魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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この話から、というより皆さん見ていて気付いていると思いますが、視点がよく変わります。特に、この話からはコロコロと視点が変わります。見辛いと思う方も出てくると思いますが、必要なことなのでそこのところはご了承ください。

あとハレルヤとは、ヘブライ語で「主をほめたたえよ」という意味です。アレルヤも頭文字のhを抜いただけで、意味は同じです。(参考:Wikipedia)


第8話 ギンガ…ハレルヤ

 

―エリオside

 

最近、僕の中から声が聞こえている気がする。

 

結構乱暴な口調で色々言ってくる。

 

例えば…

 

<おいガキ、てめえも男ならキャロとかいう女を自分のものにしろ!>

 

とか

 

<ガキがお堅くまとまってんじゃねえよ、もっと暴れろや!>

 

とか

 

<分かってねえなあ、あのはやてとかいう女。俺がおっぱい揉むんなら(ピー)を引っ張ってピーせてやるぜ!!>

 

とかそんな言葉が頭の中から聞こえてくる。

 

最初は怖かったが、余計なお世話とも言える発言が多くいい加減堪忍袋の尾が切れそうだ。そうして僕の中にいる誰かに怒鳴り付けてみた。

 

すると意外に冷静に話しかけてきた。

 

<あ〜あ、やっと気付きやがったか。全く、話し掛けんのが遅えんだよ。>

 

<いつから僕の中にいたんですか?>

 

少なくともこうなったのは機動六課に入ってからだ。

 

<ああ、ガキ、てめえが思っている通りだ。最初は全く気付かなかったよな。>

 

<貴方は一体誰ですか!?>

 

<ああ俺か、俺の名は

 

 

 

 

ハレルヤだ。>

 

 

 

 

 

それはギンガさんが六課に入る前日に発覚したことでした。

 

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

俺の過去について話した次の日、機動六課に新たな戦力とスタッフが加わるという情報が入った。

 

そのメンバーは俺が知っている人物であり、スバルの姉でもあるギンガ・ナカジマとなのはたち隊長陣のデバイスをずっと手掛けてきたと言われているメカニックマイスターのマリエル・アザンテだ。

 

二人とも俺の顔見知りで、ギンガは訓練学校の休みの時にスバルに誘われたのがきっかけだった。

 

一年前にも捜査協力という形で会ったこともある。

 

ミスマリエル、いや、マリーは二年前にデュナメスを損傷した時に修理してもらったことがある。手際が良く完璧な修理だったとデュナメスから好評だったことは覚えている。

 

「本日より、108部隊より機動六課に出向しました、ギンガ・ナカジマです。ほとんどは知っている方が多いと思われますが、どうぞよろしくお願いします。」

 

ギンガの敬礼に合わせ、俺も含めて全員敬礼する。

 

「マリエル・アザンテと言います。皆からマリーと呼ばれてますので、そっちで呼んでくれると嬉しいかな。」

 

笑顔とお辞儀で挨拶するマリー。

 

「マリーさんは私が入局した時から隊長陣のデバイスを担当していたんだよ。」

 

なのはがマリーを六課に入れた理由を教えてくれた。

 

なるほどな。これからはおそらく激戦が予想されるからということか。

 

因みに108部隊はうちの部隊長であるはやてが師匠と仰ぐゲンヤのおやっさんと六課にギンガと同じく協力することになったラッドがいる。

 

ラッドはギンガとの繋がりで知り合った仲で、一度武装隊にいた時に酒を飲んだことがある。

 

「じゃあ早速なんだけど、模擬戦やろうか。」

 

そう言ってそれぞれの訓練相手や指導者の元へ行く皆だが、今の俺にはデバイスがない。

 

デュナメスをシャーリーに預けて新しく造り直してもらっている。

 

「ではなのは隊長、ちょっとシャーリーの所へ行ってきますね。」

 

そう言ってマリーはなのはに俺のデバイスの造り直しを伝えてもらいながら隊舎内へと入っていった。

 

「はい、分かりました。……でニールさんにはシャーリーからこれを渡すようにって。」

 

なのはが模擬戦をやるということでデバイスの無い俺はそそくさと…下がれなかった。

 

何故かなのはから一般に出回っている銃型デバイスを手渡された。

 

「なのは、何で俺にデバイスを?」

 

