魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第10話 その手は遠く

 

―スバルside

 

感情に支配され、自分にある力を全て解き放つ。

 

「ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

膨大な魔力が溢れ、天井にまで及ぶ。固い床に罅が入る。でも、そんなのは今は知らない!

 

ギン姉を奪われたくない!

 

ギン姉をよくもあんな無惨に……!

 

悲しくて悔しくて涙が止まらない。

 

そんな思いばかりが渦巻く。

 

「返せ…ギン姉を…返せええええええええ!!」

 

あたしは相手に突っ込んでいく。

 

「こいつ…!」

 

ノーヴェが射撃魔法を使うがお構い無し、左肩に、頬にかすろうが止まる気はない。

 

「退ぉけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

リボルバーナックルでノーヴェを殴り掛かる。

 

ノーヴェが防御魔法を使うが、そんなのは関係ない。

 

IS『振動破砕』

 

強力な振動を加えた攻撃を加えることで敵の内部(戦闘機人の基礎フレームや駆動部分など)をも破壊する戦闘機人に効果的な謂わば『戦闘機人キラー』とも言えるインヒューレントスキルだ。

 

ニールさんからは「ガンダムを一撃で破壊できる可能性を持つ能力」と言われている。

 

そのISを加えた一撃で防御魔法を破り、ノーヴェを吹き飛ばす。

 

「こいつぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

しかしノーヴェがすぐにハイキックで反撃に出た。

 

あたしも同じハイキックで迎え撃つ。マッハキャリバーに罅が入るが構わずに力を込める。

 

そしてノーヴェが押し負けて、部屋の端まで吹き飛ばされて体内に溜めた空気を無理やり吐き出される。

 

「かはっ!」

 

「ノーヴェ!!」

 

あたしは更に接近しようとする。

 

「IS、ランブルデトネイター!」

 

そこに短剣が目の前に飛んできて爆発した。

 

咄嗟に防御魔法を張ることで止められてしまう。

 

「チンク姉!」

 

「ウェンディ、ノーヴェと共に撤退しろ!ここは姉が止める。」

 

「でもチンク姉は…!」

 

「姉なら触らずとも止められる!」

 

それを聞いたあたしはすぐに前に出ようとするもまた短剣を投げられて止められてしまう。

 

「ノーヴェ、行くッスよ!」

 

ウェンディはボードに乗ってギン姉の入ったコンテナをボードの後ろに付ける。

 

「大丈夫だ、自分で行ける。」

 

ノーヴェは自分で立ち上がり、ローラーで走り去る。

 

「邪魔、するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

また短剣を投げられるが、爆発に構わず突っ込む。

 

そして邪魔をするチンクをリボルバーナックルで殴って吹き飛ばす。

 

チンクが防御魔法を張るもISで破壊する。

 

「だっはっ!」

 

吹き飛ばされて仰向けに倒れたところで追撃する。

 

「くっ!オーバーデトネイション!!」

 

が目の前に沢山の短剣が宙に浮いていた。

 

回避は間に合わない。

 

マッハキャリバーがラウンドシールドを発動させたところで短剣が発射、爆風が巻き起こる。

 

爆風が晴れると、あたしのバリアジャケットはほぼ吹き飛び、右腕と頭から血が流れ、左腕に至っては二の腕の外側が吹き飛んで機械部分から神経を司るケーブルから火花が出ていた。(実は吹き飛ばされたのではなく、リアクティブパージというバリアジャケットの爆破による衝撃緩和の緊急の防御魔法が発動した)

 

力はもう出ない。

 

でもそれよりもあたしにはギン姉をボロボロにされた上に助けられなかったことが何より傷付き、何より悲しくて涙が止まらない。

 

「返せ、ギン姉を返せよぉぉぉぉ!」

 

もう走れず、右足を引き摺りながら相手に近付いてまだ動ける右手を伸ばす。

 

だが、触れる前に天井から水色の髪をした戦闘機人が現れた。

 

