大変お待たせしました。久しぶりにこちらも更新できました!!
牙狼 第三期。今までと違った感じにワクワクしています。今時の若者な流牙さん中々いいっすよね。
今回は、書いていて長くなってしまいましたので、前編、後編と分けます。
何となくですが、このIS×GAROのヒロインは千冬なのではとおもったり(笑)
数時間前 倉持技研
研究所内は異常事態に陥っていた。なぜなら、外部からの襲撃を受けていたのだ。非常用の警報が鳴り響き、警備員達が駆ける。
「こっちだ!!」
「政府への連絡はっ!?」
「はいっ!!只今、連絡を入れているそうです!!」
急いで侵入者が現れたと思われるエリアへ向かおうと通路の角を曲がった時、黒い何かが飛び出し、一人の警備員の頭部を掴んだと同時にそれを握りつぶした。
果物が弾けたように血潮が飛び、二人の警備員の視界が赤く染まる。
「なっ、なんだ!?・・・・・・」
赤い視界に奇妙なシルエットが浮かんだと同時に意識が暗転した。二人目は既に息がなくなっていた。
背中に跨るように赤いマントを身に纏い、仮面をつけた小柄な女性が頭部を鷲掴みし、十本の指を食い込ませていたのだ。
「やれやれ、その人。すごい顔をしているな。死人はもう少し丁寧に扱うべきだと思うぞ」
青いマントを付け、赤いマントと同じデザインの仮面であるが口元が開いている。
「よく言うわね。そういうアンタはどうなのよ」
潤んだ唇を歪ませ、男の真っ赤に染まった手をに対して呆れた声を上げる。男の足元には頭部を失った身体があった。
「アナタ達。無駄口叩いていないで、ムドー様のお食事の準備をしなさい」
二人の背後より、ゴシックロリータを着た少女が歩み寄る。少女が抱えているのは、異様な拵えを持った刀。
「もうそんな時間か。ムドー様、最近随分とお元気ですね」
”ああ・・・ここの時代は中々心地がよくってな。素晴らしい、ここまで力に対する陰我が今までにあっただろうか”
過去に現れた時期もそれなりにムドーにとって居心地が良かったが、この時代も時代で居心地が良い。
世界大戦ほどの規模ではないが、力に対する渇望と傲りの陰我がここまで大きな時代はなかった。
”おおっ、ケイ。食事を用意してくれたようだ”
スーツ姿の女性が一人の男性の研究者を連れていた。
「な、何なんだ!!?アンタ達はっ!?!」
ここまで引きづられた影響のためか、所々薄汚れた白衣の男性が声を上げた。この男、この研究所のISの開発スタッフの一員である。
ISの開発スタッフは操縦者が女性ということもあって、女性主体で研究開発が行われるがスタッフのメンバーの中には男性も存在している。
喚く男を無視してケイは彼を強引に手前に押し出した。
「うぉっ!?!」
床に激突し、彼は呻くが真正面に何かが突き立てられた音に反応し顔を上げた。
目の前にあったのは、奇妙な格好をした二人組ではなく、たくさんの観客で湧いているISの競技場であった。
そうここは世界で唯一ISを学ぶための施設 IS学園の・・・・・・一年生が使う第三アリーナだったはず・・・・・・
彼は見た。ある事情により破棄された”世界初の男性のIS操縦者”用の専用機がアリーナの空をかけるところを・・・・・・
顔を上げた瞬間、彼は研究所の通路ではなく、IS学園のアリーナの観客席にいたのだった・・・・・・
さらに彼が望んだ”専用機”が各国の専用機と互角以上に戦い、勝利していく光景・・・・・・
彼以外にも少しずつ発見された男性のIS操縦者達もめまぐるしい活躍をしていく・・・・・・そして、女尊男卑の世界は・・・・・・
「そうだ・・・・・・私たちの作った”白式”の活躍が・・・・・・あってこそ・・・・・・」
それを開発した彼もまた人々の賞賛を浴びるはずだったが・・・・・・その瞬間、世界が壊れていく。
「な、なんだっ!?!わ、私が・・・あぁっ!?!」
次の瞬間、彼はISを纏っていたのだ。そして、無数の戦闘機と空母、戦艦のいる戦場の空にいた。
「こ、これは、まさか・・・白騎士事件!?!」
その瞬間、攻撃を受けたと同時に彼は錯乱を起こしたように白騎士を駆り戦うが・・・・・・
