「私とあいつとは、何もない。ただの幼馴染だ」
チャイムが鳴り、席に着いた箒はクラスメイト達からの質問攻めから開放され安堵の息をついていた。
箒
”何もない”自分でいうのも何だか、虚しい気持ちになる。本当は、一夏に会いたくて、しかたがなかった。
一夏は、私にとって初めて好きになった異性 初恋の人だからだ。
一夏の事を思うと自然に手をやるのは、このリボンと髪型。これは、幼い頃一夏が私にしてくれた髪形だ。
幼い頃から、私は剣道に打ち込んでいて、一夏も同じように剣を学んでいた。
それまでは簡単に髪を結えた程度だったが、男女といじめられていた私を護ってくれた一夏は
”元気を出して、箒。ワタシは知ってるよ、箒はかわいい女の子だって”
そう言って、私の涙をぬぐい、落ち込んだときは何も言わずに傍に居てくれた。ある時、私に今、しているリボンをくれ、髪を梳かしこの髪型にしてくれたのだ。
見た目は、私よりも女らしいのに、誰よりも男らしく私を護り、傍にいてくれた。もしかしたら、誰よりも私に近かったのは一夏だけだったかもしれない。
家族は、むしろ姉である 束にかかりっきりだ。姉は、自分の世界にこもっていて、他人に対して何の関心も寄せない人だった。
思い出しても、私の姉である篠ノ之 束は、私に対して姉らしいことなど何一つもしてくれなかった。
むしろ、私の人生の半分を滅茶苦茶にしてくれた。人生を滅茶苦茶にしてくれたものが”IS インフィニット・ストラス”だ。
宇宙用の強化マルチスーツであるこのISを姉が発明し、発表した事で世の中は、特に私の日常は壊れてしまった。
ISによって、姉が重要人物になり、家族が政府の都合によりバラバラになっても、姉は知らん顔だ。
何よりも悲しかったのは、初恋の相手と言ってもいい一夏と離れ離れになった……
一夏と離れた私に待っていたのは、あちこちを点々とする孤独と執拗とも言える政府の監視、何処に行ってもついてくる束という天才の妹と言う名のレッテル。
だからこそ、願った。一夏に会いたいと……
六年間の陰鬱とした気持ちの中、私は忌々しいIS学園に入学することになったが、ここで思いがけない再会を果たした。
世界で唯一、ISを動かせる男子として織斑一夏がこの学園に入学したのだ。
私は、嬉しかった。会いたかった人にようやくめぐり合えたのだ。嬉しくないはずがない。
一夏は、綺麗になっていた。かっこよくではなく綺麗にだ……
目付きは、格段に鋭くなっていたが、本質的には、あの頃のままだった。私に最初に声を掛けてくれた。
だけど、私は一夏に怒鳴り、あまつさえ差し出した手すらも拒んでしまった。本当なら、その手を取りたかったのに……
この六年の間で私は、ひどい人間になってしまったのだろうか?一夏と一緒に学んだ剣道だって…もはや、一夏に見せられるものではないのだから……
これから、どうしようか?一夏は私を嫌いにならないだろうか?こんなことで悩んでしまう人付き合いの苦手な自分がいつものように嫌になった。
自身に対して苛立ちを覚える箒は、ふと視線を感じ、その先を見た。その先には、いつの間にか教室に戻ってきた一夏が目元に笑みを作っていてくれた。
”大丈夫、気にしていないから”
と言わんばかりに……
自分を気にかけてくれる一夏に対して、再び気恥ずかしさから頬を赤くしてそっぽを向いてしまう箒だった。
IS学園は、ISという兵器を扱う、開発する者達を育成する機関であるために始業式から授業が始まる。
「であるからにして、ISの基本的な運用には現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合、刑法によって罰せられ…」
ISの力は、国家の象徴。故にこの学園にくるのは、エリート中のエリートである。
一夏は、五冊の教科書を開きノートを取っていた。
(……話には聞いていたけど、ISイコール”国家の力”。誰もが手軽に使えるわけではないか……)
世間話程度には、ISの事は知っていたが、ここまで慎重な扱いを求めるとは始めて知った。世の中には、ISが使えるからといって女は偉いという風潮があるが、そんなことはない。
ISの力は、個人の意思だけではなく所属する国家の意思をも必要とするのだ。
