I S×GARO   作:navaho

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今回はこちらまで・・・・・・


第拾伍話「黄金」

 

黄金騎士 牙狼

魔戒騎士の最高位である”牙狼”の称号を受け継ぐ者。狼を模した黄金の鎧を纏う。

黄金の鎧を纏う魔戒騎士は複数存在するが”牙狼”の称号を受け継ぐ者は一人である。

鎧が狼を模しているのは、その昔、ホラーに対し一匹で勇敢に戦いそれを倒したという

黄金の狼の言い伝えから来ている

牙狼”ガロ”の意味は、旧魔戒語で”希望”を意味する・・・・・・

 

 

 

 

日本より離れた異国の海岸沿いを一人の女性が歩いていた。質素なシスター服に身を包んだ彼女の名前は 篠ノ之  束。

ISを設計開発した天才科学者である。かつては、”天災”とも呼ばれていた。

彼女が向かう先に一人の男が海岸で剣の鍛錬を行っている。白いコートを纏い、剣を鮮やかに振るう姿に束は、感嘆の念を抱いた。

”束、箒、俺はお前たちの頃に、見たこともない怪物を切り裂く黄金の剣士を見た…あれほどの剣を俺は見たことがない”

父 柳韻が幼い自分達に話してくれた黄金の戦士。当時は興味がなかったが、今思えば不思議な縁が自分にはあったのだと束は思う。

 

 

 

 

 

 

 

一年前までの私は、酷く歪んでいたと思う。あの頃の私は、周りの事を考えずにただ自分の”夢”を受け入れてくれない世界が壊れればいいと思っていた。

私は他の子よりも多くの事を理解できたし、知ることもできた。小学生の頃に大学の入試問題を解き、昔の頭のいい科学者の理論を新しく解釈さえしてみせた。

回りの大人達は私に勝手な期待をするように”天才”と囃し立てる。血の繋がりもない赤の他人が妙に馴れ馴れしかったのがすごく不快だったし、血の繋がった父さんと母さんが私について戸惑っていたこともだ……

勝手に期待した人は、私の性格に”問題”があると分かると手のひらを返したように去っていった。

私に身勝手な期待を抱き、勝手に失望して行った人達が凄くいやだった……

そもそも私に関係のない奴が私の事を分かっていると言わんばかりの態度が……何もかもが……そして”夢”を否定することが何よりも許せなかった……

チーちゃんと本格的に出会ったのもそんな時だった……

最初は、父さんの道場に来ている単なる顔見知りだけの関係なのに、ある日、両親が失踪してしまった事と少女の身で社会という冷たく厳しい面に遭い、私と同じように世界を嫌っていた……

そんな時に私は”IS”を作り上げた。これは、いつか”夢”見た空よりも高いところへ飛ぶことへの憧れからだった……

”嫌なこの世界から私を連れて行って欲しい事を願って”

だけど誰も”IS”を受け入れてくれなかった。当然かもしれない、この世界は、酷く乾いていて冷たい……皆、目先の利益だけを求めていたのだから・・・・・・・・・

”おい、束。こいつを纏って剣を握ったら、私に敵は居るか?”

ISに目をつけたのはチーちゃんだった。その言葉に私の中の何かが切れた…

”そうだね~~♪、チーちゃん。絶対に誰も私達に勝てないよ。だって、ISは……”

宇宙への進出を目的としていたのだ。絶対防御という名のエネルギーシールドはあらゆる物をから操縦者を護るようにしている。

ミサイルも細菌兵器も核による放射能も操縦者を傷つけることは敵わないのだ。武器としての”IS”に勝るものなどこの世界に存在しない。

それから私達は夢中になってシナリオを練った。”分からないのならわからせてやれ”と……お前達が”私達”を傷つけるのなら、やれる前にやり返すんだと……

”チーちゃん、この子”IS”の名前どうする?”

”こいつの名前は 白騎士だ”

その名はチーちゃんのたった一人の家族を護ることを願って……男でも女でもない心と身体をもって生まれた”家族”を護るために……

そこで考えたのは、チーちゃんに辛い思いをさせたこの国を驚かせてやるために世界中のミサイル基地をハッキングして、放ってやった……

放ったミサイルをISを纏ったチーちゃんが撃破する。最高のシナリオだった……普段、偉そうにしている”あいつら”の驚きようは思わず笑ってしまった。

全てが終わった後に私達は互いに笑いあった。これで世界は変わると……

私は、この世界が楽しくなることを……チーちゃんは、これで誰も家族を傷つけられることはないと……

今、思えば私達は”力”を持ちすぎていた。それを振るうことへの責任などこれっぽちも考えていなかったのだから……

子供の考えた”ご都合主義の物語”のように”世界”が変わることなんてあり得なかったのだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから私達は気ままに自分の変えた世界を生きてきた。一年前に自分の変えた世界が酷く歪んだモノだったことに私は”絶望”を見てしまった……

その時に私は、彼と出会った……

”もう私なんて!!!!最初からいなかった方が!!!!良かったよ!!!!!”

