痛くない。

 

「あ、まだ寝てなくて大丈夫なのですか?」

 

「ああ大丈夫だ。だから少し外で歩いてくる。」

 

シャーリーの手に乗せられたデュナメスを取って病室を出る。

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

病室を出、庭に出たところで小さな女の子が木の近くで怯えているのが見えた。

 

この子、どこかで見たような……。

 

「うう…。」

 

俺を見つけた女の子は怖がって震えている。

 

「怖がらなくていい。俺は何もしない。」

 

両手を上げて何もしないというアピールをする。

 

それを見た女の子は震えなくなったが、表情がまだ強ばっている。

 

「自分の名前は分かるか?」

 

すかさずしゃがみ、出来るだけ同じ目線で、そして優しく話す。

 

「……ヴィヴィオ。」

 

女の子……ヴィヴィオは遠慮がちに答える。

 

「はい、よく出来ました。ちゃんと答えてくれたから俺も名乗んないとな。」

 

ご褒美のつもりでヴィヴィオの頭を撫でてみると、表情から緊張が解け始める。

 

「俺の名前はニール・ディランディ、よろしくなヴィヴィオ。」

 

手を差し出してみるがまだヴィヴィオには俺の手は大き過ぎたのか、なかなか手を出してくれない。

 

そこで人差し指を出してみると今度は握ってくれた。

 

「…うん。」

 

「ははは、よしせっかく握手したんだ一緒に遊ぼ…!?」

 

後ろから敵意を感じ、咄嗟にヴィヴィオの前に出る。

 

その敵意を持っている人物は女性では切り揃えられたショートヘアにバリアジャケットらしき服を着て、トンファーと思われるデバイスを構えている。

 

「すみません、ニール・ディランディ空曹長。そこを退いていただけませんか?」

 

「…いきなり子供相手に武器を向けるなんて何考えてんだ!それに、俺の事を知っているようだが一体何者だ?」

 

「私は聖王教会のシスターをやらせていただいているシャッハと言います。」

 

「シャッハと言ったな…もしかしてはやての知り合いか?」

 

ここで以前にはやてが聖王教会について話している時にシャッハという名前が出ていたことを思い出した。

 

「はい、その通りです。それよりそこを退いて下さい。その子は危険な存在です。」

 

「危険?この子のどこが危険なんだ。この子は何もしてねえじゃねえか!」

 

納得出来ず、シャッハを睨み付ける。

 

直接見てないが、ヴィヴィオが俺の服を掴んで後ろに隠れている。震えている辺り、怖いのが手に取るように解る。

 

「シスターシャッハ、私もニールさんと同じ意見です。」

 

そこに両手でうさぎのぬいぐるみを持っているなのはがシャッハの後ろからやって来た。

 

 

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

ニールさんの病室を出て数分、私は保護することになった女の子の病室を訪ねていた。

 

だけど、病室には女の子の姿はなく今こうして病院内を探し回っている。

 

とまだ探してない庭から声が聞こえたので向かってみる。

 

そこではバリアジャケットを装着したシャッハさんと薄い青の病院服を着たニールさんが睨み合っていた。

 

[マスター、ニールの後ろに保護対象の女の子が…。]

 

見るとニールさんの後ろに女の子が震えながら隠れている。

 

早く止めないと!

 

「シャッハさん、私もニールさんと同意見です。」

 

女の子を恐がらせないため、落ち着いて話す。

 

「しかし高町教導官、この子は……!」

 

シャッハが鬼気迫るような訴えをするも、私は首を振ってそれじゃ駄目だと訴えかける。

 

「私に任せてください。それにその子を預かりに来たんですよ。」

 

「!……分かりました。」

 

シャッハさんは素直に武器を引いて庭から出る。

 

<なのは、保護しに来たということはなのはが保護責任者になるのか?>

 

ニールさんが念話で話しかけてきた。

 

<う~ん、そうじゃなくて、しばらく親代わりと言う感じかな。>

 

私は素直に答えてニールさんの後ろに隠れている女の子の近くでしゃがむ。

 

ニールさんは隠れているヴィヴィオの横に座る。

 

「こんにちは、私の名前は高町 なのはって言うの。お名前を教えてくれるかな?」

 

ヴィヴィオは後ずさってニールさんの後ろに隠れようとする。

 

「……ヴィヴィオ。」

 

ニールさんの方を見ると苦笑いしている。

 

……同じことがあったんだね。

 

「このうさぎさんはヴィヴィオとお友達になりたいって言ってるよ。名前は……」

 

「うん。」

 

ヴィヴィオがうさぎのぬいぐるみを食い入るように見つめている。

 