「暫く見てばかりなんてなったらせっかく鍛えたのに鈍っちゃうでしょう?だから、それで暫く我慢してね。」

 

丁度いい。

 

俺が言うのも難だが、デュナメスは性能の高いデバイスだった。性能に頼るばかりが戦いじゃないし、最近性能に頼ってないか不安があった。

 

せっかくだから、これで今の俺自身がどこまで行けるか試してみよう。

 

「じゃあ、ギンガはスバルと模擬戦ね。ニールさんはエリオとキャロの相手ね。」

 

「おいおい、いくらなんでもハードル高くねえか!?設立したばっかならいざ知らず、今は大分腕上げてんだぞ!!」

 

「ニールさんなら、大丈夫だよ。」

 

ダメだ、撤回する気はないようだ…。なのははこうやってたまにサラっと無茶なことを言うことがあるから恐い。

 

「全く可愛い顔して恐いことをするもんだ……。」

 

溜め息を吐いて憂鬱そうに顔を覆っているとエリオとキャロが近付いてきた。

 

「あの、ニールさん、よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします!」

 

エリオとキャロが俺に近付いて謙虚に挨拶をする。

 

二人と俺とでは身長差が50cm以上もある為、俺が見下ろす形になる。

 

「おう、今この状態だからあまり手加減出来ないがよろしくな?」

 

「はい、僕たちも負けません!」

 

エリオからも宣戦布告される。キャロもやる気十分のようだ。

 

今の俺はチャレンジャー、どこまで出来るか試させてもらうぜ!

 

 

 

.

 

 

 

 

―ギンガside

 

私の名前はギンガ・ナカジマ。

 

地上108部隊所属でスバルの姉でもあります。

 

現在、私は追っている事件の捜査協力という形でマリーさんと一緒に機動六課へ出向しました。

 

で挨拶の後にどこまで強くなったか見せてもらうためにスバルと模擬戦になり、今はその最中です。

 

「でええええい!」

 

スバルがリボルバーナックルで殴りかかってくる。

 

ディフェンサーで防御するも、パンチの重みが以前よりも増していて結構きつい。

 

本当に腕を上げたわ。

 

でも…

 

「まだまだ、甘い!」

 

スバルの一撃を凌ぎきり、今度は私が左手のリボルバーナックルで反撃する。

 

スバルは怯んでいる。

 

これなら!

 

「そう来ると思ったよ、ギン姉!」

 

ところが、私の予想に反してすぐに立ち直ったスバルが再びリボルバーナックルの一撃をぶつけてきた。

 

拳と拳がぶつかり……

 

「きゃあ!」

 

行き場のないエネルギーが爆発となって拡散する。

 

まさかあんなに早く立て直すなんて!

 

だがそんなことを考えていたら追撃されると思い、私は再びスバルに向かって突っ込んでいく。

 

今度は立て直しが少し遅い。

 

スバルがまたリボルバーナックルで殴りかかろうとするが、実戦だったら私の一撃が先に入っている。

 

「う〜ん、まだまだギン姉には勝てないや。」

 

拳が顔面を捉える直前で止め、構えを解く。

 

「でも本気出さないと危なかったわよ。……強くなったわね、スバル。」

 

私が以前相手した時より明らかに強くなっている。

 

私もうかうかしていられないわね、抜かされてしまうわ。

 

模擬戦が終了ということで二人でウイングロードを降りていく。

 

照れているのか、スバルが頭を掻きながら頬を綻ばせる。

 

「えへへ。っと、そういえば、ギン姉ってニールさんと模擬戦やったことあるの?」

 

ニールさんとはスバルが訓練学校に入っているときに休日を一緒に過ごす形で初めて会った。だからスバルもそのことは知っている。

 

「ううん。スバルはあるの?」

 

あの時のニールは建前ではそう見えなかったけど、どうもピリピリしている感じがして喋りづらかったわ。

 

「あるんだけど、全戦全敗よ。ニールさんの攻撃はほとんど防御出来なくて苦戦してばかり。」

 

私もフロントアタッカーで回避より防御に重きを置く。

 

しかし、ニールさんの射撃は基本的に誘導は大してことないけど、防御をあっさり破いてくる。防御があまり出来ないのは結構痛い。

 

「それと、後でギン姉に話しておきたいことがあるんだ。」

 

スバルの雰囲気が突然暗くなった。

 

あまり良い話でないのは明白ね。

 

「いいわよ。でも、訓練後でいい?」

 

スバルは黙って頷く。

 

一体、何の話なんだろう?

