魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第15話 親子の絆と超兵参上!

 

 

―ゼストside

 

炎の剣士を振り切り、地上本部のレジアスが待つ場所に私は辿り着いた。

 

そこでは司令官の席に10年前とはすっかり顔付きの変わったレジアス、そのレジアスと私の間に娘のオーリスが立ち塞がり、横でレジアスの部下と思われる女性がビクビクしながらこちらを見ていた。

 

十年以上前の写真……私とレジアス、そしてナカジマとアルピーノを含めた私の部隊の写真を投げる。

 

何故目指したものが同じ筈なのに、こんなに道が違ってしまったのだろうか。

 

俺はレジアスの正義に殉じる覚悟があった、だから俺はいい。

 

だが私の部下たちが何の為に犠牲になったのか、俺たちが守りたかった世界は、俺たちの夢はどうしてこうなってしまったのか……それを問いただした。

 

レジアスは俯き、俺に答えを言おうとした。だからかもしれない、レジアスの後ろにいつの間にか敵が潜んでいた事に気付かなかったのは。

 

「あっ、がはっ……。」

 

レジアスの胸から爪のようなものが貫通し、机を、写真を……血の色に染め上げる。

 

私にリング状のバインドを掛けて拘束する。

 

「お父さ…ああっ!」

 

オーリスがドゥーエの魔力による衝撃波で吹き飛ばされて気絶する。

 

「お役目、ご苦労様です。」

 

レジアスの部下だった女性が姿を変え、戦闘機人のボディースーツへと姿を変えていく。

 

ナンバーズの2番目、ドゥーエか!

 

「うあっ……。」

 

レジアスが苦悶の表情を浮かべながら、血を吐く。

 

「貴方はもう、ドクターの今後にとってお邪魔ですもの。」

 

胸に刺さった爪を引き抜かれて、机に突っ伏すレジアス。

 

「ゼスト……俺は、俺はぁ……。」

 

「レジアス……。」

 

レジアスは私に何かを言おうと手を伸ばしながら、事切れた。おそらく懺悔の言葉だろう。

 

「さあ、これにて貴方の役目も復讐も終わりです。」

 

……きっと無念だっただろう、レジアス。

 

そして今ので解った事は、私たちが死ぬことは本意ではなかったこと。

 

ずっと、私たちに対して責任を感じていた事だ……!

 

だが、これでもうレジアスが生きて悔い改める事が出来なくなった…!

 

台無しにしたこの戦闘機人をこのままにするものか!!

 

「いつもそうだ、俺はいつも遅すぎる……!」

 

「!?」

 

私は魔力で身体を強化し、自力でバインドを破る。

 

「なっ!?」

 

「でやあああああああああああ!!」

 

今出せる全力を込めて、槍を薙ぐ。

 

「がっ、はあっ……。」

 

ドゥーエは避ける間もなく、直撃してガラスの壁へと吹き飛ばされ、床に落ちて血を流し、そのまま動かなくなった。

 

ガラスの壁には凹んだ痕が残った。

 

……もう、飛べそうにないな。これではサーシェスを葬れそうにない。

 

あとは、アギトをあの剣士に託すこと、そして…騎士らしい最後を飾るだけだな。

 

 

 

.

 

 

 

シグナムside

 

私はゼスト・グランガイツを取り逃がしてしまい、リインと共にガジェットをいくつも破壊しながら地上本部に着く。

 

そこで、古代ベルカのユニゾンデバイスであるアギトが障壁を張って行く手を塞いでいた。

 

「もう旦那には時間が無いんだ……。旦那の邪魔をしないでくれ!」

 

私は時間が無い為、アギトの後ろにある障壁を一太刀で破壊する。

 

無論、アギトは無傷だ。

 

「元より、こちらは事件の真相を確かめに来ただけだ。」

 

それを聞いたアギトは遮るのを止め、黙って先へと飛んでいく。

 

私はその後へ走っていった。

 

だがもうすぐのところで、

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

という強い衝撃音が響き渡った。

 

中に入って私たちが見たものは、気絶したオーリス・ゲイズ

 

血を流しながら机に突っ伏して亡くなっているレジアス中将

 

窪んだガラスの壁の下、床で倒れる長い爪を右手に装備した長髪の戦闘機人

 

そして……槍の刃から血を流しながら立ち尽くすゼスト・グランガイツだった。

 

「旦那……。」

 

「これは、貴方が?」

 

「そうだ、俺が殺した。俺が弱く、遅すぎた……。」

 

彼の言葉から、無念や後悔といった感情が手に取るように解る。

 

レジアス中将が座っている椅子には三本の爪を突いた痕がある。レジアス中将の背中に同じ痕があることから、そこで倒れている戦闘機人がやったのだろう。外傷は無いが、オーリス・ゲイズも同じだろう。

 

そしてそれを見たゼストが戦闘機人を一撃で薙ぎ倒した、こんなところだろう。

 

血が付いているのを見る限り、非殺傷設定を解除したようだ。これだけの衝撃だ、この戦闘機人は即死だろう。

 

「同行を願います。」

 

「断る。ルーテシアを救いに戻り、スカリエッティとサーシェスを止めねばならん。」

 

「スカリエッティと戦闘機人たちは既に逮捕、ルーテシア・アルピーノは私の部下が保護するべく動いています。そして、サーシェスは……ニール・ディランディ空曹長が逮捕します。」

 

「!……そうか、あの男なら任せられる。なら俺の為すべき事はあと一つだけか。」

 

「ディランディを知っているのですか?」

 

「ああ、去年一度刃を交えたが強かった。騎士ではなかったが、正しく戦士としては十分な覚悟を持ち合わせた男だった。」

 

……何となく、グランガイツとディランディは似ている感じがした。

 

気になったが、それは後回しだ。

 

「旦那、なぜ……!」

 

「ジッとしていろ!」

 

グランガイツから闘気を感じ、レヴァンティンを構える。

 

「夢を描いて未来を見つめたはずが、いつの間にか道を違えてしまった。本当に守りたいものを守る、ただそれだけの事の何と難しいことか……。」

 

そうか……ゼスト・グランガイツは、ディランディが辿っていたかもしれない可能性の一つだったのだ。

 

もし、ディランディが復讐に走り続けていたらなっていたかもしれない末路なのだ。

 

違いはあれど、思い描いた幸せな未来と違ったものになるという点で同じだ。

 

「はあっ!」

 

グランガイツが武器を振り下ろす。

 

私は右に避けるも、黄色のリボンが切れて結んだ髪がほどける。

 

続けて横に振り回すのを予測、手摺を利用してジャンプする。

 

そのまま手摺に乗りながら、反対に向き直り、剣を叩きつける。

 

グランガイツは柄で受けるも、耐えきれずに折れ、顔に切り傷を付ける。

 

「くっ、うおおっ!」

 

グランガイツは顔を抑えるも、戦いを止めずに殴り掛かってくる。

 

「紫電一閃……。」

 

カートリッジを排出し、レヴァンティンに炎を纏わせる。

 

いつも気合いを込めて放つ一撃だが、この時は静かに呟くように言い放つ。

 

「旦那―――――――――――――!!」

 

アギトが叫ぶ。

 

そして……

 

 

 

ザンッ!

