新春のお慶びを申し上げます
本当はメリークリスマス、よい子にはサンタオルタからのプレゼントだというノリで投稿しようとしていたのですが間に合わず
というかそもそも小説書く余裕も時間もないはずなんですけどいつの間にかiPhoneの中のメモ帳が凄い文量になってて驚いた
本当はGATEの二次を、いやそれ以前にもう二次は書かないだろうと勘繰ってたんですけどこうして手を付ける羽目になってしまいました
今回はいささか変則的な書き方で、オール並列執筆ではなくまず会話文だけダーッと書いてから地の文を肉付けするように書いたんですが、出来栄えはどうなんでしょうか
それではどうぞ
本作における主人公・黒鉄一輝が
七星剣舞祭のその名の通り、現在絶賛留年中の黒鉄一輝が所属している破軍学園の他に武曲学園、廉貞学園、文曲学園、禄存学園、巨門学園、貪狼学園を含めた計七つの学園が存在する。
毎年行われる七星剣舞祭の為に、黒鉄一輝を中心に巻き起こる様々な事件が発生する一年前であっても、この時期では例年通り七星剣舞祭の予選とも言える代表選手選抜大会が行われていたという。
それは無論、関東の不良の溜まり場と揶揄されるほど悪名高い、北関東貪狼学園でさえも例外では無い。
▼ △ ▼ △ ▼
「レディ―――――ッ、ア―――――ン、ジェントルマ―――――ン! ハバナイスデ―――――ス!」
「はぁ? なんだあいつ」
「うっせーぞゴラァ!」
観客の一人が野次を飛ばした。
無理も無い、日本全国単位で見ても圧倒的に不良生徒の人口密度が最多である、言わば不良の掃き溜めとも言えるの貪狼学園の生徒だ。況してや普段観に来ることなくコンビニの外で屯ろしているのが日常である生徒達からすれば、珍しく観に来た上に喧しい実況ともなれば野次を飛ばすのは至極当然とも言える。
いや、もう生活習慣の一部か。
ウザければ怒鳴る、睨まれればガン飛ばす、拳を作れば殴る。
喧嘩上等走死走愛愛羅武勇仏恥義理で四露死苦を地で行く、絵に描いたような、それこそ漫画に出てくるような不良しかいなかった。
そんな彼等の野次を晴れやかな笑顔で迎える実況席の生徒のメンタルは如何程か。よくよく見れば実況席の彼等は貪狼学園の生徒らしからぬ見た目であった。
「大変長らくお待たせ致しました! 本日は急遽実況担当を変わりまして、明るく楽しいエンタメの使者こと
「賢木ユートだ、宜しく」
「融合じゃねぇユーゴだ!」
「賢木ユーリです、以後お見知り置きを」
弟達、ということは恐らく血縁関係があってのことなのだろうが、それにしては全員が全員顔がそっくりだった。日本人離れした髪の色とトマト、ナス、バナナ、紫キャベツとでも名称付けられるくらいの奇抜なヘアースタイルが無ければ見た目では一人一人の区別が付きにくい。
生徒達の困惑を他所に、いやその困惑を和らげるように、長男を称するユーヤは身振り手振りで声高らかに実況に興じる。
「さあさあ皆様お立会い! 本日は貪狼学園七星剣舞祭代表選抜戦大注目のカードです!」
「七星剣舞祭の代表選手である六名の最後の一枠を決める、事実上の最終戦だな」
「ランダムに決められる未公開制トーナメント形式だから、個人の実力云々とは関係無く順番が来るんだよな」
「だから今回のように、本来どちらとも代表選手に選抜されてもおかしくない二人が最終戦に持ち越されてしまったようだね。学園側としては最後にトリを持ってこさせた訳だから都合はいい筈だ」
そう、普段学校への登校すら危うい貪狼学園の生徒達が珍しく大人数で観客席を占めている理由がこれである。担任から「せめて最後の試合だけは見に来てください」という懇願やたまたま暇だったから、などなど諸事情はあれど、実に貪狼学園の全校生徒の九割が落書きで塗りたくられたスタジアムに集まっていた。