「チンク姉!」

 

「セイン、助かった。」

 

そして新たに来た戦闘機人と共に水の中に入るように床に沈んで消えた。

 

「あ、ああああああああ……。」

 

敵を全て取り逃がしてしまった。

 

膝を付き、地面に手を付いて頭を垂れる形になる。

 

マッハキャリバーの右のローラーが折れる。

 

[損傷甚大、機能……停止……ザザッ。]

 

通路からティアとなのはさんがやって来る。

 

「スバル!?」

 

「間に合わなかった…!」

 

ティアもなのはさんも攻められない。

 

止められなかった。

 

ギン姉を救えなかった……。

 

「あ、あああああああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…。」

 

 

 

 

少女の慟哭が部屋に響き渡る……。

 

 

 

.

 

 

 

ルーテシアside

 

ドクターの指示で地上本部近くでガジェットを召喚した後、機動六課という部署の内部に潜入。

 

目標である聖王と呼ばれてる私より小さな女の子を拐った。

 

周りにいた人達はあまり強くなく、容易く倒せた。

 

だけど、突然この子の父親と名乗る長身の男の人が現れた。

 

父親……私にはいない存在であるのにこの子にはある存在。

 

それを知って何故か苛立ちを覚えた。

 

何故、私はこんなに苛立っている?

 

分からないけど、ガリューに妨害するように命令する。

 

だけど、苛立ちとは一変して果たしてこの子をあの男の人から離して良かったのかと思った。

 

私はお母さんに目覚めて欲しい、一緒にいて欲しい、心が何か分かるからレリックを探している。

 

この子は気絶する寸前、ママ、パパと呼んでいた。

 

思い出してみると、ゼストが父親変わりをやってくれていたのではないのだろうか?

 

だとしたら、私のやってる事は悪いこと?

 

……ガリューが指示を仰いでる。気絶してないけど、追いかけられる心配はあまりないと言っている。

 

他の人は気絶か傷を負わせるかだったけど、何故かそのまま来るように指示してしまった。

 

自分でも不思議だ。

 

今まではそんなことしなかったのに……。

 

そうして思いを巡らせながら建物の外で聖王の器をガジェット2型の上に寝かせてガリューが来るのを待っていた。

 

そこにモニターが目の前に出る。

 

<ルーお嬢様、聖王の器は確保出来ましたか?>

 

「うん、そこのガジェット2型に乗せてある。ガリューがまだ来てないから、ガリューが来たら撤退する。」

 

左に避けて証拠を見せる。

 

<宜しいですわ、こちらももうすぐ撤退します。……お気を付けて。>

 

モニターが消え、それと同時にガリューが建物から出てきた。

 

「行こう、ガリュー。その子を抱えてガジェットに乗って。」

 

「ルーお嬢様、ご苦労様です。」

 

そこに確かオットーとディードだったか、その二人が来た。

 

「私達も今撤退の指示が出ましたのでお供します。」

 

その申し出に頷き、すぐにガジェット2型に乗って撤退する。

 

途中で槍使いの男の子と竜召喚士の妨害があったけど海に沈めた。

 

が、竜と竜召喚士を海に沈めたところで強力な砲撃が建物から出た。

 

「何!?」

 

オットーの驚きの声に砲撃が出た場所を見ると建物の壁に大穴があいていた。

 

あの中にはこんな砲撃の出来る魔導師はいなかったはず。

 

「……来ます!」

 

ディードがガジェット2型に乗る私の後ろに出る。

 

そこに現れたのは、緑色の、ガンダムという敵の中でドクターが一番恐れている敵だった。

 

 

 

 

.