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

あれからエリオとキャロVS俺の模擬戦が始まったんだが…

 

「くっ、攻撃する隙が……ちっ!」

 

見事に苦戦していた。

 

エリオのスピードにキャロのサポートとフリードの攻撃が加わってなかなかあっちの隙が見つからない。

 

ディバインバスターでキャロを狙い撃つのが一番ベストなのだが、それでは撃つ前にエリオにすぐ攻撃されてしまう。

 

それにずっとデュナメスを使っていたからか、その性能に頼った戦い方ばかりをしていたこともあって、結局思っていたほど自分の経験に基づいた動きが出来てない。

 

射程がそんなにないのは勿論、機動力もそれほどない。

 

で今は建物の影に隠れてやり過ごしている。

 

カートリッジは残り3発、魔力も体力もまだまだあるが次にキャロを撃ち落とせなかったらエリオにあっという間に接近を許してやられる。

 

「気を付けてキャロ。ニールさんがもしかしたら狙撃してくるかもしれないから。」

 

「うん、エリオ君。」

 

二人とも、今の俺が狙撃出来ないことを分かってなかったようだ。

 

なら、それを利用させてもらう!

 

魔力を悟られないように遮断しながら、フリードに接近する。

 

「爆風を受けろ!」

 

バーストショットガンの爆風でフリードを奇襲する。

 

「きゅいい!?」

 

フリードは避けることも出来ずに撃墜された。

 

「フリード、きゃあ!!」

 

フリードに近付くキャロの後頭部にスティンガーレイを命中させる。

 

防御が間に合わなかったため、撃墜となった。

 

「しまった、キャロ、うわっ!」

 

エリオにも同じ攻撃をしたが、右のサイドステップで避ける。

 

「惜しい、あと少しだったんだがな。」

 

「ええ、見事にやられました。ですが…!」

 

エリオがストラーダのブースターを噴かして俺に突っ込んでいく。

 

思った以上に早く攻撃に転じられてしまったため、怯んでしまった。

 

「もう一撃!」

 

エリオがUターンして追撃を仕掛けてくる。

 

だが、まだまだ読みが甘いな。

 

「エリオ、その追撃は余計だぞ。」

 

俺は銃口をエリオの眼前に向ける。

 

カートリッジもまだ一発ある。

 

カウンター気味だから避けるのは無理だ。

 

そう予測してバーストショットガンを放った。

 

ところが、予想に反してエリオは何とブースターを噴かしたままのストラーダを手放した。

 

「なっ、ぐはっ!!」

 

予想外の動きに反応しきれずに腹部に直撃、ストラーダと一緒に落ちる。

 

幸い、低い高度にいたために衝撃は大したことない。

 

地面に仰向けに落ちたところで起き上がろうとすると眼前にストラーダの角ばった切っ先を突きつけられた。

 

「おいおい、てめえはそんなもんか?」

 

明らかにいつものエリオの口調じゃない。

 

しかも目付きが鋭く、右目だけ金色でオッドアイになっている。

 

「……てめえは何者だ。」

 

俺は警戒してエリオと思われる人物を睨み付ける。

 

「分かんねえか。まあいい、ガキがもうすぐお目覚めだから俺は寝てるぜ。」

 

そう言ってエリオらしき人物は俯く。

 

「あっ、おい!」

 

俺が呼び掛けると、エリオが顔を上げる。

 

オッドアイではなく普段のエリオに戻っていた。

 

「……ん、あ、あれ、ニールさん?」

 

エリオは記憶が無いのか戸惑っている。

 

「よう、気が付いたかエリオ。悪いがちょっと退いてくれねえか?」

 

「あ、すみません…。」

 

エリオがストラーダを退けて後退する。

 

それを見た俺は立ち上がり、バリアジャケットに付いた埃を叩いて落とす。

 

そしてエリオを見ると、何故か落ち込んでいた。

 

「あの、どうやってああいう状況に?」

 

エリオがさっきの模擬戦について聞いてくる。

 

「一言で言うなら、お前に一本取られたといったところだな。まさかストラーダをわざと手放すとは思わなかったぞ。」

 