 

 

 

私はグランガイツを斬り捨てた。

 

グランガイツは仰向けに倒れる。

 

彼を抱き起こすと、アギトも近付いてきた。

 

「俺が知る限りの事件の真相はここに収めてある。」

 

グランガイツは右手の中指のリングを外して私に渡す。

 

「お預かりします。」

 

「アギトとルーテシアの事を頼めるか?巡り会うべき相手に巡り会えずにいた不幸な子どもだ……。」

 

「うっ、うっ、旦那ぁ!」

 

泣きながらグランガイツの胸に飛びつくアギト。

 

「アギト、お前とルーテシアと過ごした日々悪くなかった。」

 

グランガイツはアギトを武骨で大きな手で撫でる。

 

アギトはただただ泣き続ける。

 

「いい空だな……。」

 

「はい。」

 

「俺やレジアスが守りたかった世界、お前たちは間違えずに……進んでくれ……。」

 

グランガイツは目を閉じ、力尽きた。

 

せめてこの者とレジアス中将の来世に救いがあらん事を…。

 

 

 

.

 

 

 

フェイトside

 

『フォワード陣がナンバーズやルーテシアと戦っている頃…』

 

今、私はザンバーの魔力刃を破壊されて、スカリエッティが作ったバインドの檻に閉じ込められている。

 

「以前、トーレが伝えたかい?君と私は親子のようなものだと。」

 

親子?こんな父親、こっちから願い下げだ!

 

スカリエッティはモニターを開く。その画面には母さん……プレシア・テスタロッサが映っていた。

 

「君の母親、プレシア・テスタロッサは実に優秀な魔導士だった。私が原案のクローニング技術を見事に完成させてくれた。だが肝心の君は、彼女にとって失敗作だった。」

 

10年前のあの時の記憶が蘇る。母さんは、私を娘と認めてくれず、いつも鞭を叩かれていた。

 

「蘇らせたかった実の娘、アリシアとは似ても似つかない。単なる粗悪な模造品…。」

 

それでも母さんの願いを叶えたかったが為にジュエルシードを集めていた。結局、母さんはアリシアの死体と共に私を認めないまま、アルハザードへ繋がるだろう穴へと消えてしまった。

 

「ふふふふ、それ故まともな名前すらもらえずプロジェクトの名をそのまま与えられた。記憶転写クローン技術、プロジェクトF(フェイト)の最初の一波、フェイト・テスタロッサ。」

 

私はどうにかして立ち上がる。モニターでは、いつの間にかエリオとキャロが勝って、相手の召喚士を抑えた。

 

しかし、クアットロとスカリエッティが仕掛けたプログラムのせいで未だに召喚獣が戦おうとしていた。

 

私もいつまでもうかうかしていられない。

 

「ライオット!」

 

[riot blade.]

 

カートリッジを二発消費、柄になるバルディッシュが小型化し、片刃の魔力刃が形成される。

 

「はあっ!」

 

一振りでスカリエッティの赤いバインドの檻を破壊する。

 

「はあ、はあ……。」

 

今ので大分魔力消費を消費してしまった。多分、あと半分は無い。

 

「それが君の切り札か。なるほど、このAMF状況下では消耗が激しそうだ。だが、使ってしまっていいのかい?ここにいる私を倒したとしても、ゆりかごも私の作品達も止まらないのだよ?プロジェクトFは上手く使えば便利なものでね、私のコピーは既に12人の戦闘機人全員に仕込んである。どれか一つでも生き残ればすぐに復活し、一月もすれば私と同じ記憶を持って蘇る。」

 

……人としてもそうだが、一人の女性としても許せない。女性を何だと思っている!こういうのは、ニールも許せないんじゃないだろうか?

 

「……馬鹿げてる。」

 

そして許せないと同時に余りの猛執ぶりに呆れと嫌悪の混じった言葉を吐く。

 

この男に届くとは思えないが。

 

「旧暦の時代、アルハザード時代の統治者にとっては常識の技術さ。」

 

そんなのが常識だったら私はアルハザードを嫌いになりそうだ。

 

「つまり君は、ここにいる私だけでなく、各地に散った戦闘機人、その全員を倒さなければ私も…この事件も止められないのだよ!」

 

スカリエッティは手の甲を翳すワンアクションだけで10に近い数のバインドを発生させる。

 

気付くのが遅れた私は避ける間もなく拘束される。

 

「あうっ!」

 

「ああ、絶望したかい?君と私は、よく似ているんだよ。」

 

「!?」

 

そんな筈はない!……その言葉が出ない。

 

「私は自分で造り上げた生体兵器たち、君は自分が見つけ出し自分に反抗出来ない子どもたち、それを自分の思うように"造り上げ"、目的の為に使っている。」

 

そんな……筈は……ない。でも、私はどこかでエリオとキャロをこの男のように人として見ずに利用している?

 

「黙れ!」

 

それでも間違っていると思い、プラズマランサーで反撃する。しかし、スカリエッティの張った障壁に吸収、無効化されてしまう。

 

まさか私の魔力変換気質に合わせた障壁!?

 

「違うかい?君もあの子達が逆らわないように教えて戦わせているだろう?私がそうだし、君の母親も同じさ。周りの全ての人間は自分の為の道具に過ぎない。その癖君たちは、自分に向けられる愛情が薄れるのには臆病だ。実の母親がそうだったんだ、君もいずれああなるよ。間違えを犯す事に怯え、薄い絆にすがって震え、そんな人生など無意味だと思わんかね?」

 

 

そんな、私は……この男と同じ……だと……

 

 

<<違う!>>

 

 

 

 

.