”馬鹿な事を言うな!!!!!居なくなって当然の人間など居ない!!!!!”

彼は、私を叱咤してくれた。何よりも生きることを辞めようとしている私を……

知らず知らずに自分の周りを”闇”に変えてしまった私は、このまま居なくなってしまえば良いと思ってしまった。

”一つの例え話だ……ある男が居た。その男は、自身の弱さを憎み、強さを欲した。そして闇に身を堕とし、暗黒騎士となった。

それからの男はおぞましい所業に手を染め、様々な人達を傷つけていった…最期に闇に裏切られ、命を奪われることを知らずに……”

自身に関係のない人の話なんて聞く事はなかったのに、何故かこの人の話は胸によく響く………

”闇に裏切られた男は、絶望の果てに後悔した。だけど、男は”光”を見た。強大な闇を切り裂く”金色の光を”…”光”を見た男は、もう一度やり直すことを誓った…”

”……………”

”その男の肉体は滅んだが、魂は新たな魔戒騎士として転生し、今は……黄金騎士として…………戦い続けているという……”

いつの間にか、私を喰らおうとしていたホラーが直ぐ近くまで来ていた。彼は、ホラーに対して鋭い視線を向け、

”織斑一夏!!!ここは、僕に任せろ!!!!君は、冴島鋼牙と共に奴らを討て!!!!この場はこのバラゴが引き受けた!!!!”

近くまでいっくんが来ていたんだ……彼は、剣を掲げたと同時に眩い光に包まれたと同時に”黄金の鎧”に包まれた……

真紅の目と白銀の鬣を持った黄金の狼……現れた巨大なホラーに対して一歩も引かずに彼は戦い抜いた……

昔見たチーちゃんの剣よりも力強く、決して屈しない意思を持って闇に立ち向かう光は、何よりも眩く見えた……

自分よりも大きなホラーの攻撃を剣で往なしたと同時に斬りつけ、拳を当て吹き飛ばす。

反撃に巨大な腕を力任せに振るうが、剣が光と同時に大きく変化したと同時に高く飛び上がり、ホラーを一刀両断した……

 

 

 

 

 

父が見た”黄金騎士”のうちの一人が、今自分の傍で護っていてくれることなど誰が予想できただろうかと……

「バラゴ!!!束さんと一緒にお昼なんてどうですか~!!!」

バスケットを片手に束は、鍛錬を行うバラゴに呼びかけた。

「束か、ちょうど鍛錬を終えようかと思っていたんだ」

笑みを浮かべてバラゴは手を振る彼女の元へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

この一年で色々遭ったけど、今の私はあの頃の私が見たらどう思うかな?

いっ君からの連絡だと色々と大変だけど、大丈夫だよね。チーちゃんも本当の意味で認めてもいいんじゃないかな。いっ君の事……

この時期だとそろそろ、”タッグトーナメント”の時期が近いよね。よし、いっ君の所属は一応は束さんになっているから、しっかり顔を出しておかないと駄目だよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元老院

元老院で最も権威ある神官 グレスの間でグレスと黄金騎士 牙狼 冴島鋼牙が向き合っていた

”冴島鋼牙。新たな指令です……今度のホラーは……恐ろしく手強いモノが現れました”

グレスの言葉に対して魔導輪 ザルバが口を開く。

「手強いモノ?何だ…まさか、”使徒”ホラーでも現れたか」

「ザルバ、口が過ぎるぞ」

いつものように口の悪いザルバに対し、鋼牙が苦言する。いつもの仏頂面は相変わらずである。

「ったく、鋼牙。一夏なら、笑って嗜めてくれるぞ」

「話をそらすな。まったく、場をわきまえろ」

”構いませんよ、冴島鋼牙。今回の件は、織斑一夏も関わるかもしれない事態になるやも知れません”

「まさか、ISに直接、陰我が絡んだと……」

”まだ関わってはいません。何れ、ホラー ムドーはIS学園に現れるでしょう”

「ムドーだとっ!?!まさか、奴が現れたのか!?」

ザルバが驚きの声を上げた。

”はい……先ほどのザルバの言葉通りです。ムドーは、使徒ホラーと同格のホラーです”

グレスの言葉に鋼牙は、表情を引き締め

「………ムドーは、何を求めてIS学園に………」

”アレが求めているのは”争いによる陰我”です。ことにあの学園は……”

「なるほど各国の陰我があそこには集中しているな」

「それに今は、一夏がその陰我の中心に近い場所に居る。これにムドーによる陰我が近づくのか」

「これは、一夏に負担を掛ける訳には行かないな。そうすると、あいつらが五月蝿いぜ、鋼牙」

ザルバは、最も一夏を気にかけているであろう二人を思いながら鋼牙に声を掛ける。

「ああ……ホラーが現れるのならば、俺はそれを斬るのみだ」

「ったく、相変わらず固い奴だぜ。お前は……」

魔戒騎士としてストイックな鋼牙に対してザルバは僅かに苦笑するのだった……

「それと気を引き締めろよ。奴の”陰我”は……魔戒騎士にとっても恐ろしく厄介な物だからな……それと・・・・・・」

一息入れてザルバは

「アイツの趣味の悪さは、胸くそが悪い」

 