エリオが別の口調で俺に話しかけてきたことは本人が余計に気にするかもしれないので伏せておく。

 

「えっと、全く記憶がないんです。」

 

案の定、エリオは喜ばずに逆に附せてしまう。

 

「……エリオ、お前に何があったかは知らない。それにあの戦い方はまるで俺の知っている仲間の一人のようだった。お前の戦い方と違うのはすぐに分かった。」

 

そう、ほんの一瞬だったがあの纏う雰囲気や予想外で荒々しい戦法はアレルヤの中にいたもう一人の人格のハレルヤと似ていた。

 

「だが、これだけは言わせてくれ。エリオはエリオ、そいつはそいつだ。それを忘れるな。」

 

言ってもエリオの様子は変わらない。

 

「それでも今回のことが納得出来なかったのなら、そいつの良いところを盗んで自分のものにするんだ!」

 

あの戦い方を上手く盗めば確実にエリオは強くなる。

 

エリオは経験の浅さもあって詰めを誤るところがある。あの戦い方は謂わば狡猾に相手の隙を突く戦い方だ。ポジションの関係も考えると必要な部分だ。

 

「はい!」

 

考えが伝わったのか、元気のいい返事が返ってきた。

 

いつの間にか反省会のようになっていた会話を終わらせ、へばっているキャロとフリードの方へと歩いていった。

 

 

 

.

 

 

 

 

ハレルヤside

 

今俺が入っているエリオっつうガキの視界を通してロックオンの模擬戦とやらの様子を見ていた。

 

ったく、俺が野郎が後ろにいること教えてやったのに反応が遅いったらねえ。

 

まあ、まだガキだからしゃあねえか。それに野郎の動きが思ったより速かったのもあるがな。

 

そもそも俺はこのガキの体の中に入る前はイノベイターの奴らとの戦いで俺たちの機体アリオスを破壊されて眠るところだったのだ。

 

そこに突然、「ある世界をイレギュラーから救ってほしい。」と声が聞こえて目の前が真っ白になった。

 

そんで目が覚めて、てっきり母艦の中かと思ったらいつの間にかこのガキの体の中だった訳だ。

 

最初はガキに呼び掛けても全く聞こえてねえのか反応が全くなかった。

 

反応するようになったのはここ最近だ。

 

今まで全く反応がなかったから最初に色々文句を言ってやって名前も教えてやった。

 

ガキ……エリオはアレルヤに似てクソ真面目な奴だ。

 

だが、驚いたことに経歴まで似てやがる。

 

プロジェクトFというクローン実験の産物で既に死んでいたエリオ・モンディアルのクローン。

 

まあクローンつってもテロメアが短いとかの問題はねえみたいだ。

 

でこのガキは生みの親に捨てられ、その後も保護された施設でも暴れたっつう話だ。

 

相当に暴れたみてえだから、そういう意味では俺とアレルヤに似てんな。

 

だがこいつの不幸はフェイトっつう女が終わらせた。

 

以来、その女が保護責任者になり今に至る。

 

これ知った時は、あまりに俺たちに似てて笑っちまったぜ!

 

違いは色々あるが、俺はこのガキを気に入り、鍛えてやることにした。

 

鍛えてやるっつったら自分でやるからいいって断りやがった。

 

で任せてみたら、やられそうになってやがる。

 

しょうがねえから、強引に表に出てやった。

 

<ちょっ、何するんですか、ハレルヤさん!>

 

<黙って見てろ、ガキ!>

 

<僕はエリオです。ちゃんと名前で呼んで下さい!>

 

ガキの声は無視してストラーダっつう槍から出るブースターの勢いを利用してわざと槍を離して野郎の土手っ腹に突っ込ませる。

 

そのまま俺は地面に着地、野郎が地面に落ちた衝撃で近くに吹き飛び地面に刺さった槍を引き抜いて眼前に突き付けてやった。

 

んで野郎に挨拶をした後に引っ込んだ。

 

そしたらあのガキが俺に文句を言ってきた。

 

<模擬戦中に割り込まないで下さい!>

 

<やられそうになっといて言うことかよ。それにな、俺から見りゃてめえはまだまだ甘いんだよ!>

 

野郎が何か言っているがガキは俺に対する苛立ちに顔を歪ませている。

 

<そんなに名前で呼んでもらいたきゃ、もっと強くなるんだな。……それ、野郎がまともなこと言ってるぜ。>

 

野郎の言った言葉にガキはしっかり返事をする。

 

<…僕は今、貴方のことが嫌いです。でも、認めてくれたら必ず名前で呼んでもらいますよ!>

 

へっ、ガキがはりきっちまって…。

 

 

 

 

期待してるぜ、ガキ。

 

 

 

 

.