「え、エネルギーがもう切れたというのか!?!そ、そんなうわあああっ!!!!」
無数のミサイルを受けた瞬間彼の体は焼け、裂けていく・・・・・・
「!!?!!!」
こんなはずではなかった。ISが最強で白騎士はこの大群を傷つくことなく勝利したのに、自分はなぜあっけなく・・・・・・うそだ・・・自分が関わった力はこんなものでは・・・・・・
奇妙な拵をした刀の柄が怪しく輝いたと同時に男は血潮になって、叫びを上げることなく消えていった・・・・・・
その光景を見てケイは頬を冷たく釣り上げて哂った・・・・・・
「馬鹿ね・・・・・・ISは乗り手によってその性能を変化させる・・・・・・誰もが手に入れたからって同じ力を震えるわけじゃないもの・・・・・・」
”フフフフフフフ。それは、そうだな。ケイよ、確か兵器というものは素人が使ったとしても確実に成果を挙げられるものが求められるのだったな”
「おっしゃる通りですわ。ムドー様。ですがそういうモノが求められ、賞賛された世界だから、アナタは此処にいるのですね」
IS学園を抜けた一夏を迎えるように駅には、滅多に見ないスーツ姿の布道 レオの姿があった。
「・・・・・・レオさん?」
「こいつは珍しい。アンタが教師っていうのも中々悪くなさそうだな」
一夏は普段の服装と違うレオに少しだけ戸惑い、ヴリルはいつものように無駄口を叩いた。
「ヴリル。いつものことだけど、無駄口は…「分かってる、分かってる。そう固いこと言うな」
「一夏さんが戸惑うのは、無理もないですね。この格好は……」
内心、この姿を兄とその連れに苦笑されたのはレオ自身も戸惑ってしまった。こんな会話を何時までもしていられないので、
「一夏さん。指令は受け取っていますね」
「はい。ISの研究所にホラーが襲撃をした…そのホラーがムドーだと……」
”ムドー”の名を口にした途端、空気が重くなる。最凶と名高い”使徒ホラー”に肩を並べる上級ホラー。その”性質”は、”力を求める陰我”である。
「古来より奴は、様々な人間の間を渡ってきた。中には魔戒騎士も居たぜ」
魔戒騎士の中にも”力”に魅せられ、道を踏み外し存在も居る。そういう存在もこのホラーに目をつけられ、非業の死を迎えたと伝えられている。
古の時代より続く争いは、様々な”力”を作り上げた。表の世界では、祭壇用の剣を人を殺傷する武器に…闇の世界では、ホラーという存在を倒すためにソウルメタルを作り、魔戒騎士を生み出した。
ムドーの取り付く陰我は、人間の性質に深く関わっている。
「今は、早く現地に向かいましょう」
「レオさん。魔界道へ……」
一夏が向かう先の空間が歪み、”魔界道”が現れた。
”魔界道”
本来は魔戒騎士にのみ通ることが許される道である。一種の異空間であり、ここを通れば数時間で着く場所も僅か数分で到着することが出来る。
ほとんどは東西南北の管轄から、”閑岱”へ赴く時に使われるが、ここ最近のホラー激増により魔戒騎士と一緒なら構わない魔戒法師も単独でここを通ることが許されているのだ。
滅多に現れないホラーが一晩に複数も表れるようになったための対抗手段としてである。
蒼天騎士 ジンの称号を持つ織斑一夏がIS学園へ入学した際にここにも道が設けられたのだった……
その魔界道を抜けた先は”倉持技研”
魔界道を抜けてたどり着いた”倉持技研”周辺は日が落ちた影響によるものなのか辺り一体が不気味な雰囲気を醸し出していた……
研究員の活気があったであろう施設は静寂に包まれているが、昼間の活気がそのまま残っているため居るはずのない気配すら感じられるのだ。
敷地に足を踏み入れたと同時に本来はなるはずである警報も鳴らなかった……だが、近くに設置されていた監視カメラが二人を捕らえていた。
警備室
複数に展開されたディスプレイに映る二人を見るのはケイと同じ黒いスーツを来た男性であった。研究所を襲撃した仮面の二人組みとゴシックロリータの少女と比べれるとその表情は穏やかなものだ。
だが、本来は生気が宿るはずであった瞳には何も映っていない。あるのはポッカリと開いた空洞のような黒い何かだった……
彼はディスプレイに映る二人に視線を向けながら、携帯を取り出した…
