I S×GARO   作:navaho

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個人的にやってしまったなと我ながら思います・・・・・・

タグにオリキャラありと入れようかと思います。あとオリジナルの設定が少し多くなっているような(汗)

闇を照らす者、面白いですよね・・・・・・IS二期10月より始まりですね・・・・・・どうなることやら・・・


第弐拾壱話「篠ノ之 束(後編)」

IS”インフィニット・ストラトス”の生みの親である篠ノ之 束の来訪は学園全体を大きく騒がせていた。

 

ほとんどの教員が迎えにでる中、一部の教員は各国からの問い合わせも対応に追われていた。

 

「は、はい。確かにそうですが。一応はタッグトーナメント終了までは居るそうです」

 

情報を何処から得たのかは分からないが、各国が行方を追っていた彼女の行方が突然と知れたのだ。その確認を取るのは当然の成り行きである。

 

急にIS学園を尋ねてきた束について、その姿を一目見ようと噂好きの学園の野次馬まで集まってくる様であった。

 

そんな中、騒ぎ立つ学園の生徒を傍目に篠ノ之束の妹である 箒は複雑そうに見ていた。

 

「アレ?モッピーは、お姉さんのところに行かないの?」

 

「何だ…そのモッピーは……まるでモップか何かではないか」

 

「えぇ~?可愛いと思うんだけど、かんちゃんはどう思う?」

 

「私には、そういうのは分からないかな……」

 

本音の独特のセンスに簪は少し困惑した表情で応えるのだった。

 

「箒さん。手のほうは大丈夫なの?」

 

「ああ、保健の先生に診てもらったが、三日で腫れは引くそうだ」

 

湿布を貼った手を見せながら、箒は少しだけ笑みを浮かべる。簪を安心させるように彼女なりに気遣っているのだ。

 

「良かった。タッグトーナメントで少しでも調子が悪かったら、どうなるか分からないから……」

 

「そうだな。パートナーに迷惑を掛けるのだけは、遠慮したいモノだ」

 

この二人、数日後に控えたタッグトーナメントに向けてペアを組んでいたのだ。

 

互いに知り合ったのは簪のアリーナでの練習を見ていた箒が声を掛けたのが切欠だった。彼女としては専用機持ちと組めたらと淡い期待もあってなのだが………

 

「まさか、簪も一夏の件を知っていたとは……」

 

「うん。私はあいつ等に襲われているところを助けられたわ」

 

「かんちゃん。私、あんな怖い目にはもう二度と合いたくないよ~~」

 

その言葉には一同納得であった。あの人智を超えた怪物に対抗できるのは同じ立ち居地に居る”闇の戦士”だけである。

 

(それにしても…あの怪物は本来なら三ヶ月に一度ぐらいの頻度でしか現れないと言われているが……)

 

箒は、ISによって齎された”女尊男卑”の世界の陰我が蔓延し、ホラーが爆発的に増えた世の中にした原因である”二人”について思考をめぐらせた。

 

ISを作り上げた自分の姉とそのISを戦いに使った想い人の姉。この場合、姉はその友人に力を貸しだだけ……

 

その友人は”家族”を護るために世界そのものに戦いを挑んだ。友人に貸した”力”を作り出した姉は何を思って”IS”を作り上げたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思えば私は、あの人、姉という人がどういう人間なのか良くわかっていない。覚えている限りだと、時々家に休暇で戻ってくる時でいつも寂しそうな顔をしていた。

 

ある日突然、奇天烈な格好をして叱った父を問答無用で殴りつけ、母が悲鳴を上げたという恐ろしい光景だった。

 

そのときの顔は、かつて私を虐めた奴らのように下卑た笑いではなく、泣き出しそうでそれでいて怒っているそんな表情だったと思う。

 

時々、馴れ馴れしく話しかけてくるが、私はこの人、姉について複雑な感情を抱いていた。言うまでも無く私は、いつもこの姉と比べられていたからだ……

 

”どうして、こんな問題もできないの?”