 

 

 

 

ギンガside

 

模擬戦を終えて、私はスバルと二人で話している。

 

そして、聞いてしまった。ニールさんの過去と、ラーナさんを殺した犯人のこと。犯人が最近100人超の大量殺戮事件と疑われているアリー・アル・サーシェスだということを……。

 

「スバル、そんな話をして大丈夫なの?」

 

「うん、ニールさんが許可してくれたから大丈夫だよ。」

 

スバルは笑顔で返すが、いつもの元気な感じではなく無理している感じである。

 

当然よね。そんな話をされれば、悲しいに決まっているもの。

 

それにサーシェスのことは私も許せない。

 

「それと、これもニールさんが言ってたんだけど、サーシェスがフェイト隊長とエリオ、あたしとギン姉を狙ってるんだって。」

 

フェイト隊長とエリオ君が狙われるのはおそらくプロジェクトFの実験体だったからだろう。その話はフェイトさん本人から聞いた。

 

そして私とスバルが狙われるのは……

 

 

 

 

戦闘機人だから。

 

 

 

 

それも最近出現している戦闘機人たちのプロトタイプとも言えるタイプゼロで私がファースト、スバルがセカンドだ。

 

「スバル、もしサーシェスと一人で当たってしまった時は隊長たちかニールさんのところへ逃げなさい。その話だと一人ではまず勝てないわ。」

 

無論、それは私も同じ。

 

相手はなのは隊長とフェイト隊長がリミッター付きとはいえ、傷一つ付けられなかった相手。

 

しかもリミッター無しでも厳しく、ニールさんがトランザムという強化魔法らしきものを使わなかったら負けていたと聞く。

 

そんな相手では私なんてとても歯が立たないだろう。

 

悔しいけど、ニールさんや隊長陣に任せるしかない。

 

拳に力が入り、顔が歪む。

 

「ギン姉…。」

 

スバルが心配に見つめてくる。

 

……いけない、これじゃ。

 

「ごめんねスバル。もう大丈夫よ。」

 

安心させるように笑顔で返す。

 

そして真剣な表情に戻る。

 

「一つ聞きたいんだけど、ニールさんは大丈夫なの?」

 

「うん、ニールさんが自分で復讐を止めるって言ってたよ。」

 

「いや、そうじゃなくて体とデバイスよ。復讐のことは説明の時に言ったでしょ。」

 

「あはは、ごめんね。体の方は大丈夫だって。でもデバイスがボロボロになっちゃって、負担を軽減するためにも新しく作り直してるんだ。」

 

「そう……良かった。」

 

ニールさんに何事もなくて安堵した。

 

「……ギン姉、ニールさんのこと、好きなの?」

 

言われた瞬間、顔が真っ赤になったのが分かった。と言うよりいきなりそんな話題転換が来るとは思わなかった。

 

「な、なな、何を…!?」

 

「あれ、ギン姉は本当に好きなんだ。」

 

楽しそうに私を見るスバル。

 

もう、観念するしかないわね。

 

「だってカッコいいし、優しくて大人の男の人で……。」

 

「あたしはニールさんのこと好きだけど、恋人にしたいとかよりお兄さんって感じだなあ。ティアも同じこと言ってたし。」

 

となるとスバルとランスターさんはライバルにはならないわね。

 

「ただ、ニールさんはなのはさんと最近すごく仲が良いんだよね。告白はしてないみたいだけど、見てて分かっちゃうんだ。」

 

「え?」

 

……それを聞いて、舞い上がっていた熱が冷めて胸がチクチクと痛むようになった。

 

つまりは、入り込む余地はないってことなのかな?