「…………………」
一言も声を出さずに、電話の発信音に耳をすませる。その後に
「ケイよ。どうしたの?コウイチ」
「…………………」
「そう、魔戒騎士たちがこちらに来たのね。分かったわ、そっちに一人向かわせるわ」
「…………………」
「分かっているわ、あなたが心配しなくても…ってそうね。油断はできない物ね」
「…………………」
「引き続き出来る限りの監視をお願いするわ。じゃあ、また後で」
電話を切られたのを確認した後、コウイチは再び監視画面に視線を向けるのだった……表情はまったく変化せず、瞬きすらない瞳には何も映っては居なかった……
IS学園
千冬は一人、自室のシャワールームの湯船に浸かっていた。普段なら大浴場を使うのだが、今日は気分が優れないため自室のシャワールームで済ましていた。
湯船に沈む自身の裸体に視線を向け、悲しむように目を閉じた。
(辛いものだな。こうやって待つということは・・・・・・どうして、一夏にあんな運命が課せられたんだ)
脳裏に浮かぶのは、過去のモンド・グロッソでの出来事。あの時、一夏は何もされなかったものの興味本位で身体を辱められた。
あの出来事はいつ思い返しても怒りが湧いてくる。一夏がどれだけ、その特殊な事情ゆえに悩んできたと思っているのだと・・・・・・それを興味本位で晒すとは・・・・・・
小さい頃は、男女どちらでもないという事を特に悩んでいなかったが、成長する毎に自身がどちらでもない身体と心を持つことに悩むようになってしまった。
最初は男女の好きが理解できず、さらにはその身体ゆえに男女どちらの立場でも子供が作れないということ・・・・・・
(思えば、あの後の一夏は少し震えていた・・・・・・自分の不甲斐なさではなく、初めて性的に自分を見られたことに対して怖さを覚えていた)
事情聴取が終わった後、二人はホテルに滞在した。深夜、人知れずに自室のシャワールームで震えていた一夏。
私が寝静まった後に浴室に入った一夏を放っておけなかったのか私もシャワールームに踏み入れた。
”一夏。こんな遅くにどうした?”
”ね、姉さん。起きてたの?”
”ああ、目が冴えてしまってな。私も一緒に入っても構わないか?”
”は、恥ずかしいよ。私はすぐに出るから・・・・・・だから待ってて”
千冬に背を向け、縮こまる一夏に千冬は後ろから抱きしめた。
”私を信じてくれないか?絶対にお前をそんな目では見ないから・・・そんな事を言わないでくれ”
”姉さんを信じていない訳じゃない。だって、私は・・・・・・”
”だからなんだというのだ。お前はお前だ。私のたったひとりの家族だ。どんな境遇でも・・・・・・”
声は少しだけ震えていた。一夏が男でも女であろうとも千冬にとっては代わりのない家族なのだ。
”姉さんは、私の事を気持ち悪いって思わないの?男の子でも女の子でもない私のことを”
一夏の声も震えていた。
”馬鹿者が、何度も言わせるな。お前は、お前だ。私にとってたった一人の家族だ。お前に救われた事だってあるのだぞ”
両親に捨てられ、何度涙を流したことがあっただろうか。その度に幼い一夏は自分を泣き止ませようと抱きしめてくれた。その小さな温もりに何度も救われた。
故にこの小さな温もりを世界が傷つけるのであれば、世界を相手に戦う事をも決意した。
”本当に私のこと……気持ち悪くないの”
正面から千冬を見るために一夏は振り替えた。僅かな羞恥心があるのか頬が少しだけ赤い。振り返った一夏の身体を見た千冬はその頬に手をやり
”一夏、お前はこんなにも可愛い顔をしていてるのだ。そんなことを言うのではない”
その辺の女の子よりも肌が白く顔は綺麗に整っている。今は可愛らしいが、いつかは魅力的な美しい顔立ちになる事が約束されているだろう……
”大丈夫、だからお願いだ。絶対に私だけは信じてくれ。私だけは何があっても味方で居るから……”
自分の胸に一夏を抱きしめた。千冬にとっての精一杯の一夏への愛情表現だった。
”うん。私も姉さんを信じるよ。だから、もう自分の事を気持ち悪いとか言わない”
”そうだな。私もお前を護れるように自分を鍛えなおす。暫くは、一緒にドイツで過ごすが構わないか?”
