なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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どきっ、女だらけのイベント回(異形種含む)

第九階層、ロイヤルスイート。

その中の一室では、円形の大きなテーブルに、色とりどりのスイーツがはみ出ん限りに並べられていた。

 

「それでね、モモンガさんが使う魔法、凄かったんだー♪」

「へぇー。どんなことをしていたの?」

 

口の端にクリームを付けたまま、ネムは大きく手を動かして話す。

手に持ったナプキンでそのクリームを取ったのは、優しい笑顔を浮かべたやまいこだ。

 

 

「えっとね、なんか紙みたいなのが燃えた後に、すっごく大きなワンちゃんが出てきたの!」

 

 

ネムが話した内容に、やまいこはその笑顔を引くつかせる。

隣にいた茶釜を見ると、同意するように苦笑いを浮かべていた。

 

「ねぇねぇ、ネムちゃん。そのワンちゃんの名前、モモンガさん何て言ってた?」

「えっとね……、確か、けるべら、けるべる……」

「ケルベロス?」

「あ、うん。それだよ餡ころさん!」

「そっかー、やっぱりかー」

 

【ケルベロス】

第十位階魔法に相当する召喚魔法によって出てくる、三つの頭を持つモンスターだ。

強力なモンスターで、それ一体でこの辺の国一つくらい軽く滅ぼすくらいの力がある。

 

間違っても、子供に見せるために召喚する代物ではない。

 

 

これはお仕置きやろなぁ、と小声で呟いた餡ころに、やまいこはOKサインを出した。

私も混ぜろ。という意味だろう。

 

「ほらほら、エンリちゃん。これも美味しいよ?」

「い、いただきます! ~っ、美味しい……」

「甘い物大好きなんだね。よく食べるの?」

「い、いえ。普段はこんな甘味食べれません。ほとんどが果物とかです」

「……、よし、エンリちゃん。食べよう、食料庫が空っぽになるくらい!」

「えっ」

 

スイーツ追加で!と、茶釜が近くに居たメイドへとオーダーを告げる。

畏まりましたと頭を下げたメイドは、スイーツを乗せていた大きなカートを引いて、扉から出ていった。

またあのカートいっぱいにスイーツが乗ってくるのだろうかと、エンリは困惑した。

 

 

 

 

 

「それにしても、この後どうする?」

食後の一時、これ以上入らないくらい膨れた腹を擦っていると、餡ころがそう言った。

時計を見上げると、時間的にもう少ししたら就寝の準備といったところか。

 

「あ、だったら浴場ってところに行ってみたい!」

 

手を上げてそう言ったネムに、全員の視線が集まった。

浴場と聞いて、昔聞いた王国の広い風呂というのをエンリは思い出していた。

 

「んー、良いね。なら皆で行こうか」

「さんせー。ていうか、二人は着替えあるの?」

「ナザリックに有るので良いでしょう。メイドに頼んでおきます」

 

エンリが物思いに耽っている間に、トントン拍子で話は進んでいた。

え、何事?と状況が掴めないでいると、やまいこが手を引いて言う。

 

「なら次は、ナザリック自慢の浴場【スパリゾートナザリック】に案内するね」

 

スパリゾートって何?等と思っていると、エンリの視界はブラックアウトした。

 

 

「おおぅ?何だ何だ、何処のVIPが来てんの?」

 

浴場前の暖簾が掛けられた場所、主に女性側の方に、立ち塞がるようにたっているメイド数名(プレアデス含む)にるし★ふぁーが言った。

 

「はっ、只今やまいこ様、餡ころもっちもち様、ぶくぶく茶釜様、そして下等せ――お客様二名が入浴中で御座います」

「如何なる場合であっても、絶対に男性を通すなと、仰せつかってありますぅ」

「うん。ナーベちゃん、多分あのお客さんに下等生物って言ったら嫌われると思うから気を付けてね。特にやまいこさんに」

 

瞬間、顔を青くして「あれは同等、あれは同等……」と自分に洗脳するように呟いているナーベラルを見ながら、るし★ふぁーはふと思った。

 

俺、なんか久しぶりに真面目なこと言った気がする

 

その場にいた他の者も思っていたのだが、るし★ふぁーは特に気にすることもなく、そのまま男性用の暖簾をくぐった。

 

 

「ふぅ……、気持ちいぃ……」

 

肩まで湯船に浸かって、エンリはそう口に出した。

その様子を見て、同じく湯船に浸かった茶釜が言う。

 

「今日は満喫してくれたかな」

「あ、はい。色々と、ありがとうございます」

 

素直に思ったことを、そう口にした。

ネムを探すと、まだやまいこと餡ころに身体を洗ってもらっているところだった。

楽しそうに笑うネムを見て、エンリはポツリと呟く。

 

 

「あの子、最近はめっきり笑わなかったんです」

「……あの時以来?」

 

探るように聞いた茶釜に、コクりと頷いて肯定する。

 

「お父さんとお母さんが、その、死んで。前までよく笑っていたのに、急に……」

 

聞き分けのいい、良い子になった。

近所の人はそう言うが、エンリからすればそれは異常だった。

 

「だから、今日はここにお邪魔させてもらって、本当に良かったです。久しぶりに、本心から笑うあの子を見れたから……」

 

湯に映る自分の顔が、いつの間にかクシャっと歪んでいた。流れる涙を誤魔化すように、何度も顔を洗う。

 

「偉いね、二人とも」

「茶釜さん……?」

 

そんなエンリを、優しく茶釜は抱き締めた、他の者から見えないようにすると、エンリにしか聞こえないように言う。

 

「突然二人きりになってさ、生活しなさいって、私なら絶対無理だもん。それなのに、二人とも我慢して頑張ってる。それはとても凄いことだよ」

 

偉い偉い、と背を優しく叩く茶釜に、エンリは思いきり抱きついた。

胸元に顔を押し付けて必死に声を上げないように嗚咽するエンリを、茶釜はただ優しく撫でる。

 

 

正直に言って、茶釜は当初、エンリとネムのことはどうでもよかった。

友人であるやまいこが助けたいと必死だったから力を貸しただけで、自分一人ならば見捨てる気で居た。

そして、異形種になってからそんな感性に目覚めた自分を、心底軽蔑している。

 

茶釜がこの二人に構うのも、そうした自分を変えたいと思うからでもあった。

 

 

「……これからさ、何かあったらすぐに言ってね。私だけでも行って、二人のことを絶対に守るから」

「……ぁぃ」

 

 

 

これ以上、この姉妹が理不尽に巻き込まれないように、

 

そして願うなら、次からは悲し涙でなく、嬉し涙を流していってくれますように、と。

 

 

自分の胸で泣きじゃくる少女を見ながら、茶釜はそう願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、モモンガさん。ご機嫌麗しゅう」

「餡ころさん、茶釜さん、やまいこさん。どうしました、こんな時間に」

「いえ、何処かの【オーバーロード】が、小さな子供に見せるためだけに、安全性に欠ける第十位階の召喚魔法を使ったと聞きまして」

「………………キノセイジャナイデスカ?」

「ちょっと、頭冷やそうか」

「いや、頭冷やすのに【女教師怒りの鉄拳】は必要無いやちょっと待ってマジで洒落にならな」

 

その後、メチャクチャ折檻した


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