艦隊これくしょん~天使と竜と艦娘と~ 作:sinku0004
態勢完了から30分。依然ドラゴンとの睨み合いは続いていた。
(動かないか・・・・明らかに知性のある行動だな。ただの獣なら楽だったんだが)
ドラゴンたちは何もしてこなかった。艦娘たちを警戒しているようだが、攻撃はしてこない。しかし、だからといって撤退するわけでもない。
(だがどういうことだ? 何かを待っているのか?)
「司令、一部の艦隊より交戦許可の申請がきています」
「何? 攻撃されたのか?」
「いえ、そうではないみたいですが・・・・」
「なら却下だ! 相手の正体がわからない以上、交戦はできるだけ避けたい。全艦にもう一度徹底させろ。先制攻撃は禁止。刺激するなと!」
「了解です!」
ドラゴンに知性があるにしろないにしろ、野生ならば問題ない。問題なのは野生でない場合。国家や集団の所属だった場合だ。
もしそうであれば先制攻撃は敵対行動と取られる。
そうなってしまえばいつ戦争状態になっておかしくはない。情報が少ない現状でそれは避けなければいけない。
もちろん普段の現実ならばそんなことはありえない。ドラゴンの所属する軍隊など物語の中だけの存在だ。だが、雄二は確信していた。ここが自分たちの知る現実ではないと。
(鎮守府が丸ごと異世界に転移したか、それとも異世界が鎮守府周囲に転移したか。似たようなことなら以前にもあった。今度は自分たち当事者になっただけだ)
霧の艦隊。潜水艦イオナ。これらとの接触により雄二たちは異世界の存在を知った。だからこそ今回のこともそうだろうと予想ができたのだ。
(そして今回は恐らく前者。そうであれば今、侵犯をしているのはこちらの方だ)
そうであるならもし攻撃をされたとしてもそれは正当な防衛行為だ。責めることはできない。
しかし相手が問答無用で攻撃してきたのなら戦うしかない。その時はこちらも仲間を守るため、鎮守府を守るため全力で戦わなければならない。
だがそれは飽く迄も防衛行為でなければならない。侵犯だけならまだ言い訳がつく。先制攻撃をしてしまえば明らかな侵略行為になってしまう。
そうなってしまえば交渉の際、不利になるのはこちらだ。
だから戦闘を行うのなら相手にとっても攻撃されても仕方ない状況を作る必要がある。
(このまま退いてくれるのが一番良いのだが・・・しかし、奴らは何を待っているのだ?)
そのままドラゴンと艦隊との睨み合いが続くこと数十分。状況は一変した。
「っ! 全ドラゴン周辺に高エネルギー反応!」
「なんだと! 全艦警戒! 戦闘用意!」
(これを待っていたのか! もし攻撃ならどうのようなものまったくわからない。一撃で全滅なんてことはないと思うが・・・)
雄二は直接艦隊へと指令をだす。
鎮守府全てがかつてない緊張に包まれた。
指揮所の全員がドラゴンの状況を映し出すスクリーンを無言見つめるなか、ドラゴン達の後方の空間が歪みだした。
ドラゴン達はそれを確認すると次々とその歪みの中へと飛び込んでいく。
そして数分後。全てのドラゴンはいなくなり、空間の歪みも収まった。
「・・・全ドラゴン消失。エネルギー反応もなくなっています」
沈黙を破り、オペレーターが状況報告を行う。
「・・・・・」
(撤退したのか・・・・?)
数秒の沈黙の後、次の指令を部隊に下した。
「全部隊、艦隊、職員に通達。三種態勢を維持。各隊の長は人員、武器装具の異常の有無を点検。報告せよ。現在出撃中の艦隊については引き続き警戒を続行。24時間態勢。交代で警戒にあたれ。航空隊については全機帰投。偵察機を出し周辺域の警戒にあたれ。以上。」
「了解しました。各所に通達します」
そこから指揮所内は慌ただしくなる。
各所の異常の有無、航空隊の状況等が次々と入ってくる。
そして数分後、全ての報告を聞き終えた雄二は2時間後に緊急会議の開催を告げ、指揮所を後にした。
___ 鎮守府 会議室____ 現在時刻、1930
現在この場には司令官である雄二の他に秘書艦の扶桑、各艦隊の旗艦及び各所の責任者合わせて二十数人が集まっていた。
「会議を始めるまえにまずは先のドラゴン襲来の際、適切かつ迅速対応感謝する。皆の働きのおかげで損害もほぼなく乗り切ることができた。さて皆も知っての通り今朝方、鎮守府全体に異変が起こった。通信障害に海域データの不一致。そしてドラゴンの襲来。現在鎮守府は完全に孤立している。そこで皆の意見を聞き、今後の対策と方針を決めていきたいと思う」
雄二がそう言うと部屋の照明を暗くし、プロジェクターを起動。スクリーンに映像を表示させる。
そこには今朝から発生した異常についてまとめられ、現状の問題点について書かれていた。
「現在当鎮守府は電気及び水の供給が止っている。そのため非常設備を可動し、なんとか鎮守府としての機能を保っている。だがこの異変が長期化するとなると問題となってくるものがある。燃料と食料この二つだ。現在の備蓄量では食料は1ヶ月。燃料は所属艦全員の補給3回分との調査結果が出ている。これに関して皆の意見を聞きたい」
実は艦娘たちにとって食料と燃料は同等であったりする。食事でも燃料でも艦娘は自身の活動に必要なエネルギーを得ることができる。だがその効率は燃料の方が上だ。食事でエネルギーを得るには燃料の倍くらい食べなければいけない。
なのでほとんどの艦娘たちは食事は趣味でするものが多く、大型艦であればあるほど食事の量は多くなる。
「提督、質問いいですか?」
その時一人の艦娘が手を上げた。
「加賀か。ちゃんと答えれるかはわからないが、何でも聞いてくれ」
「わかりました。では、現状の問題点は理解しました。しかし、その前に提督に一つ。そもそも提督はこの異変についてどうお考えで?」
「どうとは?」
「何が起こったかということです。提督はどう思いますか?」
「なるほど。確かに皆も気になっていると思う。現時点では正確なことはわからない。だが、鎮守府の現状、そしてドラゴンの襲撃これらから私は鎮守府が、もしくはその周辺がどこか違う世界に転移したのではないかと考えている」
「異世界ですか・・・・確かに現状を考えるとおかしくはないですね。ただ、そうなると少々まずいのでは?」
「何がだ?」
「私達の行動がです。もしここが異世界なら、現在私達がいるこの海域は何処かの国の領海であるのではないですか?もしそうなら私たちは他国の主権を犯していることになります。あのドラゴンも国家の所属である可能性も・・・・」
加賀の言葉に会場はざわめきだす。「戦争」という単語が様々なところから聞こえ、根拠のない憶測が飛び交う。
「落ち着け! さすが加賀だな。その通りだ。だが心配はいらない。そういう時の場合も考えて行動している。皆も余計な気をまわさないように」
「そうですか。それならいいのですが」
それから小一時間程会議は続けられ、鎮守府の方針が決まったのであった。