 

 

 

 

 

 

日本 IS学園 

 

IS実習の授業の準備のため、千冬は職員用のロッカー室で着替えていた。

スーツを脱ぎ、訓練用のISスーツを着用しその上に白いジャージを着る。

いつものように大胆不敵な表情とは言えず、その表情は僅かに陰が差していた。

 

 

 

 

 

 

千冬

まさか……ボーデヴィッヒがこっちへ来るとは……

いや、認めたくはないがある意味当然かもしれない。世界初の男性のIS操縦者を各国が求めている現状を考えれば、それは当然のことだ。

何故、一夏にあそこまで敵意を向けるのだ?

一夏が何をしたというのだ?まさかと思うが、私が第二回のモンド・グロッソで優勝できなかった”原因”として批難しているとでもいうのか……

アレは、一夏に責任はない。あるのは私だ。驕り高ぶった私の傲慢があの子を危険な目に遭わせてしまった。

それなのに、何故一夏が責められる必要がある?この事は、ボーデヴィッヒにも伝えたはずなのに……

ボーデヴィッヒは、私が教えたことを理解してくれたはずだ……

「相変わらず暢気な考えね。千冬さん」

いつの間にか腕を組んで入り口の前に立っている凰が少し目を吊り上げて私を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凰。ここは、職員以外立ち入りは禁止だぞ。早くアリーナへ行け」

「都合よくはぐらかさないでよ、千冬さん。あなたは一夏にどれだけ重荷を背負わせれば気が済むの?」

「ッ……凰。言っていい事と悪いことがある事ぐらいは知っているだろうな……」

鈴の言葉に反応するかのように千冬の目に憤怒の色が浮かぶ。一般人なら確実に怯えてしまう殺気であったが、鈴は落ち着いた口調で内心少しだけ、びくついたのは彼女だけの秘密である。

「言わなければならないことと言ってはならないことは知っているけど、これは言わなければならないことだわ」

鈴も強い意思の通った目で千冬を見据える。

「ならば言わなくても分かるだろう。私がどんな思いで一夏を護ってきたか、その私が一夏を苦しめることは……」

言い切る前に言葉が切れてしまった。言うまでもなく数週間前に零に言われたことが脳裏によぎったのだ。

「分かっているわよ。一夏にとってもあなたが大切な人だってことぐらいは……だから、私は何も言わない」

「だったら、何を言うつもりだったのだ?」

「言いたかったのは、あのドイツの転校生の事だけど……どう思っていたの?」

「ああ、あいつはドイツで私がISで教導した教え子だ。中々飲み込みが良かったな」

当時は、”落ちこぼれ”と陰口を叩かれていたが、自分の指導でトップに返り咲いたところは教える側から見ても誇らしかった。

「………そう、当たり前よね。千冬さんにとってのボーデヴィッヒさんは……」

「だから何だ、ボーデヴィッヒが一夏に敵対することに関係あるのか?」

何か分かったかのような鈴に対して千冬は問い掛ける。

「そうね……強いて言うなら、千冬さんがボーデヴィッヒさんに不用意に近づきすぎたって言っておくわ」

鈴は背を向けて更衣室を後にする。

「待てっ!!凰!!!何が言いたいっ!!!!」

肩を掴み、鈴を引き止めるが

「………ボーデヴィッヒさんが千冬さんの事をどう思っているのか考えてみて……」

千冬の手を払い鈴は、千冬の前から背を向けて行った。

「だから、何だというのだ?」

訳が分からないといった表情で千冬は困惑していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、一夏は着替えを終わらせて更衣室から出ようとした時、シャルルと鉢合わせになっていた。

「いっ、一夏っ!?!」

まるであってはならない何かに出会ってしまったかのように怯えた表情で一夏を見ていた。

「………シャルル。私は先に行くが構わないだろうか?」

「いっいいよ!!!待たなくても!!!!僕は、大丈夫だし」

逃げるように更衣室に入っていったシャルルに対して、一夏は特に感じるものがなかったのか、そのまま背を向けてその場を後にする。

「ったく、あの小娘。一夏はホラーじゃねえんだぞ」

「………ヴリル。魔戒騎士とホラーの関わりは切っても切れない関係だから、私達が受け入れられないのは仕方がないよ」

「そうかもな。だがな、お前は一応、ここの学生だぞ。ぼっちになるのは、流石にどうかと思うぞ」

一夏に対して苦言するヴリルであるが、当の一夏は

「………少し前の私なら別に構わないさと言うところかも知れない。でも……今の私には……」

一夏が視線を向けるとIS用のスーツを纏ったセシリアの姿があった。

「一夏さん。アリーナまでご一緒にいかがでしょうか」

笑みを浮かべるセシリアに対して一夏も笑みを返して

「ああ、お願いするよ。セシリア」

途中で鈴と合流し、一夏を中心に三人はアリーナへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業では専用機持ちを中心にそれぞれの班に分かれることになり、一夏とシャルルの二手に分かれそうになったのをみて千冬が叱咤するといった光景が見られていた。

