魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第11話 悲しみを強さに

 

 

ニールside

 

―地上本部と機動六課隊舎が襲撃された翌日、俺は無事な隊員としてなのはやティアナと共に事後処理を行っていた。

 

襲撃後のスカリエッティの宣戦布告めいた映像でさっきまでは俺の中で苛立ちが募っていたが、それは無理矢理押し込んでいる。

 

なのはと俺は内部、ティアナは外で指示を出している。ただし、ついさっきティアナが負傷した六課隊員たちのいる聖王病院へ向かった。

 

皆元気が無いが、特になのはが一番落ち込んでいるように見えた。

 

それでも表に出さずにきびきびと動けているのは流石だ。

 

それを言ったら、この状況であちこち動き回っているはやてもすごくはあるが。

 

「……とにかく、お願いね。今動けるのは私たちだけだから……。」

 

六課の隊員が敬礼して立ち去る。

 

その時に俺にも敬礼した為に俺も無言で敬礼する。

 

二人きりになったところでなのはに近付く。

 

「なのは。」

 

「ニールさん、少し一緒に歩きませんか?」

 

俺は黙って頷き、後を追う形で歩いていく。

 

隊舎はどこもボロボロで、俺の部屋も荒れていた。

 

瓦礫が散乱した通路を歩くうち、突然なのはの足が止まった。

 

「どうしたなのは?」

 

「あ、ああ…。」

 

横から見ると、ヴィヴィオが大事そうに抱えていた兎のぬいぐるみが所々が焼け焦げ、綿や刺繍が飛び出た無惨な姿で瓦礫の上に落ちていた。

 

なのはの表情はショックで青ざめている。

 

「……すまないなのは、俺がいながら!」

 

俺は目を瞑り力無く謝罪する。

 

「ううん、ニールさんの事は、攻められないよ。」

 

悲しみを拭いきれてないのか、笑顔がぎこちない。何より涙目だ。

 

……俺はそんな笑顔が見たいんじゃない。

 

「ニールさん、まだ聖王病院へ行ってないでしょ?さっきティアナが病院へ行ってくるって言っていたから。……お願い、今は……。」

 

 

なのはは背を向けて別の場所へと歩き出す。

 

背中が寂しく、今にも壊れそうな、そんな脆さが見えた。

 

だが、今話し掛けて欲しくないという意図がある気がしたので話し掛けずに立ち去り、そのまま病院へ向かった。

 

 

 

.

 

 

 

ルーテシアside

 

私は今、ドクターのラボで私の母親になる人が入っているポッドを見上げている。

 

そこにドクターの戦闘機人たちがやって来た。

 

「ああルーお嬢様、ここにいましたか。」

 

そこに戦闘機人のウェンディが声を掛けてきた。

 

その後ろにはノーヴェ、私を護衛してくれたオットーが来た。

 

もう一人のディードは一日休養とのことでチンクのずっと左側で休んでいる。

 

クアットロから緑のロボットのダメージが残っていると聞かされた。

 

そして、その両隣には私とそう体格の変わらない戦闘機人のチンクと、捕獲した青い髪の女性……タイプゼロファーストがポットで眠っている。

 

そのチンクの眠るポットへノーヴェとウェンディが近付く。

 

「チンク姉のダメージ、次の戦いまでに治らないんッスよね?」

 

眉をハの字に曲げながら後ろにいるノーヴェに聞く。

 

「ああ、内部の駆動部とかフレームとかが滅茶苦茶になってて全部取り替えなきゃなんないってクア姉が言ってた。…あのハチマキ野郎、今度会ったらぶっ飛ばしてやる!」

 

ノーヴェは悔しさを右の拳で左の掌を殴ることで表す。

 

それだけチンクを慕っているのかが分かる。

 

「でルーお嬢様が望むレリックは手に入ったッスか?」

 

趣にウェンディが質問してくる。

 

昨日襲撃した建物の中にレリックはあったけど、結局母親になる人を復活させるのに必要なレリック…11番目のレリックは見つからなかった。

 

