IS〜HOLD OUT PLEASE!〜   作:帰灰燼

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筆が横滑りどころかヘアピンカーブしてる……


再会は忘れた頃にやってくる

 

 

 

 

翌日。

 

 

「まさか由香と一緒に登校する日が来るなんてな……」

 

 

校舎に向かう道すがら、優がぽつりと呟く。

 

 

「むう……お兄ちゃんはあたしと一緒に登校するの嫌?」

 

「え? いや、そんな事は無いけどさ。 他の奴等とは一緒に登校した事があるけど、由香とは歳が離れてたからさ」

 

「そういえばそうだね。 じゃあ、これからは毎日一緒に学校行こ♪」

 

 

そう言って、優と腕を絡めてくる由香。

 

 

「ったく、いつまで経っても甘えん坊だな……」

 

 

溜息を吐きながらも、優も満更では無い様子だ。

 

と、そこに背後から声が掛けられる。

 

 

「あの……もしかして、由香ちゃん?」

 

「え?」

 

 

その呼び掛けに由香が振り向くと、栗色の髪を肩下まで伸ばした女性が立っていた。

 

 

「やっぱり! 覚えてる、由香ちゃん? 私よ、桜!」

 

「さくら? ……あっ、もしかして……桜お姉ちゃん!?」

 

「ええ! 久しぶりね、由香ちゃん! 貴女もここに入学したの!?」

 

「うん! そっかあ、桜お姉ちゃんってここの先生だったんだあ……」

 

「といっても、まだ二年目なんだけどね。 ところで、そちらの方は?」

 

 

その問いに、由香の頭に手を置きつつ答える優。

 

 

「どうも、こいつが世話になったようで。 兄の二ノ宮 優です」

 

「お兄さん……って、もしかして優くん?」

 

「え?」

 

「あー、優くんも忘れてたの!? ほら、私よ私! 小学校から高校まで一緒のクラスだった!」

 

「一緒のクラス……って、もしかして桜か!? 〈長谷川 桜(はせがわ さくら)〉!」

 

「思い出した!?」

 

 

長谷川 桜。

 

女性嫌いを自認する優にとって、数少ない気を許せる女友達にして、小学校の頃からの幼馴染である。

 

家が近い事もあって家族ぐるみの付き合いがあり、桜の両親も幼い頃に父親を喪った優を実の息子のように可愛がってくれた事を優は今でも覚えている。

 

高校卒業と同時に桜が女子大へと入学した為、それ以来疎遠になっていたのだが……

 

 

「そっかあ、二組の担任になった長谷川先生って桜お姉ちゃんの事だったんだ。 えへへ、嬉しいな」

 

「あら、由香ちゃん二組に入ったの?」

 

「あたしだけじゃないよ! お兄ちゃんも二組の副担任になったんだから!」

 

「え……ええっ!? 優くん、それホント!?」

 

「あ、ああ……そんなに驚く事か?」

 

「驚くよ! 五年も会ってなかったのにいきなり一緒のクラスだもん!」

 

「五年……って、そんなに経ってたっけ?」

 

「高校卒業以来だもん。 相変わらず優くんは忘れっぽいね」

 

「むう、ほっとけ」

 

「そうそう、ごまかす時はいっつもそう言ってたよね。 だったよね、由香ちゃん?」

 

「ねー」

 

 

桜の問いに笑顔で同意する由香。

 

 

「お前ら、相変わらず仲良いな。 再会したばっかだってのに……っと、もうこんな時間か。 ほら、二人共行くぞ」

 

「あ、待ってよお兄ちゃん!」

 

「もう、不利になるとすーぐ逃げるんだから。 それにしても、優くんが副担任かあ……」

 

 

そう言って優を後を追う桜の顔には、心からの笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼休み、職員室。

 

 

「ほう、長谷川先生と幼馴染か。 人の縁とは奇妙なものだな」

 

「ですね。 まさか俺も桜と同じ職場になるなんて思いませんでしたよ」

 

「何よ、気に食わない訳?」

 

「誰もそんな事言ってないだろ」

 

「ふんだ」

 

 

そう言って大袈裟に不貞腐れる桜。

 

 

「それにしても……ここの女子って他にやる事無いのかよ。 休み時間の度に押し掛けて待ち構えてるから、移動するのも一苦労だよ……」

 