 

 

 

モニターから、エリオとキャロから否定する言葉が聞こえた。

 

<無意味なんかじゃない!>

 

キャロ……。

 

<僕たちは自分で自分の道を選んだ!>

 

エリオ……。

 

<フェイトさんは行き場のない私たちに暖かい居場所をくれた!>

 

<沢山の優しさをくれた!>

 

それは私が二人が私と同じ事にならないようにしてきたこと。

 

<大切なものを守れる幸せを沢山くれた!>

 

<助けてもらって、守ってもらって、機動六課でなのはさんに鍛えてもらって!>

 

それは二人が未来をしっかり生きていけるようにしてきたこと。

 

<やっと少しだけ、立って歩けるようになりました。>

 

<フェイトさんは何も間違ってない!>

 

<不安なら、私たちが付いてます。困った時は助けに行きます!>

 

二人はこんなに成長していたんだ!

 

<もし道を間違えたら僕たちがフェイトさんを叱ってちゃんと連れ戻します!>

 

<僕たちが、皆が付いてる!>

 

嬉しくて涙が出そう……。

 

でもそれは後だ。

 

<だから負けないで、迷わないで!>

 

<<戦って!!>>

 

二人から背中を押され、迷いを全て振り切る。

 

私の全力を今……解き放つ!

 

[get set.]

 

「オーバードライブ……真・ソニックフォーム。」

 

[sonic drive.]

 

私の周囲から黄色の光が解き放たれる。

 

「「くっ!」」

 

「ごめんね、ありがとうね、エリオ、キャロ…。」

 

バリアジャケットがガントレットが両腕に付き、黒いレオタードのような格好になる。

 

「疑う事なんて、無いんだよね。」

 

バルディッシュに左手を重ねる。

 

[riot zanber.]

 

リボルバー式のカートリッジが回転して薬莢が一発消費される。

 

「私は弱いから、迷ったり悩んだりを、きっとずっと繰り返す。」

 

ライオットブレードが二本に別れ、ライオットザンバーとなり、柄の端が魔力で出来たケーブルとなって繋がる。

 

「でも良いんだ。それも全部、私なんだ……。」

 

舞うように体を回転させ、左右のライオットザンバーをスカリエッティたちに向ける。

 

「装甲が薄い、当たれば墜ちる!」

 

トーレが分析する後ろで、スカリエッティが腕を少しだけ動かすのが見えた。

 

何度も同じ手は喰わない!!

 

私は動きを止められる前に先手でセッテのブーメランブレードを一撃で破壊する。

 

「なっ!」

 

そのままセッテは倒れ、スカリエッティは拳を握ってバインドを操る。

 

私は出てきたバインドを麺を切るように悉く切り捨て、トーレに接近する。

 

「うおっ!」

 

トーレは右パンチで応戦してくる。それを私はライオットザンバーを交差させて防御する。

 

火花が散り、バク宙に近い回転をしながら一旦離れる。

 

「ライドインパルス!」

 

キン、キン、キン、キンと互いの武器をぶつけ合いながらヒットアンドアウェイを繰り返す。

 

トーレの頬に切り傷が入る。

 

「ぐうっ!」

 

またぶつかり合い、今度は私の左腕に切り傷が入る。

 

「くっ!」

 

またぶつかり合ったところで反対に向き直し、ライオットザンバーを合わせて大剣にする。こっちは切っ先が二つに分かれている。

 

そのザンバーを担ぎ上げる。

 

「おおおお!」

 

トーレが突撃してくるところで、ザンバーを巨大化……ジェットザンバーにして振り下ろす。

 

激突したトーレは防御してやり過ごそうとするが、その程度で受けきれるほどこの攻撃は甘くない。

 

トーレの魔力刃が硝子のように砕け、直撃する。壁まで吹き飛ばされたトーレはそのまま気絶した。

 

「はああっ!」

 

攻撃の手を緩めずに、スカリエッティにも叩き潰さんとばかりにザンバーを振り下ろす。

 

スカリエッティは両腕で受け止める。一撃の重さを床が陥没する辺り、どれだけの威力なのかを物語っている。

 

「ふははは、素晴らしい、やはり素晴らしい。ああ、やはりこの力、欲しかったなあ!」

 

その声を聞くだけで鳥肌が立ちそうだ。それでも手を緩める事はない。

 

「だが、私を捕らえる代償に君はここで足止めだ。」

 

悔しいが、スカリエッティを逮捕するところで魔力はほとんど無くなる。

 

「ぐうっ!」

 

皆の援護、特にニールの援護をしたいがそれは叶わない。

 

スカリエッティのデバイスがボロボロになっていく。

 

「私たちの夢はゆりかごに託した夢は……止まらんよぉ!」

 

一旦離れ、最後の一撃を入れるために再び突撃する。

 

スカリエッティの顔は正に狂気に染まった表情をし、目は挑発するように私を見ていた。

 

「うおおおおお、はあっ!」

 

私は構わずにスカリエッティに近付いたところで、野球のバットのフルスイングよろしくスカリエッティを打ってガジェットを模した壁へと吹き飛ばした。

 

「はあっはあっはあっはあっ……。」

 

私はバルディッシュを左手に持ちながら倒れるスカリエッティの元へ歩いていく。

 

「……広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ、貴方を……逮捕します。」

 

悔しいけど、私はここでスカリエッティを拘束しなければならない。

 

なのは、ニール、皆、無事でいて!

 

 

 

 

.

 

 

 

ヴィータside

 

サーシェスに後ろから刺された事であたしは一気に追い詰められてしまった。

 

どうにかして多足型のガジェットを倒したが、胸から夥しい量の血が流れる事で力も入らず、気を抜けばあの世へ行けそうだ。

 

いくら元が夜天の書のプログラムで再生能力があるとはいえ、胸に穴を開けられれば再生も容易ではない。

 

しばらくベッドの中、下手をすれば動力壊す前に

 

 

死ぬ……。

 

 

 

ダメだ、目的果たさねえ限りは倒れる訳にはいかねえ!

 

「アイゼン、まだ行けるか?」

 

同じく所々亀裂の入ったグラーフアイゼンに声を掛けて状態を確認する。

 

[問題ありません。]

 

私の目先には赤い光を放つクリスタル……動力部が見える。

 

「なのはとニールはもう、玉座の間に着いた頃だよな?」

 

[ja.]

 

「はやてが外でスローネと戦闘しながら船が止まるのを待ってる。」

 

全身の痛みを堪えて歩く。

 

その先にはやはり、動力室……中心には動力部があった。それにしてもデカい!一瞬、驚きで止まってしまった。

 

だが一筋縄ではいかなくても、もうモタモタしていられない!

 

「くっ、こいつをぶっ壊して……こいつを止めるんだ!」

 

アイゼンを構え、破壊に掛かる。

 

「リミットブレイク、やれるよな?」

 

[ja wohl.]

