駄作ですがボチボチお付き合い下さい
◇
「ーーという訳で、二ノ宮先生にはこれから一年間〈一年二組〉の副担任を務めていただきます。 新任早々大変だとは思いますが、どうか宜しくお願いしますね」
その言葉に、スーツ姿の「彼」が肯定の返事と共に頭を下げる。
(いきなり担任を任されるよりはマシだよな……それにしても、ホントに俺以外は女しかいないのか……)
頭を上げつつ職員室を軽く見渡してみても、興味深々といった感じで「彼」を見ている女性達の姿しか映らない……あ、今眼鏡の子と目が合った。
「やっぱり周りが女性ばかりだと落ち着かないかしら?」
「い、いえ、そんな事は……」
「大丈夫ですよ、此処の教師の皆さんはまともな方ばかりですから」
そう言って、先程教頭と名乗った妙齢の美女は悪戯っぽく微笑んだ。
◇
教頭が言っているのは、〈女尊男卑主義〉の事だろう。
十年前、一人の天才科学者が開発したパワードスーツ〈
機械化部隊一個大隊に匹敵する火力、最新鋭戦闘機級の最高速度を維持したまま戦闘ヘリを凌駕する旋回性を発揮する機動力、巡行ミサイルの直撃にも耐え抜く防御力ーーそれら全てを兼ね備え、しかしながら素質の無い者、特に男性には起動させる事すら出来ないという重大な欠陥を孕んだこの兵器は、軍上層部が打ち出した〈女性優遇制度〉と共に既存の常識全てを過去の物へと変えた。
簡単に言えば、「最強の兵器は女性にしか扱えない」という事実がいつの間にか「女性は男性より優れている」という世迷言へと変貌していったのだ。
結果、世界はかつて男が女を奴隷同然に扱っていた中世と同等、いや、それ以上に歪んだ世界へと変わっていった。
かくいう「彼」も、女尊男卑主義が横行する世間の中で色々と迷惑を被っている被害者の一人だったりする。
尤も、「彼」の「コンプレックス」はある意味女尊男卑主義とは真逆の所にあったりするのだが。
◇
「緊張しているようだな」
「え? あ、いや、そのっ」
数十分後。
教頭の後について教室へと向かう「彼」の隣を歩いていた女性ーー確か学年主任の〈織斑 千冬〉先生だったかーーから突如声を掛けられ、目に見えて狼狽える「彼」。
「何、心配する事は無い。 多少女尊男卑主義に染まっていようが、所詮は物を知らない小娘共だ。 教師への礼儀という奴を「しっかりと」教えてやればいい」
「え……ええっと……」
女性の口から出たとは思えない程過激な発言にドン引きする「彼」。
それでも何とか気を取り直して学年主任に言葉を返す。
「……その……俺、苦手なんですよ……女性が」
その言葉に、教頭も学年主任も揃って呆気に取られた表情を浮かべる。
「女性が苦手って……それで良くこの〈IS学園〉に赴任する気になりましたね」
「大方教育委員会も人畜無害そうな人材を適当に見繕ったのだろうが……仕事を選べる時勢では無いとは言え、災難だったな」
IS学園。
名の通り、ISについて学ぶ為の学園。
故に、通う生徒も「ほぼ」全て女子で統一されている。
当然、教員も生徒に配慮してほぼ女性で統一されていた、のだが……何故「彼」が赴任する事になったのかはこの場では割愛させていただく。
「ええまあ……卒業からこの職場が決まるまで一年くらい掛かりましたし、仕事を選り好みしてこれ以上親や家族に負担を掛ける気にもなれなかったんで……」
その言葉と共に肩を落とす「彼」の姿は、女性的な容姿も相まってさながら捨てられた子犬のように弱々しかった。
「っ!? ……と、とりあえず時間も押していますし、教室に行きましょう! ね!?」
「そ、そうですね。 すいません、辛気臭い話しちゃって」
妙に顔を赤くした教頭の言葉に、再び足を進める三人。
だが、
(か、可愛い……どうしよう、学園長からは自重するように言われてるけど……我慢、出来るかしら……)
と、教頭が一人悶々としていたことを、「彼」は幸か不幸か気付く事は無かった。
◇
「では、私はこの教室なのでな。 ……二ノ宮先生、繰り返すようだがくれぐれも一人で抱え込まないように。 困った事があれば、何時でも私に相談しろ。 いいな?」
「は、はい。 ありがとうございます、織斑先生」
「うむ。 ではな」
その言葉を最後に、一年一組の教室へと向かう学年主任。
「うーん……教頭、俺ってそんなに頼りなく見えるんでしょうか」
「くすっ……大丈夫ですよ。 織斑先生は見た目は厳しい人ですけど、本当は優しくて心配性な人なんです」
「そうなんですか?」
そう問い返す「彼」の耳に、突如重い衝撃音が届く。
「うわっ! な、何だ!?」
咄嗟に音の方向に向き直ると、
「……ゲエッ、カンウ!?」
「ダレガサンゴクシノエイユウダ、バカモノ」
という会話と共に更なる衝撃音……いや、打撃音が教室の壁の向こうからでも鮮明に伝わってきた。
「……ホントに優しい人なんですか?」
「あれは只の照れ隠しですよ。 何せ、彼女のクラスには弟さんが居ますから」
「ああ、「世界唯一の男性IS操縦者」の?」
男性IS操縦者。
上述の「ほぼ」の要因にして、世界唯一の「例外」。
そんな人物がかつて世界を制した「最強のIS乗り」の弟とは、随分と奇妙な「偶然」もあるものだ。
「では、私が呼んだら入ってきて下さいね」
「あ、はい」
その会話を最後に、二組の教室へと入っていく教頭。
一人廊下に残った「彼」が教室から聞こえてくる会話に耳を傾けてみると、どうやら二組の担任は今日は病み上がりらしく大事をとって病欠らしい。
どうやら長谷川先生というらしいが……
(長谷川? どっかで聞いたような……)
だが、珍しい名字でも無いという事もあり思考を中断する。
教頭からお呼びが掛ったのだ。
「失礼します」
一言掛けて、教室の引き戸を開ける。
すると、何気無く向けられた無数の視線が、程無く驚愕の色を含んで一斉に突き刺さる。
中には思わず二度見している生徒までいる程だ。
(う……予想はしてたけど、これは辛い……)
内心及び腰になりながらも、気力を振り絞って教卓まで移動する。
そして、背後の黒板に自らの名前を書き込むと、再び生徒達に向き直りーー
「ーーお、お兄ちゃん!?」
「……へ? ゆ、由香?」
其処には、「彼」の実の妹である由香が居た。
それも、教室最前列ど真ん中に。
「お兄ちゃんの赴任先って、IS学園だったの!? 」
「あ、ああ……っていうか、何でお前も此処にいるんだよ!? お前が受けたのって藍越学園だったろ!」
「この前説明したでしょ、入学前に転校する事になったって!」
思わずヒートアップする二人の言い合い。
それを止めたのは、苦笑を浮かべた教頭の手拍子だった。
「はいはい、仲が良いのはいい事だけど、先ずは自己紹介を済ませてからね」
「「す、すいません……」」
周囲から湧き上がる笑い声に赤面しながら席に着く二人。
「えーと、じゃあとりあえず自己紹介を……本日より、この一年二組の副担任を務める事になったーー」
「〈
さて、今回はいつ変身するやら……