 

”あなたのお姉さんは、四歳で数学を理解したのに、それに比べてあなたは……”

 

”IS適正ランクCか……これでは、代表候補生には推せないな”

 

”まったく、どうして姉妹でこうも違うのか……”

 

幼少の頃は、天才である姉に続くもう一人の天才をと勝手な願望を抱いた周囲の大人達……

 

一夏と別れてから、姉のビッグネームを利用しようとした政府の人間。例え、努力の末、成果を上げても”できて当然”と一蹴されてしまった。

 

天才の妹として見なかった他と違ったのは、父と母と一夏だけだった。

 

母は私が普通の子供であることを何よりも喜んでくれた。先生が褒めてくれない100点のテストもしっかりと褒めてくれた。

 

父は姉の教育に熱心だったが、剣道で私の事をそれなりに見てくれたと思う。ただ、私よりも姉の方に掛かりきりだったのは事実だったが………

 

私には無い”才能”を持つ姉を何時の頃から私は疎ましく思い始め、それが顕著だったのは政府の保護プログラムで各地を転々としていた時だった。

 

”あの人とは関係ないっ!!!”

 

姉の事を聞かれたときは、いつもこうやって怒鳴り、ここ”IS学園”でも同じことをしていた。

 

「分からないものだな……どうして、あの人はあんな”才能”を持っているのに寂しそうな顔をしていたのかが……」

 

持っていないモノからすれば、羨ましい限りなのに……それを疎ましく思うのはあまりにも贅沢すぎるとさえ思ってしまう。

 

簪は、私の言葉に知っている誰かを連想したのか、複雑そうに眉を寄せていた。

 

そういえば、簪の姉はIS学園の生徒会長であり、ロシアの国家代表だった。あの性格の姉とこの簪のような控えめの妹、姉妹とは良くわからないものだ。

 

千冬さんと一夏も一応は、姉妹?性格は違うが容赦の無い荒々しさは共通している。ただ、千冬さんと違い一夏は家庭的だったと思う。

 

かくいう私も、どうしてあの天才の姉に普通の妹なのかが分からなくなってくる。あの人のこともそうだが、私は私でやらなくてはならないことがある。

 

まずは、タッグトーナメントで自分のできる事を、出せる成果をIS学園で出さなければならない。

 

専用機が欲しいわけでも、私自身の力を誇示したいわけじゃない。ただ、今ここで頑張っている一夏と肩を並べて行きたいのだ。

 

魔戒法師の凰にクラス代表のオルコット。彼女達はそれぞれの出来ることで一夏と並んでいる。私だけが何も出来ずに傍でいるのは嫌だからだ……

 

私の出来ること、やってきたことは剣を振るぐらいのことだ。これで出来ることをまずは、タッグトーナメントで頑張るしかない……考えるのはそれが終わってからでも構わないだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束は混乱を避けるためにIS学園における要人、ゲスト用の宿泊施設に滞在することになった。

 

「お金、掛かってるね~~~~」

 

自身のゲストルームを束は笑いながら見回した。

 

「まったく。少しは大人になったと思ったら、対して変わっていないではないか」

 

もう少し大人になれれば文句なしと千冬は、束をそう採点した。減点させるポイントは、何処からか取り出したスナック菓子である。

 

「篠ノ之博士。必要なことがありましたら、そちらの端末から連絡を入れてください」

 

「はい、了解しました。志摩マン」

 

「おい束。私達よりも年上なのに志摩さんになんて」

 

「気にしなくて構わないわ。志摩マンって……どういう感じで名づけたの?」

 

束のいつもの調子に対し、千冬は思わず声を上げるが志摩は気にすることなく、やんわりと聞き返した。

 

「うん。何だか、お母さんみたいな感じがしましたので!!!」

 

(ああ、確かに分かるな……)

 

国家代表時代、少し調子に乗っていた自分を心配してくれたゆえか小言が多かった。

 