 

カートリッジを二発出して、グラーフアイゼンの形状を変える。

 

[zerstorungs form.]

 

グラーフアイゼンの最強の形態、ツェアシュテールングスフォームだ。

 

この形態はギガントフォームにラケーテンフォームの特性を加えたものだ。ただし、ラケーテンの杭のような部分はドリルにして破壊力と貫通力を上げてある。

 

ドリルの部分を回転、赤いベルカ式の魔法陣を出して、アイゼンを持ち上げる。

 

「うりゃあっ!」

 

それと一緒にアイゼンを巨大化させる。

 

カートリッジを一発出し、アイゼンに着いているブースターを噴かす。

 

「ツェアシュテールングス……」

 

アイゼンを振り下ろし、動力部にドリルを叩きつける。

 

「ハンマー!!!」

 

動力部とアイゼンのドリルとの間から火花が散る。

 

爆発が起き、破壊したかと思ったが、動力部は無傷だった。

 

『危険な魔力反応を検知しました』

 

そこで大きな動力室の全体に無数のブロックが出現した。

 

『防衛モードに入ります。これより駆動路に接近するものは、無条件で攻撃されます。』

 

「……上等だよ。」

 

ブロックから魔力によるビームが飛んでくる。爆発が起きるが、あたしは咄嗟に回避した為にダメージはない。

 

「うおああああああ!!!」

 

そんなに壊されてえなら、ぶっ壊してやるよお!!

 

 

 

 

.

 

 

 

はやてside

 

アインと戦闘をしながら、シャーリーに現状を聞く。

 

『次元航行部隊の到着まであと45分、巨大船軌道ポイント到達まであと38分…。』

 

「7分差…。」

 

『主砲の照準はミッド首都に向けられています。7分あれば…』

 

「撃てるやろうね……。防衛ライン、指揮交代、今から私も突入する!」

 

『えっ?』

 

「八神二佐!?」

 

「軌道上になんて上がらせへん、地上に攻撃なんてさせへん!」

 

「行かせるか!」

 

アインが変形を解いて右手のライフルで撃ってくる。

 

「ちいっ!」

 

防御しようという所でクレメンス小隊長が間に入り、大剣を盾にして防御する。

 

だけど、何度も強力なスローネアインのビームサーベルを受け続けてボロボロになった大剣が耐えきれずに折れてクレメンス小隊長の胸に風穴を開けてしまう。

 

「何……だと……。」

 

「クレメンス隊長お!!貴様ああああああ!!!」

 

ジークさんが凄い勢いでスローネに接近し、左腕を斬り落とす。

 

「何っ、だが……!」

 

ジークさんは怒りで危険を省みていない。

 

「あかん、ジークさん!」

 

ジークさんが左の剣で追撃しようというところで、アインはライフルでジークさんの左腕を肘まで吹き飛ばした。

 

「ぐあああああああっ!」

 

「ジ、ジークさん!?」

 

すかさずアインが私に向けてミサイルをお見舞いする。

 

「ブリューナク!」

 

散弾でミサイルを的確に撃ち落としていく。

 

爆発により、一時視界が悪くなる。

 

……接近してくる危険も考えて、爆発から逃げよう後ろへ下がる。

 

「はやて、離れろおおお!」

 

「なっ!?」

 

その煙の中からジークさんの叫び声が聞こえて、慌て上昇する。

 

すると煙からまた変形したスローネが私目掛けて突っ込んでくる。

 

それも、ジークさんがスローネのバックパックを片手と両足で掴んでいる。

 

「くっ貴様、そこから離れろ!」

 

スローネは攻撃しようとするが、背中に引っ付くジークさんが邪魔でミサイルを出せない。

 

「ふっ、出来ねえさ。それに俺がくっ付いているのは攻撃の妨害だけじゃない!」

 

ジークさんは一旦帯刀していた剣を引き抜く。

 

突き立てるのは、背中にあるもう一つのGNドライヴ。

 

「しかし、それを貴様も無事では……!」

 

そう、ここでGNドライヴに突き立てたら、ジークさんは確実に、死ぬ。

 

「ふっ、構わねえさ。てめえのエネルギー源を壊させてもらう、くらえ!」

 

ジークさんは剣を逆手に持ち、背中に付いたGNドライヴに刃を突き立てる。

 

「ぐあっ!」

 

突き立てた瞬間に、爆発した。

 

爆発からジークさんがボロボロとなって投げ出される。

 

り、両足が……無い、出血も酷く、騎士甲冑の白を赤に染め上げる。

 

これじゃ……もう……。

 

「ジークさん……!」

 

涙が流れるのも構わず、ジークさんの元へ飛んでいく。

 

「ジークさん、何でこんな無茶を……。」

 

もう死ぬっちゅうのに笑っとる。

 

「はは、我ながら、無茶した……ものだ。……ゆりかご……止めてくれ。それと、俺……お前の事、好きだっ……た……。」

 

 

ジークさんは力尽き、この世を去った……。

 

 

「うっ、そんなん……ずるいやん……ジーク……。」

 

そこにヘリが近づいてくる。

 

泣き顔を見せない為に、無理矢理目を擦って涙を拭く。

 

<八神部隊長、リイン曹長をお連れしました……。>

 

アルトがモニターで声を掛ける。さっきの場面を見ていたのだろう。

 

「……分かった、ありがとうなアルト。それとジークさんを乗せといてくれる?」

 

<……分かりました。>

 

アルトが神妙な面持ちで了承する。

 

ヘリからリインが出て、私に近付いてくる。

 

「はやてちゃん……。」

 

「ユニゾン、行くでリイン。」

 

「はいです!」

 

「「ユニゾン・イン!」」

 

私とリインが重なり、リインが私の中に入っていく。

 

髪は白に近い薄い茶色、瞳は水色へと変わる。

 

そこに私目掛けて赤い砲撃が飛んでくる。

 

スローネがまだ生きとった!

 

「くっ、やってくれたな……!」

 

表情は分からんけど、あっちも怒っとるな。けど……

 

「……それはこっちのセリフや。私かて急いでるし、邪魔されたくない事がある!それに……」

 

怒りの悲しみ、悔しさのあまり、スローネを睨む。

 

バルムンクを扇状に展開、発射してスローネの動きを牽制する。

 

<リイン、フリーレンフェッセルンで片足でもいいから足を止めて。後は砲撃一発でトドメや!>

 

<了解です!>

 

リインも気合いの入った返事をする。

 

フリーレンフェッセルンで左足と腰のコンテナを凍らせる。

 

ジークさんの攻撃が余程痛かったのか、さっきより機動力がない!

