魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~ 作:グリューン
―訓練校に入ってから2ヶ月が経った。
最初はギクシャクしていた俺とラーナのコンビはラーナが文句を言いながらも、どうにか連携も能力もメキメキと上がってくるようになった。
ただ、たまにラーナの様子がおかしくなることがある。
俺の顔を見て俺がそっちへ顔を向けると反らすし、突然慌てだすし……。
何となくだが、ラーナは……
「おっはよう、ニールさん!」
考えている中で、バシッと俺の背中を叩くスバル。
「痛て!おいこら、スバル!強く叩きすぎだ!!」
「あはは…すみません。」
これは俺の視点だが、スバルとオレンジの髪の娘……ティアナは最初はドタバタコンビという感じではあったが次第にまとまりが出てきた。ティアナの名前はスバルに教えてもらった。
「…あ、いた。ナカジマさん、行くわよ!」
「あ、待ってランスターさ〜ん。」
ティアナと俺は謂わば年の離れたライバルという関係になっている。お蔭であの娘からほとんど話しかけられることはない。
…やっぱ第一印象が悪かったようだな。
それは仕方ないとして、ラーナと一度ゆっくり話す機会も設けた方がいいな。放っておいたら、そのうちとんでもないミスをしそうだ。
そう思いながら今日もまた訓練に励む俺だった。
夜
今日の訓練が終わり、各々が部屋へ戻っていく
俺は既に風呂に入ったので部屋へ戻って寛(くつろ)いでいた。
ラーナは今風呂に入りに行っている。
[マスター、なのはさんから通信メールが来てます。]
「なのはか、見せてくれ。」
デュナメスの腕輪に付いてる緑色の宝石からホログラフが出てメールの内容が表示される。
<ニールさんへ
こんばんは。あれからどうしているか、気になってメールを送りました。
私は相変わらず、教導官として各部隊を転々として回っています。
そちらはどうですか?
なのはより>
[因みにこのメールはマスターが訓練中に届いたものなので終わるまで附せていました。]
なのはからのメールは先月も一回来ている。
「そうか、サンキューな、デュナメス。」
[早速返信しますか?]
「頼む。」
特に問題がないと電子モニターに表示されるキーを打って書いていると風呂上りでパジャマに着替えたラーナが近付いてきた。
実は最初、Yシャツ1枚だったのだが、流石に俺には目の毒だったため、変えるように言ってパジャマになった。
「何してるの?」
「ああラーナか、ちょっと知人からメールが来てたから返信しているところなんだ。」
「どんな人?」
「高町 なのはっていうんだが…。」
「…た、高町 なのはですって!?」
「うおわっ!」
顔が近い近い!!
「根掘り葉掘り聞かせなさい!」
ラーナは俺の胸ぐらを掴んで揺さぶる。
ていうか揺さぶり過ぎて頭が…
[ラーナ、落ち着いてください!マスターの気分が悪くなります。]
デュナメスのお蔭でラーナが手を離して収まった。
「…で何でその人と知り合いなのよ?」
ちょっとどうしようか迷ったのでここ2ヶ月で漸く使えるようになった念話で相談する。
<俺が別世界の人間というのは言った方がいいか?>
[変に追求されるのも不味いですし、それは説明しないと話が繋がりませんから話した方がいいでしょう。]
相談を終えてラーナに目を向ける。
「…これから話すことは他言無用にしてもらえるか?」
「え、ええ。」
.
「まず、俺はこの世界…ミッドチルダの人間じゃない。」
「この世界の住人じゃないってことは次元漂流者ってこと!?」
「まあ、そうなるな。」
…この反応は当然か。
「そんな人が何故この訓練校に入れたの?」
「さっき言ったなのはに気絶していたところを拾われて、戸籍とか住む場所とかをどうにかしてもらったんだ。」
「そうなんだ。…何か狡い気もするけど。」
「…それを言われると痛いな。」
男として年下のい女の子に頼るというのはなかなか辛いものがある。まあ、戸籍がないのでは働きようがないのも仕方ない。
「そこはここでは立場が弱かったから仕方ないわよね。…いくらなんでもそのままでこの世界を生きていけるはずないしね。」
やはりこの娘は本当はいい娘だ。
性格は本当に勝ち気で口では色々厳しいことを言っているが、実は結構色々見えていて優しいところもある。
それに俺の状況を早く理解したあたり、柔軟なところもあるのが分かる。
「へっ!?な、何言ってるのよ!!」
[マスター、褒め殺しになってますよ。]
「あれ、口に出てたのか!?」
うおっ、ラーナの顔が真っ赤だ。
「ほ、他にも聞きたいことあるけどいい?」
「いいぜ。言ってくれ。」
「貴方が次元漂流者っていうことは前いた世界はどこにあるの?」
「俺がいた世界は地球だが…地球は地球でも、別世界の地球なんだ。」
ラーナの顔が驚愕の色に染まる。
「並行世界ってこと!?」
「そうだ。そして本来、俺は既に死んでいるはずの人間だった…。」
「病気とか?」
「違う、戦っていた。」
思い出す…
最後に宇宙で対峙した家族の仇であり、仲間の人生を狂わせた男。
アリー・アル・サーシェスとの戦いのこと…。
だが、俺は確かに奴の機体であるスローネをGNアームズに付いていたGNキャノンで吹き飛ばした。それと同時に俺も被弾して爆発に巻き込まれた。
だが、あいつらは大丈夫だろうか?