内心”このおばさん。言われなくとも分かっている”と思っていたのは、千冬だけの秘密?であるが……

 

「フフフフフフフフフ。ちぃ~ちゃん♪」

 

「何だ?その笑みは……」

 

千冬と志摩を交互に見ながら、束はチェシャ猫のような笑いを浮かべていた。

 

「はっ!?!束、お前、まさかあのことを!!!」

 

「♪あのことってな~に?私はチーちゃんの愚痴は……」

 

千冬は志摩を一瞬見てから、束に余計な口を出される前にその口を塞ぐのだった。

 

「………別に気にしていないわ。織斑先生、この後、構いませんか?」

 

「はい…束。あまり迷惑をかけるようなことをするなよ」

 

「はいはい。分かっていますって♪チーちゃん。お仕事、頑張ってね」

 

またもや何処からか出したのか、ショートケーキを頬張っていた。

 

「まったく……久々に会えば、こういうことか………」

 

溜息を付きながら、千冬は志摩と共にゲストルームを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束は、笑みを浮かべて二人を見送った……

 

「チーちゃんも変わらないな。でも、いつまでも変わらずに居られるって訳じゃないよね……」

 

束は自身の荷物の中にあった小型の端末を取り出し、そこに保存されているデータを呼び出した。

 

「やっぱりいっくんからのメールだと、ムドーってホラーはここに来るかもしれない……」

 

実を言えば、IS学園でも一夏と千冬がらみで問題が発生しており、状況は最悪な結果に成りかねないのである。

 

「やっぱりホラーは、ソウルメタル以外じゃ殲滅は不可能…そのソウルメタルを機械に埋め込むことも……」

 

束は、一夏からの報告、さらには、自身と共に生活をしている黄金騎士との経験を踏まえながら、あるデータを呼び起こした。

 

「一年前は、やられっぱなしだったけれど……今度はそうは行かないよ」

 

端末のディスプレイにはソウルメタルのデータとホラーのデータ、それらを比較する固有端数のデータが表示される。

 

「理論上なら、ホラーを完全に倒さなくとも十分なダメージは与えられる……だけど……」

 

束の脳裏にかつての”白騎士事件”の光景が浮かび、そこから今の世の中が始まったことに……

 

「選択を間違えば、これはISよりも遥かに危ない力に成る……」

 

こんなものを発表すれば、とんでもないことになるのだ。故に束は、悩んだ。この力を公表することに……

 

だが、この力を使わざる得ない状況になりつつあるのも現状であった………

 

(あの時、私はISの力を迷いもなくチーちゃんに渡した。本当なら、渡すべきじゃなかったかもしれない)

 

白騎士事件が起こる数日前、千冬とISを動かし、その力の使い方を教えた。

 

(だけど、私はチーちゃんを助けたかった。あの冷たい世界を歪めても変えたかった・・・・・・)

 

その歪みは彼女の考えを超え、手に負えないものだった。

 

「悩むのは、束さんらしくないかもね~~♪」

 

束は胸元から取り出した携帯の画像を呼び出す。

 

そこには、白いコートを纏ったバラゴとクロエ、自分 束の姿が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲストルームを後にした千冬と志摩は、少し前に騒ぎを起こし校則を破った一人の生徒の処罰について話あっていた。

 

「ボーデヴィッヒの奴……」

 

今度こそ厳しく言うべきと千冬は誓うのだった。

 

「処罰は反省房に、二日謹慎が妥当ね」

 

志摩は生徒から剣道部員からの報告を見ながら応えた。

 

「ご迷惑を掛けてばかりですね。私は……」

 

千冬は志摩に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「構わないわ。世の中は、他の人に迷惑をある程度掛けて生きていくものだわ」

 

「ですが…私は……」

 

思えば、代表候補生の頃から、護衛として色々と世話を焼いてくれ、第二回 モンド・グロッソの際に勝手にISを使った自分を庇ってくれた。

 

「らしくないわよ、織斑千冬。あなたは、もっと堂々としているものよ」

 

