I S×GARO   作:navaho

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補足というか、言い訳な説明。

IS本編で出ていないのですが、現役の国家代表の方ってどんな方で何処で訓練をし、専用機は開発されているんだろうって思うんですよね。

てなわけで少しオリジナルが入ります。倉持技研は国にあるIS関連施設の一つで、他にもデュノア社のように企業が作っていたりと色々とあります。

国が本腰を入れている施設が別にあるのではという感想、考察から今回の舞台がでてきます。




番外編 「姉との模擬戦」

 

一年 寮長室。ここは、IS学園における一夏と千冬の生活の場である。

 

放課後、一夏はいつものように魔戒騎士の勤めで学園の外に出ている為、明け方まで戻らない。

 

当然のことながら千冬は、一人でこの部屋で過ごすことが多いのだ。

 

「まったく・・・・・・今日もあいつは魔戒騎士の務めか・・・・・・」

 

机の上にあるいつものメモ書きに目を通し、千冬は軽くため息をついた。

 

まるで因果応報である。かつては、IS学園の仕事の都合で一夏を一人で居させることが多く、寂しい思いをさせていたのに一夏は我慢していたとヴリルが言っていた。

 

「明日は、私との模擬戦の予定だが、ここ”IS学園”では行うわけには行かんからな」

 

行えば、当然のことながらこの学園では騒ぎになる。世界から注目されている姉と弟なのだ。これは学園側からも学園の外で行うよう言われている。

 

自分達の情報を得ようと動き回っている学園内の”鼠”を騒がせないためである。

 

「・・・・・・一夏もちゃんと準備はしているんだな」

 

スポーツバックに入っているのは、一夏の専用のISスーツ。専用機である 蒼牙に合わせて製作されている。

 

千冬の脳裏に浮かぶのは、女である自分を遥かに凌駕する抜群のプロポーションを見せつける一夏の姿。

 

自身も気にしているウエストは、自分が羨むほど細い。

 

「背は、私よりも少し高いぐらいだが・・・・・・私が着ても問題はあるまい」

 

ここで千冬は自身の中の”女のプライド”が”女としての一夏”に刺激されたのか、バックに入っているISスーツを取り出したのだった。

 

一夏の専用機である蒼牙に合わせて作られた特殊なスーツであるために、一般のISスーツとはかなり違っている。

 

例えるならば、某決戦兵器に乗り込む”チルドレン”が着るパイロットスーツに近い。

 

自身の衣服を脱ぎ、ISスーツに足を通し、そこから自身の腕を通す。バックのファスナーに手を掛ける。

 

「くッ、ウエストがキツイぞ。一夏の奴め。お前は痩せすぎではないのか!?」

 

千冬自身も並みのモデル以上の整ったプロポーションを持っているが、上には上が居る者である。

 

だが、彼女が勝っているのは胸部のサイズである。

 

「胸がきついのは、分かっているのだが……」

 

脳裏に浮かぶのは、最近になって急成長している一夏の胸部。考えてみれば、一夏が男として過ごすのは少し難しくなってくる。

 

男女両方の特性を持つ”IS インターセックス”の者は、症例にもよるが、ほとんどが女以上に美しい外見を持つ者が多い。

 

一夏もその例に漏れず、千冬自身も思わず溜息をついてしまう。

 

「くっ…おのれ!!分かっていたとしても、この気持ちは何なのだ!!!」

 

涙目になりながら、千冬は一夏の専用のISスーツを脱いだ。この夜、彼女は自身のたった一人の肉親が”女の敵”であるということを認識するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝戻ってきた一夏は、何故か裸でベッドに眠る姉を見た。あの後、悔しさのあまりそのまま不貞寝してしまったようだった。

 

「姉さん。何も着ないで寝るのは、体にあまり良くないよ」

 

「…………分かっている。だが、この気持ちだけはどうしようもないのだ」

 

何となくであるが、一夏は察した。自分の身体を見ては、妙なライバル心を向けていた同級生の姿に今の千冬はそっくりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園は本日、日曜日であり授業は行ってはいない。だが、ここの生徒達は勤勉であり進んで学習と訓練を行っている。