「馬鹿者!!!出席番号順に各グループリーダーに並べ!!!順番はさっき行った通りだ。次にもたつくようであれば今日はISを背負ってグランド100週させるからな!!!」

授業中、一夏はラウラから睨まれていたが全く気にすることなく平然としていたことに彼女が更に苛立ったのは誰も知る由は無かった………

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ

クッ、教官の身内なだけにそれなりの”実力”があるというのか?それなのに、何故、教官の顔に泥を塗るような真似をした・・・・・・

私は絶対に認めないぞ!!!お前があの人と同じ姿をし、そばにいることなど・・・・・・

あの人は私と同じく戦うためにある存在だ。だから、あのような笑みなど浮かべてはいけない……絶対に!!!!!

”これがドイツの花か。これを持ち帰ったら一夏もきっと喜ぶだろうな”

私の嫌いなものに花がある。理由は弱く、少しの力で散らせてしまうから・・・・・・

そんな弱い物に関心を寄せる軟弱者のために栄光を捨てることなんて……だからこそ、お前を必ず排除する!!!!織斑一夏!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

日は過ぎ、日曜日 シャルルは一人ある場所で佇んでいた。

そこは、十数日前に観月 カオルが”個展”を開いていた場所だった。いずれ行こうかと思っていたのだが、結局は行けずに今日になってしまったのだ。

「…………カオルさん。もう一度、話がしたかったな」

必要がなくなった”絵”に未だに執着する自身の未練がましさに自嘲しながら、シャルルはその場を後にしようと去ろうとしていた時だった。

「あれっ?デュノア君?」

後ろからシャルルに声を掛けてきたのは、カオルであった。

「か、カオルさん。ど、どうして、ここに……もう”個展”は終わったんじゃ………」

「ちょっと、近くで”絵本”の打ち合わせをしてたの。デュノア君は?」

人を安心させる笑みで応えるカオルに対してシャルルは

「僕は、カオルさんにもう一度会いたくて………」

「私もデュノア君の絵を見てみたかったし、ちょうどいいから、一緒に来ない?」

「えっ!?!良いんですか!?!」

カオルからの思わぬ誘いにシャルルは表情を明るくした。”絵”が描けることにシャルルの気持ちは明るくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は、カオルにとって最も馴染み深い場所 冴島邸の前に来ていた。

「すごい、お屋敷。ここ、カオルさんのお屋敷……」

「私のじゃなくて、鋼牙の家だけど……」

実際はカオルもよく寝泊りをするため、実質カオルの家のような物でもあるが……

入り口をくぐり、玄関の前に来た時に、扉の向こうから青いコートを着た人物が現れた。

現れた人物に対して、シャルルは自身の表情が強張るのを感じた。

(な、何で、一夏がここに居るの!?)

「あ、一夏君も着てたんだ」

内心、一夏に対して恐れを感じているシャルルと違い、カオルは親しい者に会ったかのようにフレンドリーに話すのだった。

カオルと一夏は知り合いなのは、既にシャルルも知っていたことであったが、此処のところIS以上に関わりあいたくもない”ホラー”関係のことで一夏を避けていたために忘れていたのだ。

