「ん、朝…か」
その呟きと共にジュンはベッドから起き上がった、今度はしっかりと現実の中で目覚めたと確認してから顔を洗い着替えて携帯PDAでアリナへ連絡を取った。
数分の会話の後ジュンは朝食をとった後、早々にホテルからチェックアウトし、そのまま宇宙港を目指しタクシーに乗り込んだ。
タクシーに乗って10分程で宇宙港に着き、アリナと合流しクルーザへと乗り込んだジュンはアリナとグラナダの事と今後の事を話し始めた。
「アリナさん、グラナダには多分…ですがジオン軍が既に入り込んでいると思います」
「はい、その件ですが此方でも確認しました」
「え?確認って…」
「既にサイド3からMSが何機か送られてきているようです、それと此方のジオニックの工場でも生産が始まってロールアウトした機体は工場で止められて居るみたいですがそれなりの数が既に生産されていると思われます」
「ちょっ、ちょっとどうやってそんな情報を?!」
「あら?アーレンベルグ家の使用人としてはこのくらいの調査が出来なければ失格ですわ、主が望む情報を手に入れるのが私の本来の役目でしたから」
「は、はぁ、そうだったん…ですか」
「後はジュン様が見たと言うキシリア様に似た女性ですが…多分本人かと思われますグラナダ占領の際の下準備…それとある人物の亡命の阻止…後者の方は正確な情報を掴めなかったのですが、前者の件は色々と口の軽い側近が居るようである程度の情報を掴めました」
「あー、その亡命だけどミノフスキー博士であってるかな?」
「え?あ、はい、そうです、良くご存知で、さすがジュン様です、どうします?もし宜しければ此方から動くと言う手も御座いますが…」
「そんな事までできるんですか…、まぁ今回は無理でしょうね相手はザクが少なくとも4下手したら5機以上ですから…それに連邦も旧式のキャノンを出してくるでしょうし、たかだか非武装のクルーザーでってのは…ね」
「畏まりました、ではこのままサイド2に向かってよろしいでしょうか?」
「あぁ、そうしてくれ、俺は管制と連絡を取っておくから…」
『ミノフスキー博士…流石に助けられないよな、相手はランバ・ラルに黒い三連星だ、流石に相手が悪い、そもそも此方に武装艦艇もそうだが、機動兵器の一つもない状況でどうしようもない……でもサイド2に向かって本当に俺は何かを為せるのか?…何も武器を持たない俺が一人、いやアリナさんが居ても二人…よしんば要塞が俺の妄想じゃなく本当に存在していて俺に力が手に入ったら…俺はサイド2を救えるのか?…そしてその時の敵は…』
ジュンは管制と定型文的な連絡を取りながら今後のこと、自分の目的は何のかを考えながらグラナダを後にし、一路サイド2首都バンチ、ハッテを目指し出港した。
―――――
ジオン公国ダークコロニー、そこはジオンが共和国時代から連邦にその存在を伏せ建造していたコロニーで戦闘艦、モビルスーツ、その他各種兵器や軍用品を生産している工業コロニーであった。
そのダークコロニーの一角でとある会話がなされていた。
「父上、準備が整いました、見て下さい、あれはムサイ級改装巡洋艦、そしてその奥にあるのがチベ級ですアレは元々輸送艦でしたから、輸送能力も申し分ない、戦闘能力もムサイを上回る物があります、そして次々に新造艦が起工されています、もはや連邦軍宇宙艦隊の戦力を上回るのも時間の問題かと」
「ギレン!」
その一声に声高に説明していた男が一度黙り再度口を開く。
「なんでありましょうか父上」
「こと、ここに至っては致し方ない…が、勝算はあるのだろうな?国民を未曾有の大戦に巻き込んで尚足るだけの…」
「ご安心を父上、未曾有の大戦など起こりはしません、速戦即決の作戦があります、この戦一ヶ月も続きません…」
そう自信有りげに答える男の目の前にはダークコロニー内で密かに作られた多くの戦闘艦艇が映しだされていた、その戦闘能力と数を見ても自信あり気な男の横に居た老人は小さく一言「だといいのだがな…」そう呟いた、だがそれは誰にも聞かれること無くすぐに回りの作業の喧騒にかき消されていった。
―――――
「此方サイド2管制、接近中のジオン国籍のスペースクルーザー、艦籍番号AW……あー、艦名イーリアス、間違いないか?」
「はい、此方イーリアス入港許可を求めます」