 

特に訓練機の貸出状況はいつも通り一週間以上先まで予約が詰まっている状況である。世の中は”女尊男卑”と言われ、男性に対する見方がマイナスであるが、ここはそうではなくほとんどのものが”女尊男卑”を意識していない。

 

 彼女達は解っているのだ。ISの力こそは確かに凄まじいが、それ故に力で男性を貶めて良いはずがないことを。当然のことを言えば、彼女らには家族に父、兄、弟もいるため、男だからといって家族を不当に扱うことをしない。

 

少しは、男性に対し侮ったりする心情も存在するが、表に出すことの程でもない。

 

「ねえ聞いた?織斑君と千冬様が今日、模擬戦をするんだって」

 

「えっ!?!うそっ!?!そんな話、初めて聞いたよ!!今日、どこもアリーナの予約なんてなかったのに………」

 

「それがね。此処じゃなくて、Jアイランドシティの施設で行うんだって」

 

「えぇっ!?!あそこって、現役の国家代表と代表候補生が居て、日本の最新鋭のISが研究されてるあそこだよね」

 

ここでの織斑一夏の評価は、上々と言ったところである。男性ではあるが、そうは見えないというか、

 

「ていうか、織斑君って本当に男の子なのかな?私でも時々、女の子だって勘違いしそうなんだけど……」

 

「うん。それなんだけど、噂だと千冬様が女の子なのに織斑君を男の子だって思いこませてるって話らしいわよ」

 

「マジですか!?!それ……千冬様ってもしかして、そっち方面の人なのかな」

 

「うんうん。引退した国家代表の人達ってほとんどが結婚して、普通の生活をしてるって話を聞くけど、引退して結婚もしてないのは千冬様ぐらいだって……」

 

ISの国家代表を務めた者は引退後、それぞれの方面、むしろIS関連を離れて静かに暮らす者が多い。時折、OBとして顔を出すが、深くは関わってこないのである。

 

過去に代表候補生を勤めていた者は、教師としてIS学園、もしくは後続の代表候補生の指導に当たっている。ここIS学園では山田真耶が該当する。

 

「千冬様がそっち方面の人でも構わないけど、見たかったね。織斑姉弟の試合……」

 

「そうだよね~~。男が弱いって言うけど、それってさ、私達がISを使えるからだって、女が一番って訳じゃないんだよね」

 

「そうそう、でもさ、もう少しだけ男の人も意地を見せてほしいよね。大抵の男の人って、少しでも相手の方が力があったら直ぐに言いなりか、何もしなくなるんだよね」

 

女尊男卑の思想に染まっては居ないが、ただ、もう少しだけ男の人も意地を見せて欲しいと溜息を付く二人だった。

 

「わたしさあ、極端な女尊男卑は嫌だけど、腕力で弱いもの虐めする男の人はもっと嫌かも……」

 

「分かる分かる。この間もアレでしょ、お婆さんを中学生が暴行したってアレよねってこういう、話をやめようよ」

 

「そうね。この話題は辞めて、そろそろ行こうか。今日、会長が久々に帰ってきて早速、アリーナで訓練だって」

 

「うそっ!?!学園始まって以来の国家代表だよね!!!見に行こうよ!!!」

 

「うんっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、東京湾の日本のIS研究関連に一台のバスが向かっていた。”J ランドシティ”、ISを生み出した日本国が誇る埋立地であり、様々な技術が集う我が国 日本の誇りとも言うべき場所である。

 

 

 

 

 

 

 

 

J アイランドシティ

 

この世界の日本における地球外進出における宇宙開発事業の指導的団体である。中心に立つ上空から見ると+の形に見えるセンタービルが印象的であり、

 

スペースシャトル、人工衛星等、さらには必要とされるリサイクル技術等の普及などを主な事業としている。

 

科学技術庁の直轄の組織とされ、白騎士事件以降は、宇宙開発事業からISの開発、研究にシフトし、現在は第二のIS学園とも言うべき姿となっている。

 