「はい。レオさんと待ち合わせで魔導具を取りに来たんです」

一夏の手には、”風車に似た魔導具”が握られていた。あるホラーを倒すためにレオから”魔導具”を受け取るために冴島邸に来ていたのだ。

「あれっ?もう行くの?少しゆっくりしていけばいいのに……」

「そうしたいのは、やまやまですが、私にも”務め”がありますので」

「そうか、一夏君も鋼牙と同じ魔戒騎士なんだよね。じゃあ、いってらっしゃい」

少し驚いたように一夏は、目を少し丸くした後に笑みを浮かべ、

「はい。それでは行ってきます」

頭を下げて一夏は冴島邸を後にするのだった。その横でシャルルは、相変わらずの一夏に対して怯えを感じていた。

一夏が去った後にカオルは、シャルルに

「あれ、デュノア君。確かIS学園で一夏君と同じクラスだったよね。もしかして、今喧嘩してるの?」

「ち、違います!!!だって、一夏って怖い物に関わっているんでしょ!!!!関わらない方が……」

「う~~~ん。そういわれてもね。私もちょっと前まで泣きたくなるくらい怖い目にあったから……一夏君とはそれが縁で知り合ったんだけどね」

一夏から聞いたホラーに対しての脅威について、さらに自身が遭遇した体験も踏まえてシャルルは関わりを持ちたくなかったのだ。

目の前で最強の兵器とされる”IS”が手も足も出せずに敗北してしまう光景は、信じたくなかったのだ。

「そんな!!!じゃあ、もっと怖い目にこれからも合うかも知れないのに!!!!」

「そうだね、でも私は後悔はしていないかな。あの時、鋼牙に出会わなければ今の私は居ないしね」

一片の疑いもなくカオルはシャルルの知らない誰かを信じていた。かつて恐ろしい目に遭ったのにどうして、そんなにも穏やかに語ることが出来るのかと……

「ちょっとした話になるんだけど、画家を目指す一人の少女が居て初めての展覧会の時、不運にもホラーと出会ってしまったの。そこに颯爽と現れた黄金の騎士が少女を救った。

だけど少女はホラーの返り血を浴びてしまったわ。ホラーの返り血を浴びた物は百日後に地獄の苦しみを味わいながら死に至る。だから、直ぐに斬らなければならない。

それが魔戒騎士の掟……だけど、彼は少女を斬らなかった。彼は少女を見守るうちに彼女を命がけで守り抜く決意を固めて、ある森でホラーの返り血の呪いを浄化する実を手に入れ、命と心を救ったの」

”その間には色々な苦難はあったけどね”と付け加えてさらにカオルは言葉を続ける。

「その後に、さらに恐ろしい苦難が二人を襲った。二人はその苦難を乗り越え、互いの進む道は違っても互いに思い続けてね」

シャルルは信じられないといった表情でカオルを見ていた。何かに気づいたようにカオルは、冴島邸の入り口に視線を向ける。

そこには、白いコートを纏った男 冴島 鋼牙がこちらに向かって近づいてきた。

無言のままカオルに視線を向ける鋼牙に対して、彼女は穏やかに笑みを浮かべた……

「鋼牙、さっき一夏君が着たんだけど……会わなかった?」

「着ていたのか……」

「入れ違いだな。鋼牙……」

ザルバが少し残念そうに呟いた。そんな三人に対し、シャルルは無言のままこの場を後にし、IS学園へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルルがカオルと出会う数時間ほど前に遡る。

IS学園の剣道場で篠乃之箒は、一人竹刀を握り素振りを行っていた。

「はっ、はっ、はっ、はっ、」

彼女の視線は真っ直ぐに自身が目標とする剣の師である父 柳韻と幼馴染である一夏の姿があった。

素振りを終え、箒は部屋に戻った後に一夏が居る部屋に向かった。その手には、つい最近手に入れた”植物園”のチケットが握られていた。

今の時期、世界中の蘭を展示するイベントを行っている。花が好きな幼馴染ならきっと喜んで誘いに応じてくれると思った。部屋をノックし、

「篠ノ之 箒ですが、一夏は居ますか……」

扉が開き、現れたのは一夏の姉である千冬だった。

「千冬さん………一夏は……」

千冬の顔にほんの少し陰が差した。

「篠ノ之 、今日一夏は用事でIS学園を出ている。おそらく、明日の朝までは戻らないだろう」

教師の顔で箒に伝える千冬に対し、知らず知らずに”チケット”を握った手に力を込めた。

「一夏は何処に行ったんですか?千冬さん」

「………お前には、言えん。前にも言ったが、一夏に深く踏み込むな、あの子が抱えている”闇”には関わっては駄目だ」

千冬は、そのまま扉を閉めた。寮長室の前には一人佇む箒の姿があった。

「何でですか……一夏に何があったというのですか……千冬さん。私だって、何かの力になれる……それなのに、深く関わるなとは………」

箒は顔を俯かせてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凰が転校して来る前の夜からずっと気になっていた。一夏が私の知らない何かを行っていることは……

それが何なのかは分からなかった。一夏が私をそこに関わらせようとはしなかったからだ。

私の知らない怖い目をした一夏。その一夏の抱えている闇を知るなという千冬さん。

”アタシ程度にびびるようじゃ、一夏の傍には居られないし近づけないわよ。半端な想いなら、やめたほうがましよ”

凰のあの言葉と私を上回る”力”。最も一夏に近い場所に居る。私だって一夏の傍に居たい。できれば力になりたい。

そんな事を考えていると私は寮を出て行く凰の後姿を見つけた……

アイツは休日になると必ず学園の外に出て行く。どういう用事があるかは分からないが………

それを知れば、一夏の抱えている”闇”が何たるか、ハッキリするかもしれない。

私は外出許可を取らずに凰を追い、IS学園から飛び出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴は烈花がいるいつもの場所へ向かったのだが、普段、自分を厳しく指導してくれる師匠の姿は無く、居たのは人の良さそうな青年シグトだった。

「あれ?シグト、烈花さんは?」

「鈴、そういう呼び方していると烈花にまた拳骨だぞ」

苦笑しながら、シグトは鈴に言葉を返した。年長者には敬称をつけるようにと普段から言われているが、シグトはその辺の呼び方は気にしていないようだ。

「烈花なら、急な指令で昨日から出ている。帰るのは二日後だといっていたぞ」

「じゃあ、道場の鍵借り手も良い?」

「いいぞ、俺は俺でやることがあるから……」

道場の鍵を手渡し、鈴は道場へと足を進めるのだった。シグトの手には番犬所の指令書が握られていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

箒は、鈴を見失い街をさ迷っていた。

途中で鈴に気がつかれ、適当に撒かれてしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

どこにいるのだ。凰……お前もお前で何をしている?