”ここで?”
”ああ、お前を助けるために借りが出来てしまってな。そのお礼で一年はここで教導を行うことになったんだ”
”そうなんだ……ごめんなさい。姉さん”
”何を謝る?お前は何も悪くはない。姉として当然の事をしたまでだ。お前は何も気にすることはない”
千冬にとっては対したことはなくても一夏にとっては重い言葉だった。弱い自分の存在が姉に迷惑を掛けてしまった。故に一夏も自身を護り、手の届く人を護れるだけの力が欲しいと願った……
(あの時に一夏は本格的に魔戒騎士になることを決意したかもしれない……)
自分を鍛えなおし、一夏を本当の意味で護るという願いは自分の思い上がりだったのではと考えてしまう。故にラウラに大事な事が伝えきれていなかった……
”ブリュンヒルデ”と言う最強という名の偶像に妄信してしまった。そして一夏に課せられた運命はとてつもなく険しい。できれば自分が変わってあげたかった。
それを降ろして欲しいと願うのは、おこがましいだろうか?加えて、平穏に一生を送ることを願うことも……
(私は、もう一度変わらなければならないかもしれない。本当の意味で……だが、どうすればいい……)
これまでに自分は、誰かに悩みを打ち明けることはなかった。故に自分の考えに囚われすぎてしまい、周りに迷惑を掛けてしまう。
”織斑先生。一夏さんが他の方と違う悩みを持っていても、それを乗り越えられると信じていますわ”
少し気に食わないが、一夏の秘密を知った少女達の言うように一夏を信じればいいのだろうか?
ほんの少し前までは、生意気な小娘に過ぎなかった少女があんな風な毅然とした表情で言い切った。当時の自分があのように誰かを信じることができただろうか。
(……誰かを信じるか……難しいモノだな……)
過去に一人で世界に戦いを挑んだ千冬は、戦うことよりも難しいことがあることを思い知らされたのだった………
倉持技研
「こんばんは、魔戒騎士、魔戒法師」
倉持技研の敷地内に足を踏み入れた二人の前にゴシックロリータの少女が現れ優雅に裾を上げてお辞儀をする少女に何の関心を寄せることなく一夏は前に進む。
「アレ?魔戒騎士は女には成れないって聞いたけど……」
少女は一夏の姿を見るなり、少し驚いていた。ほとんどの魔戒騎士は厳しい鍛錬ゆえにそれなりの体躯を持っているのだが、一夏の体躯は線が細く男性には見えない。
「一応、私は男だ。だがどちらでもない」
「アレ?じゃあ、アンタが織斑一夏?ムドー様もアナタには、注目をしているわ」
言うまでのなく、”世界初の男性IS操縦者”ということであろう。”女尊男卑”というこの世界は”IS”という女性にしか扱えない”力”による巨大な陰我が渦巻いている。
「この先にムドーが居るなら、私達はそれを斬らなければならない」
魔戒弓を構えながら踏み込む。少女は獰猛な笑みを浮かべながら目に魔界文字を浮かび上がらせる。
「この小娘。ムドーの手下だったか……気をつけろ、ムドーの奴は気に入った人間をああやってホラーに変えてしまう」
使徒ホラーにも同様の能力を持つものが存在し、使徒ホラーに限らず、力の強い上級ホラーもこのような能力、人間を自らの手下に変える能力を持っている。
少女の腕が異様な鞭に似た姿に変わる。両腕の鞭を撓らせ、
「ねえ、ムドー様と話をしてみるだけしてみない?アナタならきっとムドー様に気に入られると思うよ」
少女の言葉に一夏は無表情で聞き
「お前たちの戯言に付き合う暇はない。ホラーは斬らなければならないからだ」
「もったいないな。そういうのってさっ!!!」
鞭を勢い良く伸ばして突き立てるように一夏へと差し向けた。槍のように高質化したそれを魔戒弓の刃で弾くように返す。