表情は真面目だが、口調は少し笑っているようにも聞こえる。

 

「そうですか……あなたには、いつも……」

 

ここで千冬はあることを思い出した。この人物にモンド・グロッソの後に一夏を託した……

 

「志摩さん。あなたにはどうしても聞きたいことがあります……」

 

「それは、一夏君が魔戒騎士になったことに関してかしら?」

 

そのことですと言わんばかりに千冬は彼女を睨みつけた。志摩は少し自身の呼吸を落ち着け

 

「そのことに関してとは別に私からも少し聞きたいことがあるわ」

 

志摩は小型の端末いや、スマートフォンを取り出し……

 

「第二回 モンド・グロッソから誘拐犯の潜伏場所までアナタは、五分ほど遅れている」

 

端末には、誘拐犯の場所までたどり着いた際に、確認されたIS 暮桜のそのときの状況がデータとして表示されていた。

 

「暮桜のダメージはレベルBであり、雪片弐型を紛失……」

 

あの時は、とくに言及せずに志摩は彼女を 織斑千冬を庇った。今でも覚えている、縋るように一夏を抱きしめていた千冬の姿を……

 

「あ、アレは…どうしようも無かったんです!!!」

 

まるで悪夢を思い出したかのように千冬は、普段の彼女とは思えない程、取り乱していた。

 

志摩は言うべきではないと判断し、

 

「言わなくても構わないわ、アレを言及されたらアナタは、取り返しの付かないことをしてしまったかもしれない」

 

当時の不戦敗に関して千冬は政府にこれ以上が無いほど追求されていた。その時の彼女は精神が恐ろしく不安定であり、ここは刺激してはならないと志摩は判断したのだ。刺激をして篠ノ之束による干渉で大きな”事”に繋がるかもしれなかったためである。

 

結局、千冬は国家代表を引退、専用機を返上となり、志摩は解雇ということになった。

 

「あなたが言いたくないならそれで構わない。それは、一夏君にとっても辛いことなんでしょう?」

 

無言で千冬は頷いた。

 

「そのことには、聞かないわ。一夏君の件はしっかり話す」

 

志摩は千冬を見据え、

 

「だから、アナタは一夏君の事をもっと信じてあげて欲しい。あの子もあの子で必死で前に進んでいる。それを見守り、信じてあげて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは、生徒会のメンバーである虚に連れられる形で反省房に来ていた。

 

無断での外泊、さらには剣道部との間で起こった騒ぎの処罰として……

 

以前は、理不尽だと言わんばかりに叫んだのだが、今回は落ち着いていた。淡々と作業をこなすように………

 

「二日間だけ、ここで頭を冷やしなさい」

 

「………………」

 

ラウラは無言のまま頷くことも無く反省房へと足を踏み込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある場所で……

 

「はぁっ、はぁっ、あ、アナタは……な、何なのよ!?!」

 

女性はある場所まで逃げていた。そこは様々なモノが廃棄されているゴミ集積場の跡地だった……

 

「何って…アナタのその態度が気に入らないからよ……よくもまあ、人を食い物に……あっ、私も変わらないか……」

 

黒いスーツの女性 ケイは魔戒文字を浮かばせながら、体を歪に変化させながらその女性に手を掛け、首元に爪を食い込ませて喰らった……

 

「まったく、最近の女は随分と質を落としたわね……そうよね、コウイチ」

 

振り返るとコウイチが無表情で佇んでいた。先ほどの女性、この世の中を謳歌する”今時の女性”であったが、とある因縁を付けられ、喰らわれたのだった。

 

「人間って、どんな味がするかと思えば、意外と味がしないものね」

 

面白そうに笑みを浮かべるケイのそれは、人間というよりも獣のそれに近かった……

 

「それにあの眼帯の子……巧く利用すれば…」

 

良からぬことを思いついたのか、彼女は”主”が宿る妖刀に視線を向けた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムドーとの戦いを終え、一夏はレオと共にIS学園へと戻って来た。視線は遥か先に見える都市群の何処かに潜むであろう”ムドー”に向けた。

