「こ、これは…本当にジュンが書いたものなのか……」
自身が広げていた辞書とコピー用紙を手に驚愕した表情で固まるライン。
そこには10歳の少年が凡そ考えもつかない事や、一般市民、いや軍人や公王庁の内部の者でも一部しか知らないことが書いてあったのだ、まず目を引いたのがジオン・ズム・ダイクンについての事、そして文字が出てだけではあるがモビルスーツの事。
『この時点で軍の一部では確か人型の腕部を持った戦闘機動兵器を開発する計画が一部で議題に上がっていたはず、確か能動的質量移動による自動姿勢制御が出来る物…だったか?確かそれの名前が宇宙白兵戦用重機動宇宙服、それ略称がモビルスーツ…だったはずだ』
なぜそれを息子が?もしくは誰かが息子のPCに入れ自分に見せようよした?などの考えがラインの脳裏に浮かんでくるが、もし誰かが息子のPCに保存しようとしたとしても、なぜそのような周りくどい方法をとる?そしてそれの真意が図りかねる、そう思ったラインは息子が書いたと言う可能性が一番高いと自身の中で結論づけた。
『仮にジュンが書いたものだとしても、何故日本語で…未だに日本語は使われている言語だが何時覚えたのだ?幼年学校のカリキュラムには無いはずだが…。まぁいい、今はこの事をジュンに聞くまでは真偽は分かるまい、それにしてもどう切り出したらいいものか…』
――――――――――
その夜久しぶりに家族で食卓を囲んでいるとジュンは父に。
「あとで父さんの書斎に来なさい、少し聞きたいことがある」
と言われ何のことだが判然としないままに食事を終えた後暫くして父の書斎へと向かった。
「父さん、聞きたい事って何ですか?」
この時ジュンが予想していたのは幼年学校での事や日々の生活の事だと思っていた、最近は何時戦争になっても良いように学校とは別で、技術的な事を中心に勉強を始めていたからだ
、理由は戦場に行かずに済む、もしもの為に軍の士官学校での授業内容も少し調べたりもしていたが。
そんな何食わぬ顔で部屋にやって来たジュンを見つめラインは誘導するようにジュンへと質問していった。
「なぁ、ジュン、お前はモビルスーツって知ってるか?」
「モビルスーツ?ですか?いえ、分かりません、何ですかそれは?」
小首を傾げさも分からないと言う態度を取る息子の姿に一瞬この子は本当に分からないとも思ったが、確信に迫るように再度質問を続けていくライン。
「じゃあ、ジュン、お前地球にある日本って言う地域を知ってるか?」
ここでジュンも何かに気付いたような表情を浮かべてラインを見つめ一瞬言葉に詰まる。
「え、えぇ、知ってます…学校で習いました、えっと地球のアジア地区にある経済区です…」
「そうだね、学校だとその程度しか習わないだろうね、じゃあジュン、どうしてお前は日本語をかけるんだ?、このレポートの様な日記のような文章は一体何なんだい?」
そう言ってジュンにコピー用紙を手渡すライン、そして受け取ったジュンは思わず日本語で「しまった…」と呟いてしまった。
「え、えっとですね…父さん、聞きたいんですが、内容も確認しちゃいました?」
「あぁ、したとも、と言っても辞書片手にたったそれだけの文章に3時間以上掛かってしまったがな」
「一体どこから話したらいいのか…」
「父さんは嘘偽り無く、全部話して欲しいな、」
「あ、あの、かなり荒唐無稽な話ですが信じてくれますか?」
「ハッハハ、まずそのレポートがアレな話だからね、端からどんな事を言われても信じるつもりさ、それが息子の話しなら尚更だ」
そう言って笑顔になる父を見て、ジュンは周りの空気が少しだけ軽くなったと感じて話し始める。後にあの時の父は自分に気を使い、話しやすくしてくれたのだろうと思うのは大分先の話だが。
「………………と言う訳なんですが、えっと、父さん?」
「ふむ、確かに荒唐無稽な話だな」
「はい…」
「だが、本当の事なんだろう?前世が日本人でこの世界は物語の世界でしか無かった、これがジュンの持っている認識なんだろ?ならば信じる他は無いさ、息子の言葉を信じない親はいない、前世の記憶が有ろうが無かろうがお前は私の息子だ」
そう言って頭を撫でる父の言葉に思わず涙をながすジュン
「ハッハハハ、ジュン前世の記憶があるならお前はもう精神年齢的には大人は大人なはずだろ」
そう笑う父だったが、その後何かを思案するような表情になりジュンに訪ねてきた。
「では、これに書かれている事は本当なんだな?連邦との開戦、これは分かる何れそうなるであろうし、その為に我が国は準備をしている…子供に話す内容ではないがな、こうして二人だけの時は、お前を一人前の大人として今日から扱うからな、そして戦争は分かるんだが、我が国はやはり負けるのか?しかもデギン公王みずから降伏調停に向かい我が子に殺される…と?」
「サスロ・ザビ様を覚えていますか?ジオン・ズム・ダイクンの葬儀の際暗殺された」
「あ、あぁ、ついこの間の事だ忘れるわけがないだろう」
「父さんは首謀者は分かりますか?」
「ラル家だろ?かの家はダイクン派の筆頭だったからな彼らにはデギン公王が首班の座を奪ったように見えたのだろう」
「それについては、まぁ一理ありますが、本当にラル家の仕業だと思っているのですか?」