私はぬいぐるみをヴィヴィオに向け、左手で胴体を持ちながら右手の部分を持ち上げる。

 

「「やあ、僕はラビットだよ。」」

 

とうさぎさんに扮して喋ってみたら、なんとニールさんとハモってしまった…って…

 

「もう……何するんですか、ニールさん。」

 

しかも似てもない○ッ○ーマ○スって……。

 

「ああいや、俺がうさぎの声をやろうと思って喋ってみたんだが、まさかぴったりなのはと同じセリフになるとは思わなかったんだ。」

 

右手で掻きながら笑うニールさんが可笑しくて…

 

「ふふふ、あはははは!」

 

つい私も笑っちゃった。

 

「………?」

 

ヴィヴィオは何でおかしいのか分からず首を傾げている。

 

「ああ、ごめんね。はい、お友達だよ。」

 

ヴィヴィオにぬいぐるみを渡す。

 

「…ヴィヴィオ、私と一緒に行こう?」

 

私は手を差し伸べる。

 

「…行く。」

 

躊躇いがちではあったけど、手を取ってくれた。

 

「それじゃ私の住んでいる所へ行こうか。ニールさんはどうするの?」

 

「俺はこれから診断だ。何ともないからそのまま隊舎へ戻れる。」

 

「そうなんだ。」と言いながらも内心安堵している。

 

だって、赤く光った後の苦しみ方は尋常じゃなかったし。

 

「あの人も、一緒?」

 

ヴィヴィオが聞いてくる。

 

「そうだよ。じゃあニールさん、先に隊舎で待ってますね。シャーリーにも戻ってくるように伝えて。」

 

後ろを向きながらヒラヒラと手を振ったのを見たところでその場を後にする。

 

 

 

 

.

 

 

 

 

ヴィヴィオを隊舎に連れてきたところでスバルたちと鉢合わせになった。

 

「なのはさんお帰りなさい!その子がもしかしてヴィヴィオちゃん?」

 

「ただいまスバル。そう、この子がヴィヴィオだよって、あらら。」

 

連れて行く途中で段々心を開いてくれたけど、私の後ろに隠れちゃったヴィヴィオ。

 

人見知りする……のかな?

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。」

 

笑顔でヴィヴィオを安心させるようにする。

 

スバルたちもそれに合わせて笑顔でヴィヴィオに接しようとする。

 

「初めまして、あたしの名前はスバル・ナカジマだよ。」

 

「こんにちは、私の名前はティアナ・ランスターよ。」

 

スバルもティアナも中腰で自己紹介する。

 

「こんにちはヴィヴィオ、僕の名前はエリオ・モンディアル。でこっちが……」

 

「キャロ・ル・ルシエとフリードだよ。よろしくね。」

 

エリオとキャロが自己紹介するが、ヴィヴィオは俯いたままだ。

 

「ヴィヴィオ?」

 

よく見ると、ヴィヴィオの目に涙が溜まっている。

 

「パパとママは…何処?」

 

……鈍器を頭にぶつけられたような衝撃を受けた。

 

いくら安心させようとしてもこの子の年齢を考えれば両親がいないと安心なんて出来るはずは無いし、何より小さい頃の、一人だった頃の私と被った。

 

「ヴィヴィオ、なのはさんがヴィヴィオのママなんだよ。」

 

突然、スバルがそう言い出したが不思議と抵抗なく受け入れられた。

 

「マ…マ?」

 

「うん、ママでいいよ。」

 

「うっ……ひっく……ママ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

安心したのか私に抱き付いてくるヴィヴィオ。

 

そもそも保護責任者になると決まっていたからこれでいいと思う。

 

本当に保護者になる人が見つかるまで……。

 

「あ、ニールさんお帰りなさい。」

 

「おう、ただいま。っと取り込み中だったか?」

 

そこにニールさんが帰ってきて、ヴィヴィオもそっちを見る。

 

「パ…パ?」

 

「ん?まあ、別にそう呼んでくれてもいいぜ?」

 

ニールさんがパパ。ということは……

 

「そうなったらニールさんとなのはさん夫婦ですね。」

 

ふ…夫婦!?

 

思わずイメージしてしまい、恥ずかしくなってしまった。

 

それは…ニールさんのことは好きだけど…。

 

「おいおいスバル、まだ夫婦じゃないぞ。」

 

え、ええ〜〜〜〜〜〜!?