私は無言で首を振る。

 

「そうッスか。でも大丈夫ッスよ!あたしらも手伝いますから。」

 

私は無言で頷いて母となる人の眠るポットを見上げる。

 

だけど見ているうちにお父さんもいたらと思い、つい思ってしまった。

 

お父さんがゼストかあの緑のバリアジャケットの人だったらどんなに良いだろうと。

 

「ルーお嬢様、ゼスト様は分かりますけど何故敵であるあの男が出てくるんですか?」

 

オットーが少し語気を強めて聞いてくる。

 

オットーはディードを負傷させたあの緑のロボットを許せないと言っていたから私の言ったことが納得出来ないのだろう。

 

どうやら口に出てしまったようだ。

 

「自分でも分からない。ただ、あの娘を拐う時にあの娘を案じて必死にガリューを戦ってるのを見てから何故かそう思うようになった。」

 

今までに見たことが無かった光景、父親というのを知らなかった私が父親がどういう人を言うのかを少し理解した瞬間だった。

 

そういうことを知らない、ノーヴェ、ウェンディ、オットーは首を傾げるばかりだけど。

 

また私の母となる人、メガーヌの入るポットを見上げる。

 

「ずっと気になったんスけど、何でルーお嬢様はそのお母さんを復活させたがるんスか?」

 

「この人を生き返らせると、私に心が出来るってドクターが言ってたから。」

 

「そういうもんスかねえ…。」

 

そう言ってノーヴェに引っ付くウェンディ。

 

私は二人を一瞥してまた見上げる。

 

 

 

.

 

 

 

ゼストside

 

―「うっ、がはっ、げほっ…!」

 

木にもたれ掛かり、腹を抑えながら血を吐く。

 

……もう、時間がない。

 

スカリエッティの人体改造によって一時的に復活したこの体も限界を迎えようとしている。

 

「旦那……う、ううっ。」

 

炎熱の力を持つユニゾンデバイスであるアギトが涙目で祈るようにして手を組んでこっちを見る。

 

あの小さな赤いハンマーの騎士、確かヴィータという名前か。なかなか強かったな。見た目の年齢の割に一撃一撃に重みがあり、もし一度でも喰らっていたら危なかった。

 

しかしアギトよ。生きてほしいという願いも分かるが、もうどうしようもない。

 

それでも生きているのは、レジアスに問い詰めなければならないことがあるから。

 

そして……それが叶ったら、あの男を、アリー・アル・サーシェスを必ず葬る。

 

「アギト、心配を掛けた。もう大丈夫だ。」

 

「ごめんよ旦那、あたしが不甲斐ないばかりに旦那に負担を……。」

 

「あまり気にするな。……それより、二つ頼みたいことがある。」

 

アギトが涙を吹いていつもの勝ち気そうな表情に戻る。

 

「何だい旦那。」

 

「まずは、アリー・アル・サーシェス、あの男には決して心を許すな。」

 

「どういうことだよ、旦那。」

 

「あの男は危険だ。戦いは殺し合いだと思っている。そして、あの男がやって来て3年で余りにも多くの人間が殺されている。だから関わると最悪殺されるかもしれない。これはルーテシアにも言っておいてくれ。」

 

二人が掛かってもおそらく一瞬で殺されるだろう。奴は、戦いをよく知っている。

 

「分かった、ルールーにも言っておく。で、もう一つは?」

 

「この前、お前が淹れてくれた薬湯はなかなか良かった。だから一杯もらえるか?」

 

「うん、今あっちで作ってくる。」

 

アギトが林の向こうへと飛んでいく。そのタイミングを見計らったように目の前にモニターが出る。

 

モニターにはスカリエッティの秘書と言ってもいい戦闘機人、ウーノが映っていた。

 

<体の具合はどうですか?>

 

「分かっているのだろう、もうあまり時間がない。」

 

<そうですか、ご自愛下さい。>

 