IS開発を行う様々な研究機関、企業のビジネスビルが立ち並び、単なる研究施設ではなく、ここに所属する者達の家族が住まう為の居住区域も存在している。

 

最近では、ISの普及によって極端になってきた”女尊男卑”の風潮に対して、こちらの総裁が条例を設けるなど注目を浴びている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスの中での一夏はIS学園の制服ではなく、スーツ姿である。公の場所に向かうための正装である。

 

千冬のような黒いスーツではなく、少し青みが掛かったカジュアルなものだ。何処となく魔戒騎士としての戦装束に色合いが似ていなくもない。

 

正面には象徴とも言える巨大なハイテクビル”Jアイランドシティ センタービル”が見える。さらには、ISを稼動させ、模擬戦を行うためのアリーナまで存在している。

 

IS学園に近い規模を持つ巨大研究施設である。

 

「ほえ~~~、ここが噂のJ アイランドシティか……。国民の税金はこことIS学園に使われているって訳かよ……」

 

巨大な研究施設に対して、第一声を上げたのはヴリルである。噂には聞いていたが、各国が誇るIS開発、研究を行う施設は大規模である。

 

「ここはともかく、IS学園の方は他の国からのゴリ押しで日本が運営しているらしいよ」

 

ヴリルの言葉に応えるのは一夏である。そのヴリルは一夏の胸元に居る。

 

「………不届き者め。何故、お前まで居るのだ?」

 

「な~に、こっちのJアイランドシティには、ホラーが現れたって話は、まだ聞かないからな。ここを一目見ておきたくってな」

 

IS学園で過ごしている内に、この魔道具、知的好奇心がかなり強くなってしまったようである。一夏と一緒に授業を行うのは日課と成ってしまっていた。

 

「でも……」

 

「言わんとしている事は分かっているぜ、一夏。IS学園同様 陰我の要素に成りそうなものはかなり多い。だが、ここに限らずISに関係するこういう所でゲートが開いた話は未だにない」

 

「分かっている。でもここの管轄は確か……」

 

一夏が兄のように思う 銀牙騎士 涼邑 零の管轄である。

 

「一夏っ!!ここでは、その話はやめろ!!!現れないのなら、それで構わないではないか!!」

 

千冬の怒声にも似た言葉に、一夏とヴリルは互いに顔を見合わせ

 

「ごめん、姉さん。今日はこっちの日だったね」

 

「分かったよ。俺は今日一日は黙っているぜ」

 

流石に魔戒騎士関連の話は拙いと判断したのか、一夏とヴリルは互いに謝罪をするのだった。

 

「まったく……(できれば、戦わないでいてほしいのだが)……不届きモノは、そのまま一生黙ってろ」

 

「へいへい。ったくこういうのをツンデレって言うんだろうけど、姐さんの場合はツンツンかよ」

 

「…………誰が、貴様などにデレるものか。たとえ世界で私と貴様だけが取り残されてもな」

 

「そりゃあ、残念だ。だから、あんな噂が立っているんじゃねえのか?」

 

「何だ?あんな噂とは……」

 

ここで都合よくだんまりを決め込む魔道具だった……

 

(…姉さんはそういう人じゃないんだけど……それに私も……)

 

実を言えば、一夏もその噂は耳にしていた。若干、当たってなくもない噂であるが、間違っても姉がそっち方面の人ではないと断言している。

 

「そういえば、姉さん。私が此処にくるのって久しぶりだよね」

 

「んっ?ああ、そうだったな…第二回 モンド・グロッソの前に一度だったな……」

 

ここで雰囲気を察してか、一夏は話題をここで強引に変えた。そう、一夏は一度この場所に訪れていた。

 

「やっぱり久しぶりだから人も変わっているの?」

 

「ああ、あの頃と比べると人も随分と変わっている。最近の女尊男卑について思うところがあるのだ」

 

