I S×GARO   作:navaho

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大変、お待たせしました!!!

今回はハーメルンにて、番外編も一緒に投稿します。あの専用機が・・・

これなら後編を書けばと思う次第でした・・・・・・

今回のサブタイトルの束さん。ISなんてものを一人で作り上げる天才。

それ故に色々と思うところもあった次第です。あと、、才能がないものが努力で才能を打倒するというものを見かけますが、その才能が持っている人にとって本当に幸福をもたらすかどうかは、わからないものです。




第弐拾壱話「篠ノ之 束(前編)」

 

 

 

 とある異国から飛び立った飛行機は、太平洋に浮かぶ朝日の光に照らされていた。

 

日本へ向かうこの旅客機の中で彼女は、眼下に広がる雲の隙間に見える海に視線を向けた、

 

(十年前から始まったんだよね。私たちの過ぎた遊びは・・・・・・)

 

藍色のスーツを来ているのは、かつていや、世間で”天災”と呼ばれる科学者 篠ノ之 束である。

 

彼女は思い返していた。あの悪名高い”白騎士事件”の経緯を・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 白騎士事件が起こる三日前だったのを覚えている。私は、いつにもまして世の中に嫌気がさしていた。

 

思い返せば、私はいつも”憧憬”と”賞賛”の中にいた。理由は言うまでもなく私が類まれなる”天才”であることを人々は讃えたのだ。

 

最初に私の才能に気がつき、喜んだのは”お父さん”だった。お父さん曰く、私は生まれてから三ヶ月も経たないうちに立ち上がり、喋り、二歳の頃には将棋、チェスなどのゲームすら完璧に理解し、大人にも負けなかった。

 

三歳の頃には算数を完璧に理解していた。それから先、私は”天才”としての・・・普通の子供とは違う人生を歩んでいった。

 

”束!!どうして、この問題ができないんだ!!もっとやる気を出すんだ!!!”

 

四歳になるかならない頃に私は高校生の勉強を行っていた。これをさせているのはお父さんである 柳韻。

 

普段は人格者として神社の神主をしているのだけれど、私の前では恐ろしい教育者として英才教育をしていた。

 

”あなた・・・この子はまだ、4歳ですよ。まだ、早いのでは・・・”

 

”何を言っているんだ!!!この子は天才なんだ!!!この才能を伸ばしてやることが幸せなんだぞ!!!」

 

興奮したお父さんはお母さんを威圧するように壁を叩いた。いつもこの音が怖かったのを覚えている。私にはない腕力がいつ向かってくると思うと・・・・・・

 

お母さんはお父さんを出来る限り立てようとしていたから、強く反対はできなかった。私は、自分が天才として生まれたことが恨めしかった・・・・・・

 

お父さんを怒らせないように私は、期待に応えられるだけの成果を出した。

 

小学生に上がる頃、私は海外の大学に入学することができた。これには、たくさんの人が私を・・・・・・才能を開花させたお父さんの努力を褒め称えた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 聞けば父は、学問では苦労していて、その時抱いていた想いを娘である私を教育することで晴らそうとしていた。

 

剣道もそうだけど、私を教育することがお父さんの人生になっていった。海外の大学では数学の分野を学んで、その過程で私は”博士号”を持った。

 

小学校二年生にならない女の子が”博士”。博士って男の人でハゲで太っている人なのに・・・なんで私がそう言う人と同じになっちゃったんだろうって・・・・・・・・・

 

”博士号”を取った私をみんなが褒めてくれた。だけど褒めてくれたのは、大人ばかりで・・・・・・大学生のお兄さん、お姉さんたちは・・・

 

”ねえ、あなた。ここにいて楽しいの?”

 

そう、大学生のお兄さん達は勉強の他にも友達同士で遊んだりして、一緒に研究をしたりしてすごく楽しそうだった。私は一人で・・・・・・

 

”ねえ、お父さん。もっと強く投げてよ”

 

”よ~~し。ちゃんと取れよ!!!”