ふん、心にもない事を。

 

「貴様たちの計画には協力してやるが、こっちのやる事には手を出すなよ。」

 

もしかしたら奴らは用済みになったレジアスを殺すかもしれないからな。

 

<分かりました、ただしルーテシアお嬢様にもご協力いただくことになります。もう既に確認は取ってあります。では、ジンクスの調整もありますのでこれで失礼します。>

 

くっ、好きに利用しておいて何を言う。

 

表情に出さぬように左手を強く握ることで我慢する。

 

ルーテシア、アギト……せめて二人は無事でいてくれ。そして、その為にはサーシェスを何としても葬る!

 

それまで私の体よ、保ってくれ!!

 

 

 

 

.

 

 

 

ティアナside

 

―今、私は事後処理をシグナム副隊長に任せ、聖王病院に着いてスバルとエリオがいる病室にいる。

 

食べないだろうから、事前にパンやジュースを買っておいた。

 

いざ入ってみると、二人とも所々包帯を巻かれていたり、ガーゼを付けたりしていた。

 

そしてエリオの側にはキャロが座っている。

 

……でも何だか様子がおかしい。

 

スバルとキャロがエリオを睨み付けている。

 

「!ティア、事後処理はいいの?」

 

「シグナム副隊長が後をやってくれるというから任せてきたの。それよりどうしたの?スバルもキャロもエリオの事を睨むなんて。」

 

そうして私がエリオの顔を見ると、エリオは不敵な笑みを浮かべて私を見ていた。

 

「へっ、そこの二人に俺の事を教えてやったんだよ。」

 

おかしい、明らかにエリオの喋り方じゃない。

 

「ティア、今目の前にいるのはハレルヤっていう人なんだって。」

 

意味が分からず眉間に皺が寄ってしまう。

 

「説明すんのもメンドくせえからスバル、お前が自分の相棒に説明してやれ。」

 

すごい偉そうね、ちょっとムカついたわ。

 

「貴方に言われなくたって!」

 

どうにもご機嫌斜めね。でも聞くのは説明の後だ。

 

スバルはさっきとは打って変わって、ハレルヤの事を簡単に説明してくれた。

 

超兵とかよく分からない単語があったけど、それよりもニールさんと同じ世界から来たことには驚いた。

 

「付け加えて言えば、俺もガンダムに乗っていた。」

 

ガンダムに乗っていた!?つまりはニールさんの言っていたガンダムマイスターってこと?

 

「でもそれで何故二人が不機嫌になってるのよ。」

 

「ハレルヤさんがスバルさんとギンガさんの事を酷く言ったからです!」

 

珍しくキャロが語気を強めた。

 

これは余程の事だ。

 

「アンタ、一体何を言ったの?」

 

ハレルヤがエリオの顔でおちゃらけた態度を取る。

 

「ああ、あの姉ちゃんもそこの女も体弄くり回された割には大したことねえなって言ったんだよ。」

 

それを聞いた私はハレルヤの胸ぐらを掴む。

 

「アンタ、よくもそんな事を!」

 

だけどハレルヤはこっちを見ずにスバルを見る。

 

「お―怖い怖い。けどな、いくら自分の姉奪われて落ち込んだってよお……いつまでもウジウジされちゃあたまんねえんだよ!てめえはマゾか、てめえはそんなタマじゃねえだろうが!!」

 

「……へ?」

 

余りに意外な言葉に私は愚か、スバルもキャロも呆けている。

 

まさか…叱咤激励?