[マスター、今は気にしても仕方ありませんよ。]
ラーナに聞かれてはまずいので、念話で話す。
<…分かっちまったか。>
[それに、貴方の仲間たちはそんなに弱い人たちでしたか?]
<そんなことはない!あいつらはきっとあっちで頑張ってくれている!!>
[ですから、今はそれを信じて頑張って下さい。]
「ちょっと、何私の前で念話なんか使ってるのよ!それに筒抜けだから殆んど聞こえているわ!!」
気付けば目の前にラーナが近付いていた。それも顔と顔がぶつかりそうなくらいの距離だ。
って…
「おわっ!」
「きゃあっ!ビックリさせないでよ!!」
至近距離にラーナが迫っていたものだから驚いてしまった。
「ビックリしたのはこっちの方だ!!」
[お二方落ち着いて。]
「もう!…で、前の世界では何をしていたの?」
「…話すのはいいが、これから話すことは他言無用で頼む。」
彼女に本気であることを示すため、睨み付ける。
「わ、分かったわ。」
.
了解を得たところで俺は太陽炉などの話してはいけない部分を除いて俺がやってきたことを全て話した。
話をし終わって少しの間、静寂が部屋に漂う。
ラーナの表情は悲しみと怒りがない交ぜになったようになっている。
「……話は、分かったわ。正直、まさかそんなに苦しい思いをしてきたなんて思わなかった。」
俺は黙って聞いている。デュナメスもまた、沈黙を保っている。
「貴方たちが掲げた紛争根絶ていうのはあまり納得出来ないし貴方が人を沢山殺してきたというのもそう簡単に許されないけれど、でも……ニール・ディランディという一人の人間が味わって来た苦しみを思うと、全てを否定しきれないわ。」
彼女の口から放たれた言葉は、全て受け止めなければならないこと。
許されてはいけないこと……。
「でも、なら貴方は時空管理局で貴方は何を目指すというの?もし同じやり方をこの組織でやるというなら、私が全力で止めるわ!」
今度はラーナが俺を睨む。その上で、待機状態のズウェーレシグに手をかける。
話すと決めたのだから、こうなるのは当然だ。
「いや、状況にしても管理局の規模にしても武力介入をしたら逆にまずいのは分かっている。」
この世界にはロストロギアという危険な代物がある。
過去にそのロストロギアの暴走で星一つ滅んだという事実もある。
もし下手に武力介入をして、戦争の悲惨さや平和の尊さを訴えたとしても星が滅んだなんてことになれば武力介入する意味が無かったことになる。
その上、本当の意味でサーシェスと同じただ害しかもたらさない存在になってしまう。
「ならどうするつもり?」
「この時空管理局で俺は違うやり方で平和のために力を使う。そのためにはまずはこういった訓練校で自分を魔導士として鍛え直す必要があったんだ。」
「でも高町教導官に1ヶ月訓練を見てもらっていたんだよね?」
「そうだが、彼女はただでさえ忙しいからあまり見てもらえなかったんだ。それに、この世界を自分の目で知る必要があった。」
「貴方がここにいる理由はよく分かったわ。でも、それなら嘱託魔導士になることも出来たんじゃないの?」
「嘱託魔導士は確かになれただろうが、長くやっていくとなると不安定な立ち位置でいる訳にもいかなかったから止めた。それに、俺の魔法のコントロールが悪いのは知っているだろ?」
「そういえばそうだったわね。……ちょっと待って。貴方は訓練用デバイスで練習したことあるの?」
[ありません。マスターには必要ないかと…。]
「なんで試さないのよ!だってジャイロ回転でコントロールしづらくなっているんでしょ!?」
ラーナのあまりの剣幕にたじろぐ。
っていうかちょっと恐いぞ!
