なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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話の内容がぶれぶれですが、脳内補完でお願いします。


ガゼフ・ストロノーフ~カルネ村編~4

「――先ほどの失礼な物言い、誠に申し訳ない」

王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフは、目の前の女性、やまいことぶくぶく茶釜に頭を下げた。

 

「い、いえ。仕方ないと思いますし、お互い様ですよ」

「まぁ、大きな問題にもならなかったし、特に問題ないなら終わりにしませんか?」

 

気にしてない。と言外に言っている二人に、ガゼフは更に頭を低くした。

 

 

――数時間前。

 

村に到着したやまいことぶくぶく茶釜は、エンリとネムを安全な場所へと隠し、索敵に出た。

そこで出くわしたのがガゼフの一団だ。

 

黒髪の、見たこともない風体の美女二人組。

 

襲われていた村の襲撃犯だと疑うのは仕方のないことかもしれない。

 

反対に、やまいこと茶釜の二人も、ガゼフ一団を犯人と勘違い。

 

開戦前に一言あるか、とお互いに問いただした結果、「あれ、コイツら違うんじゃね?」となった。

 

 

 

 

王国での戦士長の地位に就いているガゼフは、罪の無い女性を糾弾したと反省していた。

 

隠していたエンリとネムを、やまいこが迎えに行っている間に、カルネ村の村長、ガゼフ、ぶくぶく茶釜で簡単な会議をする。

 

「改めて、村の者を守っていただき、ありがとうございました」

「いいえ、困っている者を助けるのは、当たり前のことですから」

「……素晴らしい人格者ですね」

 

遅くなりましたが、とガゼフは言って

 

「ガゼフ・ストロノーフ、リ・エスティーゼ王国にて戦士長をしております。……失礼ですが、そちらは?」

「あ、えっと……。茶釜と呼んでください。もう一人は、やまいこです」

「茶釜さんに、やまいこさん……。この辺りの人とは思えないが、どちらから?」

 

やっぱり来た。と茶釜は心のなかで舌打ちする。

どうしようかと悩んでいると、ドアを開けて一人の兵士が飛び込んできた。

 

「戦士長、報告です‼」

「どうした、敵襲か」

「はい。村の外部にて、こちらへと向かう集団を発見したとの報告、おそらくですが法国の手先かと‼」

 

兵士の報告に、茶釜がぽつりと言った。

 

「法国?」

 

「スレイン法国という国です。やはりな……」

「戦士長……」

 

話の流れから大体読めてきた茶釜が口を開こうとしたとき、ドアが開いた。

 

 

「どうしたの?」

 

上機嫌で入ってきたやまいこは、何かを感じたのだろう、こちらを気遣うように聞いてくる。

ナイスタイミング、と茶釜はやまいこへ言った。

 

 

「ちょうど良かった。やまいこさん、今回の黒幕のお出ましだよ」

「……詳しく聞いて良いですか?」

「ガゼフさん、あなたが分かったこと、これからしようと思っていること、話して貰えますか?」

「……あぁ。お話ししましょう」

 

ガゼフは話した。おそらくであろう今回の事件の狙い。

 

自身、ガゼフ・ストロノーフの殺害。

 

一通り話したあと、ガゼフは村長へと頭を下げた。

 

「本当に申し訳ない……。せめて、すぐにでも村を出よう。外の連中も、まとめて引き受ける」

 

椅子から立ち上がり、道具を纏めるガゼフに、声を掛ける存在があった。

やまいこだ。

 

「ガゼフさん、少し良いですか?」

 

意識しているのかどうかは分からないが、軽い上目遣いでそう訊ねるやまいこにガゼフは苦笑した。

 

美人は得をするというが、本当だな

 

良いですよ、と返事をした自分に対して、輝くような笑みを浮かべたやまいこを見て、ガゼフはそう思っていた。

 

 

「お初にお目にかかる。リ・エスティーゼ王国、戦士長のガゼフ・ストロノーフで間違いないかな?」

 

夕暮れかかった時刻、村の外部の平原地帯では、二つの部隊が睨みあっていた。

 

「そうだが。そちらは?」

 

「これから死ぬお前には名乗る必要も無いのだが……。ま、良いだろう」

 

男はニヤリと笑い、その場にいる者全てに聞こえるよう大きな声で言った。

 

「私はスレイン法国、陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーインだ。ガゼフ戦士長?」

 

陽光聖典、という言葉に、ガゼフ達一団はざわついた。

スレイン法国の誇る武力の一つ。六色聖典にそれに近い存在があった。

だが、それは存在しないということに、表向きではなっている。

 

 

「お前達が、最近この近辺の村落を襲撃して回っている者達、ということで、間違いないか?」

「おや、要らぬ疑惑を持たれているようだが、何か確証が?」

 

 

あからさまな態度に、ガゼフの部下が沸き立った。すぐにでも戦闘を始めようとする部下を手で制し、ガゼフは言う。

 

「お前達が俺の抹殺を狙い、村落を襲撃していたのはもう分かっている。それを自白し、こちらに投降するのであれば粗雑には扱うまいとは思ったが……」

 

腰につけた鞘から剣を抜き放ち、ニグン、陽光聖典へと向ける。

 

「お前達のその命、ここで散ると思え」

 

「言いたいことはそれだけかな? ……やれ」

 

ニグンのその言葉が合図となった。

 

 

「進めぇ‼」

 

ガゼフの号令に、騎馬に乗った兵士達は陽光聖典へと進軍していく。

 

彼らが得意なのは白兵戦だ。魔法を使うのだとしても、接近戦にはある程度持ち込める。

 

――そうなるはずだった。

 

 

「何だ、あれ……」

 

馬の駆ける音に混じって、誰かがそう言う声が聞こえた。

 

陽光聖典がいる上空数メートル付近に、それらは居た。

 

【炎の上位天使】

 

【監視の権天使】

 

と呼ばれる。第三、第四位階魔法で召喚される天使。

 

 

天才と呼ばれる魔術師にしか呼び出せない存在を兵士が知っているはずものなく、ガゼフ部隊は次々に撃破されていった。

 

「通常の武器ではダメか、ならば!」

 

【戦気梱封】

【急所感知】

【流水加速】

 

三つの武技を発動させる。

なるべく大技、隙を作る技は使わず、一撃で倒すことを念頭におく。

 

「はぁっ‼」

一体。

 

「せぃっ‼」

もう一体。

 

「【四光連斬】、【即応反射】」

囲んできた天使を四体。

 

王国で支給されている普通の武器の切れ味の悪さに、ガゼフは舌打ちをついた。

 

「(ここで決着を付けなければ……)」

 

先ほど村でやまいこに言われたことを思いだし、ガゼフは身体に活を入れる。

 

『もし、ダメだと判断したら、私たちの魔法で乱入します』

 

 

女を戦場に立たせてたまるか。

 

 

 

 

 

「まだまだァァア‼」

 

意地と誇りとプライドを爆発させて、ガゼフは咆哮と共に大地を踏みしめた。

 

 

 


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