 

「しまった!」

 

凍った部分をパージするが、もう遅い!

 

「あれだけ人を殺しといて、無事で済むと思うなあ!!」

 

「くっ、仕方ない!」

 

スローネが右手のライフルを構える。

 

「クラウ…ソラス!」

 

白い砲撃と赤い砲撃がぶつかり合う。

 

だがすぐに均衡が破れ、赤い砲撃は白い砲撃に飲み込まれていく。

 

「ば、馬鹿な……これではヨハンと、同じ……。」

 

白い砲撃に飲み込まれ、スローネアイントゥルブレンツが爆散、赤い粒子が地上へと降り注いでいく。

 

「さあ、早く行こうかリイン。」

 

<でも、はやてちゃん……。>

 

「お願い、今は…。」

 

拭き取ったはずの涙がまた流れてくる。

 

私は、何て無力なんや……。

 

ごめんな、ジーク……。

 

だけど後悔する間もなく、私はゆりかご内部へ突撃する。

 

 

 

 

.

 

 

 

エリオside

 

モニターでフェイトさんが勝ったのが分かったものの、ルーの召喚獣たちの暴走は未だに止まらなかった。

 

そこに追い討ちを架けるような報告がシャーリーさんから来た。

 

<エリオ、キャロ、ジンクスが10機、スカリエッティのアジトへ向かっている!>

 

「何だって!」

 

「エリオ君、どうしよう!このままじゃフェイトさんたちが…。」

 

キャロが涙目で訴えてくる。

 

今のフェイトさんには魔力が底を着いてジンクスを倒す力がない。

 

シャッハさんやヴェロッサさんがいるとは言ってもジンクス10機では二人でも辛い。

 

だけど、ルーの召喚獣も止めないと……。

 

一体どうすれば!

 

<おい、俺たちの事忘れるんじゃねえよ、なあ、アリオス。>

 

<はい、私をエリオ……貴方がマイスターハレルヤと協力して使ってくれれば状況を打開出来ます。>

 

アリオスとハレルヤが念話で言ってくる。

 

<で、でもジンクス10機じゃ僕一人では……。>

 

<男だったら弱腰になるんじゃねえよ!さっきの威勢はどこ行ったあ!!それにな、俺にとっちゃあジンクス程度じゃ相手にならねえ。>

 

<距離とAMFについてもご心配なく。アリオスガンダムは高機動型可変MS……つまり機動力を重視したデバイスです。そこに更にストラーダのブースターを加えれば十分間に合います。>

 

アリオスとハレルヤの話を聞き終わった僕は、一人で助けに行くことを決意する。

 

「エリオ君。」

 

「キャロ、僕が一人で行ってジンクスを倒してフェイトさんを助ける!」

 

「えっ、でも危険だよ!やっぱり私も一緒に……。」

 

「他に方法がない。召喚獣を抑えきれるのもキャロしかいないし。シャーリーさん、いいですよね?」

 

<……大丈夫なの?流石に危険すぎる……!?>

 

といきなりハレルヤが割り込んでくる。

 

「チンタラしている暇なんざねえんだよ!俺たちはさっさと行くぜ。」

 

「ハ、ハレルヤさん、大丈夫なんですか!?」

 

「へっ、俺は散々ジンクスを倒してんだ、今更驚かねえ。」

 

僕の体を勝手に動かしてフリードから飛び降りる。

 

「ってストラーダの使い方は分かるんですか!?」

 

「分かるに決まってんだろ!てめえが機動六課に入った時からずっと見ていたんだからなあ!!……さて、漸く出番だ、行くぜアリオス!!」

 

[ja wohl.]

 

僕は自分の魔力光とライトグリーンの粒子に包まれる。

 

次々に装甲が付けられ、光が収まった後は……

 

両肩の大きな三角のバインダーと膝のウイング

 

ケルディムの顔をシャープにしたような顔

 

四つの角のようなものが放射状に付いた頭部

 

右手にビームライフル

 

左手にストラーダを持つ白とオレンジ色の装甲が特徴的なロボットへと僕は姿を変えていた。

 

[エリオ、先に言いますがこのアリオスもケルディムと同じようにトランザムが使用出来ます。しかし、貴方は正式なマイスターでないため、トランザムとオプションパーツは使用出来ません。マイスターハレルヤがいなければ、私を使う事も出来なかったでしょう。]

 

という事は僕では必要最低限でしか使えないって事か。

 

[まあ、幸い貴方の力はGN粒子と相性が良いので魔力変換資質と魔法は使えます。]

 

「分かったよアリオス。キャロ、ここは頼む!」

 

「へっ、う、うん。」

 

「……行くぜ、アリオス、ストラーダ!!」

 

また勝手にハレルヤが出てきてアリオスとストラーダに指示を出す。

 

[[ja wohl.]]

 

僕は変形して飛行モードとなる。肩のバインダーと背中のテールユニットを機首、足はウイングを展開してスラスターに、腕は脇腹辺りに畳む。ビームライフルは右手に持ち、ストラーダは胴体と腰に電気を利用してマグネットのように付ける。

 

ストラーダはカートリッジを排出してブースターを噴かす。

 

それに合わせてアリオスの足のスラスターを点火する。

 

[発進シークエンス、5、4、3、2、1……]

 

「GO!」

 

僕は一気に瞬間移動するかの如くその場から発進した。

 

……本当に速い!これなら間に合う!!

 

「ハハハ、ハハハハ!!超兵参上といこうぜえ!!!」

 

必ず助けます、フェイトさん!!

 

 

 

.

 

 

 

ヴィータside

 

どうにか駆動炉を防衛するブロックを破壊し、再び破壊しようとグラーフアイゼンを振り下ろす。

 

だけど、何度もぶつけているのに皹一つ入らない。

 

着地し、どうにかして息を整える。

 

もうアイゼンもあたしも限界が来ている。

 

「何でだよ、何で壊れねえんだよ!!」

 

はやてもなのはもニールも待ってるのに…。

 

「くそっ、もう一度だ、行くぞアイゼン!」

 

[ja wohl.]

 

カートリッジを二発使う。

 

薬莢が飛び出し、ツェアシュテールングスフォームのアイゼンを巨大化させる。

 

……カートリッジは今のでおしまい、頼む……これで、壊れてくれ!