実況のユーヤは観客の騒めきに負けないくらいの大声を張り上げる。
「それでは本日の選手のご紹介を致しましょう! まずは赤コーナー、
赤コーナーから出てきたのはグラサンの奥に鋭い眼光を宿す男。割れた腹筋の上をなぞるように彫られた髑髏のタトゥ。派手な羽毛を揺らす一張羅。ブラックの安全靴。
最上学年ではないにも関わらず今期の七星剣舞祭の予選を全勝で勝ち上がってきた、実力も申し分無く貪狼学園のエース候補と囁かれている一人である。
無論他の代表選手に選抜されている五名と、これから相対するであろう選手も全勝なのだが、判明している他四名と比べても雲泥の差なのだ。
何より見栄えが他と違う。
不良の巣窟である貪狼学園では一勝する毎に増えていく舎弟や取り巻きの数が増えていく。決して強いとは豪語できない生徒達からすれば、如何に早く彼我の実力差を認め、これから駆け上がるであろう頂点に立てる実力を持つ生徒の下に付けるかを見定めるのも彼等の賢い生き方であった。
そして、倉敷蔵人は最初からどの生徒よりも多くの取り巻きを擁していた。大衆の多くを認めさせる程の実力を彼は持っているのだ。
別段蔵人自身も担ぎ上げられて悪い気分はしない。それが彼等の生き方であるし楯突くわけでも無いならば興味は無い。寧ろ、孤高の強さを有するよりも応援してくれる取り巻き達から背中を押して貰う方がいい。
(さくっと終わらせてくるか)
だが彼にはわかっているのだろうか、いくら取り巻きがいたとしても並び立つ者がいなければ、彼は永遠に孤独で有り続けるのだと。
「そして青コーナー! 今年度入学者にして実力、伐刀者ランク共に不明! 何もわからないまま悉く全試合を消化し勝利をもぎ取った問題児! 果てには有りもしない噂話まで持ち上がる新入生! 一人が一人、一人で一人。虚偽は真実愚鈍は慧智! 切っても割っても増えず減らない
派手に噴出する白煙の奥から現れたのは、これまた奇抜な格好の少女だった。
蔵人と同じようなグラサンをカチューシャ代わりに押し上げた前髪。彗星の如く尾を引くほど長い、しかし色は墨汁をぶちまけたような黒だが光の加減で濃紫にも見える。鼻背を横断するように横一文字に刻まれた秋刀魚傷。耳元まで裂けたかと連想させる口元の端々に覗く乱杭歯。貪狼学園の制服に改造を重ね最早原型もわからなくなったような前衛的な服装。両腕を胸の前で斜めの十字状に縛る、死刑囚が身に付けるような拘束具。下に履いているのはスカートではなく腰から下のラインをくっきりと魅せるスパッツ。露わになった両脚は細く、怪我でもしたのか至る所に絆創膏や湿布が乱雑に貼られていた。
その姿は相対する蔵人も、観客席にいる生徒達も怪訝な顔を浮かべた。何故ならば現在スタジアムにいる生徒の誰一人として、静梦の姿に見覚えが無いからだ。
「双方の長ったらしい前振りは校内に設置された『各選手に付けたい二つ名』募集ボックスから厳正な抽選の結果出されたものだ。みんな、応募感謝する」
「そのまま正式な二つ名に認定されるチャンスもある訳だからみんなこぞって応募したんだよな! にしても数多過ぎねぇか?」
「倉敷蔵人選手は人気だし、やはり分かり易く実力を示した試合を行ってきたからね。だが匂宮静梦選手の試合はどれも不明瞭、おまけに今の今まで誰一人として関心を示さなかったから観ていない試合も多いし的外れな応募も多かった…まさに今期のダークホースというやつだ」
貪狼学園は不良の巣窟ではあれど、七星剣舞祭に参加する他六校と同等の設備を誇っている。つまり代表選手トーナメントも複数のスタジアムで行われているのだ。