 

 

 

エリオside

 

地上本部が襲われ、地下で無事にフェイトさんと合流した僕とキャロ。

 

だけど機動六課が襲撃されているということでフェイトさんとキャロと一緒に六課へと向かうことになった。

 

しかし、そこに空戦の出来る戦闘機人が立ちはだかりフェイトさんが相手することになった。

 

僕たちはフェイトさんに任せて六課へ向かう。

 

その時にハレルヤさんが「あの格好エロいな、一度ボロボロにしてみてえ!」なんて言ったので本気で怒っておいた。

 

漸く六課に着くというところで僕たちが見たのは……

 

炎上し、破壊され、無惨な姿に変わってしまった六課隊舎だった。

 

「隊舎が!」

 

「酷い……。」

 

そして左側を見るとガジェット2型に乗る以前にレリックの取り合いになった女の子とその召喚獣であるガリュー、そしてガリューに抱えられるヴィヴィオだった。

 

……許せない!

 

「ストラーダ!」

 

[ja.]

 

「駄目、エリオ君!」

 

キャロの制止も聞かずにヴィヴィオが乗ってるガジェット2型の方へ突っ込む。

 

がさっきまでいたガリューがドロップキックを仕掛けてきていた。

 

避けきれずに喰らってしまったがストラーダのブースターで態勢を立て直し、もう一度突っ込む。

 

ガリューも右の爪で迎え撃つ。

 

「どけええええええ!!」

 

互いに交差し、ガリューの爪を根本から切った。

 

そのままヴィヴィオの所へ向かう。

 

<ボケ、上から来るぞ!>

 

ハレルヤさんの警告で上を見ると双剣の戦闘機人が既に攻撃を仕掛けてきていた。

 

「ISツインブレイズ!」

 

<ああこりゃ駄目だな。>

 

気付くのが遅れ、背中に叩きつけられてしまう。

 

「うわあああああああ!」

 

そのまま海に墜ち、沈んでいった。

 

そのすぐ後にキャロとフリードも墜ちてしまった。

 

そこで僕の意識は切れてしまった。

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

スナイパーライフルを持って外に出たら既にあの女の子とヴィヴィオの姿も無かった。

 

が、遠くをよく見ると……いた!

 

トランザムはまだ使わない。

 

すぐに俺も飛び立ち、追い掛ける。

 

……機動力が大分上がってる。

 

すると一人の戦闘機人が空中を飛んで、二本の魔力刃を持って接近してくる。

 

「ここは通さない。オットー、ウーノ姉様に連絡してGN-Xを二機ルーテシアお嬢様に召喚出来るようにお願いして。ドクターの言う通りならこの敵は…ガジェットじゃ相手にならない!!」

 

剣を持った戦闘機人が魔力刃を振り被ってくる。

 

俺はスナイパーライフルを右肩に付けて両腰にマウントされたビームサーベルで受ける。

 

鍔迫り合いになり、火花と魔力に因るスパークが起きる。

 

「GN-Xだと!?やっぱりあのスローネを造ったのも、サーシェスの野郎にスローネの後継機みたいなのを造ったのもスカリエッティか!」

 

「そうだ、そして貴様達は次も敗北する!」

 

双剣の戦闘機人がもう一度叩きつけるが、俺は動じず受けきる。

 

「勝手に決めつけんじゃねえ!」

 

敵の魔力刃に接触してない左のビームサーベルを仕舞い、バックパックのビームピストルを取って目の前の双剣の戦闘機人に発砲する。

 

「なっ、くっ!」

 

双剣の戦闘機人は首を左に曲げて避けたが、肩に掠りボディスーツに傷を付ける。

 

「ディード、ドクターの許可は取った。ルーテシアお嬢様、お願いします。」

 

オットーという男装の戦闘機人に促されたルーテシアという少女が腕を交差する。

 

「召喚。」

 

「させるか!」

 

すぐに召喚士の少女に発砲するが、ガリューがヴィヴィオを抱えながら背中で盾となって魔力弾を止める。

 

魔法陣が出現し、出てきたのは最終決戦で戦ったあのGN-Xそのままだった。

 

「次から次へと…!」

 

「行かせないと言った!」

 

ディードをはね除けようと力を入れるが、ディードがさっきのお返しとばかりに左の魔力刃で頭部を突いてきた。

 

「ちっ!」

 

俺はギリギリで首を左に曲げて回避、ビームピストルの銃口をディードの腹部に当てる。

 

「しまっ…!」

 

「娘の将来が掛かってんだ、加減はしねえ!」

 

[burst shotgun.]