サイド2についたジュンは首都バンチハッテの管制と連絡を取り入港しようとしていた。
「了解した、貴艦の入港目的を知りたい、どうぞ」
「入港は観光及び補給です、丁度コロニー巡りをしてましてね、サイド3からグラナダを経由して此処まで来ました」
「ほー随分遠くから来たんだな、じゃあお次はもう一回月起動に乗ってサイド5かい?」
「そうですね、その前に月から反対側の外縁からサイド2を撮影してフォン・ブラウンに向かおうと思います」
そうジュンが言ったの嘘とは言え無いまでも管制を誤魔化す方便ではあった、月から反対側のサイド2外縁部…その奥にジュンが求める答えがあると彼は確信していた。
「そうか、入港を許可する、このハッテで新年を迎える事になるとは思うが市内では催し物もいくつかある、観光するにはいい時期に来たな」
「了解、ではイーリアス、入港準備に入ります、12月31日…えっ…」
『12月31日?!明日が1月1日だって?!なんで今まで忘れてたんだ!クソッ!ジオンそして連邦の開戦日…1月3日…後3日しか無い?あと3日で…このサイドは…今会話している管制も、そして今丁度真上に見えるサイド2、8バンチコロニー、アイランド・イフィッシュが…』
「ん?どうかしたか?もしかして今日が何日か忘れてたのか?」
「あ、えっと…なんでもありません、入港準備完了、ガイドビーコンと軸合わせ完了しました」
「確認した、ようこそサイド2へ」
ジュンの乗るスペースクルーザー、イーリアスがゆっくりとガイドビーコンに従いサイド2の宇宙港へと入港していく、宇宙港へ入ったイーリアスは電磁ロックにて係留され、ジュンとアリナはサイド2入国検査を受ける為ターミナルを目指した。
「此処がサイド2…こんなにも多くの人が居るのに…」
入国したジュンが見たのは新年を祝う為に夜通し行われるであろう祭りの会場を準備する人達だった、多くの人びとが屋台を組み立て、催し物を行うためであろう大型のテントを設置していく。
「本当に此処が?」
そう切り出したのはジュンの傍らを歩くアリナだった、彼女は港からこの広場へ来るまでの間にジュンから歩きながら事の一部を聞かされていた、と言っても今回の旅の最終目的地がサイド2があるL4外縁部であること、そしてジュンが今後起こる戦争の推移を少なからず分かると言う事だけだった。
とは言えジュンがこの世界は自分の知る物語の世界であるとは言っていなかった、ジュン自信その部分は父には話したが他の者においそれと話せる内容だとも思っていなかった為だ。
「アリナさんも何か調べてたようだけど、なにか分かったんですか?」
「まだお話していませんでしたが、先ほどの話で戦争と仰っていましたが、古い知り合いから聞いた話ではどうも公国が連邦と…」
「はい、3日に始まると思います……ただ、俺の知っている歴史と食い違う所も多いって事も事実でこの世界はまた別の可能性…未来に向けて進んでいる可能性もある訳で…確実に始まると言えません、それに主戦場も変わる可能性すらある」
「そこまでは流石にこの短時間では調べることは出来ませんが、可能なら3日までの間にある程度お調べいたしますが」
「いや、明日の朝いちで出港するよそうすれば夕方…まぁ宇宙で夕方も何も無いんだけど統一時間の7時に出れば16時か17時には到着すると思うし」
「畏まりました、では私はその間にできる事をしておきます、それと年越しの催し物ですがいかがなさいますか?」
「魅力的だけどいいよ、それに街の人達一見活気があるように見えるけど、何か違和感を感じ無いか?」
「違和感…ですか?」
ジュンが感じた違和感、それはサイド3で過ごしていた頃地球連邦からの圧政を受けながらも人々がまだその事を努めて忘れようとしていた頃とサイド2の空気が似ていた。
『まぁ、連邦のお膝元のサイド7以外は大なり小なり似たような物って事か?サイド3以外だとサイド5もその傾向が顕著だけど、サイド2も連邦側に付いた理由はジオンに攻撃を受け多くの犠牲者を出したからだ、そうじゃなかったらサイド2もジオン側に立っていたかもしれないな……ギレンがトップにいる間はあり得ないだろうけど…ね』
そうジュンが結論づけた理由はギレン・ザビと言う人物の思想にある、彼はニュータープと言う人類の革新を信じていたわけでも、ジオン公国と言う国家に傾注していたわけでも無く、己とその周りの手駒達が優良種として極一部の限られた人々がその他の人類を統べると言う考えを持っていた。
