「だから、違うんだっ!!!僕は、何もやっていないっ!!!」
男は両脇を二人の警官に抱えられながらも、叫んでいた。だが、警官は聞き入れずに機械的に男を独房を突き飛ばし、そこへ閉じ込めた。
「待ってくれっ!!!!話を聞いてくれっ!!!!!」
男の言葉を無視して警官は背を向けて去っていった。
「くっ、くそっ、な、何でこんなことに……」
膝を突き、男は自身の身に起きたことを振り返った。
偶々、会社帰りに百貨店へ故郷の家族への贈り物を買いに行った際、そこで女に絡まれて、その女に呼び出された警備員に連れられ、ここへぶち込まれたのだ。
”女尊男卑”あのISという兵器のせいで、無条件で女は許される。たとえそれが理不尽なものでも、全て”男が悪い”とされる。
男は、この独房で絶望していた。ここに入れられたら、自身は終わりだ。裁判でも有罪は確実。
先の未来は、光すらなく絶望的なのだ。そこへ……
"此処から、出してやろうか?”
「だ、誰だっ!?!誰なんだっ!?!」
不意に声が独房に響き渡った。
”理不尽な理由で、此処に閉じ込められ、誰もお前の言い分を聞かない”
「……………」
その通りだった。誰も話を聞いてくれない。
”哀れなお前に力をやろう。力が欲しいのならば、応えよ”
「ああ、僕は力が欲しいっ!!!この酷い世の中を変えるぐらいの力がっ!!!」
”ならば、与えよう。代価は、お前の”魂”と”肉体”だっ!!!!”
独房の隅の影が大きくなり、男を大きく覆い尽くす。影の中心より、”悪魔”が現れた。
数分後、独房に男の姿は無かった………
その日の夜
「そこのあなた、ちょっとこれ持ってくれる」
町で女が男に対して荷物を持つように命じる。男と女はこれといった関係のない他人である。
「なによ、逆らう気。ちょっと、そこの人、この人を警察に…」
女は、近くを通りかかった別の男に命令をするが……
男は、女に対して嘲笑うように…
「誰が何をするんだ?お前は別に何も偉くはないのに、何故、そんなことをしなくちゃいけない」
「あなた、男の癖に女に逆らうつもり?あなたも警察に突き出して……」
そう言おうとした時、男に変化が現れた。目に奇妙な文字が浮かんだのだ。これを見た女は気味悪がり、その場から離れようとするのだが……
先ほど、絡んだ男が女の行く手を阻んだのだ。
「ちょっと、あなた。なに考えてるのよ。そこ、どきなさいよっ!!!!!」
だが、絡んだ男はまるで聞こえていないかのように黙っている。女は気づかないが、男の足元から血管を思わせる管が絡み付いており、既に息絶えていたことに……
背後から、男が近づく。男の影が歪に変化していき、女が振り返り、最後に見たのは……
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!!!!」
悲鳴の後に何かを貪る音だけがあたりに響く。その場に二人の男が佇んでいた。
「昔は、こんなんじゃなかったのに、どうして僕達男がこんな目に合わなくちゃいけないんだ。すべては、アレのせいだ」
その声に呼応するように、周りに男達が集まってくる。皆、生気がなくまるで死人のような表情をしている。
声にあわせるように、男たちはこの場から移動を始めた…………
クラス代表戦から一日が経った。今はSHRが行われている時間である。
「今、一年でクラス代表が決まっていないのはこのクラスだけだ。誰か、やりたいものは居ないか、それとも推薦は……」
千冬が、クラス代表について話を進めていた。
「あの織斑先生、織斑君は代表にはならないんですか?」
クラスの一人が手を上げて、千冬に聞く。
「ああ、こいつは、勝ってもやるつもりはないようだ。少しぐらいは、融通が利けないのか、織斑」
千冬は目の前に居る 弟 一夏に問いかけた。
「織斑先生。三日前にも言いましたけど私は、勝ってもクラス代表にはなりません」
「でも…私は、織斑君について欲しいです」
教卓には、担任の千冬と真耶の二人がクラス代表について一夏に聞いている。
「………私は就くつもりはありません。ですが、私が推した者ならば、文句はないですよね。先生」
この言葉にクラス全体が静まり返った。突然の言葉に意表を付かれたのだ。
「私は、クラス代表にセシリアを、セシリア・オルコットを推します」
「「「「「「「「「「「「「えええっ!!!」」」」」」」」」」」」」
「い、一夏っ!!!!何を言っているんだっ!!?!!お前はっ!!?!!」
驚くクラス全体を代弁するように箒が立ち上がった。
「そ、そうですわっ!!!い、一夏さん、な、何故ワタクシなどを推すんですか!!?!」
セシリアのまさかの一夏の行動に驚き立ち上がってしまった。
「お前らっ!!!まずは、落ち着けっ!!!!他のクラスの迷惑だっ!!!!」
千冬が騒がしくなった教室を静めるために怒声を上げる。流石は、ブリュンヒルデ 鶴の一声で黙らせてしまった。
全体が静まったのを見てから、千冬は一夏と向かい合う。
