魔法少女リリカルなのは~天を穿つ深緑の狙撃手~   作:グリューン

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第七話 彼の願い…叶わず

 

―なのはとの模擬戦から1ヶ月、特にこれといって緊急になるようなことは起こってなかった。

 

ただあるとすれば、ラーナも段々強くなってきて今まで俺が勝っていたのについ一週間前に負けてしまったのだ。

 

いや、すっかり強くなっちまって…。

 

俺としちゃ、ラーナは相棒という感じなんだが、あっちはどうも俺のことが好きらしい。

 

俺の気のせいとも思うが、この間は顔を真っ赤にしながら腕を組んできたから間違いない。

 

でもよ……

 

俺にはまだ……相棒としか見れない。

 

女性としては本当に魅力がある。

 

彼女は勝ち気なところやなのはが言っていた突撃思考とかはあるものの、結構家庭的で可愛いところもある。意志もあって安心して見てられるが、時折見せる脆さも男として支えてあげたくなる。

 

 

 

…言ってることおかしくないか?

 

 

 

 

これじゃまるで…

 

 

 

 

 

だが…喩えそうでも、俺がラーナを受け入れていいのか?

 

確かにもう俺はあっちでは死んだ人間だが、たくさん人を殺した事実は変わらない。テロリストだったことは変わらない。

 

ラーナは受け入れると言ってくれたけど、人を殺した事実を忘れるつもりがない以上は人並みの幸せを受け入れることが果たして許されるのか?

 

 

 

 

そんな思いに囚われながらこの1ヶ月を過ごしていた。

 

 

 

.

 

 

 

 

ある日のことだった。

 

今日もいつものように書類整理や訓練に明け暮れると思っていた午前の矢先のことだった。

 

部署のあちこちから緊急アラートが鳴り響く。

 

『市街地にて未確認体(アンノウン)が出現し、現場の陸士部隊では対応しきれないとの連絡が入りました。武装隊各員の出動準備して下さい。現場が遠いため、ヘリでの移動となります。待機中の隊員は準警戒態勢に入ってください。』

 

「ニール、行こう!」

 

ラーナがこっちに来る。

 

アンノウンと聞いたからか、いつもより顔が強張っている。俺が来る数年前から何者かが造ったガジェットドローンでの襲撃が起きている。目的はロストロギア、レリック。大規模な災害を起こせるぐらい強大なエネルギーを保有する赤い宝石だ。そのレリックを狙うガジェットがAMF(アンチマギリングフィールド)を纏って魔力を無効化してしまうため対処が難しく一般レベルの魔導師では逆に抑えられてしまう。

 

ラーナも俺も初めてだが、俺はどうにかなる算段があってもラーナは通じるか不安があるようだ。

 

「分かってる、出動だ!」

 

すぐに走り出し、緊急時のヘリポートへと向かっていく。

 

幸い、体は暖まっている。

 

 

 

 

だが何だろうか、この嫌な感じは。

 

何か起こるというのだろうか?

 

けれど、そんなのは関係ねえ。

 

俺たちを、民間人を巻き込むロクでもない奴等なら狙い撃つだけだ!

 

 

 

.

 

 

現場はビルの地下

 

ヘリで移動中にロストロギア『レリック』の反応があったという報告が届いていた。

 

武装隊全員、既に武装は完了している。

 

しかし、敵に奪われてしまい、まだ取り戻せてないそうだ。

 

地下は戦いの痕なのか、所々で壁が破壊されている。

 

「何があるか分からないが、敵にロストロギアを奪われる訳にはいかない。迅速に回収するため、二人一組に別れてもらう。見つけ次第、この地点に合流だ。…散開!」

 

隊長の指示に従い、それぞれがバラバラに行動する。

 

勿論、俺はラーナと一緒だ。

 

「ニール、ヘリの映像で見たあの機械って確か…ガジェットドローンだよね?」

 

「ああ、そうだ。短期訓練でなのはが言っていたAMF(アンチマギリングフィールド)という厄介な機能を持つ機械だ。」

 