 

聞こえてきた親子が遊んでいる声。私にはそんな思い出はなかった。ただ一人で勉強をしただけの私があまりにも寂しくて私は逃げるように日本へ、普通の子達から逃げ出した。

 

そこでも時折見る普通の”親子”を見るたびに羨ましく思った・・・・・・

 

普通は小学校へ行くであろう私は、ある企業に研究員として勤めなければならなかった。

 

大学にいた頃よりもさらなる成果を上げ周りへの期待を大きくしていった。最初に揚げたものは、今ではISの基礎となる反重力理論であり、物体を量子化させる技術・・・・・・

 

誰もが思い描いていて実現できなかったことが私にはできた。色んな人達が一緒になって頑張って、少しずつ形にしていたものが私は一人で完璧な形に仕上げられる。

 

そうなるとお父さんは益々、私の才能を開花させようと役立てようとして色んな研究所や企業に私を紹介することに忙しくなった。

 

剣道はちゃんとやっているけど、神主としての仕事は親戚の人達に任せてあまりやらなくなった

 

”あの子の才能を生かすことがあの子にとっての幸せなんだ”

 

私のことを想ってのことと理解できるけど・・・・・・私は望んでこの才能を持って生まれたわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

今の世の中、刀をやっていても役には立たないと思ったけれど、珍しく休みを取れた私は、ほとんど話をしなかった妹の箒ちゃんと一緒に”黄金の剣士”について話を聞いた。

 

”黄金の剣士”に近づきたくて、剣に憧れて今も剣道を続けている。この時は、どれだけこの親父は、ロマンチストなのだろうと思った。

 

怪物と黄金の鎧をきた剣士。はっきり言っておとぎ話の世界だ。貴方が私にしてくれた英才教育のおかげで、楽しめるものも楽しめないよと心の奥底で吐き捨てた。

 

そんな世界なんて人間の願望が生み出した夢物語でしかない、夢物語は存在しないと・・・・・・苛立った私は、研究があると適当なことを言ってその場から離れた。

 

この時だったかな。チーちゃんと本格的に話したのは・・・・・・

 

”おい、お前。ここに居るのなら剣ぐらい嗜むだろう。だったら付き合え”

 

竹刀を肩に担いで私に声をかけてきたのは、お父さんの門下生の織斑千冬。チーちゃんだった。

 

当然のことながら気晴らしで試合をしてみたら、意外とチーちゃんは弱かった。お父さん達よりも遥かに強いチーちゃんだったけれど、私よりは・・・

 

”貴様!!!次は負けないからな!!!”

 

”貴様じゃないよ。私のことぐらいわかるよね・・・”

 

日本が誇る天才少女 篠ノ之 束。といえば・・・・・・

 

”なんだと?お前が・・・・・・師範の娘は天才と聞いたが・・・お前だったのか”

 

驚いたチーちゃんは、私が強いことに納得してしまったようだった。理由は言うまでもなく”天才”だから・・・・・・

 

少し落ち込んだように顔を俯かせたチーちゃんに声をかけることなく私は道場を跡にした・・・・・・

 

時々、家に帰った時に顔を見かけるが話したりすることはなかった。ましてや、チーちゃんって呼ぶまでの”友達”になるなんて思いもしなかった・・・・・・

 

思えば私は”天才”という自分に振り回されていたかもしれない。周りに従順だった私が”天才”から”天災”と呼ばれるようになったのは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

周りへの期待を大きくしていくに従って、私自身の心の内は晴れずにまるで、暗く長いトンネルの中を歩いているようだった。

 

そんな時にマルちゃんに出会った。あの時、初めて見た動いているそれは、”遥か昔”に生まれて、今も生きている命に私は心を躍らせていたのに・・・・・・

 

”待ってよ!!!マルちゃんの成果を!!!!壊さないで!!!!”

 

”こんなものの為に、束を付き合わせたのか!!!”

 

”お父さん!!!皆!!!やめてよ!!!マルちゃんを虐めないで!!!この場所をめちゃくちゃにしないで!!!”

 

偶然、友達になったマルちゃんと見つけた場所での研究は、皆が望むべき天才が居るべき場所ではないという理由で、何処の馬の骨とも知れない人間の研究は否定された。

 

マルちゃん、彼の行っていた研究は子供の観察程度のものだったが、それはある分野の者からしてみれば貴重なモノだった・・・・・・

 

古代から生きていた”カブトガニ”の繁殖場。日本では環境破壊で野生のものは絶滅が危惧されていたのに・・・・・・そこを土足で踏み荒らした行為に私の中で”何か”が切れた。

 

 

 

 

 

 最初に行ったのは髪をピンクに染め、格好はルイスキャロルの不思議の国のアリスに出てくる主人公のような服を着て・・・・・・

 

”な、なんだ!?!その格好は!!!?”

 

”うるさいな~~。一々、私に指図なんかするなよ”

 

”こっちに来なさい!!!”

 

”何が、こっちに来なさいだよ!!!私がどんな気持ちでいたか知らなかったくせに、説教なんて!!!”

