では、どーぞ。
キリトに連れられて、俺達は今、始まりの街の狭い路地にいる。あの茅場の正式チュートリアルは長ったらしくて聞いてらんなかったけど、最後の方だけはしっかり聞いていたからよく覚えている。なんと手鏡なるアイテムによって現実の姿が再現されたのだ。
そうしてチュートリアルは終わり、ほとんどのプレイヤーが混乱に陥る中、俺達3人だけが外に出てきたというわけだ。と、そこまで整理したところでキリトが話し始めた。
「クライン、ライト。ここからは俺と一緒に行動して欲しい。俺達3人が一緒にいれば、少なくとも第一層は安全に行動できる」
そんなキリトの提案に、クラインは反対した。
「すまねぇけど、俺ァやめとくわ。俺には始まりの街にいるはずの仲間がいるんだ。そいつらを放ってはいけねぇよ」
「そっか。じゃあ、そいつらと一緒に頑張ってくれ。クラインには序盤のコツなんかは教えてあるから大丈夫なはずだ。ライトはどうする?」
少し悩んだ末、決意表明する。
「んじゃあ、俺はキリトと一緒に行くかな。やっぱり数は多いほうがいい」
俺がそう言うと、キリトは少し安堵した様子で溜息をつく。それから俺達は手を振ってわかれ、別々の道を歩いたのであった__________
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
それから1ヶ月後。第一層迷宮区手前の街、トールバーナに俺とキリトはいた。この1ヶ月間で死者は2000人となってしまったが、それも仕方の無いことだろう。
『HPが全損すれば本当に死んでしまう』ことで恐怖心が芽生え、自殺をするものが死者の多数を占めているが、2000人のうちの100人程度はベータテスターであるはずだ。
テスターは『自分たちはベータで経験してるわけだから負けるわけがない』と調子に乗って戦いに行き、そしてそのままゲームオーバーとなった。俺達はそんな奴らを行く先々で見てきたからそんなことが言えるわけだが。
おっと、肝心な事を言い忘れてたよ。今日ここでボス攻略会議が開かれるらしい。だから俺達がここにいるってわけだ。てなわけで、そろそろ俺の暫定的な相棒を起こしに行くとしますか。
「おーい。キリトぉー。もうそろそろ行くぞー」
「おう、今行くー」
階段から降りてきたのは超がつくほどに童顔なキリトである。今はそれほどでもないけど、デスゲーム初日のキリトなんて女の子と見間違えちゃうくらいに女顔だったんだよね。で、俺の容姿はと言うと_____
「いつもおもうけど、ライトってアバターとそんなに変わんないよなぁー」
そう。俺の容姿ってまんまアバターなんだよね。身長165cmくらいの金髪で目が青い。完全に日本人ではない容姿にキリトもクラインも驚いてたことはよく覚えている。
「そんな事言われても、俺は親父の血が強かっただけだしな……。親父がどこの生まれかは何も聞いてないけど、多分ヨーロッパとかの方でしょ。そうじゃなきゃこの金髪蒼眼はありえん」
俺としては、ゲームの世界だから別にいいのでは?と思ってしまう。どうせあとからいろんな色が出てくるはずだと思いたい。そんなこんなでもう時間があと5分をきった。俺とキリトは急いで広場へ向かう。
「ハァハァ。ギリ間に合ったな……。取り敢えず座ろうぜ」
キリトは首肯する。そして、1番奥の空いてるところに座る。と同時に青髪イケメンが号令をかける。
「みんな!俺はディアベル!取り敢えず礼をいわせてもらうよ。今日は集まってくれてありがとう!レイドの最大人数まではいかなかったけど、これだけの人数が集まってくれたことに感謝してるよ!早速だけど………」
と、こんな感じで会議が始まっていった。結構順調に進んでいくかに思えたが、1人の乱入者によって会議は中断を余儀なくされる。
「えー、ワイはキバオウっちゅうもんや。会議を中断するのは良くないとわかっとるけど、これだけはどうしてもここで言わなあかんねん。まず、この場に死んでいった2000人に詫び入れなあかん奴らがおるはずや」
「キバオウさん。その奴らって言うのは元ベータテスターのことかな?」
ディアベルの言ったことにキバオウは首肯し、言った。