 

「あ〜あ、ったくこんなの柄じゃねえっつうのによ。ああ〜メンドくせえや、後は頼むぜガキ…。」

 

ハレルヤが俯いていつものエリオの表情に戻る。

 

でエリオが次第に涙目になっていく。

 

「えっと、あの……スバルさん、ごめんなさい!」

 

エリオがベッドの上で土下座してきた。

 

涙目になったエリオを見た瞬間に逆に苛めているようでこっちが申し訳なく思えてしまった。

 

「あ、ああ気にしないで。エリオが悪い訳じゃないから。」

 

「ティアの言う通りだよ。それにさっきハレルヤの言ったことは多分叱咤激励だと思うし。だから泣かないで、ね?」

 

それを聞いたエリオは涙を吹いてこっちを見る。

 

「っと、忘れる所だったわ。何も食べてないだろうからパンと飲み物買ってきたわよ。」

 

スバルにジュースの缶を渡して、エリオとキャロにはパンを渡す。

 

「ありがとう、ティア。」

 

「「ありがとうございます。」」

 

三人とも受け取り、早速開けていく。

 

スバルの方は缶の蓋を左手で開ける際に機械音がした。

 

「スバル、やっぱり左手はまだ万全じゃないんだ。」

 

「うん、破損した部品とかは変えたけど応急処置だったから。後でメンテナンスがあるからその時にちゃんと治してもらう。」

 

そう言ってスバルは缶の中身を飲む。

 

「スバルさん、ティアナさん、私たち何か飲み物取ってきますね。」

 

するとキャロが退室、エリオも後を追った。

 

……全くマセているというか気が利きすぎというか。

 

それから、ギンガさんの安否とマッハキャリバーの破損状況について話した。

 

ギンガさんは無事だけどおそらく敵として出てくる。

 

泣き出すかなと思ったら、初対面で乱暴な印象だったハレルヤからの意外な叱咤激励があってか、スバルは冷静で元気に受け答えをした。体はまだ治ってないけど。

 

「それにしても、世の中不思議な事があるのね。」

 

「うん、まさかエリオに別の人格があるなんて思わなかったもん。」

 

ハレルヤ……ニールさんと同じ組織、ソレスタルビーイングに所属していた人。

 

確か以前にニールさんが見せてくれた映像にその人は、オレンジのガンダムに乗っていた。

 

そしてその人の能力は超反射で、別人格の思考と融合することで初めて力が発揮される。幸いエリオは身体能力は良いし、何より反射神経がフォワード陣の中で特に良い。

 

……考えようによってはエリオはとんでもないアドバンテージを得てしまったのかもしれないわ。

 

もしこれにエリオが気付いたら、私たちの中で一番、いえ、隊長たちに迫るか並ぶかの実力になるわ。

 

「それにしてもティア、何かキャロが妙な事を言ってたよ。確かエリオの左腕にいつの間にかオレンジ色のブレスレットが着いていたって。」

 

それ、何か気になるわね。まさかデバイス……いえ、考えすぎね。

 

そうして思考を巡らせていたら、ドアが開き、ニールさんが入ってきた。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

聖王病院に着いた俺はまず、スバルとエリオの様子を見に行った。

 

病室をナースに聞いてすぐに見つけたところでドアを開けた。

 

「よう、大丈夫かスバル。」

 

病室にはスバルとティアナしか居なかった。

 

「はい、大丈夫です。ニールさんは無事で良かったです。」

 

スバルは元気を取り戻したようだ。

 

エリオはいないから、おそらく大丈夫だろう。

 

「俺はいいが、ヴァイスとかシャーリーとかは大丈夫なのか?つってもヴァイスが一番ヤバかったらしいな。」

 

「……はい、ロングアーチスタッフとシャマルさんから重傷者は出なかったのですが、ヴァイス陸曹とザフィーラさんが重傷で危なかったそうです。ただ、病室覗いたらシャーリーさんはヴィヴィオちゃんを助けられなかったことを大分悔やんでました。」

 

ティアナが俯きながらもすぐに答えた。

 

俺は堪らず拳を強く握り締める。

 

「アイツは気にする必要なんかねえ、俺が甘かったからこうなったんだ……!」

 

悔しさのあまり、歯軋りをする。

 

だがあまりそんな態度をとっていると二人まで暗くさせてしまうため、気を取り直す為に目を瞑る。

 