私がつけていた事に気づいていたというのか?それならば、もう私にできることは無いではないか!!!

今日は一夏も一夏で何処かに行っている。時々二人が学園を夜な夜な抜け出している噂を聞くが、何をしているんだ?

どうして、私に何も言ってくれない………

私だって幼馴染だ。一夏のことをずっと思っていたのに………どうして、察してくれないんだ。この気持ちを……

 

 

 

 

 

 

学園に戻らなければならない時間を過ぎても箒は想い人の事を知っているであろう少女を探し続ける。

そんな時だった。見知った顔の少年とすれ違ったのは……

「デュノアっ!!?!」

 

 

 

 

 

 

シャルル

何なんだよ……カオルさん。そんな目に遭ったのに……どうして、魔戒騎士と一緒に居ようって思うの?

分からない、僕はただ嫌なモノに関わりたくないのに……好きなことをやって行きたいだけなのに………

何でこんな目に合わなくちゃいけないの………関わろうとするオルコットさんや鈴の気持ちのよくわからない……

これから怖い目に遭うかも知れないのに……………どうして…………

怖いよ……どうして、僕ばっかりが………そうだよね、カオルさんのお父さんは、画家だから……好きなことがいつでも出来たから……

血縁上の父親のアイツを親に持つ僕は…………好きなことを否定されて………

「デュノアっ!!?!」

僕を呼ぶ声がした。僕を呼んだのは、クラスメイトの篠ノ之 博士の妹の篠乃之箒だった……

そう僕の人生をめちゃくちゃにして、好きな物を奪った”IS”の生みの親の身内だった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュノア。知っていたら教えて欲しいんだが、一夏か、凰のどちらかを見なかったか?」

もし見かけていたらという淡い期待を抱いて箒はシャルルに問い掛ける。

二人の名前を聞いたと同時にシャルルの表情が強張った。

「し、知らないよ!!!!知ってても関わりあいたくないよ!!!!」

「何っ!?!二人を見たのかっ!?!どこだ、何処で見たんだ!!?!」

シャルルの細い肩を掴み、箒は勢いよく問う。

「だから、関わりあいたくないって言っているじゃないか!!!篠ノ之 さんにだって!!!!」

そのまま箒を押すようにシャルルは、彼女を突き飛ばして駆け出す。

「ま、待て!!!教えてくれ!!!!私は、知りたいんだ!!!!一夏が何をしているのかを!!!!」

シャルルは近くに止まっていたタクシーを捕まえ、そのまま乗り込んで箒から離れていった。

顔を俯かせてシャルルは疲れた吐息をついた………

 

 

 

 

 

 

 

何かを知っていたであろうシャルルに逃げられ箒は途方にくれていた。無断で学園を抜け出したのも心痛いが何よりも自分の知らない事を行っている幼馴染のことが分からないのが何よりも悔しかった。

腰を落ち着けるために箒は近くのベンチに座り、人の波に視線をやった。そこへ一人の少女が血相を変えて逃げている姿が見えた。

直ぐにそれを追う者の姿が箒の目に映りこんだ。追う者は、先ほど自分が探していた凰鈴音だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は路地裏に逃げ込み、道を探す。逃げ道を塞ぐように追ってきた鈴、シグトが立ちふさがったのだ。