だが先に述べたように、態々毎度行われる試合を観に来るほどの物好きは貪狼学園では希少。いや、蔵人の舎弟達のような各生徒達の取り巻きの何人かは試合を観に来ることも多い。
では何故匂宮静梦の姿に覚えがある人がいないのか? その理由は二つある。
一つ、匂宮静梦という女には誰一人として取り巻きや舎弟が存在しない、完全にノーマークだったこと。
重ねて一つ、匂宮静梦と相対した生徒は、このスタジアムにいないこと。
無論二つ目に関しては彼女が相対した生徒を殺した訳ではない。そんなことをすれば犯罪になるし、況してや伐刀者の普及に伴う医療技術の発達によってどんな大怪我を負おうとも僅か数分で後遺症なしに完治可能である。
ならば、何故彼等はこのスタジアムに来ていないのか。
否、彼等は来たくなかった。見たくなかった。ここにいる誰一人として理解できないだろうが、匂宮静梦と相対した生徒達は恐怖に打ち震え、頭を抱え、目を瞑り、耳を塞ぎ、
『もう二度と関わりたくない』
口を揃えて、こう言う。
▼ △ ▼ △ ▼
「来い!【
「士、道に志せ【
ステージ中央、試合開始の定位置に立った二人は同時に
蔵人の手元にはのたのたうち回る抜き身の蛇の骨を連想させる、太く巨大な野太刀。
銘を【大蛇丸】。常人では手に負えない、満足に振るうことも儘ならぬ固有霊装である。
対して、
(…なんでコイツ固有霊装出さねぇんだ? いや、なんだありゃあ)
匂宮静梦の固有霊装は、奇抜にして奇々怪々なものだった。
先ず、武器らしい武器が存在しない。次に、唯一外見からわかる変化は口元だった。
「くひひひひ」
三日月を連想させる口元は巨大な噛癖矯正具によって遮られ、くぐもった笑い声だけが不気味に響いていた。まるで口元限定の金属製で編み込まれた檻は顔の下半分の大半を覆い隠し、些か呼吸をし難そうである。
「両選手、
「倉敷蔵人の固有霊装は野太刀の形状の【大蛇丸】…資料の通りだな」
「だが匂宮の固有霊装は全くの不明…いや、いま拾った音声では【悪衣】とか聞こえたぞ。あの服そのものが固有霊装なのか? 猿轡っぽいのが増えたようにも見えるが…わからねぇな」
「匂宮静梦選手は実は入場時から固有霊装を既に出していた…ということはないでしょう。そんなことをすればルール違反ですから。となると…」
手元で【大蛇丸】を軽く振り回しながら調子を確かめつつ、実況の話も耳に入れつつ自身の考察と混ぜて思考する。
(…つまり、既に見えないところで固有霊装が展開されてるってことか。やりにくいな…まぁ)
ぶおん、ぶおんと無骨に空気を薙ぐ音を奏でながら胸の内に眠る闘志を呼び醒まし、手繰る【大蛇丸】を中段に構えた。
「関係ねぇがな!」
「くひっ」
噛癖矯正具の奥で嗤う声。その甲高い嗤い声は器具越しでなくても押し殺していることがわかる。つまり、如何なる理由かは不明であるが相対している蔵人を慮っているのだろう。
それは思考を読むといった超常的能力を持たない蔵人でもわかる、自身へと向ける眼差しに愉悦が滲み出ていた。
ここで蔵人の数秒後の行動は決まった。とにかく静梦の横っ面をぶっ飛ばして物理的に歪める。
「それでは両者準備できたところで…試合、開始ィイイイイイイイイ!!」
「オラァ!」
先手必勝。合図と同時に蔵人は前に出た。双方一度たりとも相手を視界から外さない以上、奇襲が殆ど意味を成さないのは自明の理である。故に、この場合先に相手を自らの攻撃範囲へと入れた方が有利である。
まず、蔵人の固有霊装【大蛇丸】は蔵人本人の身の丈ほど長い野太刀である。加えて振るう腕の長さも含めれば間合いは2〜3m前後だろう。