「だが、後悔しても何にもならねえ。それに……なのはの方がショックでけえだろうしな。」

 

「はい、念話ではいつも通りには聞こえましたけど…私達の前では気丈に振る舞っているだけという感じがしました。」

 

「そっか、ヴィヴィオが拐われちゃったもんね。」

 

また二人が落ち込む。

 

そんな二人の頭に手を乗せ、撫でる。

 

「なのはとヴィヴィオの事は俺がどうにかする。だから、お前たちは自分のことに集中してくれ。」

 

「「…はい!!!」」

 

「いい返事だ。」

 

スバルとティアナの元気の良い返事を聞いた俺はそのまま退室して、シャーリーの部屋へと向かった。

 

 

 

.

 

 

 

エリオside

 

―病院内の自動販売機で暖かいココアを買う。

 

僕は缶ジュースを買って手に持つ。

 

そうして買い終えたところでキャロが聞いてくる。

 

「ねえエリオ君、ハレルヤさんっていつからエリオ君の中にいたの?」

 

「本人は機動六課が設立してからって言ってたんだ。ただ、ここ最近まで僕は全く気付かなかったよ。」

 

そこは今でも謎になっている。

 

「本当の事を言うと、エリオ君にも乱暴なところがあったのかなって思っちゃった。ごめんね。」

 

僕は首を横に振る。

 

「いいよ、気にしないで。それに僕にはそんなに否定出来ないし、何よりハレルヤを止められなかったのは僕が悪いし…。」

 

僕はプロジェクトFから生み出された実際にいたエリオ・モンディアルのクローン。

 

今はその人の変わりとかそうではなくて一人の人間だと思っているけど、一時期人間不信になって暴れていた事もあった。

 

ただ、ハレルヤさんのスバルさんへの叱咤激励は意外だったけど。

 

「でも、違うのは分かったからエリオ君もあまり気にしないでね。」

 

キャロは笑顔で僕を励ます。

 

その笑顔が僕にはすごく嬉しかった。

 

そして、何となくだけど今後も一緒にいるような気がしてきた。何故かは分からないけどそう思った。

 

<本当にてめえと俺たちは似てるとこが多いな。>

 

ハレルヤがそう言ったことを僕は敢えて無視してスバルさんたちの所へ戻っていった。

 

 

 

 

.

 

 

 

はやてside

 

今、場所を借りてスバルとギンガについて二人の父親で私の師匠でもあるナカジマ三佐から隊長陣にカリムとクロノ提督を加えて話を聞いとる。

 

ニールさんも話を聞いても問題ないという私の判断で来てもらってる。

 

ナカジマ三佐の口からまずクイントさんの事が語られた。

 

クイントさんは陸戦AAランクの近代ベルカの魔導師だった。スバルとギンガとはそのクイントさんの遺伝子上でも親子と言っても遜色ないぐらいに似ていた。

 

捜査中に見つけたこともあり、戦闘機人である事は既に分かっていたけどクイントさんは人として二人を育てていく事にした。

 

それは捜査中の殉職後も師匠が二人を育てる事をクイントさんの死の真相を捜査、告発する事よりも優先した辺り、変わらなかったようだ。

 

本当はスバルもギンガも管理局員にはなって欲しくなかったというのが師匠の本音だが。

戦闘機人についても説明が為された。

 

戦闘機人は、過去で科学者が造り上げた兵器の技術を応用、人体に組み込んで生命操作技術としてジェイル・スカリエッティが開発した。

 

そういえば、ニールさんが以前に機械を人体に組み込むというのは異物を入れる訳だから拒絶反応が普通なら起こると言っていた。

 

ニールさんがいた世界には別の生命操作技術があるらしいけど、戦闘機人のような技術はないみたいだからそれだけとんでもない技術なんだろう。

 

何せニールさんの世界には、GN粒子とGNドライヴというとんでもない動力源がある。

 

……それを思うと、次の戦いは予想以上にハードになりそうやな。

 

