魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~ 作:グリューン
なろうで書いたものよりラーナの過去が重くなってます。
ニールside
―結局、パイ尽くしにギンガがまさかのデザート注文をやってくれたお蔭で一気に円で換算するなら、10000円を軽く越す金額になってしまった。
ティアナだけはパイで十分だということで遠慮してくれた。
……皆、容赦ねえ。
で今はデパートでショッピングだ。また二手に別れ、今度はラーナと二人になる。
なのだが……
「何で、ランジェリーショップに俺まで?」
いや、いくら何でも俺がいるのはまずいだろ?
もう、冷や汗がダクダク出ている。
「だって、ニールに選んでもらいたくて……。」
上目遣いで涙目で俺を見てくる。子犬の耳や尻尾が付いているという幻覚が見える。
あれ、ラーナってこんなに可愛げあったっけ?
しかし、他の客の生暖かい視線が気になる。
もうこうなったらヤケだ!
「分かった分かった。俺なら一番は赤だが、ラーナは水色とかの方が似合う気がするな。」
これは適当じゃなくて直感だ。
因みに他の客はそれを聞いて「赤だなんて、やだもう……。」「バカップルの言うことだけど、あんなカッコいい人に言われたら私、抵抗出来ないかも。」「その女じゃなくて私に!」と各々が想像を膨らませている。
店員の中には涎を垂らしている人までいる。
……ちょっと危機感を覚えてきた。
「ラーナ、試着してこい。俺は今から車を見てくる。集合場所にいなかったら、そこにいるから買ったら来てくれ。」
「え、ええ、分かったわ。」
そう言って俺は急いでその場を離れた。
ふう、危ねえ危ねえ。
.
俺はランジェリーショップを出てカーショップにやって来た。
デパート内にあるため、車は二台しかない。
展示してある車はどちらもミッドチルダの最新モデルで、電動で静かに走れるというものだ。
ただ、静かに走れるということは逆に言えば耳の感覚を頼りに動く視覚障害者にとっては音の出所が分からず危険という欠点があるが。
どちらの車もカッコいいが、やっぱり俺が乗り回していた愛車の方がいい。
「はあはあ……ニール、やっぱりここにいたんだね。」
とそこにラーナが息を切らせてやって来た。
「走らなくたって俺はまだここにいるつもりだったんだぜ?」
「すれ違いなんて嫌だったから。それでニールって車好きなの?」
ラーナは俺の横に来て展示されている車を見る。
「ああ、そこまでという訳じゃねえが好きだな。愛車も持ってたし。」
因みに愛車の名前はランチア・ストラトスといって、外見は白に緑のラインが入っている。
「ニールと一緒だったらドライブでも……。」
「何か言ったか?」
ラーナが何か呟いていたが、聞こえず聞いてみる。
「い、いえ、何でもないわよ。」
顔を赤くして手を振りながら本当に何でもないと彼女はアピールしてくる。
「はは、そうか。」
「何で笑うのよ!」
ラーナ、頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。
照れているみたいだから、少しからかってみるか。
「金を稼いだら、地球でランチア・ストラトスを買おうかと思っている。」
正確には、俺が愛車にしていたのはランチア・ラリー037のレプリカモデルだ。
もしかしたら、こっちの地球にもあるかもしれない。
「それ本当!?その時は私も乗せてって……あ。」
俺もビックリするぐらいの食い付き振りを見せてきた。
その目は輝いていて、それもキスが出来そうなくらいの至近距離だ。
あまりにも可笑しい。
「あっはははははははははははは。」
「ち、ちょっと大笑いしないでよ。恥ずかしいじゃない……。」
ラーナは羞恥心で顔を真っ赤にして俯いてしまった。
だが男性の店員の方を見ると、「そんなとこでイチャつくんじゃねえ!」と言わんばかりにこっちを睨み付けていた。
「そろそろ行こうぜ。」
俺たちは店員に注意される前に店を出た。
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集合場所に着いた俺たちだったが、まだ誰も来てない。
「ちっと早かったか?」
[いいえ、もう時間が過ぎてます。]
そういや、スバルが「ギン姉と一緒にティアナをコーディネートするんだ!」と意気込んで言っていたな。
……ティアナが着せ替え人形にされているのが目に見える。
ドンマイだ、ティアナ。
ジリリリリリン!!