千冬は、ISの力によって人の暗い力に対する欲求が増え、それが陰我となっている事を察していたが、それに自身の身内が巻き込まれていることだけは許容できなかった。

 

「私がこんな話をいうのもなんだが、そっちが思うほどこちら側も落ちぶれては居ないのだ」

 

今の時代、毎夜ホラーがあらゆる場所に発生し、魔戒騎士、法師共に人手不足であるのだが、知っているかは分からないが、それを察しているように今の女尊男卑の世の中が見直されているのは事実である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 センタービルの右側に聳えるIS運用を目的としたアリーナへと一夏達は来ていた。研究機関のというよりもかつて見たモンド・グロッソで見た競技用アリーナを思わせる立派な物である。

 

「IS学園のアリーナと同じぐらい立派だ」

 

「そうだろうな。ここは、かつて私も国家代表として来ていた」

 

誇らしそうに千冬は目の前のアリーナに視線を向ける。かつてこのアリーナは、スペースシャトルを格納するために作られていたが、ISの出現、普及により急遽、競技用アリーナへと変更がされた経緯があった。

 

故に当初の設計よりも規模が大きくなっている。IS乗りとしての自覚を持ち始めていた一夏を千冬は複雑な視線を向けた後、

 

「さあ、私たちの時間は限られている。早く行くぞ」

 

当然のことながら、こちらに所属する代表候補生、国家代表達も厳しい訓練を行っているのだ。彼女達の邪魔をするわけにはいかないものである。

 

アリーナの入り口には数人の警備員が控え、一流企業の受付を思わせる女性達が業務を行っていた。一夏達を迎えるように一人の男が立っていた。

 

ネームプレートには 南雲 夏彦と記されている。こちらの警備班 主任という肩書きである。

 

背が高く細身であるが、目は野生動物を思わせるほど鋭い赤く縁取られた黄金の瞳を持った端正な顔立ちの男性であった。

 

「ご多忙なところ、急な申し出で迷惑を掛けてしまって申し訳ありませんでした」

 

「別に構わない。こちら側としてもこの件は他の国に晒したくはないというのが本音だ」

 

千冬の一応の謝罪に対し、夏彦という男は特に愛想よくすることなく端的に応えた。相手によっては印象を悪くしかねない態度である。

 

「遅れたが、自分はこういう性格で、相手によって愛想よく振舞うことができない」

 

「いや、私は気にしていない。それでも仕事はしっかりしているのだな」

 

「警備はあまり表に出る仕事ではないからな。自分のような人間でも務まる」

 

ほとんどの人間が千冬に対し、畏怖の念を感じ。腰が低くなるのだが、この夏彦という男 物怖じせずに千冬にタメ口のように話してくる。

 

彼女は無意識であるが、この夏彦という男に好印象を抱くのだった。対する一夏は、こういうのを警備班のトップにして良かったのだろうかと疑問を抱いた。

 

「そうですか(ほとんどの男は私を怪獣か何かを見るように見るのだが、この男は・・・・・・)」

 

「時間が押している。こちらに案内する、来てくれ」

 

夏彦にあわせるように一夏、千冬も後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 受付を済ませた後、一夏、千冬はアリーナのピットでそれぞれの専用機を展開していた

 

 現役を引退し、専用機を国家に返上した千冬であるが、一年前に束から専用機を受け取っていた。それの名は”紅椿”。

 

現在世界各国が開発を急務としている第三世代よりも進んだ第四世代ISであり、束が千冬の為に作り上げた機体である。

 

 ISを個人が所有することは重大な問題であったが、未だに第三世代ですら形になっていない第四世代の存在は貴重であり、日本政府はその存在を極秘とし、処罰の代わりに千冬に条件としてその研究に協力を取り付けることに成功した。

 

この”紅椿”を千冬が手に入れた経緯は、日本政府も詳しく関係者に情報を開示しておらず、さらにはIS委員会にも秘匿していた。真実は、一年前まで遡るのだが、ここで語ることではない。

 

今回は束に所属する織斑一夏の蒼牙の調査も兼ね、さらには男性操縦者のデータの採取が目的である。故にアリーナでの見学は一切許可はされず、関係者以外はアリーナには居ないのである。