「織斑、オルコットを何故、推す?まさか、負けた方に責を負わせるつもりではなかろうな」
少しだけ目をきつくして千冬は、一夏に問う。
「私がセシリアと決闘を行ったのは、私なりの意地のためであり、彼女を貶めることではない」
一夏も目をきつくして千冬に言葉を返した。二人の睨みあう様は、まさに圧巻である。瓜二つの顔が互いに睨み合っているのだ。そんな二人に挟まれた真耶は涙目である。
「あの時のセシリアは、行き過ぎた考えを持っていたけれど、今の彼女は間違いに気づき、それを正している」
その言葉にクラス全体がセシリアに視線を向けた。その視線に対して、セシリアは思わず
「はい、情けない話ですが、ワタクシは国家代表候補生の肩書きと専用機持ちという事で、自分自身の”力”に酔っていましたわ。
ワタクシにも、優しいお父様が居たのにそれを、情けないと言って貶めてしまい、あろうことか男性の方々には大変な無礼を働いてしまいました。
皆様にも、ご家族の方々がいらっしゃいますのに、以前の失言は、本当に申し訳ありませんわ」
頭を下げて、謝罪をしたのだ。この行動には、担任、副担任はもちろんのこと、クラス全体が本当に驚いていた。
「確かにセシリアは、皆に不快な思いをさせてしまったけれどもそれに気づき、正しているのならば、これ以上に無い代表は居ないと思う」
一夏の言葉にクラスメイト達は納得せざるえないのか、納得がいかないのか微妙な表情だった。
「今の世の中は、女尊男卑のせいで、間違ったことが通っている。でも、それを自身の身で知ったのなら、その間違いを正すことだってできる」
「い、一夏さん。わ、ワタクシなどに、そのようなことが……」
一夏が自身を評価していることにセシリアは嬉しさと戸惑いを感じていた。
一方でクラス全体は、一夏が推すのならばと……
「織斑君が言うのなら……」
「がんばってよ、セシリアさん」
「応援するから」
まだ尾を引いているのか、クラスメイトの声は微妙な感じであったが…以前と違って、好意の色があった。
「できるさ、私は”間違いを犯し、それを正した人間”をそれなりに見てきた。だから、セシリアにも……」
弱気になりそうだったが、セシリアはここで弱気になってはいけないと思い、
「わかりましたわ、このセシリア・オルコット。クラス代表の任を立派に果たしてみせますわ」
箒
一夏の奴。まさか、オルコットを推すとは……アレほど、不快感を露にしていたのに、よくもあんなに仲良くなれたものだ。
どうやって口説いたかは知らぬが、まさかと思うが、お前は私と離れている間に”女誑し”になったのではないよな?一夏……
”箒…どうしたの?今日は、凄く絡んでくるんだね”
”な、何を言うかっ、お前がオルコットに掛かりっきりで私に構ってくれないからだろ”
”ふふふ、箒は焼餅焼きだね。じゃあ、こっちへきて”
”今日だけは、私だけの……”
”箒、声が小さくなっているよ”
”今日だけは、私だけのお姉さまだ。一夏”
な、なんだ?この光景は……
何故、一夏がお姉さまなのだっ!?!それに何故、私が甘えているっ!?
あっちへ行けっ!!!あっちへ行けっ!!!
一夏は男だっ!!!!!お姉さまではないっ!!!!!!何を考えている、篠乃之箒っ!!!!!
箒は必死でその光景を追い払おうと頭を必死で振っていたが、それを無視して千冬が、
「クラス代表はオルコットに決まりになるが、異存は無いか?」
千冬がクラス全体に確認を取る。皆も異存が無いのか頷く。
「でも、織斑君がこのままというのも勿体無いですよね」
「そうだな、織斑。お前は、これからクラス代表補佐になれ」
突然、話を振られた一夏は
「もしかして、それはセシリアを推したのならばそれなりに責任を取れと言うことですか?織斑先生」
「そうだ。お前はオルコットをそのままにはしないつもりだったんだろ?」
千冬の言葉に、少しだけ目を逸らしながらも頷いた。
「よし、皆、織斑はクラス代表補佐に就く。これについては、依存は無いか?」
「「「「「「「「「「ありませ~~ん♪」」」」」」」」」」
打ち合わせた様に全体が唱和する。一夏は、この乗りの良さに少しだけ引いてしまった。
「一夏……いい響きだよな。クラス代表補佐」
ヴリルが、一夏にしか聞こえない声で話しかけた。”喋るなと言ったはずなのに……”と内心、イラついた。
「い、一夏さん。ワタクシを、いえ、クラスを支えてくださいますか?」
セシリアが頬を赤くして、一夏に尋ねた。
「こうなってしまった以上は、私も全力でクラスを支えるよ」
一夏もクラス代表補佐として、クラス代表をクラス全体を支える事を心に決めた。
「お、おいっ、待てっ!!!オルコット、貴様、さっき、自分を支えてって言わなかったか!!?!」
箒が聞き捨てならないことをセシリアが言ったことに対して、突っ込みを入れた。
「いえ、ワタクシは何も言っておりませんわ。一夏さん……よろしければ、ワタクシとISの訓練をお願いできますか?