六課襲撃にスローネと同じ疑似GNドライヴ搭載型MSがおったというエリオとキャロの報告がある。ケルディムのデータでGN-XというMSで量産がきくという話やから、間違いなくガジェット程ではないにしてもたくさん投入してくる。他にも出るかもしれへんけど、それが今は一番厄介や。

 

私はそれについて地上部隊に報告、備えるように促さなければならない。

 

無論、私も相手をする。

 

「一つ気になることがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

とそこへシグナムが挙手をする。

 

それにカリムが許可をする。

 

「実は地上本部襲撃時にこの男がいたですのが、ナカジマ三佐はご存知ありませんか?」

 

「その男は確か、妻の部隊の隊長でゼスト・グランガイツと言ったな。」

 

大きなモニターに地上本部襲撃時の写真が映る。

 

この人がヴィータとリインが相手した人か。

 

隣にいるのは融合騎やな。

 

「俺も一度その人の顔を写真で見たことがあるな。確か、この人は既に殉職扱いだった筈だよな。そうだろ、ゲンヤのおやっさん。」

 

意外にもニールさんがこの人の事を知っていた。会ったことは無いとはいえ、武装隊にいたニールさんにとっては先輩にあたる。

 

「ああ、そうだニール。ゼストは、妻と同じ捜査の過程で殉職している。」

 

なのに生きている、これはスカリエッティが人体改造で復活させたんやろうな。

 

ここに来る前にオーリス・ゲイズ三佐にもレジアス・ゲイズ中将とスカリエッティの関係について聞いてきていたけど、もしかして……そのゼストさんの目的はレジアス中将なんだろうか?

 

それは今度の戦いで分かるから割愛しよう。

 

隊長陣やクロノ提督にカリム、師匠との会談が終わってからふと隣を歩くなのはちゃんを見る。

 

……なのはちゃん、元気ないなあ。フェイトちゃんもなのはちゃんの事をチラチラ見てるし。

 

ヴィヴィオの事で落ち込んどるんやろな。でも、今の私には他にやることがある。

 

悔しいけど、ここはニールさんとフェイトちゃんに任せるしかないなあ…。

 

それにしても、ニールさんの気になっとったけど全然脈無しっていうのは寂しいものがあるなあ。

 

ニールさんはもう完全に私よりなのはちゃんかフェイトちゃんかだしなあ……。

 

全く入り込める余地もないし、諦めるかあ……。

 

「はあ……。」

 

「主、どうしたのですか?」

 

私の溜め息にシグナムが反応する。

 

「いや、次の戦いはどうなるか予想が着かへんからどうしたもんかと。」

 

「そうですね。未確認の機体を使ってくる事も予想出来ますし、備えられるだけの事はした方がいいと思います。」

 

備えられるだけ備えるか。

 

……せや!

 

「アースラや!」

 

こっちにはルキノさんもおるし、使えるはず。

 

「アースラ……ですか?懐かしい名前ではありますが、廃艦寸前なのでは?」

 

「もう機動六課はレリック捜査からスカリエッティの捜索、逮捕に目的が変わるのは目に見えているから移動出来る本拠地があった方がええ。ならまだまだ動かせるアースラを使わない手はない!」

 

その後すぐにその事をクロノ提督に言うたら賛成してくれて、新たな本拠地になる事が決まった。

 

 

 

 

.

 

 

 

 

はやてが崩壊した隊舎の変わりとしてアースラという廃艦間近の宇宙艦船を拠点として用意してくれた。

 

俺は初めてだったが、なのはたち隊長陣にシャマルとザフィーラやリインにとっては懐かしいものだそうだ。

 

まあ俺にとってのトレミーといったところだな。

 

で今はそのアースラ内を夕飯を食べ終わって彷徨いている。

 

やはり、落ち込んでいるなのはが心配で探すことにした。

 

「あ、ニール。」

 

通路を歩いていると、フェイトが自分の部屋から出てきた。その部屋はなのはの部屋でもある。

 

