お久しぶりです。Navahoです。
前の投稿よりかなり経ってしまいましたが、このまま何もしないで終わるのはと思い、かつてにじファンにて投稿したリクエストで書きました短編に修正を加えて投稿します。
IS×GARO の筆を止めていた時にGAROがアニメにもなったりしていて、ビジュアルが想像しやすくなり、他の作品とのクロスオーバーもしやすくなったかと思います。
その中でのアニメ作品 GARO 炎の刻印 の劇場版に登場しました ダリオが割とお気に入りなのでいつか ダリオを絡ませたSSを上げたいと思います。
話としては一夏がIS学園に入学をする半年前の頃です。
その日、織斑千冬は有給を取り一人自宅へ戻っていた。
「ただいま」
家の中からは誰からの返事がない。今日は家族が居るはずなのだが、その家族は今……
二階に上がり、家族 織斑一夏の部屋に足を踏み入れて千冬は、
「…………分かっているとはいえ…気持ちの良いものではないな」
眠る一夏を見て、千冬は表情を歪めた。今日の一夏は、ひと月に一度の”契約した魔導具”に命を与えているために仮死状態となっている。
一夏の寝巻きは白い浴衣を着ている。見様によっては死に装束にも見えるこの姿は千冬は好きになれなかった。
「……一夏。お前はどうして、私を不安にさせる。お前は私が護るのに……」
少し前に一夏が話してくれたこと。魔戒騎士はひと月に一度 契約した魔導具に命を与える。
「いつまでも護られるわけにはいかないだろ、姐さん。それは分かっていたことだったんじゃないのか?」
「なんだと……一夏の命を削っておきながら、よくもそんな事を……」
一夏の腕に付けられている腕輪であるヴリルに対して千冬は、親の仇を見るかのような視線を向ける。
「一応は契約だからな。この辺のところは一夏も了承しているぜ」
「私は認めていないぞ」
「そうだな。だけど、決めるのは一夏自身だ。それを決めるのは姐さんじゃない」
ヴリルの言葉に千冬は軽く舌打ちをする。ヴリルの言葉が正論だからだ。
「だからといってっ!!!!魔戒騎士はないだろっ!!!!何故、一夏があんなことをやらなければならないのだ!!!!!」
感情を爆発させるように千冬は叫んだ。普段の彼女を知るものから見れば、その姿に”世界最強”の印象は無いだろう。
その姿は何処にでもいる普通の女性であった。
「それは一夏が自分で決めたことだ。だけど、少しばかり自分の事を疎かにしている」
ヴリルは一夏が魔戒騎士として自身と契約をしてきた時の事を昨日のことのように覚えている。
”本当に俺と契約をするのか?”
”うん、私は騎士になる。師匠のように”
今よりもずっと幼い雰囲気の一夏の目は、一人の”魔戒騎士”そのもの………
”今なら俺やあいつの事を忘れて生きる事だってできる。後戻りはできるぜ”
”ううん、私は後戻りはしないよ。だって、全てを忘れて生きるほど器用じゃないから”
ヴリルと契約してから二年後、一夏は師より受け継いだ”魔戒弓”を携え、”蒼天騎士 ジン”の称号を継いだ。
「今思えば、一夏は忘れたくなかったんだな。あいつや俺を……忘れたくないからこそ、一番つながりのある”魔戒騎士”の道を選んだんだ」
自身も憧れがあったがそれ以上に、師匠のことを忘れたくなかったからこそ”騎士”になった。
「お前よりも一夏に妙なことを吹き込んだ”そいつ”を私は、問い詰めてやりたい。この手で……」
「悪いな。あいつはもう居ない。一夏を残して逝っちまった」
ヴリルは、かつて自身が契約をしていた一夏の”師である 魔戒騎士 闘牙”の姿を浮かべる。