対して静梦はといえば、目に見えて拘束された両腕は満足に振るえる筈もなく唯一自由である両脚を駆使したところで間合いが2mを超えることは叶わない。加えて仮に足技を使うのであれば駆け出すための脚、攻撃するための脚と下半身を駆使した大きなアクションを見せなければ攻勢に出られない。何故ならば足は人間の移動手段なのだ、そう自由に動かすのは容易ではない。だが、
「くひっ、くひひ、くひひひひひひ!あーっはっはっはっはっは!」
トントントン、針金細工のようなほっそりとした両脚を弾ませて地面を蹴りながら、匂宮静梦は身を仰け反らせて哄笑した。それだけならば唯の狂人として済ませられるが、ここで注目すべきはタイミングだった。
「自然と一致した魂こそ徳! 徳こそ我が唯一の善! 嗚呼素晴らしき哉、幸福とは欲望から自由になることによってのみ達せられる! さぁ!」
かくん。
彼女は某アクション洋画の名シーンの如く地面に垂直に立った脚を膝から直角に折り曲げ、膝から頭の天辺まで地面に水平に押し倒したのだ。
つい先程まで頭があった空間を横薙ぎに蔵人の【大蛇丸】が襲う。
「殺し合いを始めヨウヨ、倉敷蔵人。ここには私とお前しかいない」
何寝言ほざいてやがる、と。
蔵人は振り抜いた【大蛇丸】の向きを手元で変えて、そのまま片手で袈裟斬りに振り下ろすことで返事を返す。轟、と空気を引き裂いて落下する刃を見てもニヤニヤと嗤う静梦の顔は歪まない。一秒か、二秒か、仰け反った態勢から跳ね上げた静梦の左足と【大蛇丸】が激突した。
「
接触と同時、【大蛇丸】との間に無数の火花が飛び散った。まるで熔接の際に目にするような火花は確かに存在し、同時に蔵人は静梦の固有霊装を理解した。
「ぐっ!」
「ハ――ッハァ!」
【大蛇丸】が弾かれた。否、自ら弾いたのだ。常人の反射速度を大きく上回る
すかさず攻勢に出ようと『神速反射』で太刀筋を数cmずらして振り下ろそうとしたが、顔面目掛けて迫り来る足裏を見て咄嗟に後方に跳躍して追撃を免れた。
「なっ、ちぃッ」
からん、蔵人のグラサンがブリッジから真っ二つに割れていた。
幸い破損した欠片が目を傷付けることはなかったが、誰が見ても当たった訳でもない蹴撃でグラサンを真っ二つに割るとは考えられなかった。
否、その攻撃を受けた蔵人には見えていた。
「それがテメーの固定霊装か」
「ハッ、ハハハハッ」
高々と上げた足をゆっくりと下ろす。だが静梦の足裏が地面と接触することはなかった。代わりに何かを切り刻むような甲高い音がスタジアム中に響き渡る。
火花を散らしながら徐々に姿を現したのは、静梦の足を囲むように配置された複数の円月輪だった。
「ななな、なーんということでしょう! まるで終身刑の囚人が着るような服が固有霊装かと思いきや、匂宮選手の固有霊装は実は足についたチャクラムだったぁ!?」
「固有霊装【悪衣】。足裏に連結されたローラー状のブレードが本体のようだな。片方六つ…いや、七つか。左右合計十四の刃が連動して動いているようだ」
「ひと昔前流行ったローラースケートみてーな固有霊装だな。足裏だから見え難いし、匂宮の奴服で両手を縛ってるから足しか使えないし、当然と言えば当然か」
「つまり先程のあり得ない加速力の正体はこの【悪衣】によるもののようだね。氷上を舞うプロのアイススケーターのように彼女はこのステージ上で大変自由度の高い動きができる。そしてそれは恐らく、速さも」
実況の考察が正しいことを証明するように、静梦は地面を蹴った。同時、足裏に配置された円月輪が高速で回転し地面を抉り爆発的な推進力を引き起こす。人間の可動範囲からは想像出来ないような複雑な軌跡を、無数の火花と描きながら蔵人に飛び掛かる。
(速ぇ! だが!)