 

「一夏さん。僕は、結界の守りを強化します」

 

レオは足早に”四聖”の元へ駆け出し、一夏はその背を見送り普段は使われないヘリポートへ視線を向け、学園全体が騒がしいことに気がついた。

 

「一夏。来たみたいだな……束さんが……」

 

「あぁ…分かっている。束さんには色々と言わなくちゃいけないことがあるから……」

 

一夏は右の耳で待機状態にある”白式”が輝いていた。

 

「そいつのこともそうだが、事態は恐ろしく厄介だぞ。タッグトーナメントなんて、あのムドーが最も好みそうなことだぜ」

 

ヴリルは、昨夜のうちに仕留めればと思ったが、相手はホラーの中でも使途ホラーと同格であるため、そう簡単には倒せない相手である。

 

「ムドーは、こういう人の多い場所に現れるのか?」

 

何度目か分からないが一夏はヴリルに尋ねる。

 

「そうだぜ、あの野郎は、節操がないから平然と人前に現れて、喰らいやがる。あの野郎が出てくる件は大抵が面倒ごとになる」

 

「ホラー絡みが面倒じゃなかったことってあったけ?」

 

「ははっ、そいつはそうだな。ただ、タッグトーナメントの前に何とかできれば一番なんだが……」

 

理想はそれだが、そうなるとは限らないのが現実の厳しいところである。一夏も毎夜、積極的にムドーを追うのだがその痕跡は見つからなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね~~~。それでそのこを、いっくんが引き取ることになったんだ」

 

一夏は束に昨夜の詳細を事細かに伝えた。

 

「そうです、束さん。倉持技研は……」

 

「言わなくてもいいよ。私もさっき知らされて、気をつけるようにと言われたよ」

 

束は端末を操作し、ネット新聞に”倉持技研壊滅”との記事を見せた。原因はテロによる事件として処理されているようだ。

 

「ほんとはホラーなのに、その辺は言うわけにもいかないからね~~」

 

束は、記事を見ながらこの世界の闇の部分を思い、そう呟くのだった。一言加えるなら、原因となったホラーはかなり厄介な奴である………

 

「話を戻しますけど、白式に関しては姉さんに伝えて対応を任せてみます」

 

「そう。蒼牙のデータを何度かチェックしたけれど、久々にメンテナンスもするから今日一日は預けてくれる」

 

一夏に束は、専用機のメンテナンスを提案した。此処のところ動かしてはいたもののメンテナンスは軽く行ったに過ぎなかった。

 

「はいそれじゃあ、お願いします」

 

待機状態の蒼牙を受け取ろうとした時、束は急に体の奥からこみ上げてくる物を感じた。

 

「うっ……」

 

急いで備え付けの洗面所に行き、お腹を押さえ嗚咽しながら何かを吐き出そうとしていた。だが何かが吐き出されることはなかった。

 

「束さん……貴女、もしかして……」

 

その症状を一夏は知識として知っていた。落ち着いた束は笑みを浮かべ

 

「そうだよ、いっくん。私ね、お母さんになるかもしれないんだ」

 

愛おしそうに”彼”の命を継ぐ”新しい命が宿る”場所を撫でた……

 

「そうなんだ……おめでとうっていうべきなのかな……」

 

一夏は呆然とした面持ちで束を見ていた。言うまでもなく一夏は、IS”インターセックス”故に男女どちらの立場でも”子供”を作ることが出来ないのだ。

 

故に何処か羨ましさを感じていた。かつて、自分に問うたことがある。自分が誰かを愛するならば、自分は男女どちらで…相手は、男女どちらの立場だろうと……

 

「実を言うとね、バラゴにも内緒にしてきたんだ。言うと絶対に心配して、付いてきちゃうかも知れないからね」

 

誰にも聞こえないようにか、小声で束は一夏に話しかけ、”はあ…”と一夏はここでも呆然とした………

 