「………一夏に妙なことを吹き込んだ”そいつ”は、勝手に一夏の前から居なくなったというわけか?」
「酷い言われようだが否定はできねえな。あの頃からだったな、ホラーが”女尊男卑”の流れで多くなってきたのは………」
「話をそらすな、不届きモノ。何故一夏は”魔戒騎士”に憧れたんだっ!?!その男は、何を企んで一夏に近づいた!?!」
千冬は、”魔戒騎士”関係に関しては嫌悪がある。故に一夏が魔戒騎士になってしまったことは、自分が知らないところで関わってしまったことを悔やんでいるのだ。
「何にも企んでねえよ。あいつは、考えなしの行き当たりばったりな奴だったからな。ただ一夏がしょんぼりしてたのを放っておけなかっただけだぜ」
「なにっ?一夏が…まさか、いじめられていたというのか?」
「いや、姐さんが元気が無いからどうすればいいのか、悩んでいたんだってよ」
その頃の情景をヴリルは昨日のことのように思い出せる。夕暮れの公園で一人居た幼い頃の一夏の姿を……
「ま、まさか…一夏は私の事を心配していて……それで”魔戒騎士”の世界に関わってしまったのか?」
「ああ、一夏に女には花がいいなんて教えやがったのもあいつだ。それ以来、一夏の秘密の友達っぽい感じだったな」
当時中学生であった千冬は、一夏を養うため、護るために四苦八苦していた。学生の身で社会の厳しさを痛感し色々と余裕がなかった。
一夏には弱いところを見せたくはなかったために怖がらせてしまったことさえある。
「幼馴染の道場へ行く傍ら通ってたな。修行に入ったのは幼馴染が引っ越した後だな………」
ヴリルの話に千冬は、あの頃の自分を一発殴ってやろうと思った。あの頃自分がもう少し余裕があれば一夏を”魔戒騎士”にせずにできたのではと思った。
「姐さん、もしかしてあの時、自分がしっかりしていればなんて馬鹿な事を考えてるのか?やめとけ、考えるだけ無駄だぜ」
「……………」
「過ぎてしまったことは誰にも変えられねえよ。たとえホラーだってな」
ヴリルの言葉に何もいえないのか、千冬は口を閉ざす。
「まあ当時の姐さんもそうだが、今の姐さんももう少しだけ他人に頼っても良かったんじゃねえのか?一人で何もかもやろうとしても、できることは何もねえしな」
当時の千冬は周りから孤立をしていた。両親に捨てられ、物心付かない一夏を育てるために彼女は彼女なりに苦労していたのだ。
「五月蝿いぞ。他に誰も頼れるものが居なかったのだ……私は、一人でも一夏を護る。それはこれからも………」
「だから”魔戒騎士”をやめろってか?多分、一夏はやめないぞ。だって、あいつの頑固さは間違いなく姐さん似だからな」
「そうか……こいつは、あの時も私に噛み付いて、やめようとはしなかった。聞き分けが良いとばかり思っていたが……私と同じで聞き分けが良くないのかもしれな」
千冬はベッドの上で眠る一夏の頬を優しく手を当てる。
千冬
お前が”魔戒騎士”になったのは、お前自身が持つ優しさ故なのだろうな。この不届きモノを含めて、忘れたくないから………
”魔戒騎士”の生き方は、確かに立派なのかもしれないが、その生き方は正気ではない。何処の誰とも知らないものの為に人知れず戦い続け、人知れず死んでいくなど………
お前は穏やかに日常を生きればいいのだ。何の悩みも抱えずに………ただ幸せに…………
何が不満だったのだ?穏やかな日常ほど尊いモノはないというのに。どうして”魔戒騎士”としての道を選んだ?
「別に不満だったわけじゃねえよ。ただ一夏は、姐さんを喜ばせたくてあの野郎と一緒に遊んだり、修行をしてたな」
つまりは私のためだというのか?ならば何故?