 

この時、私は初めて父に手を挙げた。父の動きが赤子の手をひねるように分かり、そのまま痛めつけたのだ。

 

体が大きくて怖かった男が、剣の修練を重ねている男が蹲っている。それに向かって私はひたすら手を挙げた。

 

”あ、アナタ!!!束!!!!親に向かってなんてことを!!!”

 

悲鳴を上げる母を無視して、私は必要なものだけを持って、家を飛び出した。”天才”という私だけを見て、年相応の子供でありたかった私の事を見てくれなかった二人のいるところにいたくなかったのだ。

 

それから、私は二人に対して何の価値も抱かなくなってしまった。私をこの世に生み出した要因でしかなかったのだ。

 

”どうして、私を普通の子に産んでくれなかった”と恨んでいたかもしれない・・・・・・

 

 

 

 

 

 この時から私は、私自身の”楽しみ”の為に生きるようになった。自分の生まれ持ったこの”才能”、”力”をどう扱おうが私の自由だ。

 

従順でなくなった私、いや私が皆の期待に添えられないことがわかると手のひらを返したように離れていってしまった。

 

結局の所、私自身を見ていなかった。”天才”という私だけが皆の望む姿だったのだ・・・・・・両親、二人も同じだった。時々家に戻ると目を逸らして余所余所しそうにしていた。

 

大きかったお父さんは妙に小さく見え、母は厄介者の他人を見るように私を見ていた。妹である箒ちゃんは複雑な目を私に向け、100点のテストの用紙を悔しそうに握りつぶしていた。

 

 

 

 

 

 

 それから間もなくして私は、”IS インフィニット・ストラトス”を開発した。これは、私がこれまでに培ってきたすべての技術を組み込んだ作品だった。

 

宇宙での活動を目的として・・・いや、私はこれでこの世界から逃げ出したかったのかもしれない。私という人間を見てくれなかった世界から・・・…

 

かつて見たあの感動をもう一度自分自身の手で発見したかったのかもしれない。

 

全体の都合を個人に押し付ける嫌な世界から・・・・・・これからの世界は資源不足による外宇宙への進出が検討、必要とされていた。だけど、当時の世界は分かっていてもそれを行わなかった。

 

世界のせいにしていたが、私自身もそれを行うことはしなかった。故にISは一部の変わり者に注目されるだけで、誰も見向きもしなかった・・・・・・

 

発想があまりにも突飛で、私という従順でない天才を周りは”嘘つき”のような目でみていたからだ・・・・・・

 

今度は、私がいる場所とは違う”世界”に行けたらと思うようになった・・・・・・見向きもされなかったISから背を向けたのだけれど

 

”なあ、束。これを纏った私に敵はいるか?”

 

顔見知り程度だったチーちゃんと一緒にいるようになっていて、ISを見て彼女は新しい玩具に期待するような目で私に聞いてきた。

 

”そうだね~~。それこそ相手が正義の味方じゃないかぎり負けることはないんじゃないの”

 

当然だ。この天才の作り上げた”IS”が負けるはずがない。これまでの兵器を遥かに上回る力がISにはある。

 

”正義の味方?そんなモノがいるわけないだろ・・・ならば、私がここで行動を起こすべきだ”

 

彼女が私に持ちかけたのは、この世界の何処かで起こっているであろう戦争にISで介入して、世の中を変えようというものだった。ようするに力を見せつけてしまおうというわけだ。

 

チーちゃんは大人びていたけど、話をしてみると何処にでもいる普通の女の子だった。学校では教師が鼻息を荒くして、戦争はただの殺し合いと教えるが、殺し合いという言葉で済まされないほど結構ややこしいのだ。

 

第三者が介入したところで、状況を悪化させて世界を変えるどころではない。こっちの首を絞めるだけだ。

 

今の女尊男卑の世界では、男女が戦争をすれば三日で終わるというけれど、あんな言葉ははっきり言って妄言でしかないと思う。

 

私は考えた世界が注目するイベントを。そこから始まるサクセスストーリーを。私が作ったISが主役になる世界。チーちゃんがシンデレラになるストーリーが描けたのだ。

 

ただ、アイツ等のおもちゃにするのは癪だが、今よりはずっとマシな世界になるだろうと思った。

 

そして私達は”白騎士事件”を計画し、それを実行に移した。改めて思うと個人の都合を大勢の押し付けたに過ぎなかっただけだったかもしれない。

 