 

爆風を至近距離で当て、腹部がボロボロのディードは墜落する。ああは言ったが、非殺傷設定だったから死んではいない。

 

「ディード!」

 

墜落する戦闘機人、ディードをガジェット2型が受け止める。

 

続けて接近しようとするが、GN-X二機が行く手を塞ぐ。

 

一機がライフルを撃ち、もう一機が盾を構えながら右手にビームサーベルを持って突っ込んで来る。

 

「邪魔すんなっつってんだろうが!」

 

ビームを難なく避け、サーベルの一撃を左手のサーベルで受ける。

 

その間にライフルを構えるGN-Xが右に移動する。

 

だが、その途端に紫の髪の女の子が魔力弾を放ってきた。

 

魔力弾はケルディムの頭を捉えている。

 

それでも慌てずに右のビームピストルを顔の前に移動させて撃つ。

 

弾は見事に魔力弾に命中、相殺する。

 

「敵ながらやる!けど、これなら避けられない。IS、レイストーム。」

 

オットーの周りを光の帯が囲み、ケルディムとなったニールを襲う。

 

左側からはGN-Xがライフルを撃つ。

 

移動中に教えてもらったシールドビットという新武装なら防ぎきれるが、生憎調整不足で使えない。

 

なら!

 

「トランザム!!」

 

機体が赤く輝きを放つ。

 

 

 

.

 

 

 

シグナムside

 

地上本部襲撃から時間が過ぎ、シスターシャッハからレヴァンティンを受け取り漸く六課に向かえるようになった。

 

空を飛んで移動し、途中で中年の高ランク魔導師を見掛けるが、急ぐ身であるために敢えて無視した。

 

と途中で、ビルの屋上で気を失ったリインを抱えるヴィータを発見した。

 

「シグナム、リインがあたしを庇って…!」

 

見るとグラーフアイゼンのハンマーが欠けている。

 

「分かった、とにかく私は六課に行くからお前も行くか?」

 

そう言いながらビルの屋上へ降りてヴィータに近付いたその時、何か異様な形の影が私たちを覆った。

 

「漸く見つけたぜ、あの時のピンク髪の女!」

 

振り返り見ると、手足が異様に長い赤いロボットが空中に浮きながらこっちを見ていた。

 

あれは二年前に戦ったロボット!

 

そして紛れもなく、ディランディの命を一度奪い、シールズの命をも奪った男。それどころか、この男は複数の村を壊滅させている。

 

「貴様が、アリー・アル・サーシェスか。」

 

すぐにレヴァンティンの柄に手を掛ける。

 

「おうよ、どうせ野郎に教えられてんだろ。だったら話は早え、楽しく殺し合おうぜ!」

 

サーシェスは大剣を手に持ちながら私の方へと突っ込んで来る。

 

「今は貴様のような外道に構っている暇はないと言いたいところだが丁度いい、ディランディが手を下すまでもなく、貴様をここで葬る!!ヴィータ、リインを連れて六課へ行け。そこに居ては奴に狙われる!」

 

「分かった、気を付けろよ。」

 

ヴィータは素直に従って飛び立つ。サーシェスが襲ってくる様子はないのが幸いか。

 

見送った私は鞘からレヴァンティンを引き抜いて突撃する。

 

「さてさっき俺を葬るって言ったよな、やれるもんならやってみろや!」

 

サーシェスが大剣を振り下ろす。

 

互いの剣がぶつかり、火花が散る。

 

「ぐっううう…。」

 

何てパワーだ、少しでも気を抜けば確実に押し込まれる!

 

ギシギシという耳障りな音が立つ。

 

「どうしたどうした、この程度かよ!」

 

いつまでも鍔迫り合いをしていては負ける!