「あれ、こんな所に携帯がある。」
見ると木製のベンチに青い携帯電話が大分昔の電話のような音を鳴らしてその存在を訴えかけている。
しかも、折り畳み式になっているが何故か開きっぱなしで液晶画面が光っている。
「HEY、そこの成層圏を狙い撃つ男さん、女四人連れてハーレムですかい!羨ましいねえ、憎いねえコンチクショウめえ!更に今からそこのどこぞの革新者似の女とラブホでバカンイヤンなことを……ってあの、すみません、目付きがメチャクチャ怖いのですが……。」
多分、今の俺は無表情だろう。こういうはた迷惑なイタ電は折って処分するに限る。
「ラーナ、ちょっとこの携帯をあそこのゴミ箱に捨ててくる。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
ラーナの氷のような冷たい声で指示を聞いて無言でゴミ箱へと歩く。
歩く途中でメキッ、バキッという音がしたが気にしない。
「えっと……あの……すみません、ヒンジはそれ以上曲がらな……ってわああああ、折れてる折れてるうううう!しかも貴方の弟さんばりに扱いが酷くダストシュート!?ダストシュートは止めてください、ロリッコン・ショタラトスっがふっ……。」
俺はその携帯らしきものをゴミ箱に投げ捨てる。
それでもゴミ箱からギャアギャアと煩いが放っておく。
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数分後に三人がやって来た。
ギンガ曰く、ティアナが着せ替え人形にされた仕返しにスバルにも同じことをさせたらしい。
ただし、スバル本人も楽しんでいた為にあまり仕返しになっていなかったとのことだ。
その証拠にティアナがげんなりと項垂れながらスバルを睨んでいる。
「ああ―、楽しかった。」
「楽しかったのはあんただけでしょ。」
ティアナ、そういう時もある。
考えてみりゃ、こうやって誰かと一緒に遊んだりしたのは久しぶりだな。
皆、忙しくてクロノなんかは本当に毎日暇がないと本人から聞いている。
あっちにいた時はマイスターもトレミークルーとも買い物はしても遊んだりすることは殆んどなかった。
「あ、そろそろ帰らないと……。」
ギンガがデパート内にある時刻を見て呟く。
「アタシたちも帰ろう、ティア。」
「そうね、疲れちゃったし帰りましょう。」
そう言って三人とも帰ろうとするが、ラーナ何か言いたそうに俺を見てくる。
<ラーナ、何か言いたいことがあるのか?>
念のために念話で聞いてみる。
<ええ。ニールと二人っきりで、私のことを話したいの。>
真剣な、それでいて哀しそうな表情で俺を見る。
<分かった。>
無論、それを断るはずもなく了承する。
「皆、すまねえが俺とラーナはもう少しいる。先に帰っていてくれ。」
「分かりました。ですが、あまり遅くならないうちに戻ってきて下さいね。スバル、行こう。」
そう言ってスバル、ティアナ、ギンガは先にそれぞれの場所へ帰っていった。
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ラーナに連れられて公園にやってきた。
夕闇に染まる空、オレンジとブルーとネイビーのコントラストがなんとも鮮やかだ。
「…何でここに?」
ふと疑問に思い誘った本人に聞いてみる。
「あまり他人に聞かれたくないし、この時間帯ならここには人は来ないから。」
声を震わせながら振り向くラーナ。
その表情には悲哀と懐かしさと複雑な思いが込められているように見える。
「もしかして、ここに住んでいたことがあるのか?」
無言で頷くラーナ。
そして、いつもの勝ち気な雰囲気は更になりを潜めていく。
「ニールに家族がいたように私にも両親がいたの。両親共に優しくて幸せだったわ。」