 

 

 

 

でも後悔は、したくない。

 

 

 

 

「ギン姉、どうしたの?」

 

「私、ニールさんに告白してくる。」

 

「ええっ、ちょっとギン姉!?」

 

スバルの静止を聞かずに部屋を出てニールさんがまだいるだろう訓練場へ向かった。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

エリオとキャロとの模擬戦が終わり、今はティアナとなのはが市街地を舞台にしたフィールドで模擬戦をしている。

 

それを俺の他にシグナムとヴィータ、エリオにキャロが見ていた。

 

フェイトは別件が入り、本部にいる。スカリエッティの件に没頭したいのにとぼやいていたが仕方ない。

 

模擬戦の方は当然、二人の差は歴然でティアナが防戦一方だ。

 

ただし、ティアナが幻影と移動しながらの射撃が上手くなっていることで以前よりも持ちこたえている。

 

「だが、まだまだ決定打には欠けるな。」

 

「あはは…。」

 

俺の一人ごとを聞いていたエリオが苦笑する。

 

「本当ならディランディとやり合いたかったが、今の状態では満足な戦いが出来ないからデバイスが完成した時にでも相手してもらうとしよう。」

 

横で口を挟むシグナムをヴィータが上目遣いで見る。

 

<…ずっと思ったんだけどよシグナム、最近妙にニールと模擬戦したがるよな。>

 

<!?…べ、別にここのところ相手してもらってないから言ってるだけだ。それを言ったらヴィータ、最近のお前はディランディに優しいじゃないか。>

 

<いや、あんなもん見たらそうなるって。ただ、あいつが気に入ったっつうのが大きいんだがな。>

 

ヴィータとシグナムの念話が丸聞こえだが、敢えて聞かなかったことにしよう。

 

すると、後ろにギンガがやって来た。

 

「あのニールさん、お話が…。」

 

ギンガはいつになく緊張した面持ちで話しかけてきた。

 

「すまないシグナム、ヴィータ、エリオ、キャロ、少し外す。」

 

二人になった方がいいと悟った俺は付いてくるようにギンガに言って訓練場を後にする。

 

誰もいない裏手まで移動して、ベンチに座る。

 

「それで話って何だ?」

 

俺から聞くが、ギンガは黙ったままだ。

 

「スバルから俺のこと、聞いたんだろ?」

 

それを聞いたギンガは無言で頷く。

 

「皆にも言ったが、俺はもう復讐に走らずに守るために戦うことにした。……もうあの時と違うからな。」

 

今までの俺にはなかった、子供の……ヴィヴィオの存在がある。

 

ラーナとの約束も十分な理由だが、ヴィヴィオの保護責任者になったことで復讐に走る姿を見せて将来を暗いものにさせたくないと思ったのが最終的な後押しになった。

 

なのはは誰か良い人にヴィヴィオを任せようという考えだが、俺はいっそのことなのはとフェイト、俺で保護者になった方がいいと思っている。

 

ヴィヴィオが俺を含めた三人をママ、パパと言って一緒にいたいと思っているのが解ったからだ。

 

それが叶わなかった俺にとっては何としても叶えてあげたい願いだ。

 

「そ、それでしたらあの、わ、私からニールさんに言いたいことがあるんです。」

 

そう言ってギンガは深呼吸する。

 

ここまで来て次に言う言葉に気付かない男は普通いないだろう。

 

「私、ずっとニールさんのことが好きでした。もしニールさんさえ良ければ、付き合ってください。」

 

顔を真っ赤にして言うギンガ。

 

ギンガは明らかに美人だ。そして性格も俺の中では好きな方だ。

 

何もなければ、付き合っても良いぐらいだ。

 

だが……俺には既に心に決めた人がいる。

 

「そこまで思ってくれるのは俺にとっても非常に嬉しい。ありがとう、ギンガ。」

 

お礼を言った俺にギンガは明るい表情になる。

 

「でも……ごめん、今の俺はなのはの事が好きなんだ。」

 

それは心からの謝罪。

 

ギンガには辛いだろうが、断らせてもらう。

 

こうなるとゲンヤのおやっさんに話しかけづらくなるな。

 

「そう、なんですか。分かりました、すみませんわざわざ……。」

 

ギンガは今にも泣き出しそうな表情だ。

 

「じゃあ、俺は先に戻っている。後からゆっくり来てくれ。」

 

そう言って俺はベンチから立ち上がり、訓練場へ戻っていく。

 

慰めの言葉は逆に相手を傷つけるから、何も言わない。

 

すると角を曲がるところでスバルが隠れて見ているのを見つけた。

 

「あ、あのニールさん。」

 

スバルは責めるでもない、ただただ戸惑っているばかりだ。

 