「あ、ああ、そうだ。」
.
「なら、ニールのコントロールはまだ正確な値が分からないってことじゃない!だから次の自主訓練で借りてくるからやってみなさい!!」
これがまさか良い結果に繋がるとは思わなかった俺だった。
翌日
突然、2ヶ月分の成績の発表の掲示板が貼られていた。
その結果、俺とラーナのコンビは4位になっていた。
「なかなか良いところまで行っているわね。でもあの娘たちに敗けているのが悔しいわ。」
あの娘たちというのはスバル・ティアナのコンビのことだろう。
最初あったスバルの失敗は今では特に問題はない。さらにちらっとだが、練習風景を見た限りティアナが的確な指示が出来ているように見える。
俺たちが敗けている原因は、俺が成人していて戦いのスタイル自体が確立していることが関係しているだろう。
実際、MSにしても生身にしても俺の間合い、戦いの中での駆け引き、コンビネーションのやり方などは既に分かっている。
だから、スバルやティアナ、ラーナのような成長はあまり期待出来ないのだ。
となれば、魔法の訓練を中心に時間を充てればよかったのだが、この2ヶ月は連携を中心にしていたためにあまり時間を充てられなかったのだ。
「焦ったってしょうがねえさ。さて訓練でも…」
「よお、ラーナじゃん。」
「誰…あんた、よくもノコノコと!」
横から声を掛けられたラーナが顔を向けると、目付きが悪い、いかにもヤンキーな感じの男がこっちを見ていた。身長は170前半ぐらいだ。
「へっへっへっ、久しぶりだな。」
「誰だ、こいつ。」
「知らなくて良いわ、行きましょう。」
だが、男がラーナの手首を掴む。
「まあ、待てよ。男嫌いなラーナちゃんが何でそんな奴と組んでいるのかと思ってね。」
「離しなさい!」
「不思議だよなあ、あれだけ可愛がってやったのに逃げちゃうんだからな。」
「!!!!」
ラーナの顔が青ざめる。
……どうやら男嫌いは大部分がこいつが原因のようだ。
「なあ、また一緒に…いでで!!」
よく分からないが、俺は男の手を掴んで思いっきり握る。
「悪いが、離してもらえるか?俺の相棒が嫌がってるんでな。」
「何だてめえ!こっちが何をしようと勝手だろ!!」
「知るかよ。なら俺が貴様を止めるのも勝手だろうが!」
「…ふざけんなよ、この野郎!」
男が空いた右手で殴ってきた。
だが、俺はそのパンチを難なく左手で受け止める。
…大した威力でも速度でもない。
「…事情は知らねえがな、俺たちの邪魔になるならもう相棒に話し掛けるな!」
俺は冷徹に相手を見据える。殺気も一緒に相手に向ける。
「ひっ!」
俺の目を見た男は後ずさる。顔も青い。
この程度でよく訓練校に入れたものだな。
「…行くぞ、ラーナ。早く行かねえと訓練に遅れる。」
「え、ええ。」
俺たちはその場を後に訓練に向かう。
…向こう側で険しい表情のティアナと何故かニコニコしているスバルがこっちに向かって来た。
「何でこっちに来るんだ?それにティアナの機嫌が悪いぞ。」
「煩いわね!」
「今、ランスターさんはカルシウムが不足してるんですよ。」
「は?何言ってるの。そうじゃなくて…。」
何となくだが、気分を入れ直すためにスバルに乗っかってみる。
「ああ成る程、そりゃ牛乳飲まねえと駄目だな。なあ、ラーナ。」
「へ?え、ええ、イライラしてたら訓練にも集中出来ないわよね。」
「ち、ちょっと…。」
「なら、今度訓練の休みの時にでもティアナに奢ってやろう。」
「またあんた勝手に…!」
「良いね!だったらうちのギン姉も誘っていい?」
「おっ、スバルはお姉さんがいるのか。勿論、良いぜ。」
「あの…ニール、私も行っていい?」
「ああ、いいぞ。」
「もうあんたたち…。」
「ティアナは来いよな。」
「もう…いいです…。」
三人の拗れに拗れたトークについていけなかったティアナだった。
.
