I S×GARO   作:navaho

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こちらでも掲載することにしました。これからの投稿で少し加筆するエピソードもあります。


第零話 「織斑一夏」

インフィニット・ストラトス。本来は宇宙での活動を目的として制作されたパワードスーツである。

その能力は、既存の兵器をはるかに凌駕する高いモノを持つ。しかし、この兵器には一点だけ奇妙な特徴がある。それは、

”ISは女性にしか起動できない”

世界の常識であるがここにそれを覆した例外が存在している。

 

 

 

 

 

 

ここにいる、織斑一夏という人物が例外である。女性しか扱うことのできない”IS”を世界で唯一動かすことのできる男性である。

「しっかし、厄介なことになったな一夏。どうするんだ?この様は」

ここに渋い声が響き渡った。それを発しているのは、金属製の狼の被りモノをした髑髏を模したエンブレムが付けられた腕輪である。

「………そうだね。私としても、これは、どうしていいものか、分からない」

応えたのは、一夏と言う人物。この物語の主人公である。この人物、男性というのは少しばかり声と口調がそれらしくない。

それもそのはず、この人物の外見は男というよりも見た目は完全に”女”である。

肩まで伸ばされた黒髪と男性とは思えないほどの色白の肌で肩幅は女性よりはあるが、男性としては頼りないほど華奢だ。

「ったくよ~~、分からないで済まされるか。お前の事で東西南北の”番犬所”が揉めているだぜ。あとお前から、この事が公になったら、つーか、誰だっ、あんなところにIS置いた馬鹿は!?」

腕輪は、何とも煮え切れない態度の一夏と訳の分らなかったあの時の状況に対して口調を荒げていた。一夏は、

「わかっているよ”ヴリル”。”掟”を大きく破ることになるのは、分かっている。その先は言わなくても大丈夫だから」

一夏は、そう言いつつ、ヴリルの言葉に応えた。

「”掟”も厄介だが、お前自身も厄介だぞ。注目され過ぎて、動きが取りにくい。今夜も”陰我”から、出てきたみたいだしな」

「わかっている。だけど、これは、さすがに私も鬱陶しく思う」

自室の窓から、自宅の様子を窺っている黒服の男がいる。他にも何人かが自分を監視しているのが分かる。連日連夜、IS関連のニュースは自分を報道している。さらには、どこの所属かわからない者もよく目にする。