「なっ!?違うというのか!?」
「ラル家では無い事は確かです、ただ僕にも真の首謀者は分かりませんが…キシリア閣下だと僕は思います」
「なっ……、それは本当か?」
「物語の話ですので、確実とは言えませんがそう思わせる場面が幾つか…、ただ先に言ったように物語の話ですよ父さん、これは現実です、ヒント程度にしかならないかと、すでに僕の知る歴史とはズレ始めていますし…」
この時すでにジュンは10歳の少年と言う役割を脱ぎ捨て、自分自身の言葉でラインと会話をしていた、一方のラインも息子との会話だと言う事は頭では理解しているが、この会話で目の前にいる自分の息子が語る言葉が全て真実だと思うようになっていた。
「だとしたら、私は動かねばならんな、モビルスーツ、そして生産力の向上が目下の目標か、ジオンが勝つために神はお前を授けてくれたのだろう…」
「父さん、一ついいですか?」
ジュンはこの世界に来てから考えていたこと、それを父に告げようと決心していた。
「なんだいジュン?」
「僕はこの世界にきてからと言うより、前世でこの世界に似た世界を物語として見ていた時からジオン公国の理想と言うものに共感を覚えたことはありません、公国もダイクンも結局はスペースノイドを苦しめただけで終わったんです、小さな希望を与えておいて最後に絶望へと叩き落とす、僕はスペースノイドを救って欲しんです!もしジオンが戦争に勝ったらスペースノイドは救われますか?そして地球に住む人々も同じように扱われるでしょうか?もしジオンが勝利しても、それは現在とは逆にジオンが宇宙から地球を管理する、立場が変わるだけだと思います。」
そう続けざまに言うジュン。
「…………そうなるだろうな、だが地球連邦政府は我々にそれだけ弾圧と搾取を続けてきたのだぞ?それにお前の今の発言はジオン国民として考えねばならん発言だ」
「ええ、分かってます、他では言いません、父さんだから言うんです、自惚れかも知れませんが、仮に僕が父さんや上層部の人に助言をしてジオンを勝利に導いたとして、それで本当に正しい方向に進んで行けるんでしょうか?今のこの国では到底…」
「ならばどうするのだ?お前がこの国のトップに立つか?そうすれば変えれるだろうな、だが現実を見ろ我々にはできる事と出来ないことがある、それは分かるな?」
「…はい」
自分がジオンのトップに立とうがジオンと言う存在を継いでしまうのであれば行末は変わらないだろうと考えたジュンの声は小さくなっていく、そしてこの先どう足掻いても進む時代の先には混沌とした結末しか残っていないのだろうか?と
「私は、どんな未来になろうと、戦争なんて馬鹿げた事で失う命が一人でも少なくなればいいと思う、それに他人の幸せなぞ個人個人で違うものだ、その時の時代にはその時の生き方と言うのがあるだろう」
ジュンは一瞬顔を上げて父を目を見る
「そうか…分かったよ、お前から助言を貰わずとも私ができる事を私は軍でやっていくよ、だがな、もしお前が自分からこの国に手を貸したいと思える時がきたらいつでも言いなさい、今日は済まなかったな、だがお前の事が知ることが出来て嬉しかったぞ、それと母さんにも一応それとなく話はしておくがこの用紙の内容はボカして話すからな、話を合わせろよ?」
「ありがとう、父さん…」
「よし今日はもう遅い、早く寝なさい、体はまだまだ子供なのだから、夜更かしをすると身長が伸びなくなるぞ」
「はい、おやすみ父さん」
「あぁ、おやすみ」
そう言って書斎を出るジュンの足取りは重かった、この先の世界の事、そしてこの国、自分自身の事を考えていたからだ。
―――――
その夜ジュンは夢を見た。
それは不思議な夢だった。
その夢の中でジュンは誰かに呼ばれていた、そして不思議な声を聞いた、女性の声だった。
「早く…………私の元へ……」
そしてジュンは小惑星と思われる物を見た、夢の中でだが、その小惑星は改造され要塞の様に見える、そんなヴィジョンをジュンは見させられていた。
自分でもなぜ見させられていたと思ったのかはジュンにも分から無かったが、ジュンはその要塞に居る誰かが自分を呼んでいるのだと思った。
―――――
「ん…さっきのは…夢?いやでも妙にリアルで…アレは一体…」
別段普段は夢を見たとしても覚えていることが少ないジュンは珍しく夢の内容をい出すことが出来た、そして夢で見た声も光景も全てが鮮明に思い出すことが出来たのだ。
「何か前にも似たような感覚が…そうか!俺はニュータイプなのか!?だから不思議な感覚が!……はぁ、なわけ無いよな、それにしても夢もそうだし前からある違和感…一体何なんだろう…」
ジュンの呟きは朝食の支度が出来たことを告げに来たメイドによりそれ以上続くことはなかった。
この時点で色々と歴史がズレ始めています、今後ズレが大きくなっていきます。
原作沿いと言う訳ではありませんが、歴史のターニングポイント等は時期や規模の差こそ違えど似たようなことが起こります。
そして言い訳ですが、またしても5000文字以下!次回はジュンの士官学校入学まで一気に飛んでしまうので区切りたかったんです…言い訳ですけどね。
ご意見ご感想切時にお待ちしております、これからも拙文ですがどうぞお付き合いください。