 

「ぶち抜けええええええええええええ!!!!」

 

力一杯アイゼンを振り下ろす。

 

ドリルが貫かんと駆動炉と火花を散らして削っていく。

 

しかし、そのドリルは砕け、ハンマーだけとなる。

 

そして、ハンマーも叩き割らんと衝突するも…遂にアイゼンが砕け散ってしまった。

 

それに伴ってあたしも魔力を全て切らして、金属の床へと真っ逆さまに落ちていく。

 

ごめん……はやて

 

ごめん……なのは

 

ごめん……ニール

 

あたし、壊せなかった……。

 

もうここまでだと諦めていたら、突然落下する感覚でなくなり、目を開けると目の前にリインとユニゾンしたはやてがいた。

 

「ヴィータ……。ああ、こんなになって……。」

 

気のせいか、はやての顔に涙を拭いたような跡がある。

 

「はや……て。」

 

 

「ヴィータちゃん……。」

 

 

「ごめんはやて、あたし、壊せなかった……。」

 

 

はやてが悲しそうにあたしを見る。

 

リインも姿を表してあたしを見る。

 

「……鉄槌の騎士ヴィータがここまでボロボロになるまで力を尽くしたんや、それなのに……この世の何処にも壊せないものなんて、あらへん!!」

 

あたしはおもむろにゆりかごの駆動炉を見る。

 

よく見ると、アイゼンのドリルの尖端が食い込んでいて、そこから亀裂が入っていた。

 

そして亀裂は全体へと拡がり…駆動炉は大爆発を起こした。

 

それを見たあたしは限界を越え、眠りに就いた。

 

あとは……頑張れ、なのは、ニール。

 

 

 

 

.

 

 

 

スバルside

 

ギン姉を救ったあたしだけど、そこにスローネドライが襲ってきた。

 

ドライは私たちを空で見下ろしながら右腕に固定された銃口を向ける。

 

「そういえばあんた、ネーナを殺した女に似ているわね。特に声が……!」

 

「だから、何なの?」

 

知りもしない因縁を吹っ掛けられて、少しだけ苛立つ。

 

「決めたわ。まずあんたから殺してあげる。そこの女はいつでも倒せるから後回しよ。」

 

……ギン姉は今の状態じゃ戦えない。

 

非常に不利な状況だ。

 

「スバル……私の事は良いから戦いなさい。」

 

「何言ってるんだよギン姉!」

 

「何とも涙ぐましい姉妹愛ねえ。でも……!?ツヴァイ兄、どうしたの?」

 

念話をしているのか、動かずに浮遊したままだ。

 

今がチャンスだ!

 

ギン姉を道路の下に下ろす。

 

「シャーリーさん、ギン姉の回収をお願いします。あたしは、スローネドライを破壊します!」

 

<分かった、念のためティアちゃんやヴァイス陸曹にも連絡したからあまり一人で無茶しないでね。>

 

ヴァイス陸曹がどれくらいの実力かは分からないけど、ティアも来るなら倒せる!

 

「はい!……ギン姉?」

 

「スバル、これを。」

 

するとギン姉がブリッツキャリバーを待機モードにして渡してきた。

 

「ありがとうギン姉。……行ってくる!」

 

あたしは普段やらない味方にしか認識出来ないようにする結界魔法をギン姉の周りに掛けて、さっきいた道路へと戻っていく。

 

気休めにしかならないけど、これでギン姉からあたしだけに注意を反らせる。

 

「アイン兄を殺した奴はあたしが殺すわ。だからツヴァイ兄は他の奴を殺して!…さて、あたしの事情が変わったからあんたはさっさと殺す事にしたわ。」

 

スローネアインは八神部隊長が倒したとついさっき聞いた。

 

ということは、ここで倒さないと八神部隊長に負担が行く!

 

「いいえ、あたしがアンタを倒す。この先には行かせない!」

 

目を一度閉じ、再び目を開ける。

 

相手は機械、それもスローネ。戦闘機人モードでいかないと倒せない。

 

「とことん生意気ねえ。いいわ、まずはアンタから……木葉微塵よお!!」

 

ドライが赤い魔力弾を放たれ、あたしとティアの最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

.

 

 

 

なのはside

 

私がヴィヴィオを救うために戦いと、ニールがサーシェスに妨害させない為に戦い続けて暫く経った。

 

まだ、クアットロは見つからずまだ戦いは続いていた。

 

守りながらの戦いの為、私もニールも次第に疲れが出始めていた。

 

特にニールさんのシールドビットはあと5つ、ライフルビットはあと2つだ。

 

<なのは、まだ見つからないのか?>

 

[W.A.Sでの探査、あと一区画です。]

 

<あと一区画だけ。それまでお願い!>

 

<了解、とことん粘ってやるさ!!>

 

念話を切り、目の前に集中する。

 

ヴィヴィオが魔力弾を放ってきたところを回避、レイジングハートをぶつける。

 

ヴィヴィオは右の拳に魔力を纏って殴る事で応戦する。

 

……さっきから出している魔法は全て私かフェイトちゃん、ニールが使ったことのあるものばかりだ。

 

「背中ががら空きだぜ、嬢ちゃん!」

 

後ろからサーシェスが大剣を振りかざそうとしていた。

 

「なっ!!」

 

「させるかよ!」

 

そこにニールが右側からライダーキックをサーシェスの細い脇腹に命中させて吹き飛ばす。

 

レイジングハートと拳での鍔迫り合いをやめ、アクセルシューターで牽制する。

 

ヴィヴィオは防御魔法を展開してやり過ごし、四つの魔力スフィアを展開する。

 

いや、これは……

 

気付くのが遅く、圧縮された魔力弾が放たれて魔力スフィアは散弾のように私の周囲を襲う。

 

「ぐっ、ああああ!」

 

ヴィヴィオが使った魔法はセイクリッドクラスター、私が使える魔法の一つで本来は一発は大した威力は無いのにヴィヴィオの膨大な魔力によって一発でも多大なダメージになる。

 

お陰でかなりのダメージを負ってしまった。

 

地面に落下し、叩きつけられる。

 

「だああっ!」

 

ヴィヴィオが追撃をしてくるも、ギリギリで回避する。

 

[restrict lock.]

 

そのままレストリクトロックで拘束をする。

 

「ぐっ、このっ!」

 

それでもみるみる内にバインドが一つ、また一つと切れていく。

 

 

 

なら……

 

 

 

「ブラスター2!」

 

[blaster 2nd.]

 

魔力を放出し、ブラスタービットを左右から出現させる。

 

今度はチェーンバインドで拘束、更にブラスタービット一機をヴィヴィオの真上に移動させ、正三角錘の檻、クリスタルケージを形成して閉じ込める。

 

「くっぬうっ、こんなもの!」

 

ヴィヴィオはチェーンバインドを簡単に破り、クリスタルケージを破壊しようと拳を振るう。

 

簡単には破られないものの、攻撃が加わる度に私の魔力に負担が掛かっていく。

 

「くっ、ううっ……。」

 

一瞬ニールが大丈夫なのかチラッと見たら、横でピストルのエッジで大剣を防いでいた。

 

「おいおい、嬢ちゃんが心配そうに見てるぜ?あっちへ行かなくていいのかよ。」

 

「てめえが邪魔だから、俺がこうして妨害してんだ!」

 

いけない、集中しないと!