 

「嘗めるな、はあっ!」

 

最大の力を込めてどうにか押し退けて距離を開ける。

 

「レヴァンティン!」

 

[explorsion.]

 

カートリッジが排出され、刀身を火が覆う。

 

「紫電…一閃!」

 

炎を纏ったレヴァンティンを振り下ろすが、サーシェスは大剣で難なく受け止める。

 

「へっ、ちょいさあ!」

 

受け止めたところでサーシェスの左足から魔力刃が出て、私の喉元を狙う。

 

「ぬんっ!」

 

それを読んでいた私は剣を梃子に上へと体を押し上げて前宙のように回転して避ける。

 

「シュランゲフォルム!」

 

[explorsion.]

 

更にレヴァンティンの名を略してでも急いで指示を出す。

 

刀身が蛇腹剣へと変化する。

 

「ちっ!行けよ、ファング!!」

 

サーシェスは舌打ちして私から離れる。距離を取ってファングを放ってくる。

 

だが、私には通用しない。

 

「シュランゲバイセンアングリフ!」

 

蛇腹剣となったレヴァンティンの刀身で私の周りを囲む。

 

それによってサーシェスのファングに因る魔力弾の攻撃、魔力刃に因る突撃を無効にしていく。

 

墜落したファングは三機か。

 

「やるじゃねえか、ならこれはどうよ!」

 

そう言って奴はファングからロープ状のバインドを出す。

 

レヴァンティンを絡めるつもりだ!

 

「させん、レヴァンティン!」

 

[explorsion.]

 

薬莢が排出され、レヴァンティンに魔力が込められる。

 

蛇腹剣となった刀身が私の魔力光の色を示す薄紫の光を帯びていく。

 

「はああっ!」

 

私はレヴァンティンを振って操ることでバインドを破っていく。

 

バインドを破ったところでサーシェスに向けて柄を振り下ろす。

 

「飛竜、一閃!」

 

魔力を帯びたレヴァンティンの刀身がサーシェスを襲う。

 

「調子に乗んなよ、このアマァ!」

 

サーシェスは蛇腹剣の一撃を横に避ける。

 

若干左の長い肩アーマーを霞る。

 

「それで避けたつもりか!」

 

私は釣りをするような感じで引っ張り気味に振る。

 

それに合わせて刀身が軌道を変えてサーシェスの足を狙おうとする。

 

「ぬううううううう…!」

 

だがそれも後ろに振り向き様の左足の魔力刃で止められてしまう。

 

止めたところで右足の魔力刃を利用してサマーソルトで弾く。

 

「あの攻撃に対応してくるとはな。」

 

私はサーシェスが以前より強くなっているのを感じた。

 

以前はさっきとは違う軌道だが、飛竜一閃で一つ傷を負わせることが出来た。

 

サーシェスがシュランゲフォルムでの攻撃は今まで見たこと無かったようで、対応が遅れていたというのもある。

 

だが、サーシェスは様々な戦闘経験を既に積んでいるのは分かっていたからおそらく……

 

「デバイスの性能が上がっているのか。」

 

「危ねえなあ、けどどうやりゃ倒せるか少しだけ分かってきたぜ。」

 

不気味な笑みを浮かべるサーシェスだが、さっきより隙が無くなった。

 

どうやら、ここからが本番だな!

 

 

 

.