「……今のところで、分からない人はいますか?」
ここで山田先生こと山田真耶がクラス中に分からないところがないか問いかけた。
「織斑君は、どこか分からないところはありますか?」
「いえ、今の所は大丈夫です。ただ、ISの運用に関してですけど、国家代表は自身の専用機を持っていますけど、自分の意思で自由にいつ何処ででも使えるわけではないんですね」
一夏の言葉に、真耶は
「はい。確かに国家代表は自身の専用機は持っていますが、それを扱うには国家の認証が必要です。織斑君の言うようにいつでも使えるわけではありません」
「そうですか。大丈夫です、そのまま続けてください」
一夏は納得したように頷き、真耶は再び授業に戻った。そんな一夏に視線を向ける金髪の少女が居た。
授業が終わり、再び廊下には一夏を見ようと学園中の女子が押しかけていた。
唯一の男性のIS操縦者がよほど珍しいのだろう。
一夏は、それらの視線を気にすることなく次の授業の準備をしていた。予め予習はしていたので、ついていける。
暇があれば勉強をしている傍ら……
”おい、一夏。なんだ、この訳の分からない文字の羅列は、魔戒語にもこんなは、載っていないぞ”
”対したもんだな。棒に石を括り付けて獣を叩いていた人間が、よくもここまで……”
”IS委員会?番犬所みたいなもんか?”
腕輪だった頃のヴリルがやたら騒いでいたが、ひたすら集中して無視した。
そのためか、一夏はIS学園の模試問題では8割方は正解をしていたのだった。実際、こちらでの試験も受けており、五番内には居たのは、一夏とその姉のみが知る。
「ちょっと、よろしくて?」
授業中に一夏に視線を向けていた特徴的な髪型をした金髪の白人の少女が前に居た。
少女の名は、セシリア・オルコット。
一夏
「ちょっと、よろしくて?」
私に声をかけてきたのは、確かイギリスの代表候補生 セシリア・オルコット。
「……何か?」
無難ではあるが、そう返した。自慢ではないが、無愛想な人間が多い魔戒騎士の中では私は、人当たりがいいらしい。
「んまあっ!?!なんて、目つきの悪さ。ワタクシが声を掛けたんですのよ、もっとにこやかに出来ませんの?」
また言われてしまったか、姉さん、箒にも言われるこの目つきの悪さ。私は、かなり目付きが悪いようだ。
「……目付きが悪いのは、承知している。セシリア・オルコットさん」
自分でいうのもなんだが、目元に少し力が入っている。ここは、目元の力を緩めないと……
「あら、ワタクシをご存知で。下々の”男”にしては、感心な事ですわね」
優越感たっぷりに私を見ている。このセシリア・オルコットの態度に、この四文字が浮かんだ。”女尊男卑”。
ISの登場により、世の中は女性中心と声高に語る傲慢な女性達が多くなっている。理由は言うまでもなく、ISが女性にしか扱えない兵器だからだ。
見知らぬ女に男が小間使いのように扱われる事は偶にだがある。私は、外見が”女”なので、特に”女尊男卑”を地で行く輩に絡まれることは皆無だが……
魔戒騎士達からは、ISに関しては評判はあまりよくない。理由は言うまでもなく、ISの登場で”女”に関する”陰我”がここ十年で圧倒的に増えているのだ。
この間、私が狩った”アリマ”もそうだが、その後も”女尊男卑”を因とした”陰我”から出現したホラーを数多く狩ってきた。
世の中は、こうだが、逆に魔戒騎士と女性の魔戒法師の連携、結びつきは、より高まっており、これまでにないくらい一緒になるものが多くなっている。
これは余談だが、学園に入学する二週間前に遠出をして閑岱まで行き、”白夜騎士”の弟子の婚姻を見てきた。
その時、白夜騎士より”一夏、お前に、愛する者はいるか?”と聞かれたが、私の愛する者。それは、女なのか、男なのかは分からない。それに私は、恋愛など分からない。
ただ、私は家族が居て、友が居るだけでも十分だと応えた。
”それがお前○○○○ ●●の戦う理由か、護りし者は内に誰よりも護りたい者の姿を想う事で、何処までも強くなれる。今度の件は、大変だが、お前にとって誰よりも護りたい者が現れるかもしれんな”
そうは言っていたが、私は少なくとも目の前に居るセシリア・オルコットのような者だけは遠慮したいと思った。