この時の私達は、そんなことすら考えもつかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

(色んな事をやってきたけど、結局は束さんもチーちゃんも単なる力を持ちすぎた子供だったわけで・・・・・・)

 

溜息を付きながら束は、少し前の出来事を思い返した。一夏から連絡で今回現れたホラーがかつての”白騎士事件”の加害者であること。

 

傷つけた者と傷つけられた者。この関係は非常に厄介である。

 

(どうなるかは分からないけど、束さんにとってもチーちゃんにとってもキツい事があるかもしれないってことだね)

 

これからの出来事に対し、束は少しの不安を感じるのだった。本音を言えば、自分達の前に現れる前に一夏が殲滅してくれる事を希望するが、それは逃げである事はわかっている。

 

嫌なものから目を逸らし、誰かにそれを押し付けることは結局の所、自分に帰ってくるのだ。

 

その例を身近で上げると自分達の行いが”陰我”を多く招き、その渦中に千冬が大切に思っていた一夏を巻き込んでしまった。

 

さらには、決して踏み込んではいけない闇の世界を歩く魔戒騎士になり、ホラーとの果てしない闘争を繰り広げ、今やISすらも巻き込み、激化の一途をたどっている。

 

(今は、どうなるかはわからないけれど箒ちゃんも無関係じゃ居られなくなったんだよね)

 

こちらも一夏からの報告で聞いている。一夏曰く、自身の落ち度の為に危険な目に関わらせてしまったという連絡もあり、その時僅かに落ち込んだのは言うまでもなかった。

 

(どうしようかな?魔戒騎士関係も大変だけど、IS関係も厄介なんだよね・・・・・・)

 

考えれば考えるだけ今の事態が最悪な方向へ向かう可能性が高い。思考の海に囚われている束に歩みを進める人物が居た。黒いジャケットを着た赤いマフラーを巻いた妙齢の女性である。

 

「隣、よろしいかしら?篠ノ之 束博士」

 

「!?!・・・・・・良いよ。え~~と、確かチーちゃんが国家代表の時に居た・・・・・・」

 

本来ならここで行動を起こすべきだったが、束は彼女の顔に覚えがあった。何度か監視カメラで見た国家代表時代の千冬と一緒にいた・・・・・・

 

「国家代表護衛の志摩 リノよ。今は、IS委員会所属の対策班」

 

「あっ!?!そ、そうでしたね。ごめんね~~束さん、中々人の名前が覚えられなくてって、これって失礼ですよね」

 

以前は自身の楽しみに逃げ、都合の良い世界だけを見ていた自分を恥ずかしく思う。

 

”束。あのオバさんを何とかできないか?”

 

ここにいる志摩を一時、オバさんと言って鬱陶しく吐き捨てていた千冬の姿を思い返したのはご愛嬌である。生意気だった頃、いろいろと小言を言われていたためらしい。

 

「今、覚えてくれればそれで構わないわ」

 

思わぬ人物の接触に束は乾いた笑いをあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

IS学園

 

早朝の校門をラウラは、心ここにあらずと言わんばかりに自身の思考にとらわれ、先ほど見た不思議な刀の事を思い返していたのだ。

 

(あの刀は一体?アレは教官がおっしゃってた名刀というものだろうか・・・いや、そうにちがいない)

 

IS操縦者の最高峰”ブリュンヒルデ” 織斑千冬に並々ならぬ憧れを持つラウラは、当然のことながらその戦闘スタイルにも並々ならぬ関心を寄せていた。

 

ブレード一振りで各国のISを圧倒的な強さで下した高い技量は、ISの国家代表候補生の目標とされている。

 

一時期、候補生の間で刀を齧った剣士もどきが流行ったが誰ひとりとして専用機を与えられなかった。

 

ラウラもその憧れから日本の剣術を学び始めた。それを戦闘スタイルに組み込むということはしなかった。下手に組み込んで上手くできるとは限らないからだ。

 

教官時代の千冬は、時折剣術の鍛錬を行っており、それを傍らでラウラは見ていた。その時の彼女の愛刀は名工によるものではなかったが・・・

 

”本当の名刀というものは、自分から強い持ち主を選ぶという・・・私はまだ、そういう名刀に出会ったことはない。未熟者だからだろうな”

 

自嘲気味にそれでいて、何処か清々しささえ感じる表情にラウラは暗い感情を抱いた。かつて聞いた”弟”を守るために鍛え直す。

 