「俺の前では速さなんざ無意味なんだよぉ!」
両脚を揃えた跳び蹴りは蔵人には読めていた。従っていくら速い動きと言えど蔵人の前には結果の見えたテレフォンパンチ同然であり、避けるに易く攻めに転じる機会を得る。
【大蛇丸】の腹の部分で滑らせるように円月輪による直撃をいなし、隙だらけの胴体に一撃を叩き込む。
「んぐゥっ」
空中で体を捻るという人間離れした芸当をやって見せたものの、蔵人の渾身の一撃は完全には免れず静梦の脇腹に重い一撃が刻まれた。
噛癖矯正具の奥からくぐもった苦痛の声が漏れるが、その痛みすらなんでも無いかのように嗤ったまま地面をヘッドスプリングの要領でバウンドして蔵人の追撃から逃れる。
「おらァかかってこいよォ!」
蔵人の攻め手は止まらない。態勢を立て直す寸前で静梦の首目掛けて無数の刺突が襲い掛かる。少々不利と判断し、静梦は円月輪の回転ベクトルを反転させて一時的な戦線離脱を計った。
「凄いなぁー、キミの反射神経は常人より少ーし速いみたいだねぇ倉敷蔵人ォ」
直撃を受けた脇腹を見遣るも、特に痛みに怯えるような姿勢は見られない。その顔から笑みが絶えることはなかったが、虚仮にしたような視線は消え代わりに獲物を見つけたような、好戦的な色が滲み出ていた。噛癖矯正具の中で、乱杭歯が軋みを上げる。
「だがしかし! まるで全然! 私に届くには程遠いんだよねぇ!」
再び静梦は駆け出した。そう認識した瞬間には体が勝手に動き静梦の繰り出す一撃を【大蛇丸】で防いだが、それでも静梦の攻勢は止まらない。
着地から、瞬間跳ね上がる。
足と地面との接触は一掴みの火花の残光を残し、空間に光の軌跡を描いてあらゆる方向から蔵人に襲い掛かる。足の周りで絶えず移動と回転を繰り返しながら、それぞれの円月輪が加速と斬撃の役割を成す。
「速くなった!? いや違う…!」
軸足にした左足の下で円月輪が不気味な音を響かせて静梦自身に回転を加える。まるでコンパスのように遠心力の加速を得た右踵の一撃を、蔵人は峰を当てることで防ぐ。同時に防いだことで発生した運動エネルギィを利用し、手元でくるりと刃を立て一気に【大蛇丸】を逆袈裟の逆に斬り上げた。
しかし、直撃すれば確実に肋骨を砕き肺にダメージを与えられた一撃は衝突と同時に飛び上がっていた左足が迎撃していた。複数の円月輪が火花を散らしながら【大蛇丸】の物打ちと鎬を削っていた。
(俺が、読めねぇ!?)