 

 

 

キャロside

 

バインドで縛られて海に落とされた私たち。

 

私だけ気が付いてどうにか小さくなったフリードを抱え、エリオ君を助けようとしてばた足で下へと潜っていく。

 

近付いたところでエリオ君が目を覚ます。

 

といきなり手を掴まれ、海上へと引っ張られていく。

 

「ぷはっ、エリオ、君?」

 

そこで見てしまった、エリオ君の右目が金色に変わっているのを。

 

「ケホケホッ、あああのガキならおねんねしてるぜ。」

 

口調も乱暴で普段のエリオ君と違う。

 

「明らかにあのガキと違うってんだろ、はいはい分かったよ、名乗りゃいいんだろ名乗りゃ。」

 

表情を見て私が思っていたことが分かっちゃったのかな。

 

「俺はハレルヤだ。でよ、あの機械女どもは何処だ?あの女のせいで左腕が折れてやがる。」

 

見ると左腕がダランと垂れ下がったようになっている。

 

それにショックを受けるのはすぐで、思わず周りを見た。

 

隊舎はボロボロで炎上している。

 

シャマルさんは気絶、ザフィーラさんは……隊舎の壁に埋もれて血だらけ。

 

海では緑色のロボットが戦っているが、ヴィヴィオを拐った人たちは髪の短い人だけしかいない。

 

そして、周りはガジェットだらけ。

 

あまりにも酷くて涙が溢れる。

 

「おい、聞いて…。」

 

「竜騎…召喚。」

 

巨大な魔法陣が海に現れる。

 

呼び出すのは、アルザスの守護竜。

 

「ヴォルテーーーーーール!!!」

 

魔法陣から黒い鎧のような鱗、赤い体表、六枚の翼、4つの目を持つ巨大な竜……ヴォルテールが現れる。

 

「なっ、でけえ……!」

 

エリオ君らしき人、ハレルヤさんが驚愕の表情でヴォルテールを見上げる。

 

「壊さないで。私たちの居場所を、壊さないでええええええええええええええええええええええええ!!!」

 

ヴォルテールが私の悲しみと怒りに呼応して特大の炎の砲撃をガジェットの群れに向けて放射する。

 

その射線上にいたガジェットは全て融解、蒸発していく。

 

「一撃で半分が消し炭かよ。ったく、魔法っつうのはとんでもねえなあ。おい、聞いて……。」

 

魔力が切れた私はハレルヤさんの言葉を最後まで聞く前に意識を失った。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

トランザムで赤く光る俺は機動力を生かしてオットーの攻撃を掻い潜っていく。

 

GN-Xが二機ともライフルで攻撃、更にガジェットも加わって四方八方に魔力弾が飛んでくるが、トランザム状態の俺を捉えることなど出来ない。

 

最早魔力弾が止まって見える。

 

「なんてスピード。ならこれで……ISレイストーム!」

 

オットーは再び光の帯を作り、俺に向けて放ってくる。

 

さっきは直線的だったが、今度は螺旋を描いて向かってくる。

 

さっきの攻撃より範囲が広がったものの速さがない。

 

「当たらねえよ!」

 

螺旋を上昇して避け、ピストルの銃口をオットーに向ける。

 

だが突然、今まで周りを囲んでいただけの大量のガジェットが襲ってきた。

 

「邪魔だっつってんだろ!」

 

左手のビームサーベルをマウントしてビームピストルをバックパックから手に取る。

 

[photone machinegun.]

 

ピストルを連射して次々とガジェットの黄色のレンズを狙って破壊していく。

 

だが倒せど倒せどガジェットが壁となって邪魔してくる。

 

「畜生!」

 

苛立ちながらもガジェットを撃ち続ける。

 

と後ろから巨大な光線が見えた。

 

その光線を放ったのは巨大な黒い竜だった。竜の足元を見ると涙を流しているキャロと何かを叫ぶエリオ、気絶しているのか横たわって動かないフリードがいた。

 

「あれはキャロが召喚したのか!?」

 

[マスター、余所見しないで下さい。敵機がこちらに突っ込んできます。]

 

ガジェットが壁になっていた方向へ向き直すとガジェットとGN-Xが突っ込んできていた。

 

[!?マスター、ガジェットとGN-Xから高エネルギー反応、特攻です!]

 

「何!?ちぃっ!!」

 

再びフォトンマシンガンを連射しながら離れて特攻を凌ぐ手に出る。

 

ガジェットは墜とせたが、GN-Xは二機ともシールドで防御しながら突撃してくる。

 

生半可な威力じゃダメか。

 

ピストルをバックパックにマウントして右肩のスナイパーライフルを持つ。

 

[divine buster.]