その為には今の人類は多すぎるとも。
「うん…こう、昔の公国の人達見たいな…」
「そう言われれば、そう見えてきますね、此処もサイド3よりは緩いと言っても連邦政府からの圧政に近いものはありますから…」
「まぁ、今の俺にはどうすることも出来ないし、それより少し街を見て割ってから明日に備えて早めに寝るよ」
「分かりました、では私は知り合いに会いに行きますのでひとまず此処で…」
「はい、じゃあまた明日…かな?」
そう言ってジュンとアリナは一度別れた。
『それにしても此処でも知り合いに会いに行くって、それと情報収集能力、マジでアリナさん何者?ま、それより一度ホテルで明日の航路について考えよう…』
そんな事を考えながらジュンは一人ホテルへと向かった。
―――――
ホテルへと到着したジュンは、部屋につくと直ぐにPDAを取り出し航路局にアクセスし航路データを手に入れ、明日他の民間、軍用問わず出来るだけ隠れるように移動しようと航路を設定していた、ただ一部の軍用艦の航路データは早々入手出来る物ではないので軍用は一部の定期コースと告知されている演習区域のみのデータしか手に入らなかったが、それでも過去の例などを合わせてパトロールコースを予想しながら航路を日付が変わる前に決め終えていた。
[宇宙世紀0079年1月1日の幕開けです!!]
そうモニターに映しだされているアナウンサーは興奮したように今年の出来事などを振り返りながらサイド2の新年を祝うお祭りの様子を中継していた。
「この人達を俺は……できるのか?あの要塞に行けば俺にも何か出来る気がする…でも確信は無い…空振りだったら帰りの燃料も足りなく漂流してしまう、SOS信号が届いて救助されてもキチガイ扱いは免れないだろうな、あーもう!考えれば考える程っ!」
そうジュンは一人未だ見ぬその場所の事を考えながら一人悩んでいた。
「風呂入って、寝よ…決めた筈だもんな、漂流する可能性があってもあそこに行くって…」
そう呟いてジュンは浴室に行きシャワーを浴びてから夕食も取らずにそのままベッドに入り眠った。
ベッドに入り目を閉じたジュンはすぐにフワフワと浮くような感覚を覚えた。
「え、浮いてる?!ッ無重力??此処は…」
そう呟いた瞬間自分がどこにいるのか分かった、そしてジュンはあたりを見渡してその光景が見覚えのある場所だと気付いた。
「此処は…前の夢であった大型艦の艦橋…か?ん?なんだこれ…ッ!?航路図?要塞手前…までの航路図か?でも何で途中までなんだ?あぁそうか前の夢で最後に迎えにくるって…」
そこまで言った瞬間ジュンはあることを確信した、何故自分がそう思ったのかは分からなかったが、この航路データの指し示す場所まで行けば今自分がいるこの艦…艦橋の大きさ、そして設備からして巡洋艦クラスの軍艦が自分の元まで来ると理解した、いや理解させられたとジュンは感じた。
航路図を忘れないように頭に叩きこもうと必死に見続けているとゆっくりと視界がぼやけていき、最後にはフッと視界が暗転しジュンの意識は一瞬途絶えた。
―――――
「夢……!!」
目覚めたジュンは一言呟くなりPDAを取り出し夢で見た航路図を元にデータを書きなおし始めた。
30分ほどでその作業が終わり、一息付いた時部屋のドアがノックされた。
「あーはいはい、ちょっとまってください」
「ジュン様出発の準備が整いました、宇宙港からも補給等完了したと連絡がありましたのでいつでも出発出来ますが如何なさいますか?」
「ちょっと待って下さい、今着替えますから」
「畏まりました」
そうアリナからの返事を聞くと急いで着替えをしたジュンは荷物を持ち部屋を後にした。
そして二人はそのまま宇宙港へ行くと船へと乗り込み、管制の指示に従い、外縁からサイドを撮影すると申請してあった為、問題なく外縁部へ昨夜の内に作成してあったデータに従い船を進めたのだった。
登場させる人物、搭乗させる機体、未設定のまま来てしまった…、一応ある程度出す機体のセオリーは決めているんですが、登場させる艦の名前を考えるので一杯一杯でした。
アイディアが湧き出る感性が欲しい…そしてそれ以上に文章力が欲しいです…安西センセェ。