火花を散らしながらも後退せず、少女いや、ホラーを斬りつけるために一夏は前進する。
「腕は一つだけじゃないんだよ!!」
もう一方の腕の鞭を伸ばして、一夏に追撃を浴びせるが
「こっちもただ弓で斬りつけるだけじゃない。こういう使い方もある」
矢筒から一本の矢を剣のようにして、それを防ぐ。この矢も”ソウルメタル”で出来ているために並みのホラーの攻撃ぐらいでは破壊されない。
矢を銛のようにし、同じく突き立てながらホラーに向かって前進する。互いに刃を交えながらの攻防が始まった。
攻防が始まった直後、白いコートを纏った男 冴島鋼牙もこの場所に到着していた。
「二人は既に来ていたか」
戦いに入ろうかと考える鋼牙であったが、
「鋼牙。ここは一夏のお手並みを拝見といこうじゃないか」
ザルバの言葉にいつもの仏頂面で頷きながらも、その視線は倉持技研の奥に居るであろう”ムドー”へと向けられた。
「ザルバ。ムドーの他にホラーの気配は?」
「ああ、あの野郎のでかい邪気の周りに四つ集まってやがる。この邪気に引き寄せられて他からホラーが来られたらそれなりに厄介だが・・・」
鋼牙達は周辺を見回す。
「さっそくいい仕事をしてくれたぜ。レオ」
そう倉持技研周辺に結界を魔戒法師 布道 レオが魔導筆を掲げ結界を貼っていた。その格好は普段の法師姿ではなく、スーツ姿だった。
「・・・・・・・・・・・・」
「急だったんだな。レオの奴・・・・・・」
一方ホラーと戦っている一夏は、いつもの魔戒騎士の服装である。
「ったく、一夏も偶にはお洒落して欲しいもんだな。一度、カオルの絵のモデルになった時だったな。洒落たのは……」
「ザルバ。無駄口が過ぎるぞ」
無駄口の多いザルバを嗜めつつ、鋼牙は周囲への警戒を強める。前回もあの少女のホラーを取り逃がした原因は、仲間のホラーの横槍のためだった。
ザルバは知らないが、一夏は意外と洒落た格好をすることが多いらしい。時々、カオルとの付き合いでそういう格好をすることがあるのだ。
女でもあるために女としての格好をすることにあまり抵抗がないとのことである・・・・・・
「悪い悪い、女の魔戒騎士なんて今までに居なかったからな。何しろ魔戒騎士は男ばかりでかなりむさ苦しいんだよ。古の時代からな・・・・・・」
魔導輪の戯言を聞き流しながら鋼牙は結界を張っているレオの元へと向かうのだった。
ホラーと一夏の戦いは、攻防を繰り返していたが少しずつであるが一夏が押し始めていた。
魔戒弓の刃を大きく振り、ホラーの右腕のムチを両断する。両断されたホラーは切られた面から再生させ、さらに苛烈な反撃に出た。
「や、やるじゃないの!!」
少し動揺したのか上づった声でホラーは、一夏に語りかける。だが、一夏は無言で問答無用で斬りかかる。
零あたりなら何か気の利いた?言葉を返してくるかもしれない・・・・・・
二本のムチを捌きながら、一夏は一気にホラーの胸元からその半身を両断するが、
「かかったわねッ!!!」
喜色の声を上げたと同時にホラーの半身の切断面から無数の触手が現れ、一夏を貫こうと一斉に放たれる。
距離は完全にゼロ距離に近く回避行動を取ることは難しい。これは魔戒騎士でもひとたまりもないが・・・・・・
一夏は切断した勢いに任せて魔戒弓を回し、鎧召喚の構えを取るが装着までにはとうてい間に合わない。
「鎧を召喚しても無駄!!!私の方が早いんだもの!!」
しかし、一夏は鎧を装着しなかった。そう少しだけ身体をずらして・・・
「っ!?!?!」
自分の身体に来るはずのそれを迫ってきたホラーにぶつけたのだった。勢いよく鎧をぶつけられたホラーは後方はるかに飛ばされてしまう。