 

だけど視線を戻した瞬間、ヴィヴィオがケージを破壊してしまった。

 

あっさり接近を許し、ヴィヴィオのパンチを防御魔法で対応するも、また破られてしまう。

 

「ああっ!」

 

そうして落下して倒れた所にいつの間にかファングが赤い魔力刃で私の頭を刺し貫かんと迫っていた。

 

直撃すると茫然と見ていたら、目の前で深緑の弾丸に貫かれて爆発した。

 

「ちっ、後ちょっとだったのによ!」

 

視線の先には横見で赤く光る機体を元の深緑に戻しながら、横に右のピストルを構えたニールだった。

 

ご丁寧に大剣を横に流したのか、大剣の刃先が床にめり込んでいる。

 

「言っただろ、てめえの相手は俺だとな!」

 

<しっかりしろ、お前はヴィヴィオの母親だろうが!>

 

<ありがとう、それとフォローばかりさせちゃってごめんね。>

 

ちょっとニールに甘えてしまってる、しっかりしないと!

 

<まあ、気持ちは分かるが……な!>

 

[burst shotgun.]

 

「ちいっ…!」

 

ニールが右のピストルをサーシェスの胸部に向き直して、近距離射撃のバーストショットガンで吹き飛ばそうとする。

 

だが、発動の瞬間にサーシェスにバックステップされ、更に左腕のシールドでガードされる。

 

シールドは黒焦げになり、使えなくなったと分かった途端に投げ捨てたものの、本体にはダメージはない。

 

「ちっ、だったらこっちは二刀流ってなあ!」

 

何とサーシェスは左手からバスターソードを出現させて柄を掴んだ。

 

「そうかよ。」

 

ニールはボロボロで銃口が煤だらけで欠けている右のピストルを投げ捨てて、MGドライヴにマウントされているピストルを取り出す。

 

その時、ゆりかご全体が揺れた。強い揺れで天井の小さな欠けた破片が落ちてくる。

 

<なのはちゃん、ニールさん、たった今ヴィータがゆりかごの駆動炉を破壊した!あとはクアットロとサーシェスの逮捕、ヴィヴィオの救出、そして皆で脱出するだけや!!>

 

[W.A.S 成功しました。]

 

更に、遂にクアットロの居場所を見つけた。

 

「……見つけた!」

 

ヴィヴィオに再びレストリクトロックを掛け拘束、そのままクアットロがいる方向へ足を踏み出し、レイジングハートとブラスタービット4機を向ける。

 

「ブラスター3!」

 

カートリッジを5発消費、切れた為にマガジンを取り換える。

 

これは……ヴィヴィオを、娘を弄んだ、その怒りの一撃!

 

「ディバイイイン、バスター!!」

 

ゆりかごの壁をフロアも頑丈さも関係なく破っていく。

 

全てを打ち破り、クアットロがいる場所へと到達した。

 

[目標、撃破しました。]

 

レイジングハートの排気口になる部分から煙が出る。

 

「はあ、はあ……。」

 

<よし、後はヴィヴィオ……どあっ!>

 

ニールはサーシェスの大剣が二本になった事で片手で捌かなければならなくなった。

 

これ以上はニールが危ない、早く決着を着けないと。

 

「へっ、流石白い悪魔って呼ばれているだけあるなあ!」

 

サーシェスはバックステップしてニールから一旦離れて今度は両方の大剣を叩きつけようとする。

 

「ぐっくっ、てめえにっ、言われたくねえ!」

 

一撃が重いのか、苦悶の声を漏らす。だけど、決して後ろに下がらない。

 

「そうかい……ちょいさあ!」

 

左の大剣での鍔迫り合いを止め、ニールの右肩のアーマーの一部を斬り落とす。

 

「うおっ、ケルディム!」

 

[ミサイル発射。]

 

ニールは仕返しに腰アーマーの右側2つに内蔵されているミサイル二発お見舞いする。

 

だが、ミサイルはファングが2つ盾変わりになって防がれる。

 

「ダメ、避けてぇ!」

 

ヴィヴィオがいつの間にか接近して、殴り掛かってきていた。

 

どうにかヴィヴィオの拳を掴んで対応する。

 

「ダメなの、体が言うこと聞いてくれない……あっ!」

 

するとあろうことか、ヴィヴィオはサーシェスに向けて魔力弾を撃ち込んだ。

 

魔力弾は鍔迫り合いをしている右の大剣に命中して半ばから折れる。

 

「何、ぐおっ!」

 

大剣が折れてサーシェスの目が4つになっている顔面にピストルのエッジがぶつかり、ニールはそれを利用してアクセルバレットをサーシェスの顔面に命中させて角のような白いアンテナを一本折る。

 

すかさず右足のミドルキックと左足の裏でサーシェスを思い切り蹴り飛ばした。

 

「ヴィヴィオ、お前……。」

 

今のはニールも予想外だったようでサーシェスの事も忘れてヴィヴィオを見ていた。

 

「ち、違うの、今のはワザとじゃ……!」

 

多分、クアットロの仕掛けで隙があればサーシェスを襲うようにとかそんな感じで命令を加えていたんだと思う。

 

「ううん、それはいいの。それより、一緒に帰ろうヴィヴィオ。」

 

私はヴィヴィオに手を差し伸べるけど、手を取らずに距離を取ってしまう。

 

「そうだ、俺たちと一緒に帰ろう。」

 

ニールも歩いてヴィヴィオに近付いていく。

 

「……違う、私は……ただなのは……さんと、ニール……さんをママとパパって……刷り込まされただけ……。本当の、ママやパパじゃ……ないの。」

 

ヴィヴィオは泣きながら自分の気持ちを伝える。

 

「それは違う。どんなに血が繋がってなくても俺たちは親子だ!」

 

「そうだよ、ヴィヴィオは私たちの娘なんだよ!」

 

ニールは否定しながら右のピストルをMGドライヴにマウントして、スナイパーライフルを拾う。

 

私も、そう思ってる。

 

「違わないよ!私は二人を利用していただけ……。私は、ここに居ちゃいけなかったんだ……要らない子なんだ……。」

 

ヴィヴィオの悲痛な気持ち……、私はそんなヴィヴィオを見ていたくない!