「先ほどのあなたの自己紹介を聞いていたから……」
「フフン、よろしいですわ。先ほども言いましたようにワタクシは、イギリスの国家代表候補生。つまり、エリートですわっ!!!」
周りにワザと聞こえるように声を張り上げている。男としてもそうだが、女としてもあまりよい印象ではない。
「……そのエリートが、何故、私のような一介の男子生徒のところに?挨拶なら、関心するよ」
「んまあ、ワタクシにそういう口をききますの?そうですわね、ワタクシはこの学園を主席で合格をし、試験管をも倒したエリート中のエリート。あなたのように、無知で何も出来ない方にだって優しくしてあげますわ」
典型な、それもかなりの”女尊男卑”の考えに固まっているらしい。確かにISは、女性にしか許されない力だが、それはあなただけの力ではないことは、分かっているだろうに……
「………別に無理して優しくしなくてもいい」
「わざわざ、優しくしてあげたのに、何ですのっ!!?!その態度はっ!!?!!」
私の反応が感に触ったのか、先ほどとは違って、激しく問い詰めてきた。これぐらいの反感を買うことぐらい分からないのか?
「自分の事を振り返ってみろ、セシリア・オルコット。私のお前に対する態度は、それ相応だ」
自分でも反感を感じているのは、よく分かる。口調もきつくなっている上に目元にも力が入っている。
「何ですってっ!?!!」
更にヒートアップしたのか、私が用意していた教科書等を払いのけ、詰め寄ろうとした時、チャイムが鳴った。
「ふんっ、命拾いをしましたわね。また来ますから、逃げなくってよ」
そう言って、私のデスクの上から落ちた教科書を無視して自分の席に戻った。周りのクラスメイトは、私に何かを言いたそうだが、相手が相手なだけに私に味方ができないらしい。
仕方がないので、教科書を拾い、汚れを払って次の授業に集中することにした。
「何だ、あの小娘。生意気にもほどがあるぜ」
喋るなといったヴリルが私にだけ聞こえる声で、吐き捨てたが、私はそれに応えることなく、教卓につく山田先生と姉さんが現れるのを待ったのだった。
絡まれて分かるが、アレでは魔戒騎士達がISに対して好意的ではないのが嫌というほど理解できた………
二時間目は、担任である千冬が行うものなのか、先ほどよりもクラス全体が引き締まっているようにも感じられた。
「それでは、この時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」
各種装備 ISは近距離、中距離 遠距離と基本的なものがある。
軍事目的なだけに、様々な状況に対応できるようになっている。
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
授業の前に千冬がクラス代表者について話し始める。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会などへの出席……
まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。
今の時点で大した差はないが競争は向上心を生む。一度決まると何か大事がない限り一年間変更はないからそのつもりで」
一夏
IS学園は、こうやって学園全体の士気を高めているわけか……
思うところは、はっきり言って”お祭り”と言った感じがする。ISは、最強の兵器ではあるが、その活躍場はIS委員会が運営する”競技大会”である。
各国が血筋をあげて、自国の戦力の向上のために研究を行っている。本来ならば、戦場での活躍を想定しているが、実際は最強ゆえに使い所に困っているのが現状だ。
一機で一国の軍隊をも相手取る”戦闘能力”は、まさに国家の象徴ともいえるほどの力だ。
私達、魔戒騎士にもその技術を競い合う儀式 ”サバック”。魔戒騎士による闘技大会である。
それは大会を運営する元老院が選んだ屈強な魔戒騎士のみが出場を許される神聖なもの。いつか、私もそこで戦ってみたいと考えている。
たしか閑岱の白夜騎士の翼さんとその弟子、暁さん、あの黄金騎士 鋼牙さんと互角の実力を持つ銀牙騎士 零さんも出ていた。