それを逃す一夏ではなく、持っていた魔戒弓の矢に魔導火を灯らせたと同時に射抜く。
射抜かれたホラーの上半身はそのまま燃え尽き、本体を失った半身もまた黒い霧となって消滅するのだった・・・・・・
その光景を見ていた鋼牙とザルバは
「流石だな。あんな風に鎧を使うとは・・・・・・」
ザルバの声には賞賛の色があった。鋼牙も感心したように視線を一夏に向けていたのだった。
二人の様子に気がついたのか、一夏は振り返り
「鋼牙さん」
自分の目標である彼の名を呼び、二人の元へと歩み寄った・・・・・・
「腕を上げたな。一夏」
鋼牙は一夏の”力”が格段に上がっていることを悟った。一年前よりも遥かに強くなっていることを・・・・・・
「しかしまあ、よくあの攻撃が読めたな」
ザルバはあそこでのホラーのカウンターをあのような鎧召喚で切り向けた一夏に感嘆の声を上げる。
「なんとなくだけど、そういう風にしてくるんじゃないと・・・」
”俺たちの仕事は理屈じゃないだろ”
一夏自身が尊敬する 兄とも言える彼の言葉が不意にだが聞こえてきた。
「所謂、女の感って奴か。男にはない恐ろしい武器だな。そりゃあ」
「ここだけの話だがな。一夏の女の部分は怒らせるとそりゃあ、怖いぞ」
「なるほどな、鋼牙。お前もうかうかできないんじゃないか?一夏は他の魔戒騎士にはない恐ろしさがあるからな…」
「ザルバ。私を化け物みたいに言わないでほしい」
一夏は内心、姉もこんな風に他の人に言われた居たのではと思い、溜息をついた。
「悪い悪いそういうわけじゃないんだが、お前さんもやっぱり織斑千冬の身内なんだな・・・・・・」
「・・・・・・ザルバ。それはどう言う意味・・・・・・」
ザルバの言わんとしている事は、なんとなくであるが一夏は理解できた。
言うまでもなく、姉の千冬に対する世間の評価は女性としてはあまり喜ばしいとは言えないものであるからだった・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
IS学園に入学する前の一ヶ月前、閑岱での用事を済ませた後、珍しく千冬と食事をしていた。姉に”愛するものはいるか”と前振りもなく聞いてみた。
「い、一夏っ!?!な、何を言っているのだ!?!ま、まさか、お前、誰かと出来たのか!?!!それは、女かっ!?!それとも男かっ!?!」
千冬の脳裏にこの家に顔を出し、我が物顔で居座る軽い男の姿が浮かんだと同時に怒りの念が湧いてきた。
「私は誰とも付き合う予定はないよ、姉さん。二日前に知り合いの結婚式に顔を出したときに、そういうことを言われたから……」
これまでにないくらい千冬は驚いている。一夏は常々思っていたが、姉に浮いた話があるとは聞いていなかった。学生の頃も特に誰かとお付き合いをしているということも……
「結婚だとっ……魔戒騎士の癖にっ、私など未だに男と手をつないだことがないのに、何てことだ……」
千冬は魔戒騎士嫌いだが、この件で更に嫌いになりそうであった……魔戒騎士の結婚とはだれも言ってはいないのだが……
ワナワナと怒りで震えている千冬。自分に出会いがないので、そこが気に入らないようだ。魔戒騎士は一般人とはかけ離れた生活を送っている故に男女の出会いというのが想像しがたい……
魔戒騎士の使命にはその血筋は絶やしてはならないという掟がある。故に子を育てなければ成らない…
だけど一夏は、男女どちらでもない身体ゆえに子供を作ることは出来ない……この血を次代に伝えることができないのだ・・・・・・
「一夏っ!!!!!何故、私には、出会いがないのだっ!!!!!」
「……知りませんよ。星の数ほど、人と会っているんでしょう?感じのいい人は居なかったの?」