夜空を見上げながら語り始めるラーナ。
そして、突然ズウェーレシグをセットアップして武器を出す。
「お母さんは主婦でお父さんは時空管理局員だった。でも…お父さんは小さい時に殉職、私が持っている盾と似た盾で仲間を庇って守りきれたけどお父さん自身は自分の身を守りきれなかった。つまりシグは、お父さんの盾を元にして改良されたデバイス。」
なるほど、毎日大事にズウェーレシグを磨いていたのはある意味じゃ父の形見だからか。
「なら、母親はどうしたんだ?」
それを聞いた途端、ラーナの目に涙が溢れていった。
「お母さんはお父さんが亡くなった後に女手一つで働いていたけど、突然どこの誰だか分からない男に…!」
涙が頬を伝う。
「お母さんを殺した犯人は男だと分かったけど、今でも捕まってないわ。」
正直、本人にこんなこと喋らせて良かったのか。
だが本人から言っていることを俺が止めることは出来ない。
「その後は、親戚もいない私は一人で生きてきた。生きる為に色んなことをやったわ。言っておくけど、盗みとかはやってないわ。コンビ組んでて分かったでしょ?」
確かに最初はお世辞にも足が速いなんて到底言えないぐらい遅かった。
今は鍛えられて段々速くなってきている。
「本当に、色んなことをやったわ……。」
悲哀と共に自嘲する笑みを浮かべた。
そこで俺は察してしまった。
「ラーナ、まさか…。」
「ニールの思った通りよ。私は、汚れている。風俗で働いたりもしたわ。」
自然にギリッと歯を噛み締める。
ラーナに対してじゃない、ラーナにこんなことをさせてしまった周りに対しての怒りだ。
「色んな男を相手にしてきたわ。どの男も自分のことしか考えてない、自分の欲を満たすことしか考えない奴ばかりだったわ。」
そういうことをしてきたのなら、男嫌いになって当然だ!
「こうして話したのは貴方が初めて。……ねえ、こんな私でも一緒に戦ってくれる?一緒に居てくれる?」
泣きそうな顔で俺に問うラーナ。
……決まっている。
「勿論だ。過去がどうとかじゃない、ラーナが頑張るというなら俺は応援する。それとありがとう、辛かっただろ。今は泣いてもいい、誰も見てねえからな。」
そう言って俺は微笑みながらラーナの頭を撫でる。
「う、うう……うわああああああああああああああ……。」
俺は黙って抱きついてきたラーナを受け止める。
空には満面の星空が輝いていて綺麗だった。
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ラーナside
今まで出そうにも出せなかった感情。
それが漸く出すことが出来た。
本当に辛かった……。
働いていた風俗店が検挙され、ミゼットというお婆さんに拾われなかったら今頃は同じ自分を大事にしない生活を続けていた。
そして、今泣きじゃくる私を受け止めている男、ニール・ディランディのお蔭で胸の中に閉まっていたものを解き放つことが出来た。
でも、本当に不思議な人。
今まで男に触られるのは嫌がるか何ともないだったのに、ニールだけはドキドキしてしまう。
ニールともっと一緒に居たいと思ってしまう。
ニールのことをもっと知りたいと思ってしまう。
もうすっかりベタ惚れしてしまったのね、私。
もうニール以外は考えられないわ。
「もう、良いわニール。」
「良いって、俺たちはコンビだろ?」
ニールの方はそのつもりはないみたいだけど、絶対に振り向かせるわ!
それと……
「ありがとう、ニール。」
涙でグシャグシャだけど笑顔でお礼を言った。
「もう大丈夫みてえだな。帰ろうぜ、もう行かねえと大変だ。」
そう言われて何となく見上げた星空がまるで祝福するかのようにキラキラと夜空を彩っていた。
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