このAMFが本当に厄介で、この機能のせいで並大抵の威力の魔法では倒せないと言っていた。

 

しかし、俺のデュナメスに関してはあまり気にしなくてもいいとも言っていた。

 

何故なら、ジャイロ回転の機能ならAMFを簡単に破れるからだ。

 

「大丈夫かな?私は初めてだから…。」

 

「弱気になるな。弱気になったら確実に負けるぞ!」

 

「うん、ありがとうニール。」

 

その笑顔が何故かいつもより綺麗に見えた。

 

[マスター、ロストロギアの反応が近いです。]

 

「ニール、あれじゃない?」

 

ラーナが右手で指差す方にはロストロギアを持ったガジェットが素早く移動していた。

 

「デュナメス!」

 

[stinger ray.]

 

なのはから教えてもらったクロノの直射型魔法を使う。単発で出すなら相性が良いということで教えてもらったのだ。

 

思惑通り、ガジェットは破壊出来たが当たったのは別のガジェットだった。

 

「ちっ、追うぞ!」

 

[マスター、敵の増援です!]

 

ざっと数えて10体かよ!

 

足止めなんて喰ってられねえのに!!

 

「…ニール、私のシグなら追い付けるわ。道を作って。」

 

「大丈夫なのか?」

 

「今奪取出来るのは私たちだけ、このままじゃ逃げられてしまうわ。」

 

「…あまり無理はするなよ、ラーナ。」

 

「大丈夫よ、伊達に鍛えてないわ!」

 

今はそれで行くしかないな。

 

「分かった!デュナメス、カートリッジロード!!」

 

薬莢が銃身から飛び出す。

 

「そこを…」

 

[divine]

 

「どけぇ!」

 

[buster.]

 

深緑の砲撃が二体のガジェットを巻き込み、爆発する。

 

「行け、ラーナ!!」

 

「ええ、シグ!!」

 

[fahren form.]

 

 

ズウェーレシグから薬莢が飛び出して、ファーレンフォームへと変型する。

 

見た目は盾から細長いサーフボードのような形だ。

 

「ふっ!」

 

ラーナはズウェーレシグに乗り、爆発の煙へ入っていく。

 

それを確認した俺はカートリッジを消費してピストルフォームにデュナメスを変える。

 

急いで行かねえとな!

 

「…急がなきゃなんねえんだ、てめえら全員俺が相手にやってやる!」

 

無事でいてくれ、ラーナ…!

 

 

 

.

 

 

サーシェスside

 

今俺はガンダムになったまんま、レリックっつう結晶をぶんどるためにこんな狭い地下にいる。

 

でも、地下にしちゃ少し広くねえか?

 

まあいいや、広い方がやりやすいってもんだ。

 

「アリー兄、行かね―の?」

 

ガジェットなんたらをベッドがわりに寝転がりながら言っているセインの嬢ちゃん。

 

……何で嬢ちゃんって呼ばねえかって?

 

だってよお、大将の他にはほとんど美人の姉ちゃんかケツの青い嬢ちゃんばかりで同じじゃ混乱しちまうんだよ。

 

ま、クアットロの嬢ちゃんは嬢ちゃんと呼ばれるのは気に入らねえようだが。ていうか俺も気に入らねえ。

 

「へっ、すぐに終わっちゃあつまらねえからよお…敵が来るのをここで待ってんだ。」

 

「でも敵が来たらどうするの?それにまだレリック持ったガジェット戻ってきてないよ。」

 

「決まってんだろ…殺すんだよ。」

 

ていうかもう何人か殺してんだけどな。

 

時空なんたらの魔導士ってのは大したことねえなあ!