「フェイトか。」

 

「なのはを探しているんだけど、ニールは?」

 

フェイトがこう聞くということは、なのはは部屋にいないということだ。

 

「俺もなのはを探しているんだ。やっぱり心配だからな。」

 

「そう、なんだ。」

 

俺の返答を聞いたフェイトが俯く。

 

「どうした、フェイト?」

 

「……ニールは、なのはのことをどう思っている?」

 

フェイトの言葉は、正直に、しかし、躊躇いを感じるぐらい震えた声で聞いてきた。

 

つまりは、フェイトは俺のことが好きだということ。言ってないが、態度で分かった。

 

フェイトのことは、本当に良い女の子だと思う。多分、なのはがいなかったら選んでいたぐらい。

 

「はっきり言う。俺は、なのはが好きだ。あいつと一緒に生き続けても良いと思うぐらい。」

 

「っ!!……そうなんだ、私も途中から分かっていたんだ。だから、なのはに伝えてあげて。きっと、その言葉でなのはは元気になるから……。」

 

笑顔で祝福しようとしているフェイト。しかし、彼女の目から涙が溢れ出ている。

 

「……すまない。」

 

俺は謝りながら、歩を進める。

 

「……ううっ。」

 

俺の言葉に堪らなくなったフェイトは急いで自分の部屋に戻る。

 

その部屋からすすり泣く声がするが、俺は振り返らずになのはを探し始めた。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

―俺はヴィヴィオの事で落ち込んでるなのはがどうしても気になり、なのはを探した。

 

そしてなのはを屋上で見つける。

 

「なのは。」

 

俺がなのはに声を掛ける。

 

振り向いたなのはの目には涙が溜まっていた。

 

「ニールさん、私、ヴィヴィオとの約束守れなかった……。」

 

きっと帰ったら一緒に遊ぶとかそんな感じの約束だろう。

 

だが、ヴィヴィオが拐われてしまったために破ってしまった。

 

「約束……か。俺も、約束破っちまった……。」

 

そしてそれは俺も同じだ。

 

ああいう時の為に力を、ガンダムを持っているというのに救えなかった……!

 

「あの子、泣いてないかな?恐い目に遇ってないかなあ……。」

 

涙を流して祈るように手を組む。

 

多分、今ヴィヴィオは奴らに何か良くないこと……改造とかそういう事をされているかもしれない。

 

悔しさでギリッと歯ぎしりをする。

 

今のなのはは子どもを無くして脆くて、弱い母親のようだった。

 

「あの子が苦しんでいる、泣いていると思うと苦しくて悲しくて、どうにかなりそうなのぉ…!」

 

俺はそんななのはが見てられなくて抱き締めた。

 

「ああ分かった、お前がどれだけヴィヴィオを大切に思っているか、十分に分かった。だから、今は気が済むまで泣くんだ。俺が泣き顔を隠してやるから…。」

 

「うっく……ううっ……うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……。」

 

俺はただただ何も言わずになのはを抱き締め続けた。

 

しばらくしてなのはの嗚咽が聞こえなくなり、下を向くと顔を真っ赤にしてチラチラと俺の顔を見上げていた。

 

「ニ、ニールさん、あの……恥ずかしいから、そろそろ離れて……。」

 

……なのは、それは逆効果だ。

 

俺は離すどころか抱き締めたまま、

 

不意討ちでキスをした。

 

勿論、唇を重ね合わせて…。

 

「ふうっ!?!?」

 

なのはが俺の胸板をどんどん叩く。

 

が、次第に叩く力が弱くなっていき、遂に叩くのを止める。

 

「……ぷあっ。……ニ、ニールさん、何で……。」

 

なのはの顔は耳まで真っ赤でとても可愛い。

 

「こんだけやったら分かるだろ?