「ちょっと……何なのよ!!!私が何をしたって言うの!!!!」

「………何でもないわよ。アンタの息の根を止めるだけだから……」

喚く少女に対して、鈴は冷たく言葉を返す。

「泣くんじゃねえよ」

尻餅を付き、泣きじゃくる少女のことなど意に介さずに鈴とシグトは目の前の少女の一挙一動に注目し、警戒する。

故に背後に来ていた目撃者に気がつかなかった……

「おいっ!!!お前たち!!!!!何をしているんだ!!!!!!」

泣き崩れている少女に対して冷淡な態度で今にも危害を加えそうにしている鈴と知らない青年に対して箒は思わず飛び出してしまった。

「篠ノ之 さんっ、直ぐにそこからどいて……どかないと……」

「た、助けて…お姉ちゃん、助けて……」

背後で泣き崩れている少女の声に対して箒は護らねばという気持ちが芽生えるが……

「誰がお前なんか助けるかよ」

シグトの言葉に呼応するように鈴も

「そういうこと……そいつを生かしておくわけには行かないわ」

「ふざけるな!!!見損なったぞ!!!!凰!!!!!まさか、一夏もお前のような下郎に成り下がったのか!!!!!!」

二人の態度に箒は思わず叫んでしまった。そんな箒に対して少女が後ろから縋りつく……

「お姉ちゃん……優しいね。私なんかを助けてくれるなんて……篠ノ之 博士見たいに……」

「?………あの人が優しい……」

意外な人物の名が出てきて箒は振り返ってしまった。

「うん、だって……私たちにとって住みやすい世界にしてくれたんだもの」

その瞬間、少女の顔が人間の物から悪魔を思わせるオゾマシイモノへ変化したのだ。

「なっ!?!何なんだ!!!!お前はっ!!!!!!!」

「退いて!!!!!」

箒を押しのけ、鈴が強力な拳をホラーに向かって振るう。振るわれた拳に対して、少女、いや、ホラーも応戦する。

法力を込めた拳で胸部を当て、後方へと吹き飛ばす。僅かに壁がめり込むが、ホラーは平然とし首の骨を鳴らしながら歩み寄る。

「お姉ちゃん……私たちの約束で助けてあげるね。だけど、この人達は駄目……」

箒に対して、元の少女の顔に変化させ笑いかけ、鈴たちに対しては、悪魔の顔を向ける。

「シグト!!!」

「おおっ!!!!」

鈴とシグトは持ってきた号竜を展開し、ホラーを迎え撃つ。号竜に対して、ホラーもその手を強力な爪を持ったものに変化させて、二体の号竜を迎え撃つ。

「ヴォルト!!!!」

大型の号竜が駆け出し、その牙でホラーを攻撃する。カウンターでホラーはその口を無理やり押さえ込み、ねじる様にしてヴォルトを右側面に投げ飛ばした。

シグトの号竜も炎を吐いて攻撃を行うが、ホラーが纏っている衣服を焼くだけで身体にダメージはなかった。

「くそっ!!!うおおおおおおおおっ!!!!」

大筆を構えてシグトは、ホラーに術を掛けるが、飛び上がったと同時に回避され、着地したと同時にシグトの前に現れ、その頬を弾く。

頬を弾かれ、そのままシグトは倒れてしまった。普通の人なら一撃で首を折られてしまう。だが、シグトは魔戒法師故にその首が折られることはなかった………

「こ、こいつ!?!」

普通なら号竜二匹の戦力であれば倒せるはずなのだが、ホラーが予想以上に強かった。

「アハハハハハハハハハ!!!!魔戒法師に最前線を任せるなんて!!!ここに魔戒騎士が居ないのは、この世界が私たちにとって本当に住みやすいから!!!!!」

(そうね、半人前のアタシにだって分かってる。一晩に出てくるホラーがあまりにも多すぎるのよ……)

ここに師である烈花が居るのならば、良かったのだが、対して強くない自分とシグトではこのホラーは荷が重過ぎる。

(一夏も一夏で、長丁場になるって言ってたし……篠乃之さんだけは絶対に守り抜かないと……)

鈴の思いを嘲笑うようにホラーは人の姿から、猫を思わせる巨大な体躯へ姿を変える。その貌にはルビーを思わせる赤い石が埋め込まれていた。

このホラーの名は、カーバンクル。

 

 

 

 

 

 

 

箒は信じられないようにこの光景を見ていた。”何なんだ?これは……夢なのか”と……

夢ではなく現実である。ここで自分も立ち上がらねばと思うが、彼女には何もできなかった……

本能で分かっている。自分に出来ることはこの場にはないと……

目の前で戦っている二人の邪魔をしてしまったのは、自分であることが腹がたつ。

”やめろ”と叫び続ける本能に逆らい、自分も戦おうと行こうとするが、

「やめておけ。アレを斬るのは俺の役目だ」

振り返るとそこには、白いコートを着た青年 冴島鋼牙が居た。

箒が言葉を返す間もなく、鋼牙はホラーへと駆け出していった……

 

 

 

 

 

 

 

「シグト、鈴。後は、俺がやる。下がっていろ」

「「鋼牙さん!!」」

突然、現れた援軍に対して、鈴とシグトは声を弾ませた。

この場を鋼牙に任せ、二人は箒を護るように傍に寄った。

「鋼牙。一夏にこの間の借りをかえさなきゃな」

「………あぁ、既に見切っている」

猫に似た容姿を持ち、中型車並の体躯を持ったカーバンクルは今にも飛び掛らんと迫る。

鋼牙は、剣を頭上に掲げ、その切っ先で円を描くと同時に眩い光と共に”黄金の鎧”を召還した。

緑の目を持った金色の狼の貌を持った 魔戒騎士の最高位 牙狼がここに降臨した。

箒は目の前の光景に唖然としていた。見たこともない怪物と対峙する黄金の騎士という光景に……

(な、何なのだ!?!この光景は!!?!一夏っ!!!お前は、私の知らないところで何をしているのだ!!!!)

箒を後ろに下がらせる役目を負うように鈴が駆け寄る。

「まったく……どうして、一夏に惚れる子は揃いも揃って大馬鹿なのかしら」

箒の手を引き、鈴は戦いの場から共に離れるのだった。

「………凰…一体、アレは何なのだ?」

「本来なら、知らない方が幸せなんだけど……今の世の中を一番、満喫している奴らよ」

ISの登場による”女尊男卑”による”陰我”によって現れた”魔獣 ホラー”

「今、一夏はちょっと出てるからアレだけど、その代り鋼牙さんが”牙狼”がこの場に居るから大丈夫よ」

「ガロ?何だ……その名は…」

「一夏達、魔戒騎士の最高位の称号よ」

誇らしげに語る鈴に対して、箒は複雑な表情を浮かべた。

「アタシも知って複雑だったわよ。どうして一夏が……ってね」

自身も一夏が魔戒騎士となってホラーと戦った光景を見て戸惑ってしまった頃を思い出した。

 