自分の知らない。それも栄光を閉ざしてしまった原因を大切に思う千冬が少しだけ、ラウラは憎らしく思った。それ以上に”織斑一夏”が・・・・・・

 

尊敬する千冬の事を思い返しても結局は一夏が絡んでくるために只、苛立つしかなかった。

 

そんな時、ラウラはランニングを行う剣道部達の姿を捉えた。その中にあの篠ノ之束の妹であるしのの 箒の姿があった。

 

「確か・・・アレも織斑一夏に尾を振る雌だったな・・・ちょうどいい、教官が学んだ篠ノ之流の剣道がどんな物か試してやる」

 

千冬から騒ぎを起こさないようにと言われているが、IS関係ではなく個人的な興味という理由で自身を納得させてラウラは黒い笑みを浮かべて走り込みを行う彼女らの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

剣道場では、ランニングを終えて、素振りの練習に入った。それぞれが熱心に竹刀を振るっているが、他よりも人一倍熱心なのは箒である。

 

素振りを終えた後、模擬戦に近い打ち込みに一同が入る。

 

(まだだ!!!こんなものでは、ダメだ!!!私はもっと強くならねばならないんだ!!!)

 

自身を叱咤するように胸の内で何度も叫ぶ。ここ数日の間に知った一夏が抱えていた”闇”を知り、自分自身もそれに巻き込まれた。

 

当初は、訳が分からずに自暴自棄になってしまおうとさえも思った。昔から知っている幼馴染は進むべき道こそ変わってしまったが、心の内は変わっていなかった。

 

話を聞けば、鈴は魔戒法師として騎士としての一夏を支え、セシリアも事情を知り、ISなど出来ることを行っている。

 

思うと自分だけが何もしてやれないという悩みに当たってしまう。自分も魔戒法師に師事すべきかとも思ったが、たかだか数日で何が出来るというのだろうか?

 

それに魔戒騎士、法師の修行は厳しく、生半可な想いでこなせるものではない。せめて自分も何かが出来ればと……

 

(こんな想いをいつもしていたのだろうか?千冬さんは……)

 

世界最強のブリュンヒルデの称号を持つあの千冬もまた悩んでいたのだ。本来ならば自分が一夏の変わりに戦いたかったのだが、それは叶わなかった。

 

元々剣を振る以外に何も知らなかった彼女は、そこで思い悩んでしまった。だが箒はこの剣が一夏の戦いに役立たなくとも、一夏に何かをしてやれるのではと考えた。

 

不器用な自分に出来ることはこうやって剣道に打ち込むだけである。

 

(とにかく今は、悩んでも仕方がない。タッグトーナメントで少しでもいい結果を出そう。ISはイメージというから、身体に剣のイメージを……)

 

ここ最近の行事であるタッグトーナメントに向けて箒もまた意欲を強くしていた。当初は一夏と組みたかったが、鈴と組んだことには不満はあるものの納得していた……

 

だが、真正面から一夏と勝負をしてみたいという気持ちが生まれた。言うまでもなく、自分の全力を見てもらいたかったのだ。

 

(一緒に組みたかったが、自分の行いのせいだ仕方がない。私が一夏の足手まといではないところをみせねばな)

 

恐らくは負けるかもしれないが、負けるからと言って戦わないのは卑怯である。自分を奮い立たせることはいつも戦いである。

 

せめて一矢、いや勝利をと箒は思わずには居られなかった。ここで更に熱が入るのだが、今日はその熱を興ざめさせる無粋な”部外者”訪れるのだった。

 

勢い良く道場の扉が開けられたと同時に小柄の銀髪をした眼帯の少女 ドイツ代表候補生 ラウラ・ボーデヴィッヒが現れた。

 

突然の訪問者に剣道場は騒然とした。そんな様子を気にすることなくラウラは真っ直ぐ箒の元へと歩み寄り

 

「おい、貴様。少しこれに付き合え」

 

ラウラの視線は竹刀置き場に向けられている。その意図は、この場にいるものには非常に分かりやすい物だった。

 

「試合をするというのか?」

 

「馬鹿か?貴様は…教官の同門がどれぐらいか見てやろうといっているのだ。場合によっては私がお前と組んでやらんでもないぞ」

 

あまりの言い草に箒は怒りを感じた。正直、お前と組むつもりはないと言いたかった。そう、既にパートナーは見つけてあるからだ。

 

「………別に千冬さんは関係ない」

 

「教官からの指示で特に危害は加えんが、試すのは構わないだろ?」

 

断ってもそれを受け入れるつもりは、ラウラになかった。無理やりでも箒と試合をするつもりなのだ。

 