「そのベータ上がりどもはこの糞ゲーが始まったその日に、ビギナー達が見捨てて逃げよった。そんでこの1ヶ月の間、ベータ上がりどもはビギナーをろくに教育もせんと、うまい狩場やクエストをしとったんや!せやから……「ビギナーを見捨てたベータテスターに対する溜め込んだアイテムやコルによる賠償と謝罪をしろ。と言ったところですか?」っ、そ、そや!」
俺は考えるよりも先に体が動いたようだ。そのまま俺は段を1段ずつ降りていき、キバオウの真正面に立ち、言った。
「キバオウさん。俺はライトと言います。そしてベータテスターです。ですが、貴方の言うことにはおかしな点がいくつもあります。まず、貴方は最初『死んでいった2000人にわびを入れろ』と言いましたね?」
「そや!それがどうかしたんか!」
「すみませんが、貴方はその2000人の中に『ベータテスターがいる場合』を考えてませんよね?もしもいた場合、貴方の先程の発言は貴方が賠償を求めている『ベータテスター』にも詫びを入れろ。と言っていることになりますよ?」
完全論破されたらしいキバオウさんは言い返す言葉がないのか、その場に座り込んでしまった。最後に一言付け加えるとしますか。
「キバオウさん。俺はこのSAOをクリアするためにここに来てるんだ。俺やほかのベータテスターが賠償を支払うのが有意義か、俺やほかのベータテスターがベータの情報を与えてしっかり作戦を練るのが有意義か。貴方なら分かるはずですよ」
それだけ言うと俺は元の場所までひとっ飛びで戻る。そして、ディアベルが再び会議を進める。
「さて。会議を再開するけど、ライトくんのいうとおり、ボス攻略にベータテスターがいるのは心強いことだ!だから、他にもいたら是非挙手して欲しい!」
そうするとチラホラ手が上がっている。当然キリトも上げていた。流石にここで挙げないとKYというものだろう。すべてのプレイヤーを確認すると、次にディアベルはこういった。
「よし!それじゃあ、ベータテスターを中心にパーティーを組んでみてくれ!」
その瞬間、隣のキリトが固まったような気がした。だが、今挙手したテスターは9人もいた。この人数だとパーティーは7が限界だろう。残りはあぶれ組ということになる。そして幸いにも、俺達の周りにはプレイヤーはいなかったため、キリトがパーティーリーダーになるなどということは起きずに済むだろう。と思っていたのだが_____
「おいディアベル。どうしてこうなった!」
俺達のパーティーメンバーをご紹介しよう。
俺(片手剣)、キリト(片手剣)、アスナ(細剣)、エギル(両手斧)、そしてディアベル(片手剣)だ。なんともバランスの悪いパーティーだ。しかもなんだ。1人だけ足りないって!こんなことならクライン連れてこればよかったよ。
「え?別にこれでいいだろ?」
え?何そのイケメンスマイル。おかしいな。SAOに笑うと歯が光るエフェクトなんてあったっけ?いや、そんなことよりもキリトがヤバイ。完全に思考停止シテルヨ。まあそりゃそうだ。なぜなら_____
「なあディアベル。なんでリーダーが俺なんだ?普通ディアベルじゃないのか?」
「だってキリトくんはベータテスターなんだから当然だろ?」
キリトの問いに爽やかイケメンスマイルで答えるディアベル。すごく悪意がないから逆に怖いよ。
「ま、ライトもやるんだしいっかー」
は?ちょっと待てぇぇい!なんで?なんでそんなことになってるの?そんな俺の心を読んだかのようにイケメンスマイルで答えるディアベル。
「もちろん、君もベータテスターなんだから当然だろ?」
クソぉぉぉぉぉぉ!嵌められた!キリトめ。あいつぜってぇに許さねぇ!俺の目の前でそんな笑顔を向けるなぁぁぁぁぁぁぁ!
「まあまあ。ライト、落ち着こうぜ?」
やっべぇ。エギルさんマジRespectっす!流石大人の男の人だ。人ができている。
「じゃあみんな!明日の正午にここに集合して迷宮区へ出発する!それまでに各自装備を整えておいてくれ!」
ボス攻略会議は無事に終わった。そして確信していた。このメンバーなら勝てると。ベータテスターの俺やキリトでさえそう思った。だが俺達は明日、真の恐怖を目にする。そしてそれによってもたらされる最悪の結末を、俺達はその身をもって知ることになる__________
言っておきますが、ディアベルは生きますよ?理由はもちろん、あのイケメンスマイルが神々しいからです!