近接戦闘に関しては、ワタクシは一夏さんと比べれば、まだまだですし……」
セシリアは、ピットに頼りきっていた戦いもそうだが、いざと言うときのための接近戦も重要と考えての提案だったが……
「その必要は無いっ!!!!!態々、お前のために一夏の手を煩わせる必要はない!!!!」
箒に青筋が出ているのは、気のせいだろうか?
「ここは、専用気持ち同士の方が効率的ですわ、篠乃之さん」
クラスで専用機を持っているのは自分と一夏だけをアピールするセシリアだが、ここで担任からのありがたい”拳”を頂いてしまった。
「痛っ!!!!」
「アウチっ!?!」
セシリアと箒が頭を互いに抑える。
「何を争っているかっ!!!ここに居る限り、お前たちが、どんな肩書きを持っていようともヒヨッコだ!!!!!!代表候補生も一から、全て学べっ!!!!!」
担任である千冬の言葉に二人は、黙り席に着くしかなかった。こうして、一組の代表は セシリア・オルコットに決定した。
一夏
セシリアからは、ISの訓練に誘われた。私としては、蒼牙を動かしてまだ一ヶ月程しかたっていないので、できる限り訓練は行っておきたい。
束さんからは、一応教えてもらったが………
”いっくん、ズガーンって感じに”
”ポンポーンって、飛んでみて”
”いっくん、グッと行く感じで”
”ババっという感じで武装を展開して”
正直言って訳が分からなかった。一応、姉さんにも教えたといっていたけれど、姉さんも同じ感じだったのだろうか?
今は、SHR中だから後でセシリアに私からお願いをしようかな。
時刻は、夕方の七時を回ったころ、寮の食堂では一組のメンバーによる……
「セシリアさんとクラス代表就任と織斑君のクラス代表補佐就任、おめでとう!!!!!!!! 」
「「「「「「おめでと~~っ」」」」」」
パーティーが開かれていた。
クラッカーが鳴り響き、その中心に居るセシリアと一夏をたくさんの女子が祝っている。
一組のメンバーは、ともかく他のクラスの人達の姿も見える。
「これから、クラスも盛り上がるよねぇ」
「織斑君が、クラスを支えてくれるんだよ、この一年が凄く楽しみだよ」
「ラッキーだね」
「ほんとほんと」
クラスメイトの騒ぎようにセシリアは、笑みを浮かべているが、一夏の表情は少し硬い。
「一夏さん、もう少し、にこやかにしてくださいな。綺麗なお顔がもったいないですわ」
「セシリア。私は、こういうのが少し苦手でな。戸惑ってしまって」
あれほど、堂々としていた一夏がこのように戸惑うと思うと少しおかしかった。
「うふふふふふ、一夏さんにも苦手なことがあるんですね」
「ああ、少し情けないかもしれないが……」
「フンっ、人気者が何を言っている」
一夏の反対側になるように、箒が現れた。手に飲み物を持っていて、むりやり一夏に手渡す。
「あら、箒さん。無理やりはよくないですわよ」
「ふん、これが私のやり方だ」
意気地になっているのか、箒は一夏がセシリアと仲良くなっているのが面白くないらしい。
「セシリア、箒には箒なりに私を気遣ってくれているんだから」
ここで一夏が、箒に助け舟を出す。箒は、少しだけ機嫌を良くし、
「そうだ、これが私のやりかただぞ。オルコット」
そんな三人に近づくボイスレコーダーを持った上級生が近づいてきた。
「はいはい、そこ盛り上がってるところを悪いけどインタビューいいかな?」
名詞を差し出し、「新聞部副部長 黛薫子」と書かれてある。
「では、さっそくだけど、クラス代表補佐の織斑君に特別インタビューをおねがいしま~す」
「……………」
正直、一夏はこういうのが苦手なために少し戸惑ってしまった。
自身がISを動かしてから、マスコミや各国の上層の人間が押しかけてきたが、一夏はこれらから、逃れるべく様々な知り合いの家を転々としていた。
一ヶ月ほどは、束のところでISを学び、そのあとの一ヶ月は、閑岱を含めた魔戒騎士達の元やそれ以外の知り合いの元にお邪魔していた。
自宅には、マスコミが居なくなるのを見計らって帰っていたが………
「一夏、情けないぞ。たかが、インタビュー如きで」
「箒、私はこういうのには、慣れていないの」
そんな二人に構わず薫子は、
「ずばり、クラス代表補佐になった感想をどうぞっ!!!」
マイクを差し出された一夏は
「ええ、私の力の及ぶ力のかぎり、代表のセシリアとクラスの皆を支えていけるようがんばりたいと思います」
「おおっ、男とは思えない、セクシーな声っ!!!」
薫子は、一夏の声を聞いてボイスレコーダーだけでは、男だとは分からないなと思った。
「一夏、お前はいつになったら声変わりをするのだ?」
「………いや、私の声の事を言われても……」
箒の言葉に一夏は、少し困ってしまった。どんなに頑張っても自分は、低い声が出せないのだから……
