5人のシンデレラ達の話   作:krowknown

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第一話 都市伝説

 

 

 

 

 俺は途切れる意識の中で、これまでの人生を振り返っていた。まだ28しか生きていないこの人生はこんなところで終わるのか・・・・・・

 確かな死を感じ、恐怖がこころの中を埋め尽くすが、これもまたいいんじゃないかと受け入れている自分がいた。

 

 

 

 

 寒さに体を震わせながら、昨日久しぶりに買った洋服のロングコートのポケットに、グイッと手を押し込み歩き続ける。

 時刻は深夜1時。

 なぜこの時間に出かけているのかといえば、別に自分が真正のMという訳でもなくただ単純にお腹が空いたからである。冷蔵庫にはなにも食べられるものは無く、カップラーメンのストックも昨日の時点で切れていたことを仕事から帰宅して気づいたときは、まさに絶望の二文字だった。

 俺以外誰もいない家の中を一度見渡し、また悲しくなる。

 ネガティブになりそうな自分の心に喝を入れるために、半ば飛び出して家を出ていた。

 いつからこんな自分は弱くなってしまったのだろうか・・・・・・

 これまでに何度も自分にしている問いに、これまた同じ答えが返ってくる。

――3年前に妻を交通事故で亡くした時からだ

 高校卒業と同時に籍を入れ、六個上の彼女とお互い仕事に追われながらも充実した人生を送っていた。

 正に人生の幸せの絶頂期に、何の前触れもなくそれはやってきた。

 結婚記念日の日に、彼女は前の付き合ってた時のように待ち合わせをしたいと言いだした。午前中に頼んでいたプレゼントを受け取りにいき、待ち合わせの時間に昔よく二人で語った噴水の前で待っていたが、彼女は来なかった。

 待ち望んでいた携帯の着信は、救急隊の人からだった。

 後にわかったが、居眠り運転の車が、青信号で歩道を渡っている人たちを次々に轢いていったらしい。俺の手元に帰ってきたのは、彼女・・・・・・妻の遺骨とその日俺に渡すはずだったプレゼントのネクタイだった。

 そこから、約二年間の記憶はおぼろげでしか思いだせない。

 友人や家族の助けがあり、ようやく最近仕事も手に着くようになってきた。

 妻が死んだ時から思っていたことがある。

 明日に保証なんかは無いんだ。大切なものはふと気づくと無くなっている。

 嫌な気持ちを、振り切るように段々と歩く速さが上がっていく。もうすぐコンビニというところで、角を曲がると電灯が届かない暗い路地のところに、子供が蹲っているのが分かった。

 突然のことで足を止めてしまう。

 この時間に子供が、こんな人気のない所にいることに恐怖するが、今この時だけは俺の悲しみの感情の方が心を満たしていたのだろう。

 自然と子供の方に足をのばしていた。

 あと少しで子供のところにたどり着くところで、俺は関係なさそうだが面白いことを思いだしていた。先週の事、暇な休みをぼーっとネットを見ながら過ごしていたら、オカルトサイトに目が留まった。何の気なしに除くと都市伝説の話が書いてあり、その中の一つが今の自分の状況に似ているのだ。

 

『夜に一人で出歩くべからず。運悪く気に入られれば子供が目の前に現れ、別の世界へと連れ去ってしまうだろう』

 

 どこにでもありそうな話だが、投稿日が記載されておらず、閲覧数は1と俺だけだったのでよく覚えていた。

 違う世界というワード。もしそれが本当なら連れていってほしいぐらいだ。

 家族や友人には悪いが、今こうして生きている意味が今の俺には無くなっているのだから。その自分の気持ちが本当だと証明するように、得体の知れない子供の肩を優しく叩く。

 

「どうしたんだい?」

 

 なるべく怖がられないように優しく、そんな言葉をつぶやく。

 子供はびくりともせずに顔は膝に埋めたまま、予想以上に澄んだ声で返事をしてきた。

 

「悲しいんです。私は悲しい・・・・・・運命というものが。助けてください」

 

 声からして少女だろう。

 奇怪なセリフを吐くが、その言葉に嘘は無いように思えた。少女は本当に悲しそうに呟く。

 

「何があったかはわからないけど。相談ぐらいは聞いてあげれるよ?」

「・・・・・・助けてくれますか?」

「それは、聞いてみないとわからないけど。出来る範囲なら頑張ってみるよ」

「・・・・・・助けてくれますか?」

 

 少女は同じ言葉を言うだけだった。助けてあげる。この言葉こそが今目の前にいる少女を救ってあげる言葉なのだろう。

 

「わかったよ。おじさんが助けてあげるよ」

「ほんと!よかった!」

 

 そう言って顔をあげた少女の顔は、黒い霧で覆われているみたいに見えなかった。さすがに一歩後ずさり疑問を投げかけようとした瞬間には、俺は地に伏せていた。

 

「ごめんね。これもまた運命・・・・・・どうか救ってあげてください」

 

 薄れゆく意識の中、少女が先ほどとは違う、はっきりと感情がのった声が耳に入ってきた。

 

 




どうしても、アイドルマスターシンデレラガールズの作品を作りたいと思い書いてみました。
もしご縁がありましたら、これからもよろしくお願いいたします。

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