 

 

 

 

 

 

IS インフィニット ストラトス

 

第一世代

 

兵器としての形を目指したISであり、現在は完全に退役している。

 

 

第二世代

 

後付による換装、武装によって戦闘での用途の多様化を目的とした世代。現在、最も実戦配備されている。

 

 

第三世代

 

操縦者のイメージ・インターフェースを用いた特殊兵器を用いた世代。現在、世界各国で開発が急務とされており、いまだ実験機の段階である。特殊装備ゆえに燃費が悪く、多くの課題を残している。

 

 

第四世代

 

換装なしで様々な戦場に多様化できる能力を持ち、展開装甲、自動支援装備が標準とされている。現在、確認されているのは、紅椿のみである。

 

第三世代すら実用化に至っていない現状を見れば、完全なオーバーテクノロジーとも言うべき存在である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナで狼を模したバイザーをつけた蒼いIS 蒼牙纏った一夏がアリーナの上空に舞った。蒼牙に合うように、紅のIS 紅椿を纏った千冬が現れる。

 

紅椿には、千冬が現役時代から使用していた雪片の発展型である雪片 弐型。紅と蒼のISが互いに対峙しあう。

 

「一夏。これは模擬戦とはいえ、実戦とほぼ変わらない危険性を伴う。だから、決して慢心などするなよ」

 

内心、そういうことはないと思いつつも言わずには居られなかった。

 

「分かっているよ、姉さん。私は油断して戦闘を行うほど自惚れてはいないから……全力で行かせて貰います」

 

「よし、これより模擬戦を始める。お願いします」

 

視線を管制塔に向けた後、試合開始のブザーが鳴り響いた。その瞬間と同時に蒼牙と紅椿が一気に加速し、互いの獲物である”雪片弐型”を構え、交わった。

 

両方のエネルギーが弾け、衝撃と強い光が弾けた。刃による上下左右の応酬から始まり、アリーナ上空に舞い上がったと同時に蒼牙は弓を構え、エネルギーの矢を紅椿に放とうとするが、

 

放つ前に紅椿が瞬時加速を行い距離を詰め、大きく刃を振るった。

 

「武装の展開がまだまだ甘いぞ!!!後、0.5秒短縮しろ!!!」

 

矢を収納させる暇を与えないかのように紅椿による攻勢がさらに増して行き、蒼牙のシールドエネルギーが消費していく

 

「……っ!!!」

 

ここで蒼牙が取った戦法は、紅椿の懐に飛び込み、腕の装甲を掴みそのまま柔道の投げを思わせるようにしてアリーナの地表目掛けて投げ飛ばした。

 

普通のIS乗りなら絶対に取ってこない戦法に千冬は感心すると同時に改めて自身の身内の厄介さを認識するのだった。

 

(まさか、あのように私を掴んでくるとは……ルールのある競技だからこそであるが、もし完全な実戦ならば私が敗北してしまうかもしれない)

 

戦闘に勝つ要因としては、技量や武器等の装備の重要であるが、それ以上に周りの微妙な気の流れというのも無視が出来ない。

 

全身の”展開装甲”をスラスターとして起動させ、一瞬にして態勢を整え急上昇を開始した。蒼と紅の機体がアリーナ上空を舞う。

 

 

 

 

 

”展開装甲”

 

第四世代に搭載された可変装甲であり、一つ一つがエネルギーソード、スラスター、エネルギーシールドへの転換が可能である。場合によっては、ピットとしても使用ができる。

 

 

 

 

 

 

 蒼い狼のバイザーは、確実に接近してくる紅椿を捕らえる。弓による攻撃も考えたが、操縦者である千冬は現役時代、接近戦仕様だけで世界大会を制しているためこちらによる戦法で攻めるのは難しい。

 

魔戒騎士としての戦闘スタイルならば、良かったかもしれないが、魔戒弓のような戦闘用の武器は流石の束でも難しかった。

 

”いっくん。使い方が荒すぎるよ!!!”

