制作者としてあまり噛ませにしたくないので、少しは頑張ると思います、少しは。
「先ほどまでの威勢はどうしたのかな、戦士長」
夕日が沈みかけ、もう薄暗いとさえ思える時間帯、カルネ村付近の平原では、一つの戦場に決着がつこうとしていた。
倒れているのは皆、ガゼフが率いる兵士達のみ。ニグン率いる陽光聖典は、誰も倒れてすらいない。
「我らが使役する【炎の上位天使】と、【監視の権天使】の力はどうかね。まだ隠している力があるのなら、出しても良いぞ」
「……これだけは、したくなかったのだが」
疲労困狽のガゼフが力なく笑う。
突如変わったその態度に、ニグンは頭のネジでも外れたか、と疑問に思ったが、そうではなかった。
「女を戦場に出すなど、戦士として最低だ」
そう言葉を残して、ガゼフが突然消えた。
ガゼフだけではない、その部下達も、突然にだ。
「なっ……、何処に消えた、何をした?!」
見たこともない現象に、ニグンは思わず辺りを見渡す。
すると、ガゼフが先ほどまでいた位置に、二つの人影が現れた。
「初めまして、陽光聖典のみなさん。ボクはやまいこと申します」
「ども、茶釜です」
フレンドリーに、笑顔でそう挨拶したのは、どちらも絶世の美女と言えるほどの女性だった。
部下の数名が色めき立つが、ニグンは言った。
「それで、貴女方は、何かようですか?」
「あぁ、そうそう。さっきまでの戦い全部見ててさぁ、もう決着ついたでしょ、止めない?」
軽い調子で言う茶釜の言葉に、ニグン達陽光聖典は口々に言う。
「ふざけるな‼」
「私たちは世界の救済を願うもの、その行いに口を出す気か!」
「ガゼフが死ぬことが救済なのだ、邪魔をするな!」
「皆、よく言ってくれた。聞いただろう、お嬢さん、ガゼフを殺すことが我らの使命、それを邪魔しないでほしい」
ニグンがそう言うと、茶釜がでもさぁ、と返す。
「そのガゼフさん、もう居ないよね。どうするの?」
白々しいその言葉に、ニグンは舌打ち混じりに返した。
「知れたこと、奴等が穴蔵から出てくるまで、また村落を襲撃するだけだ。そうだなぁ……」
ニグンはニヤリと笑って、二人の背後を指差した。
「手始めにそこの村を焼いてやれば、奴もすぐにでも顔を出すだろう」
その言葉に、目の前の女性二人、特にやまいこが反応する。
「……そうやって村を襲撃することに、何の意味があるの?」
「意味など無い。強いて言えば、ガゼフを呼び出すための餌だ」
「そこに住んでる人も居るんだよ? どうして関係の無い人まで殺す必要があるの」
「それをすることが、世界の為、人類の平和のためだとすれば、それによって生じる損害など、仕方のないことだ」
それに、とニグンは続ける。
「お前の言っていることはただの偽善だろう。今まで肉を食ったことはあるだろ、それに対してもお前は憤るか?憤ることはあるまい。それが普通なのだから」
「それと同じだ。我らは必要だから人を殺す、それに対するお前の怒りは、ただの身勝手な我が儘というものだ」
瞬間感じる、上空からの殺意に、ニグンは全身に冷や汗をかいた。
呪いの類いかと周囲を探っていると、黙っていたやまいこが言った。
「そうだね。確かにそれは我が儘だ。でもね……」
その女性から沸き立つ、見えないなにかに、陽光聖典の呼び出した天使達が異常に反応する。
「我が儘だろうが身勝手だろうが、構わない。ボクは、ボクの意地を通す‼」
「よく言ったね、やまいこさん。次は私も混ざるから、お互いにサポートよろしく」
「……後で泣き言言っても遅いぞ、異端者がぁ‼」
第二ラウンド。カルネ村での戦いは、終焉へと向かう。