「すまねえスバル、ギンガのこと頼む。」

 

スバルはすぐさまギンガの元へ走り出す。

 

そして、俺がさっき言った場所からギンガの泣き声が聞こえてくるのだった。

 

 

 

 

 

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ケルディムside

 

あれからシャーリーと毎日作り直してから時間が経ちましたが、装甲・武装の作成と負担軽減、GNドライヴの腰部後方への移設、TRANS-AMシステムの大幅な負担軽減は成功しましたがまだTRANS-AMの自動解除のシステム構築に手間取り、新兵器のシールドビットの遠隔操作やバリエーション作成などの作業に入れていません。

 

因みにバリエーションとしてケルディムサーガもありましたが、時間がないので却下しました。

 

「うあ―――、駄目だぁ!ただでさえトランザムシステムを組み直すのもスッゴい時間が掛かるのにそれを使用者の任意で解除の方が難しいなんて、どんだけよ!!」

 

隈が酷い目を見開いて、両手を挙げて叫ぶシャーリー。正に、お手上げというジェスチャーです。

 

もう既にシャーリーはずっと私のことに掛かりきりで頑張ってますが、やはり調整のしづらさもあってトランザムが鬼門になっているようです。

 

「うう…ちょっとヤバイかも…。」

 

[やはり少し休んだ方が…。]

 

「そう思うけどね、でも地上本部襲撃に間に合わせないと。」

 

そうして疲れている体を鞭打とうとするシャーリーに救いの手が差し伸べられる。

 

「なら、それを私に任せてもらえるかな、シャーリー。」

 

そこにこの機動六課に出向したばかりのマリエル・アテンザが入ってきました。

 

「マリーさん……すみません、バトンタッチを……はぐう……。」

 

シャーリーはヨロヨロと手を出してハイタッチを要求する。

 

どうやらマリエルはマリーと呼ばれているようです。

 

彼女はタッチをした後に、シャーリーを部屋から出す。

 

シャーリーは足が覚束なく、危なげながらも研究室を出ていく。

 

「久しぶり、デュナメス……いえ、ケルディムだったかしら。大体はシャーリーから聞いたわ。」

 

[では、早速お願いします。]

 

マリエル、いえ、マリーはそう言ってさっきまでシャーリーが座っていた座席に座る。

 

私の中では一人、アレルヤ・ハプティズムと同じ超兵、マリー・パーファシーが同じ名前ですがここに彼女はいません。

 

「で早速だけど、シャーリーから送られたデータを見るとトランザムの解除プログラムを形成するのに強力な冷却パーツが要るんじゃないかなと思うの。」

 

[確かにシャーリーがいくらプログラムを組んでも満足のいくものになりません。私としても現状の冷却パーツでは限界があると判断します。]

 

失敗の原因は解除時に性能が一緒に落ちてしまうことにありました。

 

「そこでなんだけど、実はラーナちゃんのデバイスにそのパーツがあるのよ。ほら、ズウェーレシグが突撃や移動する時に魔力ブースターがあったでしょ。あれって冷却が出来ないと壊れちゃうから取り付けたの。今回はそれをトランザムの解除時に使わせてもらうのよ。」

 

まさかそこでズウェーレシグの名前が出るとは思いもよりませんでした。

 

[分かりました。ですが今の話はスカリエッティとサーシェスが捕まるまでマスターには秘密にして下さい。マスターにはこれから起こることに集中していただきたいので。]

 

マリーは黙って頷き、予め用意していたズウェーレシグのパーツと思われるものを白衣のポケットから取り出して作業の続きに取り掛かった。

 

これで間に合ってくれればいいですが…。

 

 

 

 

.