 

「「「「え!?」」」」

 

今度は皆驚愕してしまった。

 

「ぐすん…えっとね、なのはママとニールパパがね、ヴィヴィオのお友達を使って同じことを一緒に言ったの。」

 

「ヴィ……ヴィヴィオ。」

 

多分、今の私は耳まで真っ赤だと思う。

 

もう、恥ずかしいよお…。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

翌日、俺はなのは、フェイト、はやてと共に聖王教会へとやって来た。

 

教会なんざ、ほとんど行ったこともねえ。

 

俺みたいな奴が来るところでもない。

 

「ほらニールさん、難しい顔しとるよ?」

 

どうも最近は考えてることが表情に出やすいようだ。

 

「悪い。確かこれから会うのはカリム・グラシアっていう六課の後援者だったか?」

 

後援者は他に現在は提督で艦長もやっているクロノに伝説の三提督という管理局内で有名な人たちもいる。

 

凄いメンツだな…。

 

「せや。カリムはベルカ式のレアスキル『預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)』という予言とも言える能力を持っとる。カリムに会って説明することはその能力と関係してくるんよ。」

 

つまりはその予言に俺に関係したことが書かれていたってことか?

 

「どうぞ、お入り下さい。」

 

シャッハがドアの横で入るように促す。

 

いつの間にか着いていたようだ。

 

シャッハに言われたように俺たちは中に入っていく。

 

「いらっしゃい、はやて、皆さん。」

 

部屋に入るとそこには、長い金髪にカチューシャをした女性、はやての言っていたカリム・グラシアが座っていた。

 

「初めまして、なのはさん、フェイトさん、ニールさん。私はこの聖王教会で教会騎士を務めているカリム・グラシアと言います。」

 

カリムは丁寧にお辞儀をする。

 

「こんにちはカリムさん。」

 

「初めまして、フェイト・T・ハラウオンです。」

 

なのはもフェイトもそれに応えるようにお辞儀をする。

 

「初めまして、ニール・ディランディと言います。」

 

念のため、敬語で挨拶をする。

 

「よろしくお願いしますね。それとお二人とも、敬語で無くてもいいですよ?」

 

「なら遠慮なくそうさせて貰おう。なあ、フェイト?」

 

「うん、そうだね。」

 

するとカリムが突然、不思議そうな顔で俺たちを見る。

 

「失礼ですが、お二人は付き合っていらっしゃるのですか?」

 

いや、そう見えるかもしれ…

 

「えっと、あの…その…そんな、付き合っているだなんて…。」

 

俺に冷静に弁明したら、フェイトが顔を真っ赤にして動揺し出す。

 

それをなのはが面白くなさそうに見る。

 

……どうしたものか。

 

「フェイトちゃん、照れるのはええけど続きを話してもええ?」

 

はやてに指摘され、フェイトは咳払いがてら気持ちを入れ換える。

 

「すみません、カリム。」

 

「ふふふ、いいのよ。では、まずは私の能力についてから始めますね。」

 

漸く本題に入るな。

 

俺もよく聞いとかねえと。

 

「私の能力、謂わばレアスキル『プロフェーティン・シュリフテン』については多分はやてから聞いたと思うけれど、詳しく言うとこの詩篇に実際に起こる預言が書かれていくというものなの。」

 

さっきはやてから聞いたのは簡単なものだったので理解する分には助かる。

 

ということは……

 

「これは俺の解釈だが、そういう能力っつうことはここ何年かで重大な預言が書かれたということ、そしてそれがはやてが機動六課を設立した理由ということか?」

 

皆が俺の話を聞いて驚愕の表情で見る。

 

な、何か的外れなこと言ったか?

 

「す、凄い。」

 

「し、信じられへん、大当たりや…。」

 

「ニールさんって本当にすごい…。」

 

「ニールってそんなに頭良かったの?」

 

シャッハとなのは、はやては分かる。だが、フェイトは失礼だ!俺は失言をしたフェイトを睨む。

 

「あ……ごめん、ニール。」

 

フェイトは気付いたのか、口元を手で抑えて謝ってくる。

 

「それで何故そう思ったのですか?」

 

「正直に言っちまうが、機動六課は色々出来すぎているなと思っていたんだよ。っと勘違いしないで欲しいが、別にそれを悪いとは思ったことはない。」

 

はやてが落ち込んだのですぐにフォローをする。

 

「まあ、うちも突っ込みどころ満載なのは承知の上や。」

 

「なら、カリムが預言した『はやてが強力な部隊を創るぐらい大変なこと』って何だ?」

 

俺ははやてからカリムに視線を向ける。

 

「数年前に時空管理局の地上本部が襲撃が預言に出ました。」

 

 

 

 

旧い結晶と無限の欲望が交わる地

 

死せる王の下

 

聖地より彼の翼が蘇る

 

死者達は踊り

 

中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち

 

それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる

 

 

 

「これが機動六課を創った目的なんやけど、ニールさんを入れたことに関してはそれだけやないんや。」

 

「あれだろ、なのはとの繋がりで…。」

 

実際、なのはに基本を教えてもらったことを武装隊で言ったら待遇が変わった。

 

「私もそれは了承したから知ってるよ。」

 

そのことにはやては首を振る。

 

「それもあるけど、本当の理由やない。さっきのカリムの預言の後に続きがあって、それがニールさんを六課に入れた理由に繋がっているんよ。」

 

俺が預言に書かれていた?