 

ちょっと加減してぶっ叩いてやったら命乞いしやがった。

 

勿論、あんまりうるせえからさっさと殺してやったさ。

 

…こんな弱えなんて期待外れだぜ。

 

「アリー兄…えげつな!」

 

早く強え奴来ねえかなってな。

 

ドオオオオオン(壁が爆発で破られる音)

 

破られた壁からガジェットなんたらが出てくる。

 

だがそこからさらに時空なんたらの魔導士らしい嬢ちゃんがサーフボードみたいなもんに乗って出てきた。

 

「!何、これ…。」

 

「ハッハッハッ、奴(やっこ)さんが来たぜ!」

 

どうやら気の強そうな嬢ちゃんみてえだな。

 

前の大将んとこで見たような髪の色だがそんなの気にしねえ!

 

 

 

 

 

今度は楽しませてくれよなあ!

 

 

 

.

 

 

ラーナside

 

私は移動専用の形態、ファーレンフォームのシグに乗ってガジェットを追っていく。

 

ファーレンフォームのシグはホバリングのように地上や水上を走れるように出来ている。

 

しかし、その間はバリア系の防御魔法しか使えないのがネックになっている。

 

「間に合うかな、シグ。」

 

[おそらく間に合います。…ですが、この先にガジェットと違う反応が二つあります。それもアンノウン。その地点で何人かの陸士部隊の魔導士の反応が消えているようです。]

 

その分だと非常に危険、ということになるわね。

 

「でも行かないといけないわ。」

 

[私はマスターを守るために造られたデバイスです。]

 

「そうね。…見つけた!」

 

ガジェットが見えたと思ったら、奴等は壁を壊して先に進んでしまった。

 

「逃がさない!加速して、シグ。」

 

[ja.]

 

煙の向こうへと突っ込み、広い地下通路に出る。

 

…鉄分の匂いがする。

 

この嫌な匂いは……血!?

 

「!何、これ…。」

 

目の前には陸士部隊の魔導士…だった人たちの死体が転がっていた。腕、腹、足とそれぞれ違う場所を切り裂かれていた。

 

「ハッハッハッ、奴さんが来たぜ!」

 

[マスター、気を付けて!]

 

右を向くと赤い…血の色の人型の機械らしきものが長い腕で大剣を両手に持ってこっちに振りかぶってきていた。

 

「はっ、シグ!」

 

[panzer hindernis.]

 

ファーレンフォームで唯一使える防御魔法でなんとか防ぐ。

 

「固えな…。けどな、こいつはどうだあ!」

 

大剣を上に持ち上げる赤い人型機体。

 

すると大剣が二つに割れるように稼動し、刃とは逆にあたる峰の部分から薬莢が飛び出す。

 

「カートリッジシステム!?」

 

そして大剣から赤い粒子が漏れだし、大剣の刃を覆う。

 

「壊れちまいな!」

 

大剣が横薙ぎに振られ、バリアに叩きつけられる。

 

バリアはガラスのように破壊されてしまった。

 

「そんな!」

 

それでも大剣は勢いが止まらず、私に左脇腹に直撃する。

 

「ああああああああ!」

 

そのまま壁に吹き飛ばされてしまう私。

 

今ので肋骨が折れちゃった。

 

なんて馬鹿力なの?

 

痛い。

 

[マスター、大丈夫ですか!?]

 

「うっぐう、シグ…シルトフォームに戻って。」

 

 

[…分かりました。 schild form.]

 

 

足に付いていたシグは元の盾に戻る。

 

 

 

.

 

 

「ちょいさー!」

 

その状態を好機と見たのか、赤い人型機体はまた大剣を持って私に襲いかかってきた。

 

「…シグ!」

 

[panzer schild.]

 

「また防御かよ、もうちょい攻撃してくんねえと張り合いがねえじゃねえか!!」

 

相手は何度も何度も大剣で防御魔法を斬り付ける。

 

「く…ううっ!」

 

こいつ、何て奴なの!

 

魔法を使わずにここまでやるなんて…。

 

だけど…

 

「やられっぱなしじゃないわ、シグ!」

 

[schild burst.]

 

「むっ!?」

 

パンツァーシルトを爆発させて反撃する。

 

これで倒れるとは思わないけど、とにかく態勢をまず建て直さないと!

 

「…クックックッ、やりゃあ出来るじゃねえか。ええ、時空なんたらの魔導士さんよ!」

 

そんな…傷一つ付いてない!