「ただ、姐さんがISに関わりだしてから、一夏の周りもガラリと変わった。何処に行っても一夏は”織斑千冬の弟”としか見られなくなっちまった」
不届きモノがまるで私を責めるように言い出した。
「特にあの第一回モンド・グロッソで優勝して以来だったな。あの頃から一夏は笑うのが少なくなってた」
一夏が笑うのが少なくなった?何故だ?私は一夏を護るために”強く”なり、モンド・グロッソでも優勝をしたのだぞ。
「訳は聞かなくても分かるだろうと言いたいが……姐さんが一夏の傍から居なくなったんだ。一夏は困らせたくなかったから、我侭も言わずに姐さん花道を行くのを見送っていただけだ」
「それはあの頃の私は、日本の国家代表として忙しかったからだ。それに……」
言い訳にもならない。あの頃の私は、ISの力を得ただけの只の子供だった。言うまでもなく一夏の事を二の次にしていた。
私が帰ってくるのを待って夕食を作っていてくれたのを何度、無駄にしてしまっただろうか?誕生日にも帰ってやれずに寂しい思いをさせても愚痴を一つも漏らさなかった事をいい事に……私は………
「姐さんと篠乃之博士が思う世界で気持ちよく生きて来た訳か……まあ、世の中は確かに変えなくちゃと思うが……さすがにやりすぎちまったな」
不届きモノは私が”ホラー”にとって過ごしやすい世の中に変えたことよりも一夏の事で腹を立てているようだ。
考えてみればこの不届きモノは、私よりも一夏の傍に居たのだ。契約をして今は、一夏にとっては”大切な相棒”であり互いに支えあっている。
だからこそ、私はこの不届きモノが気に入らない。私と一夏の二人だけの家族に入り込んだ異物のこいつが……
人間ではないくせに、人間と一緒に暮らし、私を小娘扱いしているこいつが………
「よく聞け。不届きモノ……私は、お前が嫌いだ」
思わず口から出てしまう罵倒。私はこいつが嫌いなのだ。私の知らない一夏を知っているこの不届きモノが………
「そうかい、俺は姐さんのことは嫌いじゃないぜ」
不届きモノは、本心で言っているのだろうか?
「何を言っている。お前は……」
「何もねえよ。相棒が慕っている姐さんの事を俺が嫌うと相棒が悲しむ。ただそれだけのことだ」
一夏が悲しむから、私を嫌わないという事か……
全く持って嫌な奴だ。私は本当にこいつが嫌いだ。早く家から追い出してやりたい。
でもこいつを一夏は、相棒としているために手が出せない。まったくお前は私が護るというのに………
本当にこいつは男としては頼りないほど華奢だ。いや、女でもあるのだからこれぐらい華奢なのは仕方がない。
よりにもよって、こんな不届きモノに捕まってしまったのは姉として残念だ。
「おい、姐さん。俺に何か失礼なことを思わなかったか?」
「何を言っている。私はお前が嫌いなのだぞ」
「ああ、それもそうか」
余裕のあるところがムカつくな……
私はその日、一夏の傍で眠った。何年も前に布団の中で、していたときに何も言わずに背中から抱きしめてくれた幼かった一夏を思い出しながら…………
「あ、とりあえず言っとくぜ。お休み姐さん。いい夢をな」
「フン、お前に言われると悪夢を見るかもしれん」
「そりゃ、ヒデェ言われようだぜ」
不届きモノの口調は相も変わらず腹立たしい。だが、不思議と嫌な感情は沸かなかった。
私が魔戒騎士やその関係者に悪感情を抱かれているのに対し、こいつはそのような感情を向けることはなく普通に接してくれている。
魔戒騎士 一夏の姉だからか?いや、ブリュンヒルデ、世界最強ではない何処にでもいるただ一人の 織斑千冬として見ているのだろうな。
だが、いつまで一夏達と一緒に居られるのだ?ある意味 暗黒ともいえるこの”女尊男卑”の時代が何時 劇的に変化するか分からない。
その渦中の中心に居るであろう一夏に私は何ができるだろうか?例え世界を敵に回しても、生贄に捧げても”家族”だけは護りぬく……
この誓いだけは、あの頃と変わらない………
『そうだ……一夏。お前だけは絶対に一人にはしない。私が、お姉ちゃんがずっと護ってあげるからな』
この作品のヒロインは千冬さんかもしれません。毎度のことながら(汗)