 

 

 

 

スカリエッティside

 

いよいよ、地上本部を襲撃する時が来た。

 

ガジェットはともかく、戦闘機人が揃い、更にはサーシェスというジョーカーも持っている。

 

そして…サーシェスのデータから開発したスローネシリーズ3体とGN-Xも10体をつい先日完成した。アインは性能実験と飛ぶだろうゆりかごの護衛としてトゥルブレンツに改良した。

 

本当は疑似GNドライヴの改良やGN-Xの後継機の2や3、アヘッドとやらも造りたかったし、AMFをこのGN-Xに搭載したかったが流石にそんな時間はない。それは管理局に勝利してからゆっくりやるとしよう。

 

「ドクター、申し訳ないのですが明日に備えて休ませていただきます。」

 

「ドクター、私も休ませてくださ〜い。」

 

手伝ってくれたウーノとクアットロが休ませて貰うように言ってきた。

 

ウーノにはスローネツヴァイ、クアットロはスローネドライの開発と調整をしてもらった。

 

「ああ、もういいよ。明日に障っては大事だから休んでいいよ。私もスローネアイントゥルブレンツの調整が終わったら休むとしよう。」

 

他の娘たちとサーシェスは既に休んでいる。

 

「ではお休みなさいドクター。」

 

「お休みなさいドクター。」

 

ウーノとクアットロがGN-Xの開発室から出ていく。

 

このGN-Xはそのまま再現したのではなく、疑似GNドライヴにジュエルシードのエネルギーを利用した電気の謂わば疑似GNドライヴとジュエルシードのハイブリットだ。

 

ただ、それを完成させるのに大分時間を使ってしまったが…。

 

それにしてもアルケーを改良していて気付いたことがある。

 

アルケーは疑似GNドライヴが一基だけでなく、両足に二基の合わせて三基だった。

 

アルケーを作った当時はガジェットと戦闘機人たちの開発に躍起だったからもう眠気眼でやってたりもした。

 

それをサーシェスと聞いていたウーノから珍しく突っ込まれてしまったよ。

 

だがあれだけでSランクの魔導士を相手に互角だから流石だ。

 

改めて敵でなくて良かったと思う。

 

唯一トランザムというシステムのあるあの茶髪の男が脅威だが疑似GNドライヴを三期搭載したアルケーを持つサーシェスなら倒せるだろう。

 

さあ、これで準備はこれで整った。

 

先行組であるチンク、セイン、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディード、サーシェスは明日から潜入準備の開始だ。

 

ただしサーシェスは単独だが。

 

まあ何れにしても…

 

「明日は最高のパーティーにしよう!はは、ハハハハハハハハハ、アッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 

 

 

全ては無限の欲望のままに…

 

 

 

 

 

.

 

 

 

フェイトside

 

皆が寝静まっている深夜、私は私となのはの部屋のベッドでなのはとヴィヴィオと一緒に寝ていた。でも何故か目が覚めてしまい起きている。

 

隣ではなのはとヴィヴィオがすやすやと静かに眠っている。

 

すっかりなのはにベッタリくっついている。

そういえば、ニールの部屋に泊まった時もベッタリくっついて眠っていたってニールが言っていたね。

 

ヴィヴィオはまだ5歳、一人になりたくないのは当然で親に甘えたい年頃。

 

なのはは誰かにヴィヴィオを預けると言ったけど、ニールや私は私たちでヴィヴィオを面倒を見るべきだと思う。

 

他でもないヴィヴィオが望んでいるから…。

 

「なのはママ、フェイトママ、ニールパパ…一緒…すぅ…。」

 

何の夢を見ているのか、私たちと遊んでる夢なのかな?

 

穏やかに眠るヴィヴィオの頬を優しく撫でる。

 

明日は地上本部での公開意見陳述会の警護をする。

 

それはカリムが予言していた地上本部の襲撃に備えた陣形だ。

 

だけど多分、一筋縄ではいかない気がする。

 

何か……何か嫌な予感がする。

 

「フェイトちゃん、眠れないの?」

 

なのはがベッドに眠ったまま目を開けて私を見る。

 

「なのは。」

 

「やっぱり明日のこと不安なの?」

 

私が不安になる理由はおそらくサーシェスの存在。

 

あの男は危険すぎる。そして、何をしでかすか分からない存在。

 

「うん、何か恐いんだ。何が起こっても対処するけど……。」

 

「そうだね、それは私も同じ。何故か大事なものが奪われそうで恐いんだ……。」

 

なのはの表情も曇る。大きな不安を抱えているのが十分に分かる。

 

「皆、一緒じゃないと嫌だよ……。」

 

眠っているヴィヴィオからうっすらと涙が零れる。

 

……いけない、私たちが不安になっちゃ!

 

「なのは、明日のためにも寝るね。」

 

「うん、ヴィヴィオも皆も私たちで守ろう。」

 

そう、たとえ私たちより強い相手でも必ず守るんだ!

 

 

 

.

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