困惑した状況を先輩達も何かをしてやりたかったが、相手は専用機持ちであるために対応が難しいのである。

 

専用機持ちでも気さくな先輩はいるのだが、何より待機状態のISを持っていることが恐ろしかった。

 

「……分かった。お前の気が済むのならな。だが、剣を学ぶ物として一つ言いたい。礼儀がなっていないぞ」

 

「フン、そんなもの格下の相手に必要ない」

 

あまりも物言いである。箒は、この代表候補生はかつてのセシリア以上に調子に乗っていると察したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

箒とラウラは互いに道場の真ん中に立ち、お互いに防具を付け礼を行ったのは、箒だけだった。

 

勢いよく最初に飛び出したのは、ラウラだった。動作の振りが少ない突きで箒の喉元に向かって放つ。

 

箒は横にそれを裁くように竹刀を”パンッ”と勢いよく弾いてすり抜けるようにラウラの面を勢いよく打つ。

 

「面っ!!!」

 

まずは箒が一本を押さえた。振り返ると背後にラウラが立っていた。

 

「なるほど、少しはやるようだな。まあ、このぐらいはやってもらわないとつまらない」

 

防具の下でニヤリと不敵な笑をラウラは浮かべた。その様子に箒は少し眉を寄せ、

 

「中々、良い突きだったぞ。ドイツにも良い剣士が居るのか?」

 

「フン。あんな男の剣術など教官と比べれば単なる遊びだ。それを私がこうやって有意義にしてやっている」

 

純粋にラウラの腕は大会に出ればそれなりに上位を狙えるものである。だが、全国大会で優勝した箒には一歩ほど遅れている。

 

「師をそのように言うものではない。お前は、教えを請うのではなく、利用しているだけというのか?」

 

「お前のご高説は聞く価値もない。さあ、早く始めるぞ」

 

「その性根。一介の剣士として私が叩き直してやろうか」

 

箒は剣を通じてラウラ・ボーデヴィッヒと改めて対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

二回目はラウラは勢いよく振りかぶってきた。それを同じくして箒は振りかぶったと同時に互いの竹刀が弾ける。

 

体格に差があるのかラウラがやはり押されている。ここで箒が押し切ればよいのだが、ラウラは相手に押し切られる前に足を少し引き、相手をそのまま流すように裁く。

 

一瞬にして行われた為に箒も対応が遅れてしまい、

 

「篭手だ!!!!」

 

ラウラの声と共に強烈な痛みが右手を襲った。思わず竹刀を離してしまうほどに……

 

あまりの痺れ具合に箒は竹刀を取ることができなかった。その様子にラウラは

 

「まあまあだったな。だが、私を叩きなおすというなら、もう少し見合う力を得るんだな」

 

防具を取り、そのまま道場を跡にした。打たれた箒は、自身の手が大きく腫れているのを見た。

 

まさに一撃必中とはこの事である。

 

(惜しいな……あの傲慢ささえなければ良い剣士になれたのに……剣を教えた人は立派な剣士なのだろうか……)

 

師を敬わず、利用するだけ利用するという身勝手な弟子をよくあのように指導した物だと箒は感心した。それは他の剣道部員も同じ感想だった……

 

そして、まずは剣術よりも礼儀を徹底させろと皆、一同が思った。

 

純粋な腕なら自分の方が上なのだが、戦い方に関しては向こうの方が上かもしれない。そして一撃必殺という意味でも………。

 

ここで箒は目標として父である柳韻のあり方を尊敬しているが、剣士としてはともかく、父親としてはどうだっただろうと考えた。

 

(……あの人に対して父は、過剰な期待を寄せていた。良くわからない……何故、あんなにも……)

 

”持って生まれた才能をどうするかは、その人が決めることだ。例え、親でもそれを理由に人生を決め付ける訳にはいかないだろう”

 

政府の保護プログラムで離れ離れになる前に父がそんなことを言っていた気がする・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、あんな奴に一本もらうとは・・・・・・あの男め・・・私に適当なことを教えて・・・あとで本国に・・・・・・」

 

本来なら圧倒するつもりだったが、一本貰ったことが気に食わないらしい。ただ、必要以上に痛めつけるのは、問題になる為、自重していた。

 

道場を出て行ったラウラを一人の少女が扇子を携えて待ち構えていた。生徒会長 更識 楯無である。

 

「代表候補生だからと言って大目に見られるってことはないわよ。少しはらしい行動と言動を取りなさい」

 