「一組には織斑も居るから、余計に密集しているしな。 まあ、年頃の女子とは移り気な物だ。 しばらく辛抱すればいなくなるだろう」

 

「そうであって欲しいですよ……」

 

 

そう言ってデスクに突っ伏す優。

 

 

「優くん、まだ女性嫌い治ってなかったの?」

 

「多分一生治らない気がする……」

 

「大変ですね……まあ、この時勢ですから女性嫌いの人は珍しくないですけど」

 

 

山田先生の言葉に、桜は首を横に振りつつ答える。

 

 

「いえ、優くんの女性嫌いはちょっと原因が違うというか……」

 

「?どういう事ですか?」

 

 

その問いに、優が身を起こしつつ答える。

 

 

「俺の家って、小さい頃に父が死んだ事もあって俺以外は全員女性なんですけど、そいつらが揃いも揃って濃い奴等ばっかりで……」

 

 

例えば、優が自転車で転んで大怪我をした時。

 

長女は指差して大笑いし、次女はパニクった挙句消毒として熱湯をぶっかけて火傷に発展させ、三女は「ツバつけとけば治る」と大量のツバを擦り込んで地獄の激痛を味あわせた。

 

万事がこのような調子で振り回された結果、優は女性というものを心底嫌いになった。

 

それでも、母親と四女の由香はまだマトモだった事と、良くも悪くも全員彼女達なりに優を家族として愛してくれている事もあって、優も家族そのものを嫌いにはなれないのだが。

 

それに、女尊男卑の風潮が広まる中で増えつつある、ISにも乗れない癖に女性というだけで男を奴隷同然に扱う最低女に比べればまだ二ノ宮家の女性達の所業は可愛げがあると優は思っている。

 

 

「お姉さん達は相変わらず……?」

 

「更に悪化してるよ……(のり)姉は姑と喧嘩して出戻ってくるし、美紀姉は相変わらず天然ボケだし、優子は加減を知らないし……由香だけは変わらないでいて欲しいよホント……」

 

「あたしがどうかした? あっ、先生失礼しまーす」

 

 

噂をすれば何とやらというべきか。

 

タイミング良く由香が職員室を訪ねてきた。

 

 

「由香……いや、お前は優しいなと思ってな。 うちの女共と大違いだよ……」

 

「あはは……けど、お姉ちゃん達も悪気がある訳じゃないから、大目に見てあげようよ」

 

「それは分かってるんだけどなあ……」

 

「相当お疲れみたいだね……あっ、そういえば聞いた? 今度一組で決闘があるみたいだよ」

 

「決闘? 何だそりゃ」

 

 

その問いに、学年主任が答える。

 

 

「ああ、私のクラスの代表を決める際に一悶着あってな。織斑とオルコットの二人で模擬戦を行い、勝った方をクラス代表とする事にした」

 

「模擬戦って……織斑ってISに乗った事はおろか触った事すら殆ど無いんでしょう? 大丈夫なんですか?」

 

 

その問いに、学年主任は不敵な笑みを浮かべつつ答える。

 

 

「十中八九負けるだろうな。 だが、勝利より敗北からの方が得られる物も多い」

 

「うわ、スパルタな……」

 

「それに……勝負は始まってみるまで解らんぞ。 何せ、あいつは私の弟だ」

 

 

そう言って微かに笑みを強める学年主任。

 

その瞳には、確信にも似た強い光が窺い知れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーじゃあ、次に帰れるのは日曜なんだね」

 

『ああ。 それまで悪いけどあいつらの事よろしく。 特に美紀姉』

 

「わかってるって。 そっちこそ由香の面倒しっかり見るんだよ」

 

『わかってるって。 じゃあな』

 

 

その言葉を最後に、通話が切れる音がした。

 

 

「やれやれ、一時はどうなる事かと思ったけど、二人共一緒の学校なら一安心か。 それにしても、桜ちゃんまで同じ職場なんてね」

 

「桜ちゃんがどうかしたの?」

 

 

その言葉に振り向くと、腰まである長い髪を三つ編みに纏めた眼鏡美人が立っていた。

 

 

「いやね、今さっき優から電話があってさ。 優も由香と同じIS学園で働く事になったんだってさ」

 

「ええっ!? ゆーくんから電話があったの!?」

 

「って、食いつくのそっち?」

 