 

「ヴィヴィオ、私は知ってるんだよ。甘えたがりで、ピーマン嫌いで、いつもニールと……皆とも一緒にいると楽しそうな……そんなヴィヴィオを私もニールさんも知ってるんだよ?だから、いちゃいけないだなんて、要らない子だなんて言わないで……。」

 

悲しみのあまり、涙が溢れてくる。

 

「だからヴィヴィオ、お前の本当の望みを言ってくれ。俺もなのはもその望みに……必ず答える!」

 

「ヴィヴィオ……。」

 

「私は、なのはママも、フェイトママも、ニールパパも……大好き。だからお願い、助けて!」

 

ヴィヴィオの願いを聞き入れた私とニールは構えを取る。

 

「助けるよ、いつだって……どんな時だって!!」

 

私は魔法陣を展開して、私の最大の魔法を発動させる準備をする。

 

「ヴィヴィオ、よく言った!」

 

ニールは私がやろうとしている事が解ったのか、後ろに下がって左のピストルをマウント、折り畳んであったスナイパーライフルの銃身を展開して射撃の態勢に入る。

 

ヴィヴィオが殴り掛かってくる所をまた右手で掴む。

 

[restrict lock.]

 

レストリクトロックで再び拘束、距離を取ってヴィヴィオの周りにブラスタービットを展開して魔力チャージを開始する。

 

「ヴィヴィオ、痛いの我慢出来る?」

 

「うん……。」

 

レストリクトロックが破れそうだけど、ヴィヴィオは動かない。

 

「トランザム!!」

 

横ではニールが赤く輝いて、狙撃用のフォロスクリーンを展開している。

 

「全力全開、スターライトオオオオ……ブレイカ―――――――――――――!!!!」

 

レイジングハート、4機のブラスタービットから膨大な魔力の大砲がヴィヴィオに向けて放たれた。

 

「あ、うあ、ああああああああああ!!!」

 

次第にヴィヴィオの胸の辺りから赤い六角形の宝石…レリックが現れる。

 

レイジングハートに皹が入り、私の手から血が噴き出す。

 

「今だ、狙い撃つぜぇぇぇぇぇぇ!!」

 

[stinger ray.]

 

深緑の魔力弾が私の砲撃の嵐の中、正確にレリックを撃ち抜く。

 

膨大な魔力が行き場を失い、爆発を起こす。

 

 

 

.

 

 

 

爆発が晴れて、私はフラフラで力の入らない体に鞭打ちながらレイジングハートを支えにしてヴィヴィオの元へ向かう。

 

「ぐっ、ヴィヴィオ……。」

 

私は倒れるヴィヴィオの元へ走ろうとする。

 

「待って!……ちゃんと自分で、立てるから……。」

 

ヴィヴィオは私を止めた上で、瓦礫に手を付いて自分の足で立ち上がった。

 

そんなヴィヴィオが自分で立とうとしたことが余りにも嬉しくて、涙も痛みを気にせずヴィヴィオの元へ走って抱き寄せる。

 

「良かった、本当に……良かった。」

 

「ママ……。」

 

そんな私たちを赤く大きな影が覆う。

 

アルケー……アリー・アル・サーシェスだった……。

 

「あっ、ああっ……。」

 

ヴィヴィオは勿論、私も為す術がないことで絶望感に襲われる。

 

「このチビガキ、よくも嘗めた真似してくれたなあ……!」

 

サーシェスの頭部は一部掛けて左目が露出していた。

 

狂気を孕んだその目は、今は憎悪でギラギラと不気味な光を放っている。

 

うそ、何でサーシェスが……。

 

「あ、ああ、嫌だ……。」

 

ヴィヴィオも恐怖の余り涙を流す。

 

そんな、せっかく助けたのに……。

 

「どうせあのメガネの嬢ちゃんの差し金だろうが、まあいい。」

 

私は魔力がもう無いので、咄嗟にヴィヴィオを抱き締めて背中で庇う態勢になる。

 

「その白い嬢ちゃんと一緒にあの世で親子やってなああああ!!」

 

サーシェスが左に持った大剣を振り下ろす。

 

痛みを覚悟して目を瞑る。

 

せめてヴィヴィオだけでも……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちをもう一つの影が覆う。

 

その影は深緑と白のカラーリングの装甲のロボットのようなバリアジャケットを来た私の最愛の人。

 

「邪魔すんじゃねえよ……ガンダムのパイロットォ!!」

 

サーシェスが何時になく、苛立ちを以て叫ぶ。

 

庇ったのは……ニール、左手のピストルを前に、右手のスナイパーライフルをピストルの後ろの支えとして交差させて防御している。

 

「…………奪わせねえ……。」

 

サーシェスが大剣を両手で持って押し潰そうとするが、ニールはビクともしない。その背中から魔力とは違う、力強さを感じる。

 

「これ以上、てめえなんかに大切なもんを……奪われて堪るかああああああ!!!」

 

 

 

 

 

――――――深緑の狙撃手と赤き傭兵の最後の戦いが始まる――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

クアットロside

 

どいつもこいつも捕まって……情けない。仕方ないので、ドクターごと研究所を破棄しましょう。

 

だって私さえ残ればドクターの夢は叶いますもの。

 

それにあれだけ凄いエネルギーを造ったイオリア・シュヘンベルグは私も気になっていますし。

 

まあ、サーシェスは邪魔になるから聖王に殺してもらうけど。後はスローネ共も反逆しそうだし、置いていっちゃいましょ。

 

こうしてこのゆりかごの最深部にいればまず私がやられる事は無いでしょう。

 

その目論見が崩れたのは駆動炉を死に損ないのチビに破壊されてからだった。

 

どうにか管理者としてゆりかごに認識されている私は内部を操作してどうにか持たせる。

 

だけど、それだけじゃなかった。

 

あの女、エリアサーチで私を探していたのだ。

 

 

でも玉座から最深部まで距離が有りすぎる。

 

いくらなんでも攻撃が届くとは思わない。

 

普通なら……。

 

だけどあの女は、過去に壁抜きを出来る事を証明していたのだ。

 

それに今更気付き、その場を逃げ出すものの既に手遅れだった。

 

「嫌ああああああああああああああ!!!」

 

巨大な魔力の奔流に飲まれ、床が崩れる。

 

「あ、ああ、ドクターの……私たちの夢が……。」

 

それにサーシェスが健在だったら真っ先に私を殺しに来る。

 

そう思いながらも、意識が朦朧とし、遂に気を失った……。

 

 

 

 

 

to be continue....

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