大きな騒動こそ起こしていないものの、こういう小さないざこざこそ見逃せないものである。

 

「………………フン。貴様が言えるのか?」

 

「これでも国家代表なのよ。たかだか代表候補生が大きく出た物ね」

 

「その国家代表があんなポッとでの男とも女ともハッキリしない奴に無様に負けたというのにな」

 

ラウラの強気な自身に対し、楯無も薄く笑うが目は笑っていなかった。

 

「見ていろ。数日後のタッグトーナメントで織斑一夏を粉砕してやる!!!そしたら、貴様の椅子には私が座ることになるかもしれないな」

 

強気なラウラの発言に対して、楯無は

 

「そう甘い物じゃないわよ。織斑君は……だって、彼は護りし者だから…アナタの為に、戦うのでしょうね。きっと・・・・・・」

 

ラウラは楯無の言葉を鼻で笑い、背を向けてIS学園の校舎に歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園へ向かうヘリの中に二人の女性が居た。志摩と束。空港から専用のヘリでIS学園へ向かっているのだ。

 

「ちょっと聞いてもいいかな?束さんはね~、ちょっと前まではヤンチャで、私以外は皆、愚か者って思ってたんだ」

 

束は人懐っこい笑みを浮かべ、志摩に話しかけた。

 

「最近になって、分かったんだ。思ったよりみんな愚かじゃないって」

 

ヘリの中で束は志摩にあることを尋ねていた。

 

「チーちゃんをどうして日本の国家代表にしたの?ていうか、みんな知ってるよね”白騎士事件”の真相は」

 

束の質問に対し、志摩は……

 

「そうね……理由は言うまでもなくあの混乱とした状況をさらにややこしくしたくなかったからよ」

 

実を言えば、分かっていたのだ。白騎士事件の首謀者が何者だったのかを……

 

「白騎士事件の後、各国があなたたち二人を取り押さえようと躍起になっていたわ。日本政府は当時、あなた達を保護することで相当悩まされたわね」

 

「ははっ、私の移動型の研究所に置いてたからね。そう見つかりはしないって自信はあったよ」

 

「とんでもない物を作ってくれたって嘆いてたわ。アレがほかの国に渡ってしまえば、特に日本を目の仇にしている所に……」

 

「ふ~~ん。それでIS学園なわけ……」

 

「まあ、あなた達をこちらで保護するとして、ISの研究、情報公開を強要されてね…」

 

その費用の面倒も任された為、かなりの心労があったらしい……

 

「当然のことながら、あなた達の監視もかねて織斑千冬を国家代表として、近くに置くことで監視した。あなた達が再び白騎士事件のような事態を引きおこさないようにする為に……」

 

志摩もこういう事を本人の前ではっきり述べてしまって良いものか悩んでしまうが、束は

 

「はっきり言っていいよ。そこはスッキリさせたいからね。やっぱり束さん子供だったよ、私以外が皆、馬鹿っていうのは思い上がりもいいところだったよね」

 

内心、力を持った自分達の対応に困惑していたことも察していた。追い詰めてどんな行動にでるかが分からないことを恐れて、自分達を処罰できなかったことも・・・・・・

 

「それにさ、随分とみんなを困らせたからね。そこはちゃんとケジメを付けておかないとバラゴに顔を向けられなくなっちゃうし」

 

束は異国の地で自分を送り出し、帰りを待っていてくれるであろう”黄金騎士”の姿を思うのだった・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の教員達は急遽来訪してきた篠ノ之束の対応、出迎えるべく学園のヘリポートに移動していた。

 

「今日、志摩先生も帰ってくるんですよね」

 

「ああ、志摩さんも戻って来るんだな」

 

「私、あの人、少し苦手なのよね~~」

 

教員たちに混じって生徒会のメンバーも居た。少し引きつった笑みを浮かべて、楯無は扇子で”苦手意識”と自身の気持ちを表した。

 

言うまでもなく志摩は、IS学園における”荒事”を専門とした最も血生臭い役職に付いている為、苦手意識を持つ同僚はそれなりに多い。

 

暗部に関わる楯無も志摩は苦手である。飄々とした自分の態度もあの人の前では、子供同然でしかないからである・・・・・・

 

一年前から、活発になってきた”亡霊”関係で各国に趣き、捜査をIS委員会と共に行っていたのだ。

 

「あなた達、そういう事は陰口でも言うことじゃないわ。言うなら、本人の前で言いなさい」

 

「それは、それで問題が・・・・・・」

 