この時、篠ノ之 束が新たな決意を秘めてここ”IS学園”へ訪れたことを一夏は察する事ができなかった………

 

 

 

 

 

「すいません。初日から迷惑をかけてしまいまして・・・・・・」

 

教職員室へ戻ったレオは、着任早々各国の”束”に関する問い合わせの対応に追われていた。

 

「いいんですよ、不導先生。篠ノ之博士の件は、大きなことですから、私も結構戸惑ってます」

 

またもや問い合わせの電話が鳴り響く。レオも電話対応を行う。

 

「はい。IS学園教員 不導レオです・・・・・・」

 

「はい。IS学園一年一組 副担任 山田真耶です」

 

 

 

 

 

 

束のIS学園来訪の件は瞬く間に世界を駆け巡り、ここドイツもまたその対策へと動いていた。

 

ここは、ドイツが誇るIS配備特殊部隊”シュヴァルツェア・ハーゼ”を要する中央軍総司令部の一室。

 

日本のJ アイランドシティ同様、国家代表及び代表候補生の訓練施設が存在している。

 

この基地の総司令と”シュヴァルツェア・ハーゼ”副隊長 クラリッサ ハルフォーフが向かい合っていた。

 

「イギリス政府から抗議の声だ。そちらの代表候補生は礼儀を知らないのかと……」

 

総司令 コンラッド フォン リーデンドルフは、政府からの通達、小言に肩をすくめた。軍人らしからぬ長い白髪が揺れる。

 

「総司令。ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長は……」

 

「最近は、専用機持ちに関しては、各国も精神面の方の教育も徹底させるそうだ。今までもそうだったが、かなり甘やかしていたようだからな」

 

代表候補生の基準は高いISの適正値、各国が指定した訓練等を目標点に達した者が選ばれる。

 

第三世代ISに関しては、その特殊な装備故にシステムに最も適合した者を選出している。

 

イギリスの”ブルー・ティアーズ”は、適正値が高いセシリア・オルコットが代表候補生、テストパイロットとして選出されている。

 

ここドイツも”AIC”の装備の適正値が高く、さらには卓越した戦闘能力を持ったラウラ・ボーデヴィッヒが選ばれているが……

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐の処遇は今回のタッグトーナメントでの結果次第だ」

 

IS学園が各国が干渉できなくとも、やはり各国の顔ともいえる代表候補生の立場としては今回のラウラの行動は無視できる物ではない。

 

報告によると、ロシアの国家代表も苦言を漏らすほどである……

 

「正直言えば、私はラウラ・ボーデヴィッヒを代表候補生にするのは反対だった」

 

「そうでしたね。総司令は、隊長を候補生にするのは最後まで反対でしたね……」

 

ラウラの実力は、他の候補者に比べても格段に高い実績を持っていたため反対する者などほとんど居なかったが、この司令だけは反対していたらしい。

 

「そうだ。はっきり言えば軍事行動は集団で動くものであり、個人の武勇に頼るモノではない」

 

当時のラウラの行動を振り返ると政府が直々に招待した”ブリュンヒルデ”の影響を大きく受けていた。”自分は特別”だとでも言わんばかりに……

 

過剰なエリート意識とプロ意識故に”ドイツの冷氷”と評された。

 

「司令は、織斑教官の事がお好きではないのですね……」

 

「そうだな。私はハッキリ言うと軍に代表候補も代表も必要ないと考えている。世の中の連中は旧兵器は不要で、ISさえあれば三日で戦争は終わるというが……そんなことはない。それで終わるのならば、とっくに世界は無くなっているのだからな」

 

吐き捨てるようにコンラッドは、手元にあるラウラのプロフィールにある”ヴォーダン・オージェ”の項目に目を通す。

 

「我が軍は健全なる精神と肉体を持ってこそ、人間の身体に手を加えるという手法は、我が軍の伝統に反する」

 

”ヴォーダン・オージェ”(オーディーンの瞳)

 