訓練が終わり、今俺とラーナは自主訓練をやっている。
内容は勿論、ラーナが昨夜言っていた練習用デバイスでの誘導型攻撃魔法の練習だ。
「それじゃ色んな方向に魔力光を用意したから、それをこの位置から動かずに撃ってね。」
「了解だ。デュナメス、今回は俺だけでやるからサポートは無しだ。」
[分かりました。]
「いくぜ、アクセルシューター、狙い撃つぜ!」
深緑の魔力弾が青い宝石のような部分から形成、発射される。まずは真上にある的から狙う。
そう念じていたら、放った魔力弾が的のある真上にいきなり進路を変えた。
そして、的へと吸い込まれるようにど真ん中に命中する。
「おりゃっ!」
更に間髪入れずに前、右、左、後ろなどあらゆる方向に配置された的を少しズレた後ろを除いてど真ん中に命中させた。
それを見ていたラーナは驚いてこっちを見ていた。
「やっぱりコントロール良いじゃない!」
「いや、後ろだけ少しズレちまった。俺としてはまだ甘い。」
「しかし、それを思うとデュナメスは余程制御の上手い人でないと無理なのね。」
それだけ分かりゃこの訓練には意味があるって訳だ。
「ラーナ、あと4セットはやっておきたい。配置してくれるか?」
「分かったわ。」
意味があると分かった以上はしばらくこれで練習だ!
.
サーシェスside
俺はあれから大将から簡単にこの世界と使われている武器について説明された。
んでこいつらが何をやっているかを聞いた時、俺は面白いことが待っていると確信した。
でっかい組織といっちょ戦争をおっ始めるってよ!!
勿論絶対参加してえと思ったから、雇いさえすればてめえらの味方になってやると言ってやった。
で今はそれが通り、大将が俺が持っていたガンダムのデータを元に造った出来たばかりのデバイスとやらを試しに動かしている。
名前はアルケー、俺があっちで最後に使っていたガンダムだ。今の俺の姿もアルケーそのものだ。
最初は手足が長いから間合いの違いがあったりとちっと手間取っちまったがそれももう手足のように動かせる。
「はっはー!」
俺のガンダムは飛べたから飛べねえかと思ったら飛べた!
さっきもファングを飛ばしてみたら、これまた俺の思い通りに動く。
全くスカリエッティの大将様々だな!!
俺は魔法なんて信じなかったが、MSの他にこんな面白い戦い方があると知って気分は最高だ!
あとは戦争をおっ始めるまで待つだけだ。
「ドクター、あれなら模擬戦をやらせても宜しいのではないですか?」
「そうだねえ、ウーノ。さっきも武器を使っていたけど、どうやら彼は戦い慣れているようだから一度トーレを呼んでやらせてみよう。…サーシェス!!」
「おう、何だ大将。」
「一度、模擬戦をトーレとやってみないかい?」
「いいねえ、今の俺は最高に気分がいい!このまま、今日は戦わねえなんて勿体ねえ!!」
「ふふ、いい返事だ。ウーノ、トーレを呼んできてくれ。」
「はい、ドクター。」
.
少し待つと青い髪の短髪の姉ちゃんがやってきた。
「ドクター、お呼びですか?」
「ああ、実はちょっとサーシェスの相手をして欲しいんだ。」
「今日デバイスを渡したばかりではないのですか?」
「それが最初は手間取っていたけど、今はもう手足のように使いこなしているんだよ。で彼がどのくらいの実力かを測っても問題ないと思ったのと、彼が近接戦闘が得意だと言っていたから君を呼んだんだ。」
「ドクターがそう言うのであれば従います。」
トーレという姉ちゃんはこっちに顔を向けると僅かにこっちを睨み付ける。
俺は空中から地上へ降りた。
「…正直、貴様が私に勝てるとは思えない。今日デバイスを使い始めた奴に私が負けるはずがない。」
大層な自信じゃねえか!
初めて会った時も睨んでたなあ…。
「へっ、そうじゃねえと戦い甲斐がねえよな。そうだろ、姉ちゃんよお!!」
だったらさっさと倒されてもその自信があるか試してやるよお!!