「まあ、そこは置いておいて、もっと他にはないの?学園唯一の男子だからさ、この学園の女子は”俺の物”とかさっ」
「なっ、なんて破廉恥なっ!!!」
「あなたには、聞いてないから、少し静かにしてね」
一夏にインタビューをしているのだが、何故か箒が反応することを鬱陶しく思ったのか薫子は、そんなことをのたまいました。
「まあ、この辺は適当に捏造しておくことにしてとにして、次はセシリアさん、代表になった感想ちょうだい」
「ワタクシ、こういったコメントはあまり好きではありませんが、代表になったからにはしっかりと役目を果たさせていただきますわ」
「なるほどね~。噂に聞いた印象とは随分と違うわね。もっと、偉そうに言っちゃうかと思ったんだけど」
「どんな噂かは、わかりませんが、ワタクシが変わったのなら、それは一夏さんのおかげですわ」
セシリアの言葉に薫子の目が妖しく光った。一夏は、何か良からぬことをと思ったが、口には出さなかった。
「なるほど~~、織斑君に惚れたからってことね」
「なっ、ななななな……」
薫子の言葉に、セシリアは顔を赤くしてテンパってしまっている。
面白くなさそうに箒は、一夏とセシリアをじと目でみる。
「とりあえず、写真を撮りたいから、クラス代表補佐の織斑君とクラス代表のセシリアちゃん、並んでもらえる?」
「なにっ!?!」
箒がまるで仇に会ったかのような凄んだ目で薫子を見る。
「注目の二人だからね、ツーショットもらうよ、握手とかしてくれるといいかもね。何なら、肩でも組んでもらっていいからさ」
「だめだっ!!!!それはだめだっ!!!!」
箒が一夏とセシリアの間に割って入るように抗議を行う。
「そうだ、そうだっ!!!」
「織斑君は、皆を支えてくれるから、共有財産だから、独り占めはだめーーっ」
クラスメイトの反応にセシリアは残念そうだったが、ツーショットならと言う事で納得した。
「じゃあ、握手でいいね」
これならいいと許せるのか、箒をはじめとしたクラスメイト達も了承した。
「それじゃあ、撮るよー。35×51÷24は~?」
「……74.375」
一夏は、何故、この掛け声なのか不思議に思いながらも応える。そんな一夏の思惑をよそにデジカメのシャッターが切られた。
気がつけば、ツーショットではなくクラスメイト達が二人の周りを囲っていて、集合写真になっていた。
「ちょっと、ツーショットではありませんのっ!?!」
セシリアの声に対して、
「いいじゃない、クラスの思い出ってことで」
「そうそう、思い出よ、思い出」
皆でセシリアを丸め込めるようなことを言っており、セシリアは何も言い返せなかった。
かといって、一夏も一夏でどう言っていいのか分からないのか、苦笑いを浮かべていたのだった………
一夏
すまない、セシリア。私はこういうとき、どうすればいいのか、分からない。
思えば私は、こういう風に集まって騒ぐということは、ほとんどしなかったな。
私とセシリアのために、パーティーを開いてくれているのは嬉しいのだが、この気持ちをどう伝えればいいのだろうか?
箒も箒で楽しんでくれてそうだし……
パーティーは、その後も盛り上がりを見せ、一組だけではなく他の組の者も加わって更に盛り上がっていた。
セシリアは、完全にパーティーの中心として楽しんでいた。
一夏も一夏で中心であったが、こういうのが苦手なのか時折、席を外して気を休めていた。
この時も少し席を外していた。
そこへ、仕事を終えた真耶が一夏の元へやってきた。
「織斑君、楽しんでいますか?」
「ええ、こういうのは初めてですが、まあ、楽しんでいます」
「そうですか、それなら良かったです」
真耶は笑みを浮かべて、一夏に応えた。
「そういえば、織斑君。さっき、妙な人からこれを織斑君にって……」
真耶は思い出しように一夏に赤い封筒を手渡した。手渡されたのは、赤い封筒”番犬所からの指令”だった。
「おい、一夏。何だ?その悪趣味な封筒は」
箒は、一夏が手に持っている封筒に対して、不機嫌な目を向ける。
「箒、悪いけど、用事ができたから、席を外すね。山田先生、このことは皆に言っておいてください」
二人に断りを入れて一夏は封筒を取って、そのまま食堂から抜ける。箒も着いていこうとするが、
「……ここから先は箒の関わる所じゃないから……」
「な、何を、不純異性行為は……」
自分を拒むような一夏に対して、箒はムッとするが、一夏の目を見てしまった。
その目は、彼女が全く知らない一夏の姿だった……
箒
私は、一夏を問い詰めることができないまま、その背を見送ってしまった。
あの目を見てしまったのでは、何もいえなくなってしまう。私達が離れて、六年。