 

 

 

 

 

 

……なのは、俺はお前の事が好きだ。

 

 

 

 

 

 

俺は、お前と共に生きていきたい。」

 

なのはは驚くも、すぐに困ったような表情へと変わる。

 

「ニールさん、ラーナちゃんの事は…。」

 

「何言ってやがる。いつまでもラーナの事を引き摺っていられねえよ。」

 

ラーナは俺が幸せになることを願っている。ならきっと、なのはを選んでもいいという事だ。

 

亡くなった恋人を思い続けては新たな恋なんて出来ない。過去に見た恋愛小説にもあったが、その通りだな。

 

「もう、こういう時に言うなんてズルいよ。

 

 

 

 

でも……

 

 

 

 

すごく嬉しい……。」

 

そう言って今度はなのはから唇を重ねる。

 

 

「……私もニールさん、いえ……ニール、貴方を愛しています。」

 

唇を離して最高の笑顔で答えるなのは。

 

俺が一番見たかった笑顔だ。

 

「……ありがとう、なのは。お前は俺が守り通してみせる!」

 

「うん、でも守られてばかりなんて嫌だから私もニールを守る!」

 

全くなのは、お前って奴は…。

 

「へっ、だったら互いの背中を任せるっつうのはどうだ?」

 

「あっ、それいいね。」

 

よし、普段のなのはに戻ったな。

 

俺は笑顔を止めて真剣な表情でなのはを見る。

 

「……ヴィヴィオは、俺たちが必ず救うんだ。あの子の未来は俺たちが生きていて初めて幸せになる!」

 

ヴィヴィオには俺のような悲しい思いは絶対にさせない!

 

「うん、もう迷わない。ヴィヴィオは私たちの子どもだもの!」

 

良かった、これでもうなのはは安心だな。

 

抱き締めた腕を引っ込める。

 

「……それでよ、次の戦いが終わったら言うことがあるんだ。」

 

「ん、何々?」

 

子どもみたいに期待の眼差しを向けるなのは。

 

「今言ってどうするんだよ。」

 

「ええ〜、教えてよ〜!」

 

今度は駄々っ子みたいにポカポカと俺の胸板を叩いてくる。

 

「うわっ、子どもかお前は!ってあ痛っ!」

 

少し鳩尾に当たった…。

 

「ふ〜んだ、いつも子ども扱いする罰だよ〜だ!」

 

それが子どもだと言っているんだが、まあワザとやってるだけだからいいか。

 

その後は楽しく談笑しながら俺の部屋に戻るまで夜を過ごすのだった。

 

空は見渡す限り、色とりどりの星々が輝く。

 

まるでニールとなのはの恋が成就した事を祝福せんと言わんばかりに。

 

 

 

 

 

――――そうしてニールは愛によって自身を変革していく――――

 

 

.

 

 

 

フェイトside

 

―私はなのはが心配で探していた。

 

途中でニールを見つけて、なのはをどう思っているか聞いたら、なのはが好きだとはっきり言った。

 

それを聞いた私は耐えられず、部屋に戻って泣いた。誰にも聞かれないように声を殺して。

 

なのはに嫉妬してしまった。なのはを一瞬恨んでしまった。なんて、私は酷い子なんだろう。

 

でも、やっぱりなのはが心配になって、涙をタオルで拭いて探しに出た。

 

そうして屋上で見つけたけど、既にニールがなのはを抱き締めていた。

 

 

そして……

 

 

なのはとキス、更に……告白。

 

 

 

もうニールがなのはを選んだのが分かった。

 

私もニールが好きだけど、選ばれなかった以上はもう諦める。

 

「……おめでとう、二人とも。」

 

 

これ以上見ていては失礼と思い去る私。

 

その祝福の言葉とは裏腹に一筋の涙が頬を濡らして床に落ちた。

 

でも、失恋したけど二人とも好きだから、二人を素直に祝いたい…。

 

祝ったらニールが好きだという気持ちを振り切って、別の事に集中するんだ。

 

 

 

 

こうして、私―フェイト・T・ハラウオンの恋が一つ、終わりを告げた。

 

 

 

 

 

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