「もう、何で私が来るまで繋いでてくれなかったの!? 私だってゆーくんとお話したかったのに!」

 

「あんたの場合一度電話に出たら一時間は離さないでしょうが。 優だって仕事があるんだから贅沢言わないの」

 

「だってえ、ただでさえゆーくんの職場って全寮制であんまり帰ってこれないのに〜……」

 

「もういい歳なんだからいい加減弟離れしなっての」

 

「む〜〜〜……」

 

 

悔しげに不貞腐れる眼鏡美人。

 

と、その背後から二人の女性が歩いてくる。

 

 

「どうしたのよ美紀、随分ご機嫌ナナメじゃない」

 

「聞いてよ紀子姉さん、お母さんってば酷いのよ!」

 

 

美紀と呼ばれた眼鏡美人が説明するにつれ、後から来た二人も呆れ顔になる。

 

 

「アンタね……休日になったら帰ってくるんだから少しは待ちなさいよ」

 

「だってえ……」

 

「ま、美紀姉なんだからしゃーないか。 で、優の奴他になんか言ってたの?」

 

 

その問いに、三人の母親らしい女性が楽しそうに答える。

 

 

「それがさ、桜ちゃんも一緒の職場だったんだってさ。 それも桜ちゃんが担任で優が副担任! いやー、面白い偶然もあったもんだね」

 

「へ? 桜ってIS学園の教師やってたの?」

 

「まあ、あの子って真面目で努力家だったからね。 教師は天職かも知れないね」

 

 

ボーイッシュなポニーテールの美女と、紀子と呼ばれたウェーブの掛った長い髪の美女は、母親の言葉に意外そうな反応を見せる。

 

だが、美紀はまた違った反応だった。

 

 

「ええっ、桜ちゃんってゆーくんと一緒の職場なの!? ずるいずるい、桜ちゃんも由香ちゃんもずるい〜〜〜〜!!!」

 

 

そう言ってブンブン両手を振り回す美紀に、その場の全員が心底呆れた顔を見せる。

 

 

「ガキかアンタは……ま、今後の日曜には由香と一緒に帰ってくるそうだから、それまでは我慢しな。 ……あ、そうそう。 今のうちにこれ渡しとくから」

 

 

そう言ってポケットから小さな箱を取り出す母親。

 

 

「なにこれ? ……いっ!?」

 

「え……ふえっ!?」

 

「ちょっ、これ……!!」

 

 

それは、ナイトバルーンの愛称で呼ばれる……所謂()()()だった。

 

 

「ちょ、こんなもんいつ使うってのよ!」

 

 

だが、ポニーテール美女の問いに母親はジト目を向けつつ答える。

 

 

「アンタね……私が気づいてないとでも思ってんの? ()()()()

 

「「「!!!?」」」

 

 

その言葉に、ポニーテール美女だけで無く紀子と美紀まで石化した。

 

 

「ったく……そりゃ、由香が興味を持ったからってアンタ達が優を引ん剝いたのを止めなかったあたしにも責任が無いとは言わないわよ。 けど、それがきっかけで姉妹のほぼ全員が実の兄弟を「食う」なんて流石に予測出来なかったわよ」

 

「あー……」

 

「ば、バレてたんだ……」

 

「えっと……ご、ごめん」

 

「……まあ、さ。 今更って事もあるしあたしもあんまりうるさく言うつもりも無いけど、せめて最悪の事態だけは避けなさいよ」

 

「う、うん……」

 

「後、由香には絶対バレないようにしなさいよ! アンタ達だってこれ以上ライバルが増えて欲しく無いでしょうし、あたしもこれ以上娘が道を踏み外すのは御免なんだから! わかったね!」

 

「「「は、はい!!」」」

 

「よろしい! じゃ、あたしは夕飯の買い物行ってくるから、支度よろしく!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

その言葉を最後に、自宅を後にする母親。

 

後に残されたのは、色々と気まずい雰囲気に包まれた三人姉妹だけだった。

 

 

 

 

 




改めて見てもエロゲな家族だよなあ……

因みに分かり辛いと思うので補足


ウェーブ髪:長女・紀子

三つ編み眼鏡:次女・美紀

ポニーテール:三女・優子

です
因みに、母親から暴露されるまでお互い他の姉妹まで優を「食って」た事実を知りませんでした


次回もお楽しみに
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