一夏の身に何が起きたんだろうか?あの一夏は、少しだけ怖かったな。
お前は、変わらなかったはずだよな。そうだよな……
「おい、篠ノ之 。一夏は何処に行った?」
気がつくと千冬さんが話しかけてきた。意外だ、こういう集まりには来ないと思っていたのだが、
「はい、用事ができたからって何処かへ行きました。変な赤い封筒を持って……」
「赤い封筒だと……」
その時の千冬さんも一夏と同じく私の知らない表情だった。酷く狼狽していた。
すぐに一夏を追うように千冬さんも食堂を後にしてしまった。
一体、何があったんだ?この六年の間に、あの姉弟に………
一旦、部屋に戻った一夏は、魔道火を使い、指令書を炙る。
””女尊男卑”の陰我より現れしホラー。その発端である”IS”を破壊せんとすべく、その地を目指す。これを速やかに殲滅せよ。ホラーの名は、レギオン”
「レギオンだとっ!?!、こいつは厄介なのが来るぞ」
ヴリルが声を上げて驚く。
「レギオン?どういう奴なんだ?」
「ああ、こいつは現れたときは一体なんだが、人間に憑依すると憑依した人間と似た考えを持つ奴を自分に取り込み、巨大化、もしくは、そいつらを元に増殖する」
「となると、厄介だね。もしかしたら、このIS学園そのものを餌場に、いや、それよりも酷いか……」
「それに、取り込んで巨大化するだけじゃなくて、そいつらと群れることもある」
「早いうちに倒していれば……過ぎてしまっては悔やみようは無いね」
「仕方ねえさ、この世情は騎士も法師も人手不足だ。これで二度目だな、巨大ホラーと戦うのは……」
「ああ……分かっている」
一夏は、戦用の服に着替え、魔戒弓を持ち迎撃に向かうべく部屋を後にしようとした時だったが……
「一夏っ!!!何処へ行くつもりだっ!!!!」
いつの間にか、入り口には部屋の同居人であり、姉の千冬が立っていた。走ってきたのか、少しだけ息を切らして……
「何処って…ホラーを狩りに……」
一夏は、何気ないように言葉を返した。
「何故だっ!!!お前は、もうこっち側だろうっ!!!もう向こうに関わる事はっ……」
千冬は思わず一夏の目を見て黙ってしまった。その目は、彼女が最も嫌う目だった。闇を生きる魔戒騎士の目を……
「前にも言ったけど、私はやめるつもりはないよ。だって、いまさら、全てを忘れて生きるほど、器用じゃないから……」
一夏の目は、邪魔をするなら、例えあなたでもと言わんばかりの”殺気”すら秘めていた。その目を直視してしまった千冬は、何もいえなかった。
様々な修羅場を越えてきた彼女であっても、苦手なものと受け入れがたいものは存在する。彼女が苦手なものそれは、護るべき存在である”一夏”がもつ魔戒騎士の目である。
受け入れがたいものは、ISですら滅ぼすことの適わない魔獣”ホラー”。
「………必ず、戻るから……話は後でもできるよね。姉さん」
すれ違いざまに一夏は、千冬に声を掛け、彼女に背を向ける形でこの場を後にした。
一夏が去った後、千冬は膝を突いて崩れた。俯いた顔は、悲しみを浮かべていた。
千冬
何故だ…何故なんだ、一夏。どうして、お前は、そうまでしてホラーと戦うんだ。
お前は私が護る。だから、何も気にせず、穏やかに日常を生きてくれ。そう願っていた。
かつて、私と束は、お互いの大切なもののためにこの世界を変えた。
私の大切なものが一夏。一夏は、他の人とは違う悩みを持って生まれた。男でも女でもない心と身体を持って……あの時の社会なら一夏は半端者として、男達から下に見られていたかもしれない。
だからこそ、一夏にとっても暮らしやすいようにと私は、束の作ったIS”白騎士”を駆った。
だが、世界は思い描くようにはならなかった。その最もたるのが”ホラー”の存在だ。
私達は、あのとき以上に”陰我”と言うものを生み出し、ホラーにとって都合の良い世界に変えてしまった。
そのために一夏は……魔戒騎士に……
影ながら、人々のために戦うことは、立派なことだとは思うが、あの戦いだけは受け入れることができない。
一夏が、私の前から消えてしまうのが恐ろしい。一年前、初めてホラーと出会い、戦いの場に居合わせた私は、悪夢をみたのだから……
”ウワアアアアアアアアアアアッ!!!!!!”
蒼い鎧を纏った一夏が変化した。獣のように咆哮し、禍々しく変化し、その場に居たホラーを引き裂き、周囲を破壊始めたのだ。
そのときに見た、鎧越しにみた一夏は………
”ああ、一夏っ!!!一夏っ!!!!”
一夏を止めようとISを展開したが、あの男に止められてしまった。
”よせっ、お前が行っても何にもならん”
白いコートを纏ったそいつは、私を押しのけて、禍々しく変化した一夏と向かい合う。
”何故だっ!!!他人のお前に私の一夏が分かるものかっ!!!!”