瞳に特殊な擬似ハイパーセンサーを埋め込み、IS適性値を向上させる事を目的とし、

 

脳への視覚信号の伝達速度の飛躍的な高速化と、超高速戦闘下での動体反射を向上させる計画である。理論上不適合などのリスクはなかったが、移植されたラウラの左目は変色し、制御不能となった。

 

その後、あらゆる訓練で後れを取ることとなり、出来損ないという烙印の象徴となった。

 

「司令はあのプロジェクトには反対でしたね・・・・・・」

 

「そうだ。あの頭だけが異様にでかいならず者達をのさばらせた結果が一人の兵士の将来を滅茶苦茶にしてしまった」

 

クラリッサは、自身の眼帯を抑えながら応えた。

 

「ボーデヴィッヒ少佐の件でそれなりに牽制はしたが、裏では私達に黙ってキナ臭いことをしているらしい。それと専用機を開発した研究所が”亡霊”にやられたらしい」

 

「ぼ、”亡霊”にですか?」

 

「諜報部の報告によれば、研究所では、ヴァルキリー・トレースシステムを研究、開発を行っていたらしい」

 

ヴァルキリー・トレースシステム

 

モンド・グロッソの戦闘方法をデータ化し、そのまま再現・実行するシステムであり、そのモデルは”ブリュンヒルデ” 織斑千冬。

 

彼女の生体をコピー、記録したAIを元に開発、研究がされていたが、ある事情によりこのシステムの開発研究は、国家、企業問わず、条約により禁止された。

 

「あのシステムは条約で、開発、研究は禁じられているはず」

 

「そうだ。あのシステムは決して制御ができるものではない」

 

過去、ヴァルキリー・トレースシステムにより多くの被害が発生。被験者はプログラムに過ぎなかった”織斑千冬”の人格の影響で精神が破綻。

 

リミッターを付けても制御できず、被験者の身体に大きな負担を負わせる結果となり、研究目的で採取された”織斑千冬”の生態データを記録したAIは、破棄されたハズだった……

 

「そもそも、個人の人格を都合よく操れるわけあるまい……」

 

「そうですか……まさか、隊長の専用機に……」

 

「大尉。今回のIS学園への派遣は違法システムを積んだ疑いのある専用機の調査とシステムの破壊を命ずる」

 

コンラッド司令からの任務に対しクラリッサは

 

「隊長は……どうなるんでしょうか?」

 

「この件に関しては、不問とするが……万が一、騒ぎを起こすようであれば……それ相応の処罰を受けてもらう」

 

「分かりました。クラリッサ ハルフォーフ大尉、その任務に当たらせていただきます」

 

軍属である故に上の命令は絶対である。ラウラも例外ではなく軍隊での規律、国家の品格を損なうようであれば、罰を受けなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

それから数日後、IS学園にて”タッグトーナメント”が開始される・・・・・・

 

様々な思惑が重なり合って・・・・・・・・・

 

 

 

 

 




今回は、先への伏線が幾つか用意しました。こいつらは後後回収をしっかりしておきたいと思います。

多分、他にはというかかなり少ないと思う束さんの変化・・・・・・束さんって、ああいう性格だけど自分の大切な人の為なら、それこそ何でもしてやるって人かもしれません。善悪別として・・・

アンチ束さんだと、”私、天才!!!他人愚図”みたいに傲慢なアレだけど、束さんって気に入った相手なら天才でなくても、自分の世界に組み込み、護ると思います。
彼女が気に入らないのは、自分を他と区別して境界を引く世の中が嫌いなのではと言ってみたり。

次回は、誘拐事件後の一夏の様子とその決意を……



次回予告を・・・・・・

さて、今日は祭りの前だ。一夏の奴、懐かしい奴を思い出しやがって・・・・・・

お前はアイツに色々なことを教わったよな・・・・・・

次回!「闘牙」

タッグトーナメント開始前夜。一夏は自身の原点に帰る……なあ、闘牙。お前の残した”希望”は大きく育っているぜ。

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