なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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戦いの終わり~カルネ村編~6

ニグン達陽光聖典は、殲滅戦術を得意とする一団だった。

 

隊員の使役する【炎の上位天使】と

ニグンが使役する【監視の権天使】、またニグン自体の特異な能力(タレント)によって、天使のステータスは強化される。

 

天使達一団の人海戦術と、隊員が使える魔法での後援によって、ニグン達陽光聖典は数々の勝利を手にしていた。

 

今回の任務でも、ガゼフ・ストロノーフ一団を殺害という、いつも通りに任務をこなすだけだったが――

 

 

 

 

「――これで全部?」

 

女、やまいこが上体を戻して言う、彼女が向き合っていた地面には、潰れた【炎の上位天使】が光を放ちながら霧散していくところだった。

 

「大したことないなぁ。王国最強らしいのガゼフさんが追い詰められるくらいだから、手こずるかと思ったけど」

 

「まぁ、第三位階程度の魔法だし、こんなもんじゃない?」

 

隣に来たぶくぶく茶釜がそう言うと、その言葉に陽光聖典一同が動揺する。

 

 

「第三位階……“程度”?」

 

誰が発したか、その言葉を理解し、ニグンは激昂した。

第三位階は、選ばれた人間のみが到達出来る領域の魔法。“程度”とはどういうことだ。

 

 

「第三位階程度とはどういうことだ、貴様等、その言葉を理解して言っているのか、えぇ?!」

 

分かっている。

その第三位階の天使を、コイツらは軽く倒した。

魔法も使わず、武技を使用した様子もない。己の身体能力のみで打倒したのだ。

 

 

「最高位天使を召喚する、援護しろ」

「ハッ!」

 

ニグンはそう言うと、懐から一つの水晶体を取り出した。子供の頭一つ分くらいありそうなそれを見て、茶釜が言う。

 

「あれ、【魔封じの水晶】だね。超位魔法以外を取り込める物だけど……。あの言葉を聞く限り、【熾天使】でも入れてんのかね」

 

「だとすると厄介ですね。……流石にワールドエネミークラスはないでしょうけど」

 

 

様子の変わった二人に、ニグンは勝機を見たりと笑う。

召喚準備の整った水晶を掲げ、高らかに言った。

 

「見よ、この尊き姿を。そして恐怖し、ひれ伏せ!」

 

神々しい光を放ちながら、一体の天使が出現した。

闇に包まれたはずの平原を、その神々しい光で照らす、その光の持つ清浄な気配に、陽光聖典の兵士は感嘆の声を上げる。

 

【威光の主天使】

 

それが、【魔封じの水晶】に封じられていた最高位の天使だった。

 

過去に魔神の一体を倒したとされるそれを仰ぎ見て、ニグンは言った。

 

「どうだ。この姿を見ても先ほどの余裕が言えるか? 今すぐそこに這いつくばり、命乞いをするのであれば、考えてやらんこともないぞ」

 

 

ニグンのその言葉を聞いても、やまいこと茶釜はポカンと呆けたように【威光の主天使】を見上げているだけだった。

何か言いたげな雰囲気に、ニグンは問いただす。

 

「何だね、言いたいことがあるのなら聞いてやるが?」

 

それを聞いて、一拍置いてから茶釜が言う。

 

 

「いや、“最高位”の天使? これが?」

 

マジか、お前。という顔で見ている。

隣に立つやまいこも、これはちょっと……。と言いたげだ。

 

 

「……ならば受けてみろ。魔神をも滅ぼした一撃を!【善なる極撃】!」

 

 

天から降り注ぐ聖なる光の柱が、やまいことぶくぶく茶釜に直撃する。

手応えあり、まともに直撃したとニグンは感じたがすぐにそれは幻想だったと知る。

 

 

 

 

「ちょ、熱っ」

「な、なんかピリピリくる……」

 

そんな軽い調子で【善なる極撃】から出てきた二人に、ニグン達陽光聖典は今度こそ絶句した。

 

 

「そ、そんな……。ま、まさかお前達、神の血を継ぐ“覚醒者”……っ?!」

 

 

 

 

 

「……はい。あ、そうするんですか。……ま、良いでしょ。了解でーす。はい。」

 

ぶくぶく茶釜が【メッセージ】を終えると、やまいこへと伝える。

 

「情報取りたいから、アイツらはナザリックに連れていくってさ、だから私たちはこれにて帰還だって」

「…………分かりました。」

 

不満。そう顔に出しているやまいこに、ぶくぶく茶釜は苦笑を浮かべた。

 

「カルネ村に戻って、エンリちゃん達に報告しよう?もう安全だって」

「……そうですね!」

 

機嫌が戻ったやまいこに、内心ガッツポーズしながら、二人は転移で村へと移動した。

 

 

陽光聖典をナザリックへと連行する捕縛部隊が登場したのは、すぐ後の事であった。

 

 

 

「【魔封じの水晶】が出てきたから警戒しましたけど、普通にクリアできましたね」

 

次々と捕縛される陽光聖典の姿を【遠隔視の鏡】で眺めながら、モモンガはそう呟いた。

あのニグンとかいう男の物言いには腹立ったが、無事に終わったので不問としよう。

 

 

「それにしても、気になるワードが有りましたね。神の血を継ぐ“覚醒者”……、だっけ」

「血を継ぐってことは実在の人物ということでしょうか。あの二人と同等ということは、プレイヤーの可能性もあります」

「なら、そのスレイン法国にはプレイヤーが居るんですかね?……牽制含めて攻撃でもしてみます?」

「よしましょう。下手につついて要らない問題を作る必要もありません」

 

それに……。と続け、モモンガは周囲に居る者達に視線を向ける。

 

「ここにいる全員ならば、どんな奴が攻めてきても勝てますからね。恐れることはありません」

 

その言葉に、その場に居たプレイヤーは静かに笑みを浮かべた。

 

「モモンガさん、台詞が臭い」

「えぇ?! ここは『そうだな』、とか言うところでしょ」

 

再び賑やかになる一同に、場が暖まる。

二人が帰ってきたら一言注意しないと、と思いながら、モモンガは【遠隔視の鏡】を仕舞った。

 

 

 

 


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