”うるさいっ!!!お前が、一夏の緊張の糸を切ってしまった。本来ならば、”心滅”などありえなかった!!!!”
振り向いたそいつの目は、私を萎縮するだけのものを持っていた。
”鋼牙っ、早くしないと、一夏が鎧に食われるぞ”
”ああ、一夏は、これから多くの人を救う。それをここで、失うわけにはいかんっ!!!”
鋼牙という男は、剣を頭上に翳し、円を描いて、一夏のように鎧を召還した。その姿は、眩いばかりの黄金に輝いていた。
そうだ、あの時一夏を救ったのは、”黄金騎士 牙狼”だった。私は何もできずに終わってしまった。
だからこそ、怖いのだ。自分の手が及ばないところに居る一夏がいつか自分を置いて何処かへ行ってしまうのが……
”姐さん…もう少し、大人になったらどうだ?”
いつも一夏の傍に居るあの不届きモノが、いつか言っていた言葉がよぎる。何を言っている、私はもう大人だぞ。ただ、一夏が大切なだけだ……
私は、一夏が育てた花の前に立っていた。これは、一夏が家から持ってきた私物の一つで私も気に入っている奴だ。
そういえば、花にも性別がない。そうだ一夏は花のだ。だけど、日のあたるところではなく、闇の中に咲いている………
どうして、闇に咲くのだ。お前の咲くべき場所は、そこではないのだぞ。
ある一団がIS学園を目指していた。それは、数十人からなる男達が集団を組んで進んでいたのだ。
彼らが進むたびに辺りの雰囲気が暗くなり、また、その場に居合わせてしまったものは影に飲み込まれ、一団に加わってしまう。
その先頭にいる男は、数百メートル離れた場所にあるIS学園に視線を向け、嗤った。瞳に魔界文字を浮かべて……
「僕は、今日、この社会を変えてみせる。この手に入れた”力”でっ!!!」
男に合わせるように、集団の面の皮膚が割れ、そこから醜悪な”悪魔”の顔が現れる。目は赤く、禍々しく輝いていた。
「行くぞっ!!!!!」
これから起こす革命に対して、意気揚々と進もうとするのだが、
「………悪いが、この先には行かせる訳には行かないよ」
集団と対峙するように、蒼いコートを靡かせる人物が一人。弓を持ち、それに付けられている刃を向けて………
「なんだっ、お前は、まさか、IS学園の関係者か?女ぁッ」
集団と対峙する一夏は、少しだけシニカルに笑い、
「お前達の天敵だ。それと、私は、どちらでもない」
ホラーに対して、一夏は弓を構え、牽制する。
「魔戒法師かっ、ならば、恐れるにたらんっ!!!」
ホラーは、自身の集団の何人かを一夏に差し向けた。差し向けられた者達は、様々な凶器を持ち、一夏に襲い掛かる。
その瞬発力は人間のそれを遥かに超えており、並みの人間ならば、あっという間に袋叩きにされ、餌食にされたであろう。
一夏は、魔戒騎士である。故に、集団にたいして、切り込み、三人を同時に地に伏せさせた。
直ぐに立ち上がり、蹴り、拳、凶器による攻撃が一夏を狙う。狙いに対して、一夏はこれを回避し、魔戒弓による斬撃ですべて切り伏せた。
相手の腕が飛び、足が切られ、凶器は破壊された。
倒される集団に対して、ホラーは
「その弓、まさかソウルメタル。貴様、法師ではなく、魔戒騎士だというのか?」
「ああ、どちらでもないがな」
言葉と共に、矢をホラーに対して放った。放たれた矢に対して、腕を甲殻類を思わせる物に変えて、それを防いだ。
「なるほど、最近よくみる。男らしくも無ければ、女らしくも無い半端者か?だが、僕の敵じゃない!!!!!」
男の身体が弾け、中からホラー レギオンが姿を現す。それは、三つの角をもつ甲虫を思わせる頭部を持ち、半身は蛇の尾の姿をしていた。
それだけでは、終わらずに回りに居たものを取り込み始めた、一夏のすぐ傍に転がっていたモノも手当たり次第に、
肉体が溶け合い、黒い瘴気と共にホラー レギオンが巨大化していく。巨大化したレギオンは有に十メートルはあるであろうという巨体であった。
その光景に、一夏は……
「前に戦ったのよりも遥かに大きい」
「ああ、こいつを絶対に学園には近づけるな。入らせたら、とんでもないことになるぞ」
ヴリルの言葉に頷く。このホラーならば、IS学園を一晩で全滅させるだけの力はあるであろう。
一夏は、地を蹴り、普通ならありえない高さまで飛び上がったと同時に、レギオンの頭部めがけて矢を放った。
放たれた矢は、二、三発と放たれるが、レギオンの皮膚は硬く、矢は全て跳ね返ってしまう。
「っ!!?!!」
普通なら、刺さるはずだが跳ね返ってしまうのは、流石の一夏も驚いてしまった。
レギオンは、宙に居る一夏に対して、禍々しい角を突きたてるべく突進を行った。迫る角を刃で受け流しながら一夏は、ホラーの身体に飛び乗るが、
飛び乗った瞬間、皮膚からまるで浮かび上がるように、小型のレギオンが姿を現したのだ。一夏の前後を取り囲むように
「これが……」
「ああ、分裂だ。気をつけろ!!!!」