 

「付け加えて言いますと二ールさんと思われる預言に関しては貴方が現れて1ヶ月後に出ました。」

 

丁度、訓練校に入った辺りか。

 

「内容を教えてくれ。」

 

カリムは頷いて詩篇を一枚手に取る。

 

 

 

天を穿つ深緑の狙撃手と他の存在を冒涜せし紅の悪魔

 

光を纏いながら互いに相まみえん

 

狙撃手が討たれし時

 

悪魔は更なる災厄を他の世界に振り撒かん

 

 

 

 

「これが貴方だと思われる預言の内容です。」

 

他の存在を冒涜せし紅の悪魔なんていったら一人しかいない。

 

「他の存在を冒涜せし紅の悪魔って…アリー・アル・サーシェスのことだよね。」

 

それを聞いたはやては複雑な表情をする。

 

無理も、無いな。はやての立場としては、サーシェスはある意味スカリエッティ以上に厄介な存在。

 

だがはやてには悪いが、もしはやてがサーシェスと1対1なんてなったら、なのはとフェイトがリミッターがあったとはいえ苦戦した相手だ、確実に負ける。

 

それになのはもフェイトも戦闘機人を相手にしなきゃならなくなる。

 

それはヴィータもシグナムも同じだろう。

 

……どちらにしても野郎の相手は俺しかいないだろう。

 

そして、俺は今度こそ野郎を……殺さなきゃならねえ。

 

けれど、その事についてはやてに聞かなきゃならねえ。

 

「はやて。」

 

「何や、ニールさん。」

 

俺が真剣な表情になったからか、全員の表情も真剣になり一気に緊迫した空気に変わる。

 

「俺がアリー・アル・サーシェスと戦う時は…

 

 

 

非殺傷設定を解除させてくれ。」

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

「なっ!?そんなん許可出来る訳ないやろ!!」

 

はやてに反対されるのは分かっていた。

 

聞いていたフェイト、シャッハは俺を睨み付ける。

 

事情を全て知っているなのはだけは悲しい表情をする。

 

カリムに至っては困惑しているのか、アワアワとしてどうしようかと迷っている。

 

「俺は野郎がいかに汚い奴なのかを知っている。降伏と見せ掛けて銃で撃ってくることもあり得る。それに、俺たちと野郎とじゃ絶対に分かり合えない。」

 

奴と戦った時にアイルランドの自爆テロのことを聞いた時、奴は犠牲になった人間のことなんて一つも口にしなかった。

 

「そんなのやってみなくちゃ……!」

 

奴は俺たちソレスタルビーイングをテロリストと非難したが、罪を償おういう言葉も言ってなかった時点で説得力がない。

 

「野郎と戦ったから分かるんだ!…あいつは、他人を分かろうとはこれっぽっちも思っちゃいなかったんだ!!」

 

つい熱くなり、はやてに怒鳴り付ける。

 

はやては気圧されながらも対処しようと俺を睨み付ける。

 

「だからって、殺しをしろなんて命令はせえへん。何より、そんなことを私らはニールさんにさせとうないんよ!」

 

はやては悲しそうにしながら俺に訴える。

 

そこまで思ってくれているのは嬉しいが、それは聞けない。

 

「ずっと聞いていたけど、私もはやてと同じ気持ちだよ。ニールは、殺しをしちゃいけない。」

 

フェイトもまた俺を説得しようとする。

 

「私も今日会ったばかりですが、貴方がその人を強く憎んでいることは分かります。ですが私も復讐に走るべきではないと思います。」

 

シャッハもまた、同じように気持ちを伝える。

 

「お前らの言ってることは分かる。お前らの言ってることが正しいことも、復讐なんてロクでもない結果にしかならないことも分かっている。

 

だが野郎には家族を奪われた、俺の仲間にも人生を狂わされた奴もいる!野郎が今でもどこかでのうのうと生きてることが我慢ならねえんだ…!」

 