 

蒼牙開発の際の実験で、一夏の注文を再現しようとしたが強度が”展開装甲”をもってしても耐えられなかったのだった。

 

故に一夏は弓を使わずに、雪片のみで戦うことにした。剣術は魔戒弓を扱う過程で師より徹底的に叩き込まれている故に臆することはなかった。

 

姉だからと言って、ブリュンヒルデだからと言って負けても構わないとは一夏は考えていない。それは甘えだからである。

 

やるからには必ず勝つ。それが一夏の意地であった。

 

姉 千冬のISにおける技量の高さ、戦闘技術は魔戒騎士、法師を除けば最も高い。贔屓目で見なくとも純粋な剣の技術ならば、鋼牙、零と互角かもしれない。

 

自分より格が上の敵ならば何度も相手にしていた為、一夏は真っ直ぐに千冬 紅椿に向かっていく。

 

距離を一気に詰めるために蒼牙は瞬時加速を行う。瞬時加速は効果的であるが、使う場面を選ばなければ自滅にも繋がる。

 

千冬は真っ直ぐに加速してくる一夏に対し、安易に使うなと忠告したくなったが、しかし一夏は自分の手に負えない相手との戦いを行っている。油断してはならないと警戒色を強める。

 

ここでピットを使えばよいのだが彼女の戦闘スタイルは剣による近接戦闘であるため、ピットを使うことでそのリズムが崩されると判断し、使用することはなかった。

 

瞬時加速で接近してくる蒼牙が雪片を大きく振るうそれを右へ加速することで紅椿は回避するが

 

「なにっ!?!」

 

蒼牙は強引に自身の軌道を右に変え、そのまま紅椿目掛けて蹴りを加えてきたのだ。突然、蹴りによる衝撃が襲ってくる。瞬時加速による勢い、さらには放たれた蹴りの衝撃はあまりにも強かった。

 

急な軌道変更による衝撃が一夏を襲うが、歯を食いしばりそれに耐え相手に狼のように喰らい付く。

 

その為、千冬は思わず声を上げてしまい、態勢を崩してしまった。それを逃さずに一夏は徒手空拳による攻撃を始めたのだ。

 

パワードスーツであるISのパワーは蹴りや拳だけでもシールドエネルギーを削る事ができる。間合いを完全に詰められ、剣を振れずに雪片の刃を盾代わりにして防ぐ。

 

一夏は自分が最も戦いなれた方法、セシリアと共に行っていたISによる徒手空拳での戦闘を行った。魔戒弓のように遠距離、接近戦を同時に行うことが出来ない為である。

 

千冬は、一夏の戦い方に対し、一つの評価を下していた。

 

(これが一夏の戦い方……本当に私の家族とは思えない程、何と荒々しいのだろうか。一夏の一番の武器は…戦闘における勢い、”爆発力”だな)

 

余計な事を考える暇などないが、こう組み付かれてしまっては態勢が立て直せない。瞬時加速の軌道を無理やり変えることは体に相当な負担を掛けるため一夏もそれに堪えていた。

 

相手がそうくるのならばこちらも多少の無茶をしてもと判断し、千冬は雪片の機能である”零落白夜”を使い、一気に勝負をつけることにしたのだ。

 

このまま一気に押し切るように決着をつけるのだが、紅椿が輝いたと同時に蒼牙が炎に包まれた。相手の考えを読んだのか、”烈火装甲”を発動したのだ。

 

機能の全てを攻撃に回す為、蒼牙の攻撃力は数倍以上に跳ね上がる。互いに現存するISの中でも最強と言ってよい攻撃同士がぶつかり合う。

 

炎と光が交差し、アリーナ全体を光と爆発が襲った。そして………

 

「勝者 織斑千冬」

 

紅椿のシールドエネルギーは、0に近くなっていた。

 

勝敗を分けたのは、最初の攻撃もそうだが、無理やりな瞬時加速を行った事によるダメージを受けた状態で”烈火装甲”を発動させ、相手が同等の攻撃力で迎え撃ったため、過剰にダメージを受けてしまったことによる。