前後から来る小型レギオンの攻撃を魔戒弓を大きく振りかぶることで防いだ。金属音がなると同時に二体のレギオンが吹っ飛ぶが、その瞬間に地響きと同時に足場が揺れる。
レギオンが動いたのだ。動いたレギオンに合わせる様に、小型の二匹は溶け込むように本体の中に還った。
足場があまりにも悪いため、一夏は、一旦レギオンの本体から降りる。数メートル先まで離れて、一夏は
「巨大化と分裂……恐ろしく厄介な能力だ」
「そうだ、レギオンはかなり厄介だ。どうやって、片付ける?」
一夏の言葉にヴリルが問う。一夏の答えは決まっている。戦いを長引かせるわけにもいかない。
「これで、決めるっ!!!」
その言葉と同時に一夏は、魔戒弓を頭上に掲げて、円を描き”鎧”を召還する。光と共に蒼い狼を模した鎧が現れた。
同時に大きく変化した魔戒弓を掲げると同時に、魔道火を矢に点火させ、レギオンに放った。
狙うは、レギオンの蛇のような皮膚をした半身。この部分は、頭部のように硬い外骨格で覆われてはいない。
一夏の狙い通り、矢はレギオンの半身に刺さり、炎が侵食し、その身体を粉砕する。だが、巨体だけに、致命傷には至っていない。それどころか、再生をしている。
再び矢を放つべく弓を構えようとすると、レギオンはその巨体をもって一夏に突進を仕掛けてきた。
恐ろしい硬度を誇っているレギオンの外骨格を正面から受けるのは、魔戒騎士でも厳しい。故に一夏は、上空に飛び上がることで回避する。
アスファルトが割れ、地響きで震える。魔戒弓を構え、魔道火を伴った矢をレギオンの半身に放つ。だが、身体から現れた分身が盾となり防ぐ。
矢で消滅させたのは、分身であり、本体には傷がついていない。
「くっ!?!矢が何本あっても足りないっ!!!」
レギオンは一夏の狙いを察したのか、周りを固めるように自身の分身を出現させた。
「まったくだ。何で、こんな奴が出てくるんだっ!!!!!」
ヴリルも、レギオンの能力に対して辟易していた。細かいところを狙っても分裂か再生を繰り返す。
「だったら、烈火炎装で奴が分裂も再生ができないぐらいに切り込むっ!!!」
一夏は、魔戒弓に魔道火の炎を纏わせたと同時に自身の鎧にも炎を纏わせた。橙色の炎が蒼い鎧を照らす。
横一文字に魔戒弓の刃による魔道火を帯びた剣圧が一直線にレギオンの半身を切る。切られた半身は魔道火により燃え上がる。だが、身体はまだ残っており、そこから、二体目のレギオンに成ろうとするが……
一夏は既に駆け出し、さらなる剣圧を近い距離から放ち、二体目に成ろうとしていたレギオンを魔道火の炎で、焼き尽くし、消滅させた。
上半身だけのレギオンは信じられないのか、呆然としていた。無限に再生と増殖を繰り返す自身の身体を消滅させるなど……
一夏は、レギオンの上半身よりも高く飛び上がり、魔道火を帯びた魔戒弓による斬撃は、レギオンを真っ二つに焼ききったのだ。
焼き切られたレギオンの左右の身体は消滅したと同時に一夏はアスファルトの上に着地した。
一夏と同じく、奇妙な肉の塊が目の前に落ちた。うっすらと男の顔を浮かべて……
”嫌だ…僕は、この酷い世界を変える力を得たんだ。あそこには、全ての元凶があるのに……”
悔しそうな男の顔に対し、猛々しい蒼い狼は、
「たとえ、この世界を酷い物に変えた元凶であっても、私にとっては、かけがえのない”大切な人達”だっ!!!!!!」
魔戒弓の炎を未だ衰えず、肉の塊に対して大きく振りかぶり……
「それにお前は、ホラーに憑依された時に死んでいたっ!!!!」
振りかぶられた炎は、肉の塊を塵を残さずに消滅させた………
鎧が解除され、辺りには静けさが漂った。不意に懐かしい感じを背後に感じ、振り返った。
「久しぶりね、一夏」
目の前に小柄な少女が立っていた。
「鈴」
彼女の名は、凰 鈴音。一夏にとって、箒に続くもっとも懐かしい存在である。
「ああ、久しぶりだね。一年ぶりかな」
「そうね、アタシもこの一年を頑張ってきたわ」
鈴は、一夏に自身の相棒である大筆の”魔道筆”を掲げた。
「魔戒法師になれたんだね」
「何言ってるのよ。アタシは、まだまだ半人前よ。烈花さんからは、仮免の評価だから……」
その言葉と同時に鈴の肩に、小さな魔戒魚が姿を現した。
鈴
IS学園に向かう途中で、まさか一夏とホラーとの戦いに出くわすなんて……アタシはとことん、厄介ごとに縁があるらしい。
IS学園に来たのは、アタシが魔戒法師として、一夏の補佐役として指令が出たからだ。
アタシ自身も驚いたわよ。だって、まだ修行をして一年ぐらいのアタシが前線に行くなんてね。
当然、この一年は死にそうな目には、何度も合ったし、目を背けたくなるようなものだって見てきた。
半年程、閑岱で基礎を学んで、経験を積むために魔戒法師の烈花さんに師事してきた。
”もっと冷静になれ!!!頭に血が上りやすいのは、お前の悪い癖だ”
”愚か者っ!!!!ただ敵を倒せばいいのではないっ!!!!”