 

 

 

 

 

爪を立て、赤い目を真っ赤に光らせながらカーバンクルは鋼牙に飛び掛った。

鋼牙は、牙狼剣を構え爪による攻撃を防ぐと同時に弾き、回し蹴りでカウンターを与える。

蹴りはカーバンクルの顔面に当たり、怯ませたと同時に牙狼剣の刀身が額に突き刺さり、そのまま両断されたと同時に黒い血と共に消滅した。

 

 

 

 

 

ホラーが倒されたと同時に鋼牙の鎧が解除された。

 

 

 

 

「………………」

箒はその鮮やかとも言う鋼牙の戦いに言葉が出なかった。剣の技は、自分の父を遥かに越えた今までに見たことの無いものだった………

これが一般的な剣道の試合で見たのならば賞賛するのだが、目の前で行われたのは異形であるホラーとの殺し合いである……

鋼牙はやることを終え、無言のままこの場を後にしようとしたときだった………

「鋼牙さん」

声の発せられた背後を振り返ると蒼いコートを靡かせた一夏の姿があった。同じく箒と鈴も振り返った。

「一夏か……先日のカオルの件、世話になった」

互いに歩み寄る二人に対して、箒は知らない人を見るように幼馴染を驚愕の目で見た。

あの時に見た怖い目をした幼馴染………今日聞いた、魔戒騎士、黄金騎士 牙狼、ホラー、そのホラーから出てきた姉のこと………

(………一体、これは何なんだ。化け物にとってあの人はどういう存在なんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所で一人の少年が奇妙な作りをした柄をした刀を同年代の少年達に振るっていた。

「うわあっ!!!……」

「く、何なんだよ!!?!その刀っ!?!」

「何って、俺の力だ!!!!俺は選ばれたんだ!!!力に!!!!」

今、凶行を行っている少年は、つい先ほどまでここで少年たちに暴力を受けていたのだ。

世間で言う”いじめ”である。人気のないところに呼び出し、殴るだけ殴り、持っていた貴重品はすべて奪われたのだ。

少年達が背を向けた瞬間、ゴシックロリータの服を着た少女が現れ

”あなたに力をあげるよ”

と言って刀を持たせてくれたのだ。刀を持った瞬間、傷が治り、圧倒的な力を得たのだ。

”……この力、お前にとって心地が良いだろう?”

「ああ、これが俺の力だ!!!!!」

自身に語り掛ける”力”に心を許し、少年は自分を力で虐めていた者達を笑いながら惨殺したのだった。

動かなくなった者達を見て、少年の心は高揚した。この力があれば、自分は何だって出来る。

傲慢な女達に復讐が出来、さらには、全てを思い通りにできるとさえ思った……のだが………

”ならば……その血肉は、このムドーの物でもあるな”

「俺とお前は一心同体だ!!!これからも頼むぞ!!!!相棒!!!!!」

調子の良い事をいう少年に対して、刀は……

”そうだな、その血肉と魂をこのムドーが頂くとしよう”

その瞬間、刀から異様な触手が現れ、少年の腕を侵食した。

「な、何なんだっ!!?!こ、これは!!!相棒!!!!」

”言っただろう。これからもよろしくと……だからこそ、お前のその血肉と魂をこれからのための糧とする”

「ふ、ふざけるな!!!?!うわぁっ、お、俺の腕が!!!ああ、俺の身体がっ……うわああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

絶叫と共に少年の姿は血煙となって刀の中へと吸い込まれていった……

それを見ていた少女は、ゾッとするような酷薄な笑みを浮かべて刀を腕に抱えた。

「ムドー様。どうして人間は、自分にとって都合の良い方向に物事を考えるの?」

”フフフフフフフフフ。それはな、人間が我らホラーにとって餌以外の楽しみを与えてくれるからだ。それにこの時代は良い、あのISという兵器と人間の陰我がどのように楽しませてくれるか…非常に楽しみだよ”

「そうですね、ムドー様。先ほど面白い話がありましたよ……IS学園にまた代表候補生が転校したと……」

そこに現れたのは、魔界文字を瞳に浮かべたあの女性パイロット”ケイ”であった……その傍らに顔は見えないが一人の男性が寄り添っていた……男性の名は、コウイチ………

”いつ食しても美味な物だ。信じたモノ”力”に裏切られ絶望に堕ちる人間の心は”

 

 

 

 

 

 

 





次回予告

隠しごとってのは、いずれ明らかになる物だ。それが早いか遅いかの違いでな……

自身の姿を偽った”少女”の告白……そして、知ってしまった”闇”

次回!「暴露」

こっちもそうだが、”向こう”も本格的にこっちに関わりだしたな……

何となくシャルルが我儘だと言われましたが、こういうのもありなのではと思うのですが、どうでしょうか?

新しいエピソードと一緒に次回は纏めて投稿したいと思います。それでは、では!!!

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