「誰か、立候補をするものは居ないか?それとも推薦、他薦でもかまわないが?」
担任である姉が、クラスに聞いている。
「はいっ!!織斑君がいいと思います!!!」
私の名前が呼ばれてしまった。表情は崩していないつもりだが、目元に力が思わず入ってしまう。
「お、織斑君。に、睨まないで」
山田先生が私を見てそんなことをいう。別に睨んではいないのだけれど……
「………また、目付きが悪くなったか。一夏」
ここに居るときは先生と生徒の関係なのに………
「はいっ!!!私もそれがいいと思いますっ!!!!」
次々と私を推す声がする。はっきり言って、私はそういう柄じゃない。
「……質問ですが、織斑先生。他薦はお断りできますか?」
「そんなこと、出来るわけないだろう。いい機会だ、やってみてはどうだ?織斑」
ドヤ顔で私に提案する織斑先生こと姉さん。
「候補者は、織斑 一夏。他には居ないか?自薦推薦は問わんぞ」
流れは完全に私を代表者にしようとしている。
「織斑先生。物珍しさで私を推すのは、どうかと思うのですが?」
「何だ?断るのか、この流れで断るのは、どうかとも思うぞ」
姉は私をこちら側に染めるべく色々と体験をさせようとしているようだ。
「待ってくださいっ!!納得がいきませんわっ!!!」
私と姉の会話に割り込むように甲高い声が教室に響いた。セシリア・オルコットの声だ。
「そのような選出は認められませんっ!!大体、男がクラスに居ること自体が恥曝しですっ!!!その上、クラス代表までっ!!!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですかっ!?」
男が恥曝し。それは、身内に男がいるだけでそれは屈辱だといいたいのだろうか?
「実力から行けばワタクシがクラス代表になるのは当然、それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困りますっ!!ワタクシはこのような島国までIS技術の修練に来たのであってサーカスをする気は毛頭ございませんわっ!!!」
私という存在がとことん気に入らないらしい。男というだけで…私の女の部分で言うのもなんだが、セシリア・オルコットの意見には同意しかねる。
「いいですかっ!!!クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは、ワタクシですわっ!!!」
クラス全体に同意を求めるように見渡すセシリア。見た所、クラスのほとんどがセシリアから視線を逸らしている。
代表候補生である自分こそがクラスの代表であると言えといっているのだろうか?
「だいたい、このような文化的にも後進的な国で暮らすこと自体が屈辱で……」
「……そこまでにしておけ。それ以上喋るな。耳障りだ」
セシリア・オルコットの言葉にはっきり言って嫌悪しか浮かばなかった。私を馬鹿にするのは別にかまわないとして、自分という存在を絶対と思っている傲慢な態度がはっきりって聞くに堪えなかった。
「なっ!!?男の分際でっ!?!私に意見を言うつもりですかっ!!?!」
腹が立ったのか、私を指差す。
「先ほども言ったが、お前の態度を振り返ってみろ。私の態度はそれ相応だ。聞くが、皆は何故、私を代表に推す?このオルコットのように私を見世物にするつもりか?」
オルコットに対する不快感がそのまま声に出ている。
「ち、違うよっ!!?!織斑君!!?」
「そうだよ、だって…千冬様の弟だし……」
「そ、そんなつもりはないよっ!!!本当だよっ!!!」
誰もセシリアに代表をやってほしくないとは表立っていえないようだ。休憩の時に、自分が態々代表候補生と宣言したことだ。
代表候補生は、ISを扱うものの中でもかなりのステータスを持っており、国家の後ろ盾もあるためにそれに対して、恐れがあるようだ。
彼女の言葉に対してクラスの大半が反感を抱いているようだが………このオルコットが気づいているとは思えない。
「……みんなの言いたいことはわかった」
「まあっ、お分かりしましたか?あなたが、どういう立ち位置か?」
私が人間ではない、猿か何かだといいたいのだろうか?