”俺達が護らなければならないのは、多く人々の未来だ!!!!敵を倒すよりも護ることを優先しろっ!!!鈴っ!!!!!”
”甘いっ!!!俺がホラーならば、シグトは死んでいたぞっ!!!”
”卑怯?それをホラーに対しても言うつもりかっ?”
烈花さんは、本当に厳しかったわ。口調は”俺”で、一夏以上に男らしい女の人だった。
話を戻すけど、IS学園に向かう途中でアタシは、一夏が巨大なホラーと戦っているのを見た。一年前に比べると格段に強くなっていた。
アタシじゃ、まだ届かない。一夏が、どれだけ努力を積んで魔戒騎士になったかはよく分かっている。だって、魔戒騎士は決して才能だけじゃなれない。
才能以上の努力が必要だったから……、一夏は、普通の魔戒騎士なら倒すのが困難な巨大ホラーを倒した。
目の前にいる一夏は強くなっている。だけど、アタシよりも綺麗になっているのは納得できない………
一夏と鈴は、IS学園の校門前を揃って歩いていた。
「鈴。元気だった?」
「元気も元気ね。烈花さんの前で落ち込んだら、アタシが元気になるまでボコられるわよ」
鈴は一夏に、自身の師匠の理不尽さを語る。一夏は、鈴が相変わらずの様子なので、思わず笑みが浮かんだ。
「シグトの優しさが身にしみるわ」
生意気にも年上の、先輩の魔戒法師を呼び捨てである。これは師匠がいないからこそ、言えるのだ。
「私は、鈴の師とは面識はないけど、いい魔戒法師なんだね」
「ええ、お父さんもお母さんもいい人だって、言ってくれてるわ」
鈴は、まるで自分の事のように嬉しそうな笑顔を一夏に向けた。幼いながらも、人の気持ちを暖かくさせてくれる笑みだ。
「それと、一夏。たまには、アタシん家に顔を出しなさい。お父さん、嘆いていたわよ、”恩人”が来てくれないって」
「ああ、でもおじさんとおばさんは、鈴が魔戒法師なのには、平気なの?」
「千冬さんみたいな事、言ってんじゃないわよ。アタシは自分で考えて決めたの、お父さんとお母さんとちゃんと向かい合ってね」
鈴の言葉に一夏は、
「そうか、私は失礼なことを言ってしまったな」
「そうね。もう少し、察しなさい。あんたも”女の子”なんだから♪」
茶目っ気たっぷりに鈴は、一夏の鼻の先に指を当てたのだった………
彼女は、一夏が”IS”インターセックス 中性であることを知っている。
「そうだな、一夏。一応、お前も女なんだからじゃなくて。鈴、そこは、男も女も関係ないんじゃないか?」
先ほどから黙っていたヴリルが会話に加わる。
「あ、そういえば、あんたも居たわね。ヴリル」
「居たわね、じゃねえよ、俺を無視するとは、いい度胸してんじゃねえか?」
ヴリルが、俺が折角、気を使ってやったのにと言わんばかりに言いたげだった………
翌日、パーティーを途中で抜け出したことについてセシリアに少し、言われてしまった一夏だったが、放課後にISの訓練に付き合うということで機嫌を直してもらった。
そんな一夏を箒は、少しだけ不満な目で見ていた……
箒
あの後、一夏はパーティーには戻らなかった。皆、残念がっていたが、私としてはこれ以上一夏が他の女に気を取られないで思うと良かったと思ってしまったが。
千冬さんも戻ってこなかったし、あれから一夏は何をしていたのだろうか?
あの怖い目をしていた一夏。そして、昨晩、一夏と親しげに話していたあの”女”。
一夏の事が気になって探しに行ったが、何処にもいなかった。
一時間経ってから、私は一夏を昇降口付近で見つけた。声を掛けようとおもったが、できなかった。
なぜなら、一夏の隣に私の知らない女が居たからだ……
親しげに話すその女は、誰なんだ?一夏………
それにお前は、今、何をしているんだ……私の知らないところで?