ナザリック第六階層、豊かな自然が広がっている大森林の中にある巨大樹。その中には、5つの人影が見えていた。(人影と言っても、頭に異形種の、が付くが。)
「それにしても、まさかナザリックの中でリアルに過ごす日が来るとはねぇ」
「本当ですよねー。まぁ、ご飯も美味しいし、施設も最高だし、元現実とは天と地の差ですけど」
「最初はボクもビックリしましたけど、今では結構慣れた……かな?」
丸形のテーブルに集まって話しているのは、ぶくぶく茶釜、餡ころもっちもち、やまいこのアインズ・ウール・ゴウン女性メンバー3人だ。他にはぶくぶく茶釜の膝に乗っけられているアウラ・ベラ・フィオーラ、やまいこの脇に控えているメイドのユリ・アルファがいる。
「ま、確かに最初はテンパったけどねー、ってアウラ、どうかしたの?」
ぶくぶく茶釜は膝の上でモゾモゾしているアウラに問い掛ける、アウラの服装は普段の動きやすそうな服装とは違い、ピンクを基調としたフリフリのドレスを着ていた。
「い、いえ、申し訳ありません。普段はこのような服は着ないため、その……、少し恥ずかしいというか、なんというか」
顔を赤らめながら言うアウラの言葉は、普段の彼女を知るユリからすれば「誰だコイツ」みたいな感想を抱かせた。
普段の快活なキャラは引っ込み、年頃の少女のような初々しい様子を見せている。はっきり言って破壊的な可愛さだった、一枚撮りたい。
アウラがこのような格好をしているのは、簡単に言ってしまえばぶくぶく茶釜の趣味だ。他にも部屋の隅にあるタンスの中には数種類のドレスなどが有るし、キグルミなども用意している。
かなり短めのスカートの裾をギュッと握り、ダークエルフ独特の浅黒い顔を真っ赤にして俯くアウラを見て、ぶくぶく茶釜は無い表情を愉悦に歪ませた。
「ふっふっふ、やはりこのぶくぶく茶釜の感性は間違っていなかったようだよ、餡ころさん」
「本当です最高です撮ります」
何処からともなくカメラを取り出した餡ころもっちもち、アウラは二人から漂うイヤな空気に身体を凍らせる。
「え、ちょ、ま、待ってください‼御慈悲を、御慈悲をぉぉぉ‼」
「ダーメ♪茶釜さん、エロいの行きましょう、エロいの」
「合点承知」
言うが早いか、ぶくぶく茶釜の身体の一部が変形し、アウラの手足を拘束する、立場的にも実力的にも格上の二人からは、今のアウラでは逃げ切れなかった。
でもせめて、せめてもの慈悲をもう二人残っているやまいことユリに求め、すがるように視線を向ける。
「うん。このケーキ初めて食べたけど好きな味だな」
「お口に合ったようで幸いです、お飲み物は如何しますか?」
「んーと、ロイヤルミルクティーとか有るかな?」
「畏まりました。すぐに用意致しますね。その間、此方をお食べ下さい」
「ありがとう、ユリみたいなメイドを持って幸せだよ」
「っ!……お褒めの言葉、大変嬉しく御座います」
こっちの事なんかガン無視でお茶してやがった二人に、アウラは「薄情者ぉ‼」と心のなかで叫んだ。
◆
「うぅ……」
疲れた……、精神的にも肉体的にも。
次はこの衣装、次はこれ。そんな感じに着せ替え人形と化していたアウラは、ひとしきり撮影が終わると解放された。普段着ている服装に着替えると、部屋に備え付けられている椅子に腰掛けた。
「やー。お疲れ様ー」
「っぁ、申し訳ありません‼」
手を軽く振りながら現れた餡ころもっちもちに、アウラはすぐさま立ち上がって頭を垂れる。疑問そうにこちらを見る彼女にアウラは口早に謝罪を述べる。
「至高の御方を前にして不敬な態度、申し訳ありません‼」
普段通りの服装に身を包んだ今となっては、先ほどの様な真似は出来ない、いや、してはいけない。という気迫が、アウラから漂っている。
文句なしの姿勢で謝罪するアウラを見て、餡ころもっちもちは会長の前でだらけた社員みたいなものかなー。と他人事の様に思っていた。
いつまでも何も言わない彼女に、アウラが不安気に少し顔を上げる。そんなアウラを見て、餡ころもっちもちは笑った。
「あははは、大丈夫大丈夫。怒ってなんかないよ、楽にして?」
「ハッ」
「いや、普通に座ってほしいんだけど……」
その場で手を後ろに組んで待機をしだしたアウラに、思わず苦笑がもれる。そんなことをしていると、ぶくぶく茶釜が戻ってきた。
「ただいまー……、何の状況?」
「いやね、アウラがまた真面目ちゃんに戻っちゃって」
「またですか」
その言葉を聞いてぶくぶく茶釜は軽くため息を漏らした。そんな二人の会話を聞いて、アウラは口を開く。
「至高の御方であるお二人の前で、失礼な態度は取れませんので」
軽く頭を下げ、敬礼しているアウラ。そんな彼女に、ぶくぶく茶釜は言った。
「それは守護者としてのアウラの役割でしょ。今は、私の娘としてのアウラで居てよ」
「そーだそーだ」
ケラケラと笑って追撃する餡ころもっちもち。
「で、ですが、それは至高の御方への侮辱に」
「あぁーもぅー」
「ぁぅっ?!」
本日何度目かの拘束を受け、アウラの身体はぶくぶく茶釜へと運ばれる。膝の上にアウラを乗せたぶくぶく茶釜は、彼女の頭を優しく撫でていった。
「その至高の御方で、アウラの親である私が言ってるんだから良いの。もし文句を誰かから言われたらソイツ連れてきなさい、お話をするから」
「ナニをするんですかねぇ」
「ナニでしょ」
「「イェーイ」」
ベチン、という低めのハイタッチ音が響く。ぽかんと口を開けているアウラに、餡ころもっちもちは言った。
「そんな恐ろしいお母さん「オイ」違った、美少女なお母さんなんだから、大丈夫だよ。何かあったら、私ややまいこさんにも相談しなよ?」
「うん。気軽に頼ってくれると、ボクも嬉しいかな。ユリもだよ?」
「は、ハイ!」
「ありがとうございます!」
神にも等しい方々からの言葉に、二人は涙目で返事をした。
再び団欒が始まった時、そういえば、とアウラが口を開く。
「先ほど、お二人はどちらに行かれてたのですか?」
「ぅん?あぁ……」
カチャリ、と二人はティーカップを置いて
「第九階層の、写真屋」
「ディーフェンス‼ディーフェンス‼」
「と、通して下さい‼アレだけは、アレだけは現像を阻止しなければぁぁあああ‼」
「ディーフェンス‼ディーフェンス‼」
「ちょ、お二人共、本当に御慈悲をぉぉぉ‼」
やいのやいのとドタバタしだした三人を見て、やまいことユリは苦笑いをしていた。
「でも、こういうのも好きだなぁ」
「……はい」
やまいこの言葉に、ユリは優しく微笑んだ。
後日、ナザリック内部にて、ダークエルフの少女のコスプレ画像(ギリギリ)が極秘に流通するが、それはまた別のお話。