「どいつもこいつも私をまるで”怪獣”か何かを見るような目だ。まともなのがおらんっ!!!!!」
「…………ブリュンヒルデの称号は、不敗乙女ですよね」
サイド 一夏
仮にも乙女なのに、姉さんがあんまりだと思う。でもISは世界最強の兵器である。使い方次第では一国の軍隊を壊滅させる程の……
恋愛感情が今一よく分からない私には、何もいえなかった。だが一つだけおぼろげに分かっているのは、今の”女尊男卑”によるホラーの大量発生を招いたのはISを得た女性の傲慢だけではない。
男性側にもそれなりに問題があったと思う。男と女の力に対する認識は、男は力を持ったらそれを中心に物事を進めてしまい、正しいこともそれでねじ伏せてしまう。
それ以外には強いものに従属して、従属しない弱いものに対して攻撃的になるということ・・・さらに力のないモノに力のあるものがそれを強いる。
力を失った男性側は、力のある女性側に追従してしまったのだ。これに失望を覚えてしまった女性の気持ちは少しだけ分かる……
その後も荒れる姉を慰めるべく、夜を通して私は晩酌に付き合った……この日は珍しく、ホラーは出てこなかった。
「一夏だけだっ!!!私の気持ちを分かってくれるのは!!!!!だから、絶対に嫁には行くな!!!!」
「………行きません。そもそも、私は恋愛感情が分からないんですから……」
私は、今一恋愛と言うものがよく分からない。男女の色恋沙汰は……まったくといっていいほど………
そんな私が恋をするというのなら、相手は一体誰なんだろうか?
男として、女として、恋をするのか……それとも………
「それなら、わからなくていい。恋愛が何だっ!!!結婚が何だ!!それだけが女の幸せではない!!!」
声高く叫ぶ一升瓶を携えた姉の姿は、人前に出せるものではないと思ったのは、私だけだ。
「姐さん……そんなんだと、一生貰い手が居ないぜ、なんなら俺がもらってやろうか?」
ここでヴリルが口走り、姉が怒鳴ると言ういつもの光景になってしまった。いつも思うのだが、ヴリルと姉の二人はそんなに仲は悪くない……
・・・・・・・・・・・・
ザルバの戯言で余計なことを考えてしまった一夏はすぐにそれを思考から追い出し、目の前の研究所に居るであろう”ホラー ムドー殲滅”に集中する。
一歩一歩近づくたびに邪気が濃くなっていく。さらには、ムドーとその下僕によって殺された怨念、無念すらも・・・・・・
白亜の研究所は黒く澱んだ邪気と瘴気が蔓延する忌まわしい場所へと変わっていたのだった・・・・・・
「行くぞ」
「はい。鋼牙さん」
鋼牙は白いコートを靡かせ研究所へと向かい、一夏も彼に続く。
「僕は、この邪気は外部に流さないように結界を貼ります。気をつけて・・・・・・」
二人に負担をかけないよう、さらにはこの場の状況を悪化させないためにレオは倉持技研周囲を覆い尽くすほどの巨大な結界を貼るべく魔導筆をとった・・・・・・
施設内部へと入った二人は点滅する電光掲示板の前に立っていた。建物は二つの棟で分かれておりそれぞれの役割を持っていた。
左側の第一棟は、開発及び研究用の施設であり右側の第二棟は、開発したISの実験を行うための施設である。
大きさは第二棟はISを動かすためかなりの面積を誇っておりIS学園のアリーナとほぼ同等なのだ。
「鋼牙さん。私は第二棟の方へ行きます」
一夏はIS学園にいるため、アリーナのような施設の構造は熟知していた。
「なるほど・・・それなら、俺は第一棟へ行こう」
「そういうことか・・・一夏。IS学園にも似た建物があったな・・・・・・」
ザルバは一夏の提案の意図を察し感嘆の声を上げるのだった。