現状、目新しい変化と言えば静梦は先程の円月輪の回転による加速だけに留まらず、移動時に初めて膝を曲げながら地面を蹴っていたことだ。
細く、長く、それでいてしなやかな動きを見せる静梦の下半身は猫を連想させるほど縦横無尽。加えて上半身を発条のようにしならせることで体重移動を加速し、爆発的な推進力を生み出した。
だが蔵人が苦戦しているのは単純な速度の問題ではない。眼で追ったところで対応しきれなくなっているのだ。
「どういうことでしょう、先程まで優勢だった倉敷選手が防戦一方です!」
「…今、資料が届いたな。倉敷蔵人選手には常人の神経速度を上回る
「えーとなになに、匂宮はコンマ00秒ノータイムで反応する、反射神経とは別の回路を持ってる…?」
「…相手が動いた時には既に行動している。目の前の現象に対し無意識の内に、当の本人さえも予測不能の反応を瞬間的に生み出す反応回路
つまり、蔵人は見てからでも動き対応できる後手必殺であるのに対し。
静梦は相手の反応だろうと関係なく動き回る先手必勝であるということだ。
一見静梦の動きは出鱈目のように見えて、実は理に適っている。先天的か後天的かは不明だが、相手の動きを勘で予測して攻勢に出る戦闘センスは天賦の才と言っていいだろう。静梦は敵を屠ること意外に何一つとして考えておらず、ただただ肉体に染み付いた戦闘におけるスキルが優先的に働き、脳の処理能力を超えて全身を躍動させている。
フェイントを織り込ませ、空の左手で振り抜き本命の右手に握った【大蛇丸】が届くよりも先に、静梦の両脚が蔵人の肉体を断ち切らんと迫る。
「
跳び蹴りから大開脚、そして閉脚に伴う前蹴りと踵落とし。足の周囲の円月輪が蔵人の上下から襲うその姿は大きな顎を構える鮫を連想させた。
今から静梦本体を狙うのでは間に合わない。だが迫り来る円月輪は上下同時、右手に握った【大蛇丸】で迎撃するには、左足を対処するには早く、右足を対処するには遅過ぎる。
反射速度云々では覆らない有様だった―――このままでは。
「ハッ!」
だが、それがいい。
「ちったぁ骨のある奴が来たじゃねぇか! 上等!
ここで初めて、蔵人は己が持つカードを切った。【大蛇丸】の真の姿は野太刀にあらず、切断性のあるワイヤーで等間隔に繋げられた蛇腹剣である。
「ぐ、ぎぃ!」
静梦の両脚は、柔性と剛性を兼ね備えた【大蛇丸】の一振りによって同時に弾かれることで処理された。
「ぅおらァ!」
裂帛の一振り。蛇腹剣による伸張の一撃と伸ばした状態での一撃、それぞれで静梦の攻撃を防ぎ、最後に残った収縮の一撃が唐竹に振り下ろされる。
「かっ、か、かききっ!」
しかし。
直撃は免れず、仮に超再生能力を有する吸血鬼のような存在であったとしても、確実に頭蓋骨を陥没させ脳組織を掻き回し前後不覚にさせるほどの一撃を目の前にして、匂宮静梦は嗤いながら見上げていた。真っ白な喉を晒し首を大きく仰け反らせ、上段から迫る断頭台を前に、漸く静梦は本性を露わにする。
即ち、彼女が持つ飢えと渇き。またの名を渇望。
「
鉄檻に覆われた口元から、ぱちりと何かが外れる音がした。
野 獣 の 記 憶
年末落下とは闇堕ちを示していた
全員目がピカーンはシリアスなのに笑う
勿論彼等が『賢木』の名前なのはちゃんとした意味があります。理由は次回のあとがきでまとめて書きますが、源氏物語を知ってる方であれば納得すると思われます
追記・4章開幕おめでとうございます、FGO楽しいです
早く槍トリアさんゲットしたいですが1日のAPの使い方がマナプリズム集めと新制服集め(12月29日現在)なので4章攻略からのガチャ回しはだいぶ先になりそうです。レベル上限も解除されたので林檎使うなんて以ての外ですし
というより始めたときからアストルフォ狙いなので引くかは微妙ですが…
ともあれ、本年も変わらぬお付き合いのほど宜しくお願いいたします