泣きボクロが特徴的な女性 片瀬律子が少し気だるそうに背伸びをしながら続く。

 

「そういえば、篠ノ之 束博士も来るのよね。こういう場にはほとんど姿を現さなかったのに、どういう心境の変化があったのかしら?」

 

そんな中、集団に遅れて織斑千冬は、話題の中にある志摩 リノ、篠ノ之 束の事に付いて考えていた。

 

(よりによって二人揃って帰ってくるとは………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑 千冬

 

私にとって束は、手の届かない存在であり、ある意味憧れの存在だったかもしれない。

 

持ちえることが出来なかった天賦の才。私のようにただ、がむしゃらに剣を振るうしか能のない存在にとっては……

 

”今日こそは、負けない!!!”

 

”はいはい……”

 

どうしても剣では負けたくなくて、再戦を挑み、私は束に勝利した。

 

”強くなったね~~。失礼かもしれないけど、名前は?”

 

”織斑千冬だ”

 

剣で勝ち、束に認められて私達は親友になれた。やはり、束は凄かった。私には一生理解できないであろう理論を思いつき、それを形にする。

 

故にIS”インフィニット・ストラトス”を生み出した。あの頃、自分とその周りに必死だった私にとってそれは魅力的な”力”だった……

 

あの時、大切な一夏を世界は非情にも傷つけようとしてきたのだ。それが許せなかった…

 

だからこそ、望んだのだ。苦悩するあの子を平然と傷つけようとした世界を打倒できる力を………

 

そして束に”計画”を持ちかけた。この”IS”の力で一夏を護る為の計画を……

 

”IS”が広まった世界は、以前よりも少しだけ居心地よく感じられた。言うまでもなく腕力を奪われた男達は、萎縮し私達の機嫌を伺うように媚びた目をするようになったからだ。

 

親もなかった私は、”小娘”だからという理由で不当な扱いをそれなりに受けてきた。どんなに頑張っても、結局は親を持たない非力な子供だった……

 

そんな子供を世界は助けるどころか、冷たく、痛めつけてきたのだ。弱いものいじめは悪とされるが、それは当たり前のように世界は行う……

 

そして、志摩 リノ。この人と出会ったのは、私を国家代表としてスカウトしに尋ねてきた時だった。私の護衛として色々と世話を焼いてくれたが、小言が多かったのは珠に傷だったかな……

 

第二回 モンド・グロッソの際に、一夏を連れて行かないほうが良いと助言をされたが、第一回での優勝で調子に乗っていた私は、忠告を無視して一夏をドイツへと連れ出した。

 

一夏に護衛を付ける事を志摩さんは徹底するようにしてくれたが、誘拐犯の方が一枚上手だった。

 

誘拐事件の後、無断でISを私的に利用した私の処罰は志摩さんが庇ってくれた為に重い処罰にはならなかった。

 

その志摩さんは解雇となり政府から去っていったが、IS委員会にスカウトされ、IS学園における”荒事”を担当するようになった。

 

これだけなら志摩さんは私にとっての恩人かもしれない。私が複雑な想いを抱いているのは、一夏が日本に戻る際に世話をお願いしたのだ。

 

私がドイツに行っている間、志摩さんは一夏が魔戒騎士になる経緯を知っていたかもしれない。もしかしたら、一夏を魔戒騎士にせずに出来たかもしれない立ち居地にいたのだ。

 

彼女とそのことを話す機会は、海外への”亡霊”対策として出向してしまい、話せずじまいだった。

 

だからこそ聞きたかった。何を思って、一夏を魔戒騎士になるのを止めなかったのかを………

 

そして、束。お前は今、何を思ってこのIS学園に来たのかを……あの時の”白騎士事件”の事を…改めて問いたい………

 

私のした事は……一夏の為にしたことは間違いではなかったことを……

 

「チーちゃん!!!久しぶりだね!!!!」

 

一年前に見た頃よりも大人になったくせに中身はあまり変わっていない親友がそこに居た・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS×GARO 束さんのモデルは、とある天才の境遇を重ねています。

その天才も八歳ぐらいで大学に入学し、卒業ができたんですが、望んだ生活は普通の子供としての生活でした。名前を変えて・・・・・・

束さんと違うところは、母親が子供の人生は子供自身が決めるべきだと主張し、意志を尊重したところです。

もしかしたら、本編の束さんも持って生まれた天才さゆえに歪んでしまったかもと思うところがあります。

次回は、後編。の前にちょっとした番外編です。

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