 

「けど、あまり長くやってると大将と姉ちゃんたちに怒られちまうんでな…さっさと死んでくれや、ファングゥ!!」

 

奴の腰の大きなサイドアーマーらしき部分から小型の獣の爪のような形状のビット兵器が出てくる。

 

ヤバい!

 

「シグ、ありったけのカートリッジを使うわよ!」

 

残っていたカートリッジを消費し、薬莢がたくさん床に転がる。

 

 

[panzer hindernis staerkung.]

 

 

あのファングというビットが全方位攻撃が出来ると踏んでパンツァーヒンダネススターカングでどうにか凌いで破壊するという対応を取る。

 

「そんなもんで防げると思ったら大間違いなんだよ!」

 

そう言って赤い機体はビットで私の周りを包囲して赤い魔力弾を全方位から乱射する。

 

「無駄よ、この防御魔法は鉄壁なんだから!」

 

「だったらこいつはどうだあ!!」

 

魔力弾の雨が止み、今度は小型機械一つ一つから魔力刃が形成される。

 

(!?いけない!)

 

この防御魔法は魔力刃には対応しきれない!

 

「貫かれちまいなあ!!」

 

小型機械はさっきまで破れなかったバリアに穴を開け、ついにはバリアを破壊してしまう。

 

そして…

 

 

 

 

そのまま

 

 

 

私の体を

 

 

 

貫いていく。

 

 

 

 

.

 

 

 

「痛っ、ぐっ、あっ、ぐはっ!!」

 

全ての小型機械が私を貫いたところで、魔力刃を消して離れていく。

 

体が前に倒れそう。

 

でも、まだ倒れたくない。

 

「ちっ、しぶてえ嬢ちゃんだぜ。」

 

顔が機械だからか、舌打ちしているところが分からない。

 

まだ私は倒れてない。

 

もう立てないぐらいに傷付いたはずなのに。

 

もう死んでもおかしくないのに。

 

痛くて、悔しくて、涙が溢れているのに。

 

何故かこの男を逃がしてはいけないと本能が告げている。

 

…男?彼は機械じゃない?

 

でも、そんなことはどうでもいい。

 

倒せなくても、レリックは奪えなくても…せめて一撃だけは!

 

「やあああああああ!!!」

 

盾を左手に持ち、奴に向かって殴り付ける。

 

頼む、これだけでも!

 

「ちっ、いい加減くたばれよお、嬢ちゃん!!」

 

だが、奴は難なくシグを持った左腕を大剣で押し退けて、そのまま私の左腕を切り離す。

 

シグのコアも一緒に両断されてしまった。

 

「ああああああああああああああああ!!!!」

 

あまりの痛みに私のものとは思えない絶叫をあげる。

 

[マ、マズダー…。]

 

シグのコアが真っ二つにされ、もはや管制人格も壊れてしまった。

 

……ごめんね、シグ。

 

「これで……あばよ、嬢ちゃん!」

 

次の瞬間、私は左胸から腰にかけて斬られて、先に斬られた魔導士たちの地に濡れた床に倒れた。

 

 

 

.

 

 

 

ニールside

 

―ラーナを先に行かせてからというもの、ガジェットが次々と増援に来ていた。

 

それでも、俺はなんとかほとんどのガジェットを倒した。

 

だが緊張を解いてしまい、背後に気が付かなかった。

 

[マスター、後ろです!]

 

「しまった!」

 

もう背後のガジェットは攻撃寸前、俺は咄嗟に防御に入ろうとする。

 

だが、ガジェットは攻撃するどころか真っ二つに分かれて爆発した。

 

爆発の向こうから人が現れる。

 

その女性はピンクのポニーテールで右手にデバイスらしき剣を持っていた。

 

「戦闘中に気を抜くとは何事だ!」

 

「いや、悪かった。あんた、なのはが言ってたシグナムか?……っと失礼しました、シグナム二等空尉。」

 

「いや、今は気にするな。…そうか、お前が高町が言っていたディランディだな。…相方はどうした?」

 

シグナムも話が分かるな。…じゃなくて、早くラーナの所へ行かねえと!