「………オルコットにクラス代表をやってほしくないようだということが」
「何ですってっ!!!?!!皆さんは、このワタクシにクラス代表がふさわしくないと!!!!!ワタクシよりもこんな男、下賤で卑しい男がっ!!!!」
ますます不快になる。どんな人間でも此処まで言われたら……
「お前は、男が身内、近くに居るだけでも屈辱、恥だというのか?この場には、父、兄弟がいる者だって居る。それを分かっていっているのか?」
「そうですわっ!!!!所詮男なんて、私達の必要なときに使えればそれでいいんですっ!!!!!!それ以外は必要ありませんっ!!!!!!!」
女尊男卑。女が偉くて男は不必要……ISという心のない”力”による蹂躙。心無いから、力のないものをこうやって傷つけることができるのだろう……
「そこまでにしておけ、お前のその考え方自体が自分を否定している。仮にも代表を名乗るというのなら、もう少し周りのことを汲んだらどうだ」
「オルコットさんっ!!!あなたの態度は度を過ぎています!!!!!ISは女性にしか使えませんが、だからといって男性をないがしろにしていいというわけではありません!!!!!」
副担任の山田先生が今までにないくらいに声を張り上げた。教師として、彼女の態度が目に余ったのだろう。
「副担任は黙っていただけますっ!!?ワタクシはイギリスの代表候補生ですわっ!!!!」
「イギリス代表候補生なら、もう少し言動を考えるべきだろう。ただISの力があるだけで、全てがお前の思い通りになるわけではない」
私の言葉に更に顔を赤くして
「決闘ですわっ!!!!あなたには、躾が必要のようですわっ!!!!!!」
「思い通りにならなかったら、最終的には”力”で押さえつけるか。それで代表になってお前と同類になるのは、我慢できん。だから………」
最終的には自分の縋っている”IS”に頼るわけか。それで、私との優劣を示したいのだろう。男よりも女のほうが優れていると……
「受けてもかまわないが……勝っても私は代表はやらんぞ。お前と同類には、なりたくないからな」
「それは、あなたが負けることを前提で?」
嘲るように返してくるが、私の答えは
「いや、勝つ積もりだ。お前の”陰我”断ち切らせてもらうために……」
”陰我”という聞きなれない言葉に、セシリアが疑問符を浮かべたが私は構わずに
「織斑先生、山田先生、手間を掛けさせますが、私とオルコットの戦いの場を設けてほしいのです…できれば、三日以内に」
「三日以内って……織斑君はISを動かして間もないですし、専用機だって……」
「そうだぞ、織斑。お前がいくら強いとは言っても、さすがに三日でISで決着をつけるのは……」
私の言葉に二人はもっともな事を言うが、私には三日後に戦えるだけの準備がある。
「専用機に関しては、大丈夫です。あの人から既に渡されたから…」
私は、左手首に付けられたブレスレットを二人に見せた。これが、閑岱に行く前に箒の姉である 束さんより渡された私の専用機 蒼牙。
「一夏っ、どこでそれを……た……」
束と言いそうになった姉さんを私は、言い切る前に止めた。
「姉さん、これは束さんから渡された。だけど、ここで束さんの名前を出すのは……」
視線で箒を私は指す。察してくれたのか、姉さんはそれ以上のことは言わなかった。私の専用機に関しては、例が例なだけの対応と言うことで説明してくれた。束さんの名前を伏せて……
一ヶ月前に私を訪ねてきた束さんは、蒼牙とともにある願いを私に託した。
”いっくん。ごめんね、私が自分勝手なばっかりに、迷惑を掛けて……勝手なことばかりでごめんなんだけど、箒ちゃんのことをお願いできる”
”いっくんと魔戒騎士の人に怒られて、初めて分かったよ。私は自分勝手に生きてきて、その付けを箒ちゃんに押し付けていたんだなって”
箒が姉である束さんを嫌っているのは分かっている。ここで嫌いなものの名前を出し、さらにはその人の妹と言うことで注目を浴びてもらいたくはない。
”私は、箒ちゃんに合わす顔がないよ。今まで、私のせいで迷惑を掛けて、嫌な思いばかりをさせてきたから……”
三日後の放課後に、一組のクラス代表を決める代表戦がアリーナで行われることが決まった。
織斑一夏は、勝っても代表になるつもりはないようだ………