俺の抱えていた憎しみが吐き出され、一時の静寂が部屋を支配していく。

 

 

 

 

しばらくの沈黙の後、最初に口を開いたのはずっと黙っていたなのはだった。

 

「ニールさんは、復讐がしたいのですか?」

 

俺はなのはの質問に驚愕する。

 

ここまで核心を突くようなことを聞かれるとは思わなかったからだ。

 

「本当なら、もう復讐なんて止めてえ…。」

 

こんなことやりたいと思えるはずがねえ。

 

「なら、止めることは出来るはずやろ?」

 

理由がなければたとえ野郎が生きてようが復讐なんて止めてる。

 

「……出来ねえんだ。野郎が、お前らを殺しに来るかもしれない。特になのはとフェイトが既に狙われている。」

 

それは俺が今一番畏れていることだ。

 

「大丈夫、私たちは皆死なない。これからも生きていくんだ!」

 

「フェイトちゃんの言う通りだよ。そのサーシェスがどんな人でも私たちは負けない!そうだよね、はやてちゃん。」

 

「せや、私らは簡単に負けるつもりはあらへん!」

 

ガッツポーズを作って負けん気を見せるはやて。

 

何やってんだ、俺は。いくら野郎が生きていたからってナーバスになりすぎだろ!

 

「そう、だな。お前らのことを信じなさすぎたようだ。」

 

こいつらだって魔導士としてなら俺より力がある。

 

それを信じてみよう。

 

 

 

.

 

 

 

 

一通り、話終わった俺たちは隊舎に戻ってきた。

 

自動ドアが開いたところで、ヴィヴィオが俺に向かって駆けてきた。

 

ヴィヴィオの後ろではなのはが微笑みながら「お帰りなさい」と言っている。

 

「あっ、ニールパパ〜。」

 

とてとてと走ってくる姿がなんだか可愛らしい。

 

「おう、ただいま!」

 

俺はしゃがんでヴィヴィオを受け止める。

 

あれ、俺が教会へ行ってる間に着替えたのか。

 

「驚いた?その服はね、私のお下がりなんだ。」

 

「そうなのか。なかなか似合ってるぞ、ヴィヴィオ。」

 

「えへへ〜。」

 

すごく嬉しそうなヴィヴィオを見て俺も思わず笑顔になる。

 

「いや〜、早速パパになっとるな〜ニールさん。どや、この際なのはちゃんだけやのうてフェイトちゃんとうちも…。」

 

「は、はやて、ふざけないでよ。」

 

顔が真っ赤なフェイト。

 

「はやて、俺にハーレムを作れと?」

 

男なら一度夢見るが、俺は御免だ。

 

「はやてちゃん、少し…頭冷やそうか?」

 

今のなのはの顔は見なかったことにしよう。

 

笑顔だったのに般若に見えたなんて……。

 

「う、嘘やウソ。皆して本気にせんといて!」

 

はやての顔が青い。

 

流石にはやてが可哀想になってきたな。

 

「パパ〜、なのはママが怖いよ〜。」

 

しかもヴィヴィオもなのはの雰囲気に気付いたのか、泣き出し始めている。

 

「なのは、その辺で機嫌を直してくれ。ヴィヴィオが怖がっている。」

 

ヴィヴィオに気付いたなのはは困ったような笑顔になる。

 

「あ、ああ、ごめんねヴィヴィオ。じゃあ、ちょっとフェイトママたちと話があるからパパと一緒に遊んでてね。」

 

それを聞いたヴィヴィオは笑顔になって俺の手を引っ張る。

 

「わ〜いパパ、一緒に遊ぼ〜。」

 

「はは、いいぞ。じゃあ俺とヴィヴィオは部屋へ行ってる。」

 

そう言って、俺はヴィヴィオに肩車をして乗せる。

 

通路の高さは2メートル半ぐらいでヴィヴィオを肩車しても余るぐらいのスペースはある。

 

「わあ、高〜い。」

 

一応、機動六課で人間形態のザフィーラの次に身長が高いと言われている。

 

ヴィヴィオが喜んでくれて良かった。

 

「さてとヴィヴィオ、部屋で何をして遊ぶ?」

 

「お歌が歌いたいの。」

 

「よ〜し、じゃあ俺の故郷の歌を歌おうか。」

 

「うん!」

 

そんな感じで楽しく会話をしながら部屋へと戻った。

 

後ろから「エースオブエースにも勝てない相手がおるんやな。しかもニールさんはすっかりパパやな。」とはやてが言っていたのを聞こえたのは敢えて言わないでおく。

 

 

 

 

.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。