 

「おうおう、やっぱ姐さんは強いよな、一夏。少し惚れ直してしまったぜ」

 

「そうだね。やっぱり姉としての意地があったんじゃないかな」

 

一夏の言葉の通り、やはり姉であるため、弟、妹よりも強くありたいという千冬の願望であった。

 

(少し危なかったな。やはり私と一夏では戦闘における相性はかなり悪いかもしれん……)

 

剣を用いた戦闘 日本独特の剣術を基本とした千冬と魔戒騎士のように予測不可能な相手に対して臨機応変に対応する戦闘術では相性が悪いのかもしれない。

 

「一夏。今回の模擬戦は非公式であるが、反省を行うから、こっちに来い」

 

(そうだったね。一応、束さんにも了承は貰っていたけど、もしかしたらまたISは……)

 

今回の模擬戦で姉の技量は、IS乗りとして駆け出した自分の目標の一つとして一夏は認識するのだった。だが、その一方でISはまた、本来の進むべき道とは真逆の道を行くことになった………

 

 

 

 

 

 

 

 今回の戦闘データは、有意義なモノとして科学技術庁を初めとした政府関係者に喜ばれることとなった。

 

紅椿の稼動データ、さらには束によって製作された蒼牙は第四世代ではないが、最も完成された第三世代という結論が出された。今後の国家代表の専用機開発の参考とされることとなった。

 

そして、如何にして織斑一夏を日本政府に帰属させる目論みを更に進めることとなる。IS委員会に極秘で進められた今回の模擬戦内容は公式に存在しない……

 

ここ日本だけではなく、各国もまたそれぞれの主導の下 より優れたISの開発を行っていく。アメリカではイスラエルと合同で本格的な軍事用ISの開発が進められていることを知る者は少ない………

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに……

 

「ところで一夏。あの不届きモノが言っていた噂だが……何だったのだ?」

 

千冬はヴリルの言っていたことが気になるのか、一夏に問う。

 

「………その噂はね……」

 

ここで話をはぐらかせばと思ったのだが、先の延ばしても問題の先送りになるだけで解決にもならないと判断したのか、一夏はありのままに話したのだった。

 

「ふざけるなっ!!!!!?!!なぜ、私がそういう目でみられるのだ!!!!!単に出会いがないだけだ!!!!!そっちの気はない!!!!!!!」

 

肩を震わせて、その噂に対し怒りの咆哮を上げる千冬であった。その後、彼女の受け持つ授業がさらに厳しさを増したのは言うまでもなかった………

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも世の中の男が軟弱なだけだ!!!」

 

「まあ姐さんなら手ぇ握ったら、相手の手を握り潰しそうなイメージがありそうだもんな」

 

「人を化け物みたいに言うな!!!この妖怪もどきが!!!!」

 

(・・・・・・姉さん。待ってても男の人は来ないよ)

 

 

 

 

 




あとがき


IS関係って、国の事情との絡みで色々と大変なので引退した国家代表の方は、一般人として普通の生活に入るのではないかと考えたりします。

当然、それなりにやることをやって結婚と言った具合に……千冬さんは、すみませんと謝罪しておきます。原作でも特に男の気配がないので、多分、お付き合いはなさそう……

もしくは、女尊男卑な社会だと男性が情けないというか、千冬さんが失望(一夏以外)してたりするのかなと考えたり………

ちなみに、千冬さんは歴代最強でありますが、他の国家代表はIS乗りとしては勝てなくとも女としては千冬さんに勝利してたり(笑)

補足ですが、Jアイランドシティには、冴島財閥系列のビルもありますから鋼牙も時々、来てたりします。

元ネタは、分かる人には分かりますよね………

こちらでの織斑姉弟の恋愛感ですが、千冬さんはいつか自分の元に王子様が来ると待っている派です。こう考えると可愛いですよね千冬さん。

ちなみに一夏は好きになった人が好みのタイプという具合です(女の部分)

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