「そうだな。まあ、どんなに優秀とはいえ、人間だからな。ごまかしは大丈夫だろう」

「それじゃ、アレを行うとしようか、その間は喋らないでくれよ”ヴリル”」

そう言いながら、一夏はあるモノを自室の机の中から取り出した。それは、拳ほどある干からびた巨大な眼球であった。

「いつみてもエグイもんだな、気色悪いったらありゃしない」

「うるさいぞ、ヴリル。喋らないでと言ったはずだけど」

そういう一夏の言葉にヴリルは、

「ああ、悪い、悪い。俺は、こういうのがどうも苦手でな」

意外と、繊細な神経な持ち主のようである。ヴリルに構わず、一夏は眼球に奇妙な模様を描き込み、赤い札を張り付けた。

「フン、貴様の存在そのものが、人によっては受け入れがたいのに、よく言えるモノだ」

そこに二人?とは違う第三者の声が響く。

「おい、こいつは、珍しいな。一夏、姐さんがいるぜ」

いつの間にか一夏の部屋の戸が開けられており、腕組をしたスーツの女性が立っていた。顔立ちは、一夏と瓜二つである。

「何が、姐さんだ。お前にそう言われる筋合いはない」

フンと鼻を鳴らし、一夏の姉 織斑千冬は忌々しそうにヴリルに視線を向け、打って変って憂いを帯びた視線を一夏に向けた。

「………一夏。分かっているが、お前は世界で唯一のISを起動させた”男”として、IS学園に行くことになった」

対する一夏は、干からびた眼球から千冬に視線を返す。一夏もどうしようもないのか、悟ったように頷いた。

「分かっています。ですが、これだけは、やめるつもりはありません」

「なあ、一夏。これは、一つの転機だ。もうここで辞めても、誰もお前を責める権利はない。私はここでやめてほしいんだ、そう言ってくれ!!!」

体当たりをするように、千冬は一夏の肩を掴み正面から向かう。自分とよく似ている、目つきの鋭さも……

「それになんだ、その目つきは、少し見ない間にまた、悪くなっているじゃないか。昔のお前はもっと、優しい目をしていたのに!!!!!!」

「いやいや、姐さん。あんたに似たんだよ」

「黙れ!!!!お前に言われたくはない!!!!それも、お前が!!!!一夏を!!!!!!!」

忌々しそうにヴリルに対して声を荒げる。一夏は

「姉さん。これは、ヴリルにそそのかされたわけでもない、自分で決めたことなんだ。それに、私は、もう”男”として通すしかないんでしょ」

千冬と向かい合う一夏は、瓜二つであり、まるで鏡を見ているようである。

「ああ、お前がISを起動させてしまったのは、お前の体質が原因だ。それに、ここまで広まってしまっては今さら、お前が”女”であることも言えまい」

「分かっているよ。私は、どちらでもないから……でも、姉さんの弟なんだよね」

「ああ、妹でもあるがな」

そう、一夏はどちらでもないのだ。彼、彼女でもあるIS”インターセックス”、半陰陽。

視線を移すと小振りではあるが女性特有のふくらみが一夏にはあった。

「……姉さん。あまり見ないでほしいな、見られると恥ずかしいんだ」

居心地が悪そうに千冬の視線から自身の胸を手で隠した。

「まったく、男のくせに胸を見られることが恥ずかしいとは……」

家族の様子に思わず苦笑がこぼれてしまう。一夏は、女よりも奥ゆかしいところがある。

「そうだぜ、一夏は結構、初心というか、恥ずかしがり屋でな」

「うるさい!!!!!お前は口を出すな!!!!!!」

ヴリルの言葉に千冬がまた声を荒げる。先ほどの一夏とはえらい違いである。

「まあ。いいじゃないかよ、姐さん。それよりも一夏、”ホラー”がそろそろ動きだす」

「……分かった。早く、目をごまかして行くよ。姉さん、話はまた後でもいいかな」

「待て一夏!!!!!!話は終わってはいないんだぞ!!!!!!!!」

千冬の言葉を半ばスルーしつつも、申し訳がなさそうに視線を向けて、一夏は背を向けた。手に取るのは、銀でできた弓矢とつつを。

「分かっているよ。でも、姉さん。これだけは私も譲れないんだ。今さら、全てを忘れて生きるほど、私は器用じゃないから」

そう言って、一夏は千冬から離れていく。

「待てッ!!!!!」

一夏を追う千冬だが、部屋を出たと同時にその姿はなくなった。

 

 

 

 

 

魔戒騎士

古よりホラーを狩る宿命を負った戦士達の総称。

神出鬼没の魔銃ホラーに対抗すべく、強靭な肉体と精神を併せ持った戦士である。

基本的には、男性のみがその資格を得られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この頃はまだ、あいつが自分の”身体”の事について、疑問もなく男と思っていたな」

一夏が出て行ったあと、千冬は普段はあまり引っ張り出さないアルバムを眺めていた。

アルバムにいる一夏は、まだあどけない表情をしていている。今よりも目元は穏やかだ。

古くは、小学生に入るか入らかないかの頃だ。この頃から、女の子のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬

花が好きで、私に積んできた花、種から咲かした花を良く見せてくれていた。

今も花が好きで、この家の庭には様々な種類の花があったのだが、IS学園への入学と寮生活が決まったがために殆どのモノがなくなっている。

意外と手間のかかるモノが多く、世話ができないのならばと一夏は知っている知人に渡している。

そういえば、レストランアギトにも提供したと言っていたな、後は、ディアボロとミレニアムアミーゴとか……

家の様子が変わってしまうのは寂しいが、これは仕方がないだろう。

無責任に世話ができないからといって枯らすよりも、世話をしてくれる誰かに託す方が、花のためにもなる。

それにしても、こんなにも優しい趣味を持っているあいつが何故、あのような戦いをせねばならんのだ。

何度いっても、戦いをやめるとはいわない。

まったくあいつは、どうしてああも頑固なんだ。まるで私の言う事を聞かない。

束の奴は、いっくんのあの頑固な所はちーちゃん似だね。とか言っていたが、自分に似ていると言われるだけで嫌になる。

一夏 私のかけがえのない家族であり、宝物。両親が私を捨て、只一人残された唯一の肉親。

その一夏は、人とは違う悩みを持って生まれたのだ。インターセックス、男でも女でもない身体と心を持って。

”この前、女の子に気持ち悪いって言われちゃった”

”どうしてだろう、好きってのがよくわからない”

あいつは、そのことをずっと悩んでいた。だからこそ、護りぬくと誓ったのに…

だが、あいつは私に黙って、魔戒騎士などというものになってしまった。

世の中の男にはISが嫌いな者がいるが、私はこの魔戒騎士というものが嫌いなのだ。

あのような戦いに一夏が夜の度に赴いていることで、私は夜すら嫌いになってしまった。

夜が来るたび、不安に駆られてしまう。この間の件で魔戒騎士であることは認めたが、魔戒騎士そのものに対しては嫌悪がある。

護ることに憧れてしまったのは、あるいみ自分のせいであることも分かっている。だが、どうすればいい・・・

私はもっと、自分の我を通すべきだったのだろうか?利己的な人間であればよかったのだろうか?他人の事など気に掛けなければよかったのか?

いや、そんな生き方は私にはできない。私という存在が一夏をあのように護る側へと駆り立ててしまったのだろうか?

たった一人の家族が、血なまぐさい、最も人間の邪悪で醜い心がさらけ出される戦いに赴くのは、許容ができない。

認めたとは言ったのだが、こうして事がある度に魔戒騎士とは別の生き方があると言っては、それをやめさせようとしているのは我ながら女々しい。

現に今しがた一夏に言っていた”IS インフィニット・ストラス”に至ってもそうだ。

世界で唯一ISを動かせる男。正確には中性で、男女どちらでもない。この事は、IS委員会には知られているが、ここまで話が大きくなってしまっては隠すしかないのが現状らしい。

いっそのこと、一夏が女でしたと言えればどれだけ楽だろうか……女にしては、少し空気が読めなさすぎだがな。かといって男にしては、繊細すぎるし、

現実にはそう言えないのが辛い。世界最強の女 織斑千冬ともあろうものが情けない。

戦いに赴くたびにあいつは、必ず戻る。信じて待っていてくれと言うのだ。私は信じるが、だが、それすら揺らぐものの不安を抱かずにはいられない。

あいつが戦う相手は、世界最強の兵器ISすら滅ぼすことのかなわない人知を超えた恐ろしいものであり、それは私達が生まれる大昔から夜の闇にいたというもの。

束の奴も、アレを見てから少しは大人になったな。それぐらいアレはインパクトがあった。

今夜も戦いが始まっている。私達が知ることのない闇の世界で……

あいつは、私の家族はそこにいる。

 

 

 

 

 

 

それにしても、外に居る監視はおそらくは政府のものだろうが、当の監視の対象が居なくなったのに未だに気がつかないのか?