「おい、ザルバ。なにかあったときは互いにこいつで連絡を取り合おうぜ。一夏、あれだ。あれ」
「ああ、アレか・・・」
一夏の胸にいるヴリルは、ブレスレット形態になっている待機状態の専用機に視線を向けた。
一夏は待機状態のISの一部を発動し、手のひらの上に菱形の機械を出現させ、
「鋼牙さん。これのスイッチを押せば互いに連絡ができます」
「おっ!?!そいつは、どういうもんだ!?」
「ザルバ。こ「ああ、こいつはな一夏の専用機の魔戒騎士用に束さんが作ってくれた特注品だ。一応、向こうの”黄金騎士”さんのお墨付きだぜ」
説明しようとした一夏を遮って、ヴリルが説明をする。この事態に一夏は少しムッとしたが、自分以上にIS学園での生活を楽しんでいることを確信するのだった・・・・・・
「そういうものか?機械がこの邪気をどうにかできるとは思えんが・・・って、よくみりゃこいつの構造は魔導具に通じるものがあるな・・・・・・」
「そうか・・・一夏。これは、ありがたく使わせてもらおう」
鋼牙もザルバのように機械を使うのはどうかと思ったが、一夏の出現させた、それは素材こそは科学で作られているが機能や構造は魔導具のそれであった。
互いに連絡を取れるようにする為に、魔導火等を用いる場合があるが連絡用の術が使えない鋼牙、一夏はこれを使うことにしたのだった・・・・・・・・・
「そういや、鋼牙。ホラー退治でこういうのを使うのは初めてだよな」
思えば、暗闇でホラーを探す時に懐中電灯を使う魔戒法師が一人が知り合いにいることを鋼牙は思い出すのだった・・・・・・
・・・・・・・・・
第二棟へ向かった一夏は、立ち込める瘴気から何かが溢れ出してくるのを肌で感じていた。
「・・・・・・・・・ヴリル」
「ああ、こいつらムドーの邪気。いや、あの野郎がこれまでに食った残りカスだな」
それらは一夏を取り囲む様に変化し、そこから青白い顔をした人間たちが現れた・・・・・・
「「「「「アアアアァ・・・・・・」」」」」
その背格好、手に持っている武器には共通点はなく様々な格好をしている。
何処かの国の軍人、スーツ姿の男、少年等様々な姿をした”それら”は・・・・・・
「こいつらは、ムドーがこれまでに食った人間たちの思念だな。中には自業自得なのもいるが、哀れといえば哀れだな・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
一夏は無言のまま魔戒弓を構えて、それらと向き合が背後から鈍い鎧の音が近づいてきた。
振り返るとそこには、見覚えのある狼の貌をした鎧姿の人間が立っていた。言うまでもなく魔界騎士である。
「騎士まで・・・・・・・・・」
誰かはわからないが、強さを求めたゆえにムドーという邪悪なホラーにつけこまれて殺されたと思われる・・・・・・
(かつての私も”姉さん”が傷つけられたとき、心滅を起こした・・・・・・あの時はただ、姉を傷つけたアイツを滅ぼしたかったために・・・・・・)
一年前の戦いで理解した。自身の中にあった”邪心”の存在を・・・・・・コイツもまた同じだったのだろうか?
だが、それを考えている場合ではない。自分はこの場にいるホラーを倒さねばならないのだから・・・・・・
一夏の心情を察したのか、”死霊兵”達は一斉に刃を向け飛びかかってきたが、その瞬間に縦一線に輝いた魔導火の炎が死霊兵達を焼き払った・・・・・・
黒い瘴気が晴れたと同時に一夏は、奥の通路へと進んでいくのだった・・・・・・
後編はなるだけ早く投稿したいと思います。それにしても・・・もう少し文章力をあげたいと思うこのごろだったりします・・・・・・
次回は、コラボを・・・って後半は?は置いておいて・・・・・・
それでは、では!!!