魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~ 作:グリューン
―決戦後は色々大変だった。
皆ケガを負っていたが、一番ボロボロだったなのはとヴィータはすぐに復帰してフォワードの四人を指導していた。
俺はというと、皆が言うにはなのはとヴィータ並みにボロボロでケルディムも治すのに時間が掛かるということで復帰が遅くなってしまった。皆看病に来て、特になのはとヴィヴィオがほぼ毎日病室に訪れに来てくれた。
皆それぞれ別の部署に移る事が決まった中、俺はなのはに誘われて戦技教導官をやることが決まった。
しかし、まさかヴィータまでやることになるとは思わず、本人の前で変に驚いてしまい、危うく光にされそうになったのが記憶に新しい。
JS(ジェイル・スカリエッティ)事件と呼ばれたあの戦いで、多くの魔導士が犠牲になった。その中でサーシェスに殺された犠牲者が最も多く、あの戦いだけで50人近くが犠牲になったという。
だがスカリエッティ側でもナンバーズのドゥーエ、クアットロも殺されている。クアットロについてはサーシェスが殺した事を生き残ったナンバーズやスカリエッティが聞くと、全員がサーシェスとの決別を宣言した。流石にクアットロが殺されたことを聞いたスカリエッティもサーシェスが殺した事実に怒りを隠せなかったようだ。
そしてそのサーシェスは、俺が撃ったスタンショットが元で両手足が麻痺してまともに動けない状態でスカリエッティと同じ第9無人世界「グリューエン」軌道拘置所第1監房に収容されている。
罪状が大量殺人の他にロストロギアの強奪や所持など挙げればキリがないぐらいに多く、罪状だけで言ったら人が死なないようにある程度抑えたと言ったスカリエッティよりも罪が重い。
上層部も反対意見もないため、近々死刑を執行するという報告が入っている。
人によっては俺も同罪と思うかもしれないが、奴についてはもう考える事は止める。
そして時が流れ……
今日は、機動六課は解散の日を迎えた。
はやてが壇上に立ち、皆を見渡しながら笑顔で機動六課解散のスピーチを始める。
「長いような短いようなこの一年間、本日をもちまして機動六課の試験運用期間が終わります。」
この世界…ミッドチルダに来て、既に4年が経過した。
出会い、別れ、戦い、勝って、ボロボロになって、その中で俺は新しい家族を得る事が出来た。
「皆それぞれ違う道に行くだろうけど、どうかお元気で……。」
隣にいるなのはとヴィヴィオをチラッと見ると二人とも穏やかな笑顔で返してくる。
俺も同じように笑顔で返して前を向く。
俺は年明けになのはと入籍を果たした。
六課解散の今日から4ヶ月までの間に結婚式を挙げる予定だ。
その事でなのはの親父さん……士郎さんやなのはの兄の恭也と一悶着あったが何とか認めてもらう事が出来た。
閑話休題
ソレスタルビーイングにいた時までは考えられなかった事だ。
今では家庭を持つ以外に、俺があっちで持っていたランチア・ストラトスを地球で買ったり、アイルランドを旅行してみたりとやりたいことが多い。
この上なく……この上なく幸せだ。
そう思いながら、俺はなのはの肩に手を置いて引き寄せる。
.
なのはside
ニールが突然私の背中に手を回して肩を抱いて引き寄せた。
突然の事でつい恥ずかしくなる。
<ふっふっふっ、ニールさん大胆やなぁ!>
<は、はやてちゃん!>
念話ではやてちゃんにからかわれて益々恥ずかしくなってきた。
思わずニールさんを見上げて止めるように睨む……いや、睨もうとした。
けど、ニールさんが余りに穏やかそうに「幸せだな、なのは。」と言わんばかりに私の目を見るから睨む気になれなくなってしまった。
<お、おい、なのは!?>
それどころかキスが出来そうなくらい近い距離だから、もう周りを忘れてニールの唇に自分の唇を合わせようとする。
<な・の・は!>
と突然フェイトちゃんから念話での怒声が来て、自分のしている事に気付いて顔を反らした。
今の私、きっと茹で蛸みたいに赤くなってるよ〜!
「ママ〜、顔が赤いよ?」
ヴィヴィオが私の青いスカートの裾を掴みながら心配そうに私の顔を見る。
「だ、大丈夫だよヴィヴィオ。心配しないで、ね?」
そうヴィヴィオに言い聞かせながら心を落ち着かせる。
それにしてもニールさんと出会ってもう3年も経ったんだ。
あの時はまさか結婚するまでになるなんてあまり思わなかった。
あの時はまだユーノ君の事が気になっていたけど、今はもうそんなに気にならない。
だって、私にはニールもヴィヴィオもいるから。ニールと背中合わせでお互いもヴィヴィオも皆も守っていく。私にはそれが一番良いんだって解っちゃったし……。
ああでも、ニールは「お前は体を酷使しすぎだから、しばらくブラスターモードは禁止だ!」なんて言ったからちょっと喧嘩になっちゃって、結局しばらくの間だけ封印したんだよねえ……。
……ってこうして居られるのも、やっぱり幸せの内に入るんだろうね。
私、ちゃんとやれているかな?