一夏の部屋にあるあの気味の悪いものの影響でああなっていると思うと、背筋が寒くなるな。

 

 

 

 

 

 

 

光あるところに、漆黒の闇ありき。 古の時代より、人類は闇を恐れた。

 

しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、 人類は希望の光を得たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏は、町の外れにある古びた教会の中に居た。

「あのホラーは、確かアリマ。女の偶像に取り付く奴だ。近頃、多いな」

「最近は”女尊男卑”の世の中を肌で実感してるからね。そういう陰我が多いんだろう、ヴリル」

一夏の前には、不気味なオーラを醸し出すマリア像があった。その足元には、人が身につけていたであろう衣服が散乱していた。

”キサマッ……何をしに此処へ来た。私の餌になりに来たのか”

ブロンズのマリア像が醜悪な笑みを浮かべて、一夏に問いかける。一夏は気にせず

「お前を狩りに来た。来て早々悪いけど、この場から消えてもらうよ」

そういいながら、弓を構え、矢を放つ。

放たれた矢がマリア像の額を貫いたと同時に、マリアの顔がわれ、醜悪の悪魔がその姿を現す。

”オマエッ、魔戒法師だね。だけど、やられるわけにはいかない!!!!”

マリアの顔から現れた醜悪な悪魔が吼える。皮膚が反転し、中身がそのまま露になった異形 ホラー アリマ。

「ッ!!!!?!」

予想よりも早い動きに一夏は銀の弓を刃のようにして、迫る爪を弾き、距離を取る。

「一夏。下級ホラーには違いないが、侮るなよ。それなりに厄介だ」

「分かっている」

距離を置き、矢を再びアリマに放つ。放たれた矢は、空を切りアリマの膝の命中する。命中したと同時に、パンと弾ける音が響く。

”ほう……少しはやるようだな。だが、魔戒法師程度では、私を倒せんッ!!!!!”

力を解放し、アリマは姿をさらに変化させる。その体は、先ほどの奇怪なものから女性的なシルエットを持ち、衣のような触手を持った姿へと……

宙に浮き、ステンドガラスに浮かぶ黒いマリアの姿。顔は先ほどの醜悪な悪魔の顔から、整ってはいるが内から現れる邪気を放っていた。

”嗚呼嗚呼アアああ!!!!!!!!!”

腕は、布のようなものに変わり、それは一夏の眼前に迫るや否や、四つに割れ、鋭い斬撃を放つ。

”ハハハハハ、女ッ!!!!このまま切り刻まれてしまえ!!!!”

左右から、さらには頭上から来る攻撃に対して、一夏は対術と弓の弧の部分に備え付けられた刃で弾きながら、防ぐ。

「ったく、下級ホラーにしちゃあ、やるじゃねえか。どうだ、一夏」

「確かに厄介だ。だけど、こいつの攻略方法は見切った」

その宣言とともに弓を回転させ、頭上に光の輪を描くと同時に”蒼く輝く鎧”を召還し、それを纏う。

”キサマッ!!!!!女の癖に何故、鎧を纏うことができるッ!!!?!”

見た目完全に女である一夏は、

「悪いが、私は”どちら”でもない」

全身を覆う蒼く美しい造詣が施され、猛々しい狼のような顔に浮かぶは、緑の目。

一夏が召還した鎧は、想像を絶する力を装着者に与える。

力強く駆け出した一夏に対して、触手を放つ、四方、八方から来る攻撃を寸前のところで交わし、勢いに任せて本体に近づき、強烈な斬撃を放つ。

右側面アリマの貌を切り裂き、そのまま一気に両断する。

”ば、馬鹿なッ!!?!!女が何故、鎧を……”

未だに信じられないのか、アリマは消滅する間際まで一夏を女であると思っていた。

「言っているだろう、私はどちらでもないと。だからこそ、鎧を使うこともできるし、ISも動かせたんだよ」

アリアの消滅とともに教会の中に風が吹き荒れる。

「いつかは、今までになかったことが現実になる。俺にしちゃあ、ISの存在が信じられないもんだがね」

「そうだね、ISなんて創造の産物でしかなかったんだから、この10年間は信じられないことばかりだったんじゃないかな」

一夏は、荒れ果てた教会に背を向け、この場を後にした。

誰も居なくなった教会の跡に残されたものの中に、こんなものが……

”史上初 世界初 ISを起動させた男子 織斑 一夏”

の記事が……

顔写真は載っては居ないが、背を向けて自宅に向かう後姿だけが掲載されていた。

 

 

 

 

 

それから二ヵ月後、一夏はIS学園へと入学する。

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