俺は早速ビームガンを撃った。
「ISライドインパルス!」
姉ちゃんの手足から二枚ずつ翼のようなものが生え、俺が撃ったビームを簡単に避ける。
あれが大将の言っていた戦闘機人のIS(インヒューレントスキル)って奴か。
「へっ、いい反応じゃねえ…か!」
俺はビームガンになっていたバスターソードを右手に持ち、袈裟ぎみに振りかぶる。
「その程度!」
姉ちゃんは上に避け、急降下してライダーキックをかまそうとする。
だがな……
「こっちには読めてんだよ!」
俺は姉ちゃんの足を掴み、そのまま上へ急上昇する。
「なっ、ぐうっ!」
天井に行き着いたところで、今度は急降下して叩きつける。
「がはっ!」
姉ちゃんは背中を叩きつけられたため、起き上がれずに苦悶の表情を浮かべる。
「おいおい、この程度か?なあ、トーレの姉ちゃんよお。」
「ぐっ、誰が!」
姉ちゃんは素早く俺に蹴りを入れようとする。
足の羽が俺の右腕に触れると僅かに切れ目が入る。
「だから、甘えって言ってんだろうが!」
少しバックステップしてまた足を掴む。
「まだだ!!」
だが今度はもう片方の足で顔を狙ってきた。
だが俺には通用しねえ。
「ところがぎっちょん!!」
俺はその蹴りをバスターソードで弾いた。
「くっ!!」
「逝っちまいな!」
そのままバスターソードの刃の反対側を姉ちゃんのどてっ腹に叩きつける。
殺すなと大将のお達しがあるからよ。
「ぐはっ!」
腹に諸に一撃を入れられた姉ちゃんは今度は起き上がれずに気絶した。
「死なねえようになってるがな、そうじゃなかったら死んでたぜ?っと、聞こえてなかったか?大将、終わったぜ!」
「全く君は本当に素晴らしいよ。トーレは高速戦闘が得意なのをまるで知っていたかのように動きを止めたのだからね。…ウーノ、君はどう思う?」
「信じられません、トーレが一撃も入れられずに負けるなんて…。」
このくらいで驚いちゃ困るぜ、まだファングも使ってないしな。
「なあ大将、俺様疲れちまったから休ませてもらえねえか?」
「ああ、ご苦労様。少し休んでてくれ。」
大将の言葉を聞いた俺は部屋を出た。
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スカリエッティside
サーシェスがいなくなった後、私はトーレに近付いて起こした。
「大丈夫かい、トーレ。」
「はい、大丈夫です。…うっ!」
やはり強く叩きつけられたことで背中か腹部のどこかをおかしくしたようだ。
「…どうやら、少し基礎フレームを損傷してしまったようです。」
「申し訳ありません、ドクター、ウーノ。」
「気にすることはないよ。私も彼がここまで強いとは思っていなかったからね。」
私は嘘偽りなくそう思っている。彼の動きはおそらくだが、戦闘のプロという動きと言っていいぐらいに無駄がなかった。
「はい、魔法を使える訳でもないのに…。」
実際、リンカーコアはあったもののランクはC程度と私が創った戦闘機人たちより低い。
にも関わらず、あそこまでの動きを見せた上にトーレを圧倒したのだ。
これはもはや彼の運動能力がずば抜けて高いこと、そしてトーレ以上に戦闘経験が豊富であることを意味している。
けれどそれ以上に私が彼が持っていたアルケーガンダムとやらのデータを元に造り上げたデバイス『アルケー』にあそこまで早く馴染んだことが驚きだった。
…私はとんでもない拾い物をしたようだ。
「ふふふふ、ウーノ。」
「何でしょうか、ドクター。」
「どうやら彼のお蔭でさらに計画がスムーズに進みそうだよ。」
「そうですね。あれならば、オーバーSランクの相手を任せられます。」
あれならエース級の魔導士も倒せる。
「いえウーノ、あの男は本気を出していませんでした。」
「そうだねえ、彼はファングを使ってなかったしね。」
「ドクター、ファングとは何ですか?」
「ファングというのは言うなれば遠隔操作の出来るビットのようなもので、魔力弾を放ったり、魔力刃を形成して突撃させて攻撃する武装のことだよ。他にもバインドで捕縛する機能もある。ああいうのは初めて造ったから流石に手間取ってしまったよ。」
元からあったデータをよくアレンジしなくてはならなかったから開発に何ヵ月も掛かってしまった。
「彼に勝てる者たちはいないのでしょうか?」
「私としてはそうとは限らないが、この中では今のところ彼が一番強いね。」
それを言われたトーレは黙ってしまった。
「…では、今以上に強くなります。そして次は勝ちます!」
「うむ、その意気だよトーレ。」
本当に私はいい拾い物をしたよ。
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