 

ジャイロ回転の付いたディバインバスターがGN-Xを飲み込んで、二つの爆発を起こす。

 

「ヴィヴィオはどうなった!?」

 

GN-Xを破壊したところでヴィヴィオとヴィヴィオを拐った犯人たちを探すも誰もおらず、ただ夜の海が静けさを取り戻しただけだった。

 

[申し訳ありませんマスター、既にヴィヴィオと犯人たちの反応は全てロストしました。]

 

ケルディムの報告を聞いた俺はライフルを下ろして俯く。

 

悔しさで両手の拳を握り締める。

 

「またかよ、また家族を守れねえのかよ!ヴィヴィオ……ヴィヴィオーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

拐われる前にした約束を、明日一緒に遊ぶという約束を俺は守ることが出来なかった……。

 

 

 

.

 

 

 

 

シグナムside

 

あれから互いに決定打を出せずに膠着状態が続いていた。

 

私は相手のファングを封じきれているが、近接では力があっちが上な為に受け流せても攻勢に転じようとしても強引に押し返されてしまう。

 

一方、サーシェスは力に分があっても私がギリギリで攻撃を捌ききることで近接で優位に立つことが出来ないでいる。

 

とはいえ、左手の籠手は吹き飛び、右肩もバリアジャケットが切れ、右の頬には切り傷が付いている。

 

息もそろそろ切れ始めてきた。だというのに、サーシェスは息切れを起こしてない。

 

「へへへ、女一人でここまで粘られたのは姉ちゃんが初めてだぜ。」

 

サーシェスは大剣を右肩に担ぎ、左手の甲をこちらに向ける。

 

「貴様に褒められても嬉しくない。」

 

私はサーシェスを睨む。

 

と突如、周りからピンク色の粒子が漂い始めた。

 

「……何だ姉ちゃんよお、ああ、ああ、しょうがねえなあ、分かったよ。……おい良かったな、全員撤退だとよ。目的は果たしたからな。……てめえらの基地にいる聖王っつうメスガキと青い髪の女一人は貰ったってよ。」

 

「聖王……まさか!?」

 

青い髪となるとスバルかギンガだが、ヴィヴィオが拐われたというのか!?

 

「今度会うときは殺してやるよ、じゃあな!」

 

そう言い残してサーシェスは姿を文字通り消した。おそらくは転移魔法だろう。

 

……何てことだ、それじゃ隊舎は、ザフィーラとシャマル、ディランディ、ロングアーチとグランセニックは大丈夫なのか!?

 

「主の言う通り、完全にしてやられたな……。」

 

周りの音もいつの間にか人の声が中心となった。

 

<シグナムさん、聞こえますか?>

 

声の主は高町だった。

 

<聞こえる。そっちはどうなった?>

 

<私とティアナは無事。でもスバルは重症、ギンガは、誘拐されてしまった。シグナムさんはどうなってますか?>

 

なるほど、サーシェスが言っていたのはギンガのことか。あの男がやったかどうかは不明だが、してやられた事に悔しさを覚え、腸(はらわた)が煮え繰り返りそうだ。

 

<まずヴィータはデバイスを破壊され、リインは相手の攻撃を受けたようで意識が不明。私は二人を発見した折にサーシェスと交戦になったが、取り逃がした。>

 

<サーシェスと一人で戦ったんですか!?>

 

高町が驚愕するのも無理ないか。

 

奴は制限があったとはいえ、高町とテスタロッサをまとめて追い詰めたのだからな。

 

<ともあれ、私は隊舎まで戻る。お前たちも来てくれ。>

 

高町が了解の返事をしたのを確認した私は念話を切って隊舎へと飛んで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

此度の戦いは……時空管理局、ひいては地上本部と機動六課の敗北という形で幕を閉じた――――――――――――――

 

 

 

.

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