<……なのは、この後にラーナの墓参り行こうぜ。>
ねえ
<…うん。ヴィヴィオも連れて、ね。>
ラーナちゃん
.
ニールside
機動六課解散の日から数日が経過した。
ミッドチルダ東部 共同墓地
ここにはクレメンス部隊の皆、ゼスト・グランガイツ、レジアス・ゲイズ元中将、そして……
俺のかつての相棒でだったラーナ・シールズが眠っている。
因みに今の俺の服装は黒いスーツに黒のネクタイ、黒の革靴。ワイシャツは白で長袖だ。
なのはは黒いスーツで黒のタイトスカート、黒いストッキングと俺と同じ喪服になっている。メイクは派手さを抑えている。
ヴィヴィオは流石にまだ喪服を着せても仕方ないので、もうすぐ入学するザンクト・ヒルデ魔法学院の初等部の制服を着せている。
俺はラーナの墓の目の前に座り、白いユーチャリスに似た花の束を供える。
ユーチャリスの花言葉には清らかな心、純心、純愛、清々しい日々という意味がある。
この花は俺となのはからの感謝を込めて贈る。俺は愛を、なのはは清々しい日々をもらったという意味だ。
本来は結婚式のブーケに使われるものだが、葬式ではないし一つの区切りとして供えた。
「ママ、この中でママのお友達が眠っているの?」
「そうだよ。ラーナちゃんもだけど、ここでは他の人も静かに眠っているからシー、ね。」
なのははしゃがんで口元に人差し指を一本立ててヴィヴィオに静かにするように促す。
ヴィヴィオは静かに「はーい。」と返事してラーナの墓へと向き直す。
そしてなのはは立ち上がったところで、胸の辺りに手を当てて目を瞑る。
「ラーナ、俺はお前と隣にいるなのはとヴィヴィオのお蔭でずっと止まっていた時間を進める事が出来た。もう復讐に縛られる事も無くなった。」
家族との楽しかった日々から別れ、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして戦い、サーシェスへの復讐であの世界を去った。
この世界に来てラーナとの出会いと別れ、なのはと心が繋がり、ヴィヴィオを一度助けられなかった悔しさを救う事で晴らした。
仲間に助けられた中でヴァイスには特に色々と助けられた。
どれが欠けてもきっと今の俺は無かった。
「ラーナちゃん、私ね、ニールと結婚する事にしたんだよ。この子は最近養子になったヴィヴィオ。」
ヴィヴィオはなのはが紹介したのに合わせてお辞儀をする。
なのはは訓練教導の中でラーナと出会い、最初は意気投合、そして口には出さなかったが恋のライバルだったそうだ。
「だから、俺はこれから幸せだと死ぬ時に言えるように頑張っていく。なのはとヴィヴィオと一緒に明日を生きていく!!
見ていてくれ、ラーナ。」
<おめでとう、二人とも。>
俺たちの声が届いたのか、ラーナの声が俺に伝わった。
「ラーナちゃんが、おめでとうって言ってくれたの?」
「ヴィヴィオも聞こえたよ?」
「ああ、俺にも聴こえた。」
何故聴こえたのかは分からない。だがそんなこと、今はどうでもいい。
<これで私も安心して………。>
声が途切れ、うっすらと光が天へと昇っていくのが見えた。
じゃあな、ラーナ。
「さあ帰ろうぜ、なのは、ヴィヴィオ。」
「はーい。」
「うん。」
これからの俺は
目標(幸せ)を狙い撃つ!!
fin.
これで深緑の狙撃手VS赤き傭兵は完結です。その続編がここでは先に投稿した『魔法少女リリカルなのはvivid~深緑の輝きは癒しと未来を創る光~』です。
初見がvividだった人は、多分「何これ、何でなのはがロックオンと結婚してるの?説明もあっても容量を得ないし、この状況って作者が好き勝手やりたいだけじゃねえ?」と思った人もいるでしょう。他にも色々と有り得ないと思った人もいるでしょう。
でも、ここまで見て何でそういう状況になったのか分かったかと思います。面白いかどうかはその人の好みと視点に寄りますが。
なお、これで完結にはせずに番外編をチマチマと投稿していく予定です。少なくとも本編に関わる話は投稿していきます。
では、ここまで読んで下さりありがとうございます!!
続編のvividもよろしくお願いします。