 

「相方…ラーナはレリックを発見し、先に行かせてしまいました。」

 

「!まずいぞ、さっき報告で先の地点に行った魔導士の反応が消えていると来ている。」

 

おい、ラーナが危ないじゃねえか!

 

「くそっ!」

 

「おい待て、ディランディ!!」

 

頼む、無事でいてくれ

 

 

 

 

 

ラーナ!!

 

 

 

 

 

俺とシグナムはラーナが向かったポイントへ向かっていた。

 

走りながらも段々と青ざめていく。

 

…近づくにつれ、少しずつ血の匂いがしてくるのだ。

 

「この嫌な匂い…まさか!」

 

シグナムも気付いたらしく、走る速度を上げていく。

 

俺の予感が当たってしまったかもしれない。

 

 

 

でも認めたくない。

 

 

 

そんなことはない。

 

 

 

頼む、生きて…生きていてくれ!

 

 

 

そう願いながら、現場に着いた。

 

 

 

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラーナより前にここにいた陸士部隊の魔導士たちらしき死体

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ二つに割れたズウェーレシグ

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

全身血塗れで血だまりをつくっているラーナが仰向けに倒れていた。

 

 

 

 

俺の願いが、叶うことはなかった……。

 

 

 

 

 

 

.

凄惨な光景にただ目を見開く俺とシグナム。

 

シグナムは悔しさで拳を強く握りしめる。

 

俺は慌ててラーナに近付いて彼女を抱き上げる。

 

夥しい血が俺のバリアジャケットに付くがそんなこと気にしてられない。

 

「あ、シグナム…さん、ニール……。」

 

気が付いたラーナの顔は青ざめている。

 

彼女の全身が何かに貫かれた痕があり、今でもそこから血が流れている。

 

これじゃ、助からねえ…。

 

「ラーナ……。」

 

俺は顔を青ざめながら、彼女の名前を呼ぶ。

 

「ご、めん、ね……レリック……取られちゃ、った。」

 

こんなにボロボロになっても言う彼女に涙が溢れてくる。

 

「そんなことはいい、早く治療を!」

 

分かっていても認められない俺はシグナムに対して言葉を荒げる。

 

それに対してシグナムは首を横に振るだけだった。

 

それがなお、彼女は助からないことを表す。

 

「ニール、最後になっちゃうから…聞いてくれる?」

 

そう言われて俺は溢れてくる涙を拭う。

 

「何だ?」

 

「貴方は罪を忘れてないけど、もう貴方は幸せになっても…いいんだよ?」

 

ラーナの血に濡れた手が俺の頬に触れる。

 

…ラーナはまさか、俺の気持ちに気付いていたのか?

 

「それと…私は…貴方のことが好きだったの。」

 

それはもう手遅れな愛の告白だった。

 

「もう…私は、ダメだけど…貴方は生きている。」

 

「ダメだなんて…言うなよ!」

 

涙がまだ流れてラーナの頬に落ちていく。

 

「私を困らせないで、ニール。……最後のお願い、聞いてくれる?」

 

もう彼女の時間がないことを悟った俺は黙って頷く。

 

「キス、してくれる?」

 

それは彼女の最初で最後の願いだった。

 

「…分かった。」

 

そう言って俺はラーナとの唇を交わした。

 

…苦い、苦い血の味がした。

 

そして、俺はラーナの唇から離れる。

 

「…本当はこんな形でキスはしたくなかったけど…仕方、ない、よね。」

 

「ラーナ!」

 

「ニール…幸せ…に、な、って…。」

 

彼女の右手が力無く地に降りていく。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

ラーナ・シールズは

 

 

 

 

 

 

この世を去った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラーナ、ラーナ……くっ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラーナアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また俺は、大事な人を、守ることが出来なかった……。

 